068 プレゼント
次の日、朝からクリスティはペガサスの馬車に乗って飛んで行った
隣の国へ行って俺にプレゼントを買って来るらしい
帰りは夕方になるって
「私達も組合に行ってくるよ、そろそろ冬眠時期になるらしいからヒマになるかもしれないって」
「そうか、気を付けてな」
俺は留守番しよ
メイドちゃん達だけに留守を任せるのは心配だ
原因は俺が魔法水晶を作ってしまったからなんだけど
「タカネ様が1人で魔法水晶を作ったと言う噂は消えつつありますわ」
「噂が書き換えられて来たのか」
「魔法研究所で制作に成功したと言う話に書き換わってますわ」
良かった
まだ安心はできないが少し安心した
あ、20傑の20位返上しようと思ってたんだけど
ハンター組合に言えばいいのかな
まあ今日じゃなくてもいいか
「タカネ様返上するなの?じゃあまた20位を決めるトーナメントが行われるの」
「そうなるのかな、なんか申し訳ないよ」
「前も言ったけど参加者にとっても主催国にとっても美味しいイベントなの、迷惑って事は無いの」
「そっか、ならいいんだけど」
折角20位になったけど早くも返上か
なにやってんだろな、俺は
「タカネ様、元気が無いですね」
「ん?ああクーリエ、ちょっと変な夢を見てね」
「どんな夢だったんですか?」
「神様の声が聞こえたんだ」
「え?ユンフィス様の声ですか?」
「ああ、言っとくが夢だからな、本気にするなよ」
「本当に神様の声ならすごい事ですよ」
「夢だってば、自分の無意識の中での話だ」
「タカネ様ならあり得ない事でも無いような気がします」
まさか信じるとは思わなかったんだけど
また余計な事言っちゃったかな
「ジル」
「どうしました?タカネさん」
「昨日変な夢を見たんだけど・・・」
ざっと説明する
「神様が夢の中に・・・」
「あくまで夢だからな、自分の勝手な妄想かも知れない」
「私はそんな経験ありません、魔法水晶を売らなかったので出て来てもおかしくないような気もしますが」
「そうだよな、大陸20傑返上よりそっちの方が世界に影響を与える事例だよな」
やっぱただの夢だったのかな
俺の勝手な妄想
潜在意識の中にそんな考えがあったのかな
「タカネさんはダイヤなので特別なのかもしれませんね」
「いやいや、やっぱりただの夢だったんだと思うよ」
ダイヤだから特別とか聞きたくない
今はすべてを投げ出してしまいたい
すべては言い過ぎか
折角出来た仲間は失いたくないな
おや、雪が降って来た
やれやれ、雪かきでもするか
手伝えなくて申し訳なさそうなジルを宥め、外に出る
大粒の雪だ、これはまた積もるかもな
「タカネ様、また風邪をひいてしまいますわ」
「私達でやりますから中で休んでいてください」
こないだ風邪ひいてからやたら過保護にされるな
もうあんな無理しないから大丈夫だって
まあもうちょっと積もってから始めよう
昼、サテン達が帰って来た
「この雪では何も出来ません」
「寒く無かった?暖炉で温まりなよ」
サテンとカオリとメアリーが暖炉の前で固まる
この時期の外仕事は辛いよな
「午前中は狼を狩ったら、毛皮を剥いで売って来たら」
「カオリはマンモス狩って来たよ、肉は街の人達が解体して持って来るって」
「サテンはヘビからリスを助けてあげました」
みんな仕事の話で盛り上がってるな
サテンだけちょっとおかしいけど
「もう仕事納めかもね」
「たぶん雪深くなるら」
「冬の間は何をしましょうか」
のんびりしようぜ
目立つことは何もしたくない
「カオリは鍛錬するよ、いつ大陸20傑の大会が行われるか解らないからね」
「タカネ、本当に20位を返上するのですか?」
「ああ、出来るだけ身軽になりたい」
「勿体ない・・・」
勿体ないよな
でも弊害の方が多いんだ、仕方がない
「でもカオリ、ピエトロ10傑でも無いのに大陸大会に呼ばれるの?」
「タカネだって10傑じゃないのにの推薦だったじゃない、次は地方大会やるかもしれないし」
「どうなんだろうな」
こんな雪の中大会やるのかな
カオリは大陸大会に出る気まんまんだけどその自信はどっから来るのか
「まあ明日にでも返上してくるよ」
「・・・タカネを後を継ぎたいので私も目指してみます」
「ええ?サテンも?」
止める事は出来ないけど心配だな
サテンも強くなってはいるけどさ
「メアリーも出たいら」
