071 羽目
「ふう、すごい雪だな」
朝からピエトロは大雪だ
さっそく皆で雪かきを始める
「鍛錬ら、メアリーが全部片付けるからタカネはお寝んねしてるら」
「無茶言うな、腰ぶっ壊すぞ」
「タカネ様、昨日はタカネ様のベットで寝てしまい申し訳ありませんでしたわ」
「いやいいよ、ぐっすり眠れたのなら良かったよ」
「・・・す、すみませんでした!」
朝からクーリエが何故か眼を合わせてくれない
挙動不審にオドオドするクーリエを始めて見たな
シオンはやたら艶々していた
みんなで雪を片付ける
今頃メオラに行った皆はどうしてるかな
-----------------------------
「そろそろ行きましょう」
朝食を食べ、ハンター組合へ
まずはタカネに手紙を書く
無事着いた事を知らせよう
本日中には伝書隼でランバートのハンター組合に届けられ、そこから我が家に配達される筈だ
すこしお金はかかるが仕方ない
タカネを安心させてあげなくては
ダンジョンに向かう4人
睡眠は十分とれた、準備は万端
ジルが少しオドオドしてるが外に出るのが不安だからだろう
魔法水晶を作ってしまい、国を捨てた女
大丈夫、フードとマスクで顔はほとんど見えていない
冬の空、雪は降ってないがこっちも寒いな
1時間ほどでダンジョンに着く
「誰も居ませんね」
以前は誰かしらハンターがダンジョンの前に居た
攻略が止まってしまい寂れてしまったように見える
中に入る
長い階段を下りて地下一階へ
あら、タカネが作った明かりがまだ生きている
本人もどれくらい長持ちするか解らないと言っていたが、変わることなく光り輝いていた
「モンスターは居ない?」
眼に届く範囲には見えない
どのみちこの階は攻略が終わっている
無視して地下2階へ行こう
何かを察知する事も無く地下2階へ降りる
「ここはコカトリスがいるかも知れません、気を付けましょう」
目に見える場所には居ない
「カオリが先頭で行くよ」
カオリは指輪効果で察知能力が20m働く
こんなに広いダンジョンではサテンやジルが持っている5mの察知能力は無意味だ
「ここも探索が終わってるんですよね?見られたら終わりと言うなら地下3階までの道筋に壁を建ててしまいましょうか?」
ジルが提案をして来た
余計な道を潰してコカトリスを閉じ込めてしまおうと言う訳か
「いえ、他にもハンターが潜ってるかもしれません」
「そうだね、一緒に閉じ込めちゃうと可愛そうだよ」
折角の提案だが却下した
「あ、居た」
地下3階に下りる階段の前でカオリがつぶやく
「左、壁の向こうだよ」
「じゃあ無視して降りましょう」
「そうだね」
結局察知したのは1匹だけ
前回来た時に大分狩られたはずなので、それ以降増えてないのかも知れない
それならそれで好都合、安全に越した事は無い
地下3階に降りる
長い通路を進むと部屋が見えて来る
あ、目で確認できた
何かが飛んでいる
サキュバスだ
向こうはまだこちらに気付いていない
サテンは弓を引く
狙いを慎重に
他の者も構える
サテンが外した場合に備える
シュッ
空気を切る音がした
見事サキュバスの頭に命中
細かい悲鳴の後にサキュバスが地面に落ちて息絶えた
まだ動くな
通路に身を隠す
死んだサキュバスに気が付き仲間が来るかもしれない
・・・来た、4匹も来た
サキュバス2匹にインキュバス2匹だ
回りを警戒してるな
どうする?
