074 抵抗
翌日
「手紙を書いて来ます」
タカネ、地下5階はハーピーがたくさんでした
数が多くて苦戦してます
今日は休んで作戦会議です
ちょっと思ったのですが、私ばかり手紙を書いてズルくないですか?
タカネも手紙を書いてください
待ってます・・・っと
ホテルに戻る
「さて、ハーピーどうしよ?」
「皆さん、何か案は無いですか?」
「地下5階の階段の部屋の通路で待ち受けるとか
階段の部屋の通路はかなり狭く屈んで通るのやっとだった
昨日逃げる際に一応壁を作ったがハーピーは通り抜けられないだろう
「・・・数には数で対抗したらどうでしょうか?」
「どういう事ですか?ジルさん」
「他のハンターに救援求めるという事でしょうか」
「幸いもう地下4階までほとんど敵がいません、ハーピーも個体では強くないので、数で対抗すれば駆除しきれるのではないかと・・・」
「・・・その場合財宝の分け前はどうしましょう」
「揉めると思うよ」
「手伝って貰えば報酬も要求されるような気がしますね」
「サテンの体見ておかしな要求してくる奴もいると思うよ」
「・・・駄目ですね、忘れてください」
ジルがシュンとしてしまった
「討伐の可能性が高い良い案だと思いますよ、弊害が大きいので残念ながら今回は試せませんが・・・」
「うん、またアイディアがあったら言ってみて欲しいな」
「は、はい」
少しジルが元気になったかな
「さて、他に案は無いですか?」
「私が突っ込んで四方八方から責め苦を受けながら数を減らし・・・」
「クリスティさん、却下です」
「きゅーん、サテン様♡」
そんな事をすればいかにクリスティとは言えもたないだろう
「いつだったか、カントナでタカネは左右と後ろに壁作って前方の敵に集中させてくれたよね?あの方法はどうかな?」
「なるほど、囲まれないよう制限するんですね」
「今回は上にも壁作ってさ、前方のみに集中出来れば・・・」
「・・・いけるかもしれませんね」
あれは有効な多勢に無勢の戦い方だった
「3mくらいの壁で前方にカオリとクリスティさん、後方から私とジルさんが魔法と弓で攻撃すれば・・・」
「前にどんどん死体が貯まって行くけどね、あの時はタカネが水圧で吹っ飛ばしてくれたけど」
「・・・邪魔になりますね、死体の壁をどう処理するか」
「ジルの水の魔法では吹っ飛ばせるかどうか・・・」
「洞窟だし水を出せば転倒の原因にもなります」
「飛んでるハーピーには影響ないけど、私達には影響がありますね」
「うーん・・・」
「あと、押し込まれるような気もしますね、人間のように待機して待っている訳ではありません、前に仲間がいても押しのけて突っ込んで来るような奴らです」
統率が取れた軍隊と言うより暴動といった感じか
いけるかと思ったがやはり無理かも
「やっぱり数が多すぎるよー、一度に来るんだもん」
「・・・タカネならどうするのでしょう」
「サテン、能力から違うんだからそれを考えても」
「そうですね」
自分達で出来る事を考えないと・・・
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「ズルいぞ、4対1じゃないか」
「シオンはまともに投げる事も出来ないので」
「ハンデら、タカネが強すぎるからこうなったら、自分を恨むら」
タカネ達は雪合戦をしていた
「元々はメアリーが反射神経高めたいから雪玉投げてくれ、華麗に避けるからって話だったのにどうしてこうなった」
「タカネが避けた先に投げるからら、人の行動を読むのはズルいら」
俺の投げるモーションを見て避けるからだ
雪玉が飛んできてから動かないと
そんなこんなで雪玉当てられまくったメアリーが怒ってる
自分が始めた事なのに
メイドちゃん3人を手下にして俺に雪を当てまくってやろうと考えてる
「はじめるら!タカネしねえええええ!」
雪玉が飛んできた
スローモーション
4人の後ろに回り込む
「き、消えたら」
「タカネ様どこですか?」
メアリーの後頭部に雪玉を強めに投げた
「ぎゃあ!!!」
「め、メアリーさん!」
「白目向いてるの」
「う~寒い、皆、風呂に入ろうぜ」
『はーい』