「中級は出れないぞ、来年目指しなさい」
「あい、解ったら」
何度も言うが焦るな
まだまだ若いんだからな
そうと決まればさっそく鍛錬をし始める3人
また部屋の中でやるのか
「タカネ、上に乗ってよ」
「俺は雪かきしようと思ってたんだぞ」
「まだ積もってないよ、ちょっとで良いから」
はいはい、カオリの上に乗る
負荷が少ない?じゃあテーブル持つよ
俺とテーブルを乗せ、片手で腕立てするカオリ
背中に汗がじんわり浮き出て来る
たまの汗だな
「きゃあ!」
「ああごめん、背中の汗を集めてみたくなって」
「もう!真面目にやってよね!」
だって退屈なんだもんよ
乗っかってるだけだからな
次は片足スクワットか
テーブルを持った俺を肩車するカオリ
片足をあげ、反対の足でスクワットを始める
ガチャ「お茶をお持ちしまし・・・テーブルが無いの」
「カオリ、スクワットしながらお茶を飲むんだ」
「ええ?で、出来るかなあ」
カップを受け取りスクワットを続けるカオリ
エリーゼ、俺にもくれ
テーブルを片手で持ち、カオリがしゃがんだ瞬間カップを受け取る
おお、揺れるな
そーっと飲む
あ、こぼれた
「あっつい!!」
「ごめん、こぼしちゃった」
「も、もう!!」
不安定なんだから仕方無いじゃないか
そんなに怒るなよカオリ
カオリの頭にカップを置いてやる
「た、タカネぇぇぇ!」
「お前はバランスが悪い、豆腐屋のようにこぼさないようスクワットするんだ」
「ぐぬぬぬぬぬ」
スクワット一回
「あっついいいい!!!!」
「あーあ、落としちゃった」
「も、もう!降りなさいタカネ!」
怒っちゃった
プンスカ憤慨するカオリ
カオリの為を思って提案したのに無駄だったようだ
さて、雪かきするか
「30cmくらい積もったな」
がむしゃらに雪かきをしてあっさり終わらせる
「は、早いですわ」
「まだ降ってるからまたすぐ積もるな」
「こまめにやれば楽ですわ」
また後でやるか
団欒室に戻るとカオリに睨まれる
「タカネ、カオリの前に後ろ向きで座りなさい」
「えー、俺はカオリの為を思ってだな」
「だまらっしゃい」
はいはい、解りましたよ
カオリに胸をネチネチと散々揉まれた
ひどい
「ふう、スッキリした」
「穢されちゃった」
「人の頭に紅茶こぼして何言ってるの」
当然の権利だと言わんばかりに胸をはるカオリ
裁判なら俺が勝つだろう
こんな世界で助かったなカオリ
「タカネ、サテンの上にも乗ってください」
「ええ?サテンもか?」
「紅茶は持たなくていいです」
腕立てをするサテンの背中にゆっくりと乗っかる
「だ、大丈夫か」
「うう、き、きついですね」
体が沈んだ
上がるのか?どうだ?
お、ゆっくりだが上がった
そして急激に沈んだ
「む、無理でした、降りてください」
「1回だけ出来たじゃん」
「メアリーもやるら」
「無茶言うな、肩車も出来なかっただろ」
「腕立ても30回しか出来ないら」
「負荷とか100年早いわ」
ずーんと沈むメアリー
ムスタング、慰めてやってくれ
さて、また雪かきするか
ふう、寒い寒い
あっと言う間に片づける
終わった頃にクリスティが帰って来た
「ふう、寒かったぜ」
「タカネ様、お手伝いできず申し訳ありません!」
「居なかったんだから仕方ないじゃん」
それより何を買って来たの?
どんなプレゼントなんだ?
「な!!!なんだこれ!!!?」
黒い革の胸まであるコルセット
首輪のような物が革のベルトで繋がってる
更に面積の少ないパンツがコルセットに繋がってるな
腰で履くパンツと違って角度がすごくキワドイ
お尻はTバック
あと脇ぐらいまである長い手袋と膝上20cmくらいまである長い革靴
深い切れこみが入っていて黒い紐を通して閉めて固定できるようになっている
あれだ、簡単に言うとボンテージだ
女王様が着るアレだ
「こ、こんなもんどうしろっての?!」
「た、タカネ様に似合うと思ったんですが・・・」
「お前の趣味だろ、これ着てイジめてほしいだけだろ」
「は、はい」
な、なんちゅうもん買って来るんだ
こんなもん着れるか!
「き、気にいってくださいませんでしたか」
「こんなの気にいるヤツが居るのか?」
「と、とても素敵だと思います、タカネ様が着ているのを想像しただけで・・・ああ!」
「・・・・・・」
あ、ムチもある
こんなもんで叩かれたらミミズ腫れになるんじゃないの?