「風の魔法は使えるんでしょうか?」
ジルが聞いて来た
飛んでる敵なので風の魔法が有効と考えての事だろう
「解りません、タカネは氷で処理していました」
「ちょっと試していいですか?」
カマイタチの魔法なら目的の場所に突然発生する魔法だ
隠れて居る位置がバレる事は無いだろう
「・・・どうぞ」
ダンジョンの中で風の魔法は使えるのだろうか
イナズマは使えなかったらしいが
「・・・駄目です、使えませんね」
風の流れが少ないダンジョンではやはり無理なのか
それなら・・・
土の壁を出す
5mくらい浮上している夢魔を取り囲んでしまおう
天井も塞いで閉じ込めてしまおう
突然出て来た土の壁に驚く夢魔
インキュバス2匹は囲い込むことが出来たがサキュバス2匹を逃してしまった
しかし怖いのはインキュバス
敵の脅威を大きく減らせた
姿を出し弓を射る
カオリとクリスティも飛び出しサキュバスに向かう
少し遅れてジルが氷魔法を使った
矢は腕に当たる
致命傷では無い
クリスティがもう一匹にあっと言う間に詰め寄り仕留める
カオリも負けてはいない、指輪の効果でクリスティと遜色ないスピードで詰め寄り処理する
そのそばを氷の魔法が通り過ぎていく
カオリとクリスティはすぐに回りを警戒
後続は居ないか?
慎重にこちらに戻って来る
「・・・大丈夫みたいね」
「ぅぅ、出遅れました」
「気にしないでジル、連携初めてなんだから」
「壁の中の二匹はどうしますか?」
「隙間を作ってません、このままにしておけば窒息するでしょう」
帰りにでも魔法を解こう
窒息死したモンスターなんて見たくはないが・・・
「なるほど、私も次は壁をだそうか・・・それとも重力・・・」
「重力で地面に落とせるのなら壁で囲みやすくなるんですが」
「では連携でやっつけますか」
「そうですね、次に複数出たらやってみましょう」
さて、以前探索した続きからやって行こう
15部屋まで探索が終わってたはずだ
結構モンスター遭遇率が高い
以前来た時はインキュバスを結構倒したのでサキュバスが多い
1匹ならこちらに気付く前に弓で処理する
2匹なら弓とジルの氷の魔法で処理
多数なら重力で落とし壁を作って囲い込み
見つかってしまい逃げられる事もしばしば
女性だけのパーティなのでサキュバスは基本逃げてしまう
「ここも来てないみたいね、真っ暗」
「明かり出して大丈夫ですか?」
「取りあえずカオリは察知してないけど・・・」
「広そうな部屋ですね、慎重に行きましょう」
ジルが慎重に光を天井に飛ばす
向こうの壁まで明かりが届く
何も居ないみたい
「見て、宝箱だよ!」
「カオリ!待ってください!」
「あ!ご、ごめん」
奥に通路が見える
そこから何かが出て来るのが見える
サキュバスだ
明かりに釣られて出て来たのだろう
1匹だけか
止まった瞬間弓で射る
見事頭に命中、息絶えた
「カオリ、タカネにも散々気を付けるよう言われてたじゃないですか」
「ご、ごめん、宝箱を見るとつい・・・」
「罠があるかも知れません、まだ気を抜かないでください」
ゆっくりと近づく
罠は無いように見える
回りの通路も警戒
敵が突然出て来るかも知れない
「あ、開けるよ」
小さな木箱
一体何が入っているのか
・・・宝石だ
今回は1つだけ
これはダイヤだろうか
かなりの大きさだが
「これは・・・大きいね」
「カオリの指輪が3カラットでしたか?10カラット以上あるような」
「す、すごいですね、いきなりこんな大物が手に入るなんて」
取りあえず持って帰ろう
それからしばらく地下3階を回る
「一匹だよ、15m先に居る」
「では明かりと同時に攻撃します」
「サテン様待ってください」
「え?」
「眠りの笛を試してみたいのですが」
「・・・解りました」
光を出さずクリスティが笛を吹き始める
