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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ピエトロ王国編
65/134

065 大足

次の日、夜の間に雪が50cmほど積もっていた

内政官のバルディさんが来た

俺とクリスティに話がある様だ

ジルには身を隠して貰う


「ビックフット?」

「ああ、今朝ヤーイン近くで足跡が発見された、夜に遠吠えを聞いたものも居るらしい」

「・・・遠吠えか」


昨日の夜聞いた遠吠えはビックフットの物だったのだろうか


「ビックフットは全身毛むくじゃらの3m程の2足歩行モンスターだ、もう絶滅したと思われていたのだが・・・」

「モンスター?私が聞いた事がある話では人類の祖先の生き残りであると・・・」

「ん?どういう事?」


クリスティが言うにはビックフットは類人猿、遠い人類の祖先であると

進化の過程の人類か


「そういう説もあるのだが、ハッキリした事はだれにも解らん」

「・・・それで、私達に話と言うのは?」

「ビックフットを退治して貰いたい」

「危険なんですか?」

「人間を敵視しておる、とても深い怒りでな」

「怒り?」

「・・・我々人類が絶滅に追い込んだんだ、史実では360年前にな」

「!!」


バルディさんに話を詳しく聞いてみる

ビックフットは体長3m体重350kgにもなる大型の人型生物

全身筋肉に毛むくじゃら、顔まで毛があると言う

ジャンプ力は20m以上、走る時は手を使い4足になり時速100km以上で走るらしい

知能は人間ほどでは無いが、他の生物に比べればはるかに頭が良い

360年前にはそこそこ居たのだが、何かのきっかけで人間との戦争が始まった

個体数にまさる人間に徐々に追い詰められビックフットは数を減らして行った

山に逃げ込むビックフットを執拗に追い詰め、人間はビックフットを狩り続けたと言う


「最後に確認されたのは90年前だ、その時も討伐隊が組まれて谷に追い込み成敗されたそうだが」

「何故、絶滅に追い込むことに?」

「恐らくは脅威だったからだ、他のモンスターと一緒だよ」

「私達に依頼があるという事は他のハンターには狩れない強さなんですか?」

「ああ、なにしろ動きが早い、雪の地面でも苦にせず縦横無尽に動き回る」


俺達に依頼が来るって事はドラゴンより強いって事だろう

今は雪もあるのでとてもじゃないが他のハンターには無理と判断した様だ

しかし・・・


「上手くいえないけど、今回はあまり気が進みません、元々絶滅させようとしたのであれば、こっちが悪いような」

「しかしそれは他のモンスターも一緒だ、人間に害があるなら狩るのがハンターだろう?モンスターも絶滅しそうになったら狩るのをやめるのか?」

「うーん」


バルディさんにとってはビックフットはモンスターと一緒か

だったら狩るのが普通と考えるのは解る

しかしビックフットが人間を恨んでいるバックグラウンドを聞いちゃうとな


「・・・私も自分の力を奇異の目で見られる事があります」

「ああ、ビックフットに同情してるのか」

「そうです、あんなに悲しい遠吠えを聞いてしまうと尚更です」

「遠吠えを聞いたと言うのか?ヤーイン近くに居たんだぞ?」

「聞こえました、それが私の力なんです」

「・・・・・・」


バルディさんの目は変わらない

すでに俺の力を知っているからだろう

そして、良識がある人だからだろう


「しかし困ったな、2人に断られてしまっては犠牲者が出るかもしれん」

「うーん、山に追い返すくらいなら・・・」

「・・・また山から下りて来た時に雪が無ければ討伐隊を出すと思うが」

「・・・仕方ありません、私がそこまで口を出すのもおかしいので」


バルディさんは帰って行った

うーん・・・


「タカネ様、私も今回は気が進まないんです」

「理由を聞いていいか?」

「モンスターとは考えられないからです・・・ビックフットは言葉を話すと聞いた事があります」

「!!!」


知能が高く二足歩行で言葉を話す

それはもう人間なのでは・・・

ああ、解らなくなって来た

人間だから助ける、モンスターだから討伐する

それだって人間側の都合のよい考え方だ

相手の立場に立ってみれば人間の方が危険分子なんだから