「す、すみませんでした、せっかく買って来たんですが・・・」
クリスティがしょんぼりしちゃった
そんな顔しても流石に着れないよ
カオリですら引いてるもの
「まあ、とても素敵じゃないですか」
「サテン、お前はこれをただの下着だと思ってるのでは無いだろうか」
「?・・・違うんですか?」
通気性の悪い革で作った下着なんてあるもんか
サテンは下着大好きかも知れないけど、こんな実用性からかけ離れてる物を普段から着る奴なんていない
「タカネが着ないのなら私が・・・」
「い、いや待て、さすがにこれをサテンに着せる訳には」
「でも、使わないなら勿体ないじゃないですか」
「うーん」
このままサテンが着たら何か押し付けたような気分で嫌だ
意味を解っていないサテンに知らずに着せる事は出来ない
「タカネ、取りあえず着てみたら?」
「はあ?!カオリさっきの仕返しかコノヤロウ」
「ち、違うよ、だ、だってクリスティが・・・」
クリスティを見たら口をワナワナさせて大粒の涙を流し泣いていた
ええっ!そんなにショックだったの・・・?
「タカネが着ないならメアリーが着るらー」
「お前は何にでも乗っかってくるなよ」
「サテンが着ますから安心してください」
「・・・クリスティが俺にプレゼントしたんだぜ?目の前でサテンが持ってったらどう思うよ?」
「す、すみません、で、でもタカネが着ないって言うから・・・」
サテンもイジけちゃった
ああもう
「解ったよ、着ればいいんでしょ!!」
「た、タカネ様!」
クリスティの眼が輝いた
「チキショウ!誰か着るの手伝ってくれ!」
「わ、解りましたわ」
「・・・シオンか、クーリエも頼む」
「は、はい」
取りあえず自分の部屋へ行く
「はあ」
「・・・災難ですね、タカネ様」
「クーリエ、解ってくれるか」
「早く着た姿を見たいですわ」
「シオンは黙ってろ」
取りあえず全裸になる
これ、どうなってるの?
ああ、ここが外れるのか
で、足を通して・・・
ここをこう・・・
「背中のヒモ通して結んで」
「はい」
「シオンは靴を頼む」
「はい♡」
ボンテージの衣装が装着されていく
うう、お尻に食い込む革の質感
変な気分だ
「胸はきつくないですか?」
「怖いくらいピッタリなんだが」
「タカネ様の体ならシオンも知り尽くしてますわ」
「・・・・・・」
パンツの角度が際どすぎる
ツルツルだから毛がはみ出す心配は無いけど
これ大丈夫かなぁ
「手袋も頼む」
なんでこんなにヒモ通す場所が多いんだよ
実用性が皆無だ
キツク閉めすぎると腕曲げにくいし
「・・・出来上がりました、素敵ですわ♡」
「あら、これはこれでカッコいいですね・・・」
2人が俺の体に見惚れている
鏡を見て見よう
うぎゃあああああ!変態だーーー!
「うう、脱ぎたいよう」
「クリスティ様がまた泣いてしまうのでは・・・」
「こんどはタカネ様が泣きそうですわ」
なんで俺がこんな恰好・・・
どんな顔で皆の前に行けば良いの・・・
「タカネ様、そろそろ行きましょう」
「素敵ですわ、胸を張って良いと思いますわ」
そうだろうか
こんなバカみたいな恰好なのに
まあでもこの格好でオドオドするのは違う気がする
・・・はあ、仕方ない、開き直って行くか
こんな恰好で廊下を歩く
ケツ丸出しで
やっぱりバカみたいだよぉ
ひぃぃぃん
階段を下りる
ヒールが無茶苦茶高い
転びそうで怖いな
今玄関から誰かが入って来たら俺の変態的な恰好を見られてしまう
そんな事になったら俺は魔王になると思う
団欒室に行く
まるで死刑台に上がる死刑囚の気分
はあ・・・こんな姿で何やってんだ
しっかりしろ、取りあえずこの場をしのげればいい
終わったらすぐにこのボンテージはタンスの奥に封印だ
ガチャ「待たせたな」
「た、タカネ・・・」
「ま、まあ素敵」
「おわあ、カッコいいらー」
部屋に入り腕を組んで偉そうに立ってやった
カオリ以外は褒めてくれた
あれ?クリスティは?
「着替えて来るって」
「へ?」
ガチャ「タカネ様!お待たせしました!」
「!!!!!」
ドアを開けてクリスティが入って来た
革のベルトだけで構成された服で
正確にはところどころにリングがあり、そこに革のベルトが通され固定されている
ベルトで最小限の場所だけを隠した亀甲縛りのようなコスチュームを着たクリスティがそこに居た
へ、変態だあああああああああ!!!!!
たじろぐ俺を他所にクリスティが四つん這いになる
な、何してんの・・・?
俺に何を期待してんの・・・?
そうっと足をあげ、クリスティのお尻にヒールを食い込ませる
「ひいいいいん!!も、もっと!」
・・・・・・・・・・・
この後、ムチを持って自主規制
もうアウトかセーフか解らん
境目が解らん
とにかくクリスティは喜んでいたがカオリは引いていた
他の皆はキョトンとしてた
そんな感じで地獄の日が終わった