美しいメロディ
「だ、駄目、近づいて来る」
「明かりをお願いします」
「はい」
ジルが明かりを出した瞬間サテンの矢が飛ぶ
おっとインキュバスだった
頭を貫き息絶えた
「うう、すみません、笛は効かないみたいですね」
「それが解っただけでも収穫です」
探索を続ける
遭遇率は相変わらず高い
慎重に確実に処理する
本日20部屋目
あ、宝箱だ
でも空いてる
前回の探索から昨日までに一つだけ財宝が見つかったと聞いたからこれがそうか
残念、次に行こう
おや、ジルが疲れてきたようだ
「・・・本日はここまでにしますか」
「え?もう?」
「ああ、ジルさん大丈夫ですか?」
「す、すみません、体力が無くて」
「ご、ごめん!気づかなかったよ!」
ジルにとっては初めてのダンジョン
うねり狂った慣れないダンジョンに疲れて当然だろう
最初から無理させるのは良くない
帰り道も慎重に進む
ゆっくりゆっくり
後ろも警戒
敵に会う事も無く地下2階への階段にたどり着く
階段を上ってる途中
「・・・居るね」
カオリが呟く
どうも地下2階の階段の部屋の前にモンスターが居るらしい
どうしよう、階段の部屋は通路が狭くなっているのでコカトリスは通り抜けられないと思うが
「・・・笛を使ってみましょうか?」
効くだろうか
しかしこのままだと動けない
試してみるくらいは損はない
頷き、クリスティが笛を吹き始める
美しいメロディ
・・・何かがゆっくり倒れる音が聞こえた
「・・・効いたの?」
「恐らく」
慎重に階段を上る
階段の部屋の通路に何かが見える
コカトリスだ
カオリが素早く音を立てずに近づき止めを刺す
小さい悲鳴をあげ、コカトリスは息絶えた
「眠りの笛でコカトリスは無力化出来るんだね」
「そうみたいですね」
「お役に立てて良かったです」
これは大きい
まだコカトリスが残っているのか解らないが笛で寝るのなら怖くない
明日の手紙でタカネに伝え安心させられるのもサテンにとっては嬉しかった
ダンジョンを出てメオラに戻る
まだ夕方まで時間があるけど今日は仕方ない
皆の安全が優先だ
ハンター組合へ行き、ダイヤを鑑定
3200万だった
小切手発行になってしまうので売るのをやめる
ホメロスの王宮には行けない
「・・・えーと、すごい財宝です・・・よね?」
「そうですね、結構良い品だと思います」
「うーん、ピエトロだといくらで売れるのかなー」
「タカネ様に魔法石にして貰う方向で考えてもいいのでは?」
「こんな大きい魔法石ならタカネに勝てるかな?」
「さあ・・・体がついて行けるかどうかと言う心配もありますが」
「あ、あのー、これが普通なんですか?」
「普通というと?」
「ジル、どうしたの?」
「い、いえ、皆さん淡々としてるので・・・」
前回一番の大物はオリハルコン15kg1億アランだった
たしかに感動が薄れているかもしれない
「取りあえずホテル代の元が取れて良かったですね」
「は、はあ」
「ジル、安心してね4等分だから」
「ひ、一人800万ですか、ビックリなんですが」
「まだまだ、もっと大物が眠ってる気がするよ」
ジルは何が何やらと言う顔だった
「この笛も、タカネ様とピエトロのダンジョンで見つけたんですよ、売れば4千万くらいです」
「あとサークレットも見つけてたよね、あれは査定いくらだったの?」
「高騰のサークレットですね、確か6400万だったと」
「ええ?そんなに高い物だったの?」
「はー・・・」
ジルが感心してると言うか呆れてると言うか微妙な顔をした
これが普通の世界なのだ
命がけの世界の非常識な常識
「取りあえずホテルに戻って休みましょう、このダイヤはどうします?ジルさんが持ちますか?」
「い、いえ、心配です、持ちたくありません」
「ではサテンが預かります、宝石は荷物にならないのが良いですね」