気絶したメアリーを抱えて風呂に入った
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「100匹くらいなら私が仕留めてみせます、死にそうになったら階段の部屋に戻って来るので回復して貰えれば」
「それを繰り返すの?無茶だよクリスティ」
作戦会議は難航中
「一か八かで炎の魔法で焼き払ってみましょうか?」
「一か八かの作戦は推奨出来ません」
「サテン、何かアイディアないの?」
「階段の部屋の通路で屈みながらペチペチ矢を撃つくらいしか・・・」
「安全地帯から撃つんだね、でもあっと言う間に死体の壁が出来上がるよ」
「夜にグールが食べてくれるのでまた翌日もそれを繰り返すとか」
「何日かかるんだろ」
2カ月くらいかかりそうな案だ
サテンも解っているが他に思いつかない
・・・結論を出すか
無駄にいつまでもダラダラ続けても士気が下がって行くだけだ
「・・・諦めましょう」
『・・・・・・』
皆何も言わない
どう思われているのだろう
臆病者と思われているのかな・・・
仕方ないと思ってくれてるかな・・・
ガッカリしてるかな・・・
うう、タカネにリーダーを任されたけど決断しなきゃいけないって辛いな
自分一人ならともかくパーティの方針を決めなくてはいけないと言うのは嫌な物だ
タカネがいればタカネが決めてくれるのに
駄目だ、そうやってタカネに負担を押し付けていたのではないか
私はタカネの負担を減らそうと思ってタカネ抜きでダンジョン攻略を志願したのに
強くなってタカネが安心できる環境を作りたかった
「・・・仕方ないね」
「そうですね、無理して死んでしまっては元も子もないですね」
「明日、伝書隼を送りペガサスの馬車を呼びます、帰るのは明後日になりますが・・・」
良かった、皆納得してくれたか
反対されたらどうしようかと思った
結局10日間の旅だった
すこしは強くなれたかな?
・・・なってないだろうな
ケルベロスは笛で眠らせ楽勝だったし・・・
こんな中途半端で帰る事になってしまうなんて
そもそも安全策を取りすぎで慎重すぎる
こんな状況で強くなれるものなのかな
無理は絶対しないでくれってタカネが言うから
あ、またタカネのせいにしちゃった
依存は私の悪い癖だな
タカネに心配かけたくないと思い、それに従って来たけどこのままじゃ・・・
大体タカネはいつも無茶するクセに私達には無茶するなって矛盾してるよな
心配しての事なんだろうけど
でも過保護な環境ではひ弱な子が育ってしまう
私の成長を邪魔してるのはタカネなんじゃないかな・・・
「・・・サテン、どうしたの?」
「・・・やっぱり悔しいです」
「え?」
「私は地下5階を攻略したいです」
「「「え?」」」
困惑の表情
自分の我儘かもしれない
皆を説得できるだろうか?
皆を巻き込んでいいのだろうか
「多少無茶をしてでも地下5階を攻略したいです」
「え?サテンがそんな事言うなんて・・・」
テスタさんの教えにも逆らってしまう事になるが
「今までは安全策を取り過ぎていました、私も回復できる程度の怪我なら負っても構いません」
「た、タカネが悲しむよ?」
「浅いキズなら回復で消えるじゃないですか」
「そうだけど」
内臓や頭を狙われるのだけは気を付けよう
他の場所なら多少は攻撃されても構わない
「精度が低いですが矢を3本同時撃ちします、どうせ一面ハーピーだらけになるので」
「・・・私もサテンさんに賛成します、ハーピー程度なら私の氷の魔法でもやっつけられます、出来るかぎり連発します」
「クリスティが敵をおびき寄せます、逃げながら後ろを攻撃しましょう」
「か、カオリは?」
「今回は遠距離攻撃が重要だと思います、私やジルさんに向かって来る敵を極力倒してください、壁で援護もしますので」
向かって来た敵を壁にぶつければ、カオリも止めを刺すのが楽だろう
動き回らなくてはいけなくなるが
「い、いけるのかな」
「解りません」
「何回かに分けてみますか?5分くらい戦ったらいったん階段の部屋に戻って私が回復して休憩するとか」
「そうですね、そちらの方が確実でしょうか」