呑気な事を言いながらホテルに戻った
---------------------------------------
「お、サテンから手紙が来たぞ、無事着いたみたい」
「ぜえぜえ、それは・・・良かったら」
メアリーをしごいていたらハンター組合の人が手紙を届けてくれた
「ぜえはあぜえはあ、ちょ、ちょっと休むら」
「仕方ないな、水を飲んで来なさい」
「ま、まだ続けるら?無理し過ぎはよくないら」
「しょうがないなー、今日はこれまで」
「た、助かったら」
まったく根性の無いやつめ
まだ腹筋200しかしてないのに
「タカネ様、お茶をお持ちしましたの」
「ありがとうエリーゼ」
「クーリエもタカネ様に惚れたみたいなの」
「ええ?どうしてそんな事になったの?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみるの」
女同士なのに困ったもんだな
性別を超越する魅力が俺にはあるのかな
やれやれ罪な女だぜ、俺
「エリーゼもタカネ様が好きなの」
「眼が$マークだな、サテン達がすごい財宝もって帰って来たらどうするの?」
「う、うう、ま、迷うところなの」
「はははw」
エリーゼはウソがつけないんだな
そういう奴の方が好感持てるよ
「うう、メアリーのベストパートナーのクーリエがタカネに取られたら、切ないら」
「お前はビックフットに求婚してたじゃん」
「あれもフラれたら、思い出すと切ないら」
「普通の人間の男を選べばどうだろうか」
どいつもこいつも歪んだ愛に目覚めおって・・・
俺は誰を選べば健全なのだろうか
---------------------------
「ふう、良いお湯でした」
「さ、サテン、タカネが居ないからってカオリの胸をあんなに揉まなくても」
「カオリは揉まれる立場の事を少しは知った方が良いです」
「うう」
ジルの胸を狙ってたカオリをサテンは容赦なく攻め立てた
カオリが泣きそうになるくらいに
「自分がやられて嫌な事を人にしてはいけません」
「はい、すみませんでした」
深く反省するカオリ
3日くらいは胸を触るのを我慢しよう
「カオリ様、モヤモヤしてるならクリスティにぶつけてください!」
「え?ええ?・・・クリスティがタカネ以外の人間にそれを許すのは、タカネへの裏切り行為にならないの?」
「タカネ様は寛大な御方なのでカオリ様がクリスティを虐げても何も言わないと思います!」
それはたぶん他の人に押し付けようとしてるだけだと思う
・・・いざそうなってみると結構大変だな
タカネは色んな人の面倒を見てたんだな
少しの間だけでもタカネに羽を伸ばして貰いたいとカオリは思った
-------------------------------
「いやあ、極楽じゃ!」
シオンとクーリエを両脇に携え風呂に入る
2人共タカネにメロメロだ
多分今ならどんな命令でも聞くだろう
「うう、クーリエたん、メアリーは嫉妬の鬼になるら」
「俺を倒して奪ってみなさい」
「解ったら、タカネはメアリーを強くする為にあえて憎まれる役をやってくれてるんらな」
「え?・・・ああ、うん」
「違ったみたいら」
「タカネ様、シオンの胸を枕にしてゆっくりお入りください」
「え?いいの?じゃあ」
「クーリエが足をお持ちします、体を浮かばせてゆっくり休んでください」
「お、おう」
湯船を広く使い浮かぶ俺
「じゃあメアリーはタカネの足の裏をコチョコチョするら」
「や、やめなさい!」
「エリーゼは浮かんで湯船から出てしまっているタカネ様の乳房をマッサージで温めてあげるの」
「うひゃひゃ!らめらからー」
ああ楽しい
でもなんか忘れてる気がするなぁ
うーんなんだっけ
あひゃひゃ、め、メアリーやめれ!
冬なのにピエトロの夜は今日も熱かった