最初から100%の力で暴れまくって休憩
ハーピーは次第に数を失い勢力を失っていくだろうか
「無限に湧くことは無いよね?」
「それだったら攻略は不可能です」
「いくらなんでもそんな事は・・・」
そんな訳はないだろう
「明日精一杯やってみて終わりが見えないようなら諦めましょう」
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サテンから手紙が来た
「大量のハーピー?ハーピーって何?」
「女体の手足が鳥なの、中級程度のモンスターなの」
「それが大量かぁ、大丈夫かなぁ」
「タカネ様ならどうやってやっつけるなの?」
「地面から大量の柱を出して天井で押しつぶすかな」
「えげつないの、血の雨が降るの」
この方法なら他のモンスターも一網打尽かもな
天井があるダンジョンだからこそとれる方法だけど
天井ぶっ壊れるかな?あまり良い方法でも無いかも
ん?俺にも手紙出せって書いてある
「今から手紙出してメオラにいつ届くかな?」
「伝書隼は夜も飛ぶけど速度は遅くなるの、明日の朝には着くと思うの」
しゃーない、手紙出しにハンター組合へ
親愛なるサテン様へ
こちらは平和そのものです
ハーピーの大群に苦労してると聞きましたが、羽を濡らせば動きが鈍くなるかもしれません
以前ムスタングが泥沼にはまって大変でした
参考になるか解りませんがお試しください
くれぐれも無理はしないようにしてください
PS ムスタングに騎乗できるようになりました
キスマークでも付けとくかな
口紅つけてないけど
「お貸ししましょうか?」
「良いんですか?」
受付のお姉さんに口紅借りてキスマークを押した
・・・なんでこんなことしてんだろ
まあいいか
「じゃあお願いします」
サテンに手紙出した
5000アランもかかるんだな
たっかい
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翌朝
「タカネのキスマーク!!」ンチュンチュ
「サテン、なんで手紙にキスしてんの?」
「羽を濡らせば動き鈍るかもって書いてありますが」
「鳥の羽って水弾いてたような・・・」
「昨日も話しましたが足元が濡れてしまうのは私達が不利かと」
「サテン、タカネに使えないアドバイスありがとうって手紙書いておいて」
「そんな事書けません、カオリひどいじゃないですか」
「う・・・ごめん、ちょっと緊張してるんだと思う」
・・・ハーピーの大群との決戦を前にカオリはナーバスになっていた
一歩間違えば死ぬかもしれない
そう考えるとサテンにも迷いが出て来る
タカネの手紙を見返す
くれぐれも無理はするなと書いてある
しかし今無理をしなくては強くはなれない
サテンはそう感じていた
ジルもそう思っていた
自分は少し足を引っ張っているのではないかと感じている
もともとハンターでも無いジルはついて行くだけで大変だ
起伏の激しい滑りやすい岩道を歩き続けるだけでもジルにはキツイ
だからこれを乗り越えられれば自分が一皮むけると思っていた
気の弱いジルはネガティブな考えに陥りやすい
解りやすい結果があれば、自信をつけられる
魔法水晶を作り切ってしまったのも、その性格が災いしての事だったのだが
クリスティは考えていた
3人を守りながらいかにハーピーを減らしていくか
自分は多少攻撃を受けても構わない
むしろ受けたい
成すすべなく四方八方から責められたい
昨日も実は興奮していた
あんなにたくさんのハーピー達が一気にやって来るんだもの
ああ、ヨダレが・・・
「タカネへの手紙にはなんて書くの?」
「サテンは悪い子になっちゃいましたと」
「すんごい心配してムスタングで飛んで来ちゃうよ」
「タカネ様が来てしまってはハーピーを狩りつくされてしまいます」
「クリスティ、タカネが邪魔なの?」
「け、けしてそのような!」
「本日はジルが手紙を書きましょうか?ハーピー討伐の事は濁してサテンさんが手紙にキスしてたエピソードを・・・」
「や、やめてください!」
タカネには適当に言っておこう
心配させても可愛そうだ
4人は気を引き締めなおし、ダンジョンへと向かった