勝手な事をしてしまってる気分になる


外で雪かきをしていたメアリーを呼ぶ


「メアリー、ちょっと話を聞きたい、500年前の事だが」

「なんら?」

「ビックフットについてなんだが」

「ビックフット・・・見た目は怖いけど優しい連中ら、メアリーの村の近くに集落があったら、今も元気に暮らしてるら?」

「・・・・・・」


メアリーに事情を話す

みるみる表情が暗くなる


「うう、可哀そうら、なんでそんな事になったら?」

「解らん、360年前の事らしい」

「なんで人間は排除するら?なんで共存出来ないら?」

「・・・モンスターと同じ理由みたいだ」

「モンスター・・・メアリーはモンスターらったんらな・・・」


しくしくと泣くメアリー

500年前に魔法を使えると言う理由で捨てられたメアリー

悲しくて仕方ない

その気持ちは俺にも解る


「メアリー、今は俺の方が化け物に近い、気にするな」

「そ、そんな事無いら、タカネは化け物じゃ無いら」

「・・・化け物だよ、俺はこの世界に存在するべき者では無いんだ」

「・・・え?」


メアリーは意味が解らないと言う顔をした

異世界からチート能力を持って現れたダイヤのスイッチ持ち

恐らく世界を破滅にも導ける存在だ

いつか俺はこの世界を混沌の闇に落とすかもしれない

排除される日が来るのかも知れない

メアリー、ビックフットがそうであったように


「タカネはそんな奴じゃ無いら!メアリーを助けてくれたら!」

「メアリー・・・」


メアリーが俺に抱きつき訴えかける


「メアリーがタカネを守るら、タカネが化け物だと言うのなら、メアリーはそれ以上強くなるら」

「無茶な事言うな、せっかく500年後に蘇る事が出来たんだ、幸せに暮らす事を考えろ」

「誰かを犠牲にして生きていくなんてメアリーには出来ないら!周りの人が全員幸せならメアリーは不幸でも良いら!」

「め、メアリー」

「どうせ拾って貰った命ら、惜しくないら」


泣き晴らした目でしっかりと見られた


「メアリー、変な事を言ってすまなかった、俺は大丈夫だ、おかしくなったりしないよ」

「・・・本当ら?」

「ああ、安心しろ、強くなるなとは言わないがお前はゆっくり強くなっていけば良いからな、焦る事は無い」

「・・・・・・・・・解ったら」


メアリーを落ち着かせ、部屋を出る


「タカネさん、すみません聞いてしまいました」

「ジル?ここではまずい、お前の部屋へ行こう」


ジルの部屋


「私達の存在はなんなんでしょうね、世界を混乱させているだけのような」

「ああ、俺もそう思う、こんな大それた力を手に入れても持て余すだけだ、神様は何を考えているんだろうな?」


人間一人に対して大きすぎる力だ

不公平この上ないバランスの悪い力


「・・・私達の力の使い方が悪いんでしょうか」

「それもあるだろうな」


安易に魔法水晶を作ってしまった

世界を破滅に導くかもしれない物を


「せっかくやり直せる機会を与えられてもこれでは・・・自分に絶望してしまいそうです」

「力を使わない方が良いのかもな、その方が幸せなのかもしれない」


過ぎる力を手に入れてしまえば使ってみたくなるのが人間のさがだろう

それを我慢して生きていくのが正解だとは・・・

そんなのが答えだと言うのか

良かれと思い力を使えば裏切られ

畏怖され、ゆくゆくは排除される

そんなのが・・・


「ジル、魔王の話は知ってるか?」

「イスタークですね、100年前の」

「この世界に絶望し、自分に絶望してそうなっちゃったのかなって思うんだよな、気持ちが分からないでもないんだ」

「・・・殺して貰うために魔王になったんでしょうか?」

「うーん、それは解らないけどひょっとしたらそうかも知れない、自分で死ぬことも出来ず、人に迷惑をかける最悪の選択だとは思うが」

「・・・そんなのが、私達に待ち受けている未来かも知れないだなんて」

「まあ少し考えすぎかもな、まだ決まった訳じゃ無い」

「はい・・・」

「絶望するのはまだ早いよ、うまく生きて天寿を全うしてるスイッチもたくさん居るはずだ」

「そうですね、みんながそうなってしまう訳ではないんでしょうね」


俺はどうしようかな

すでにたくさんの力を使い見せつけてしまった

これからも俺の力を頼って来るものは多いだろう

目立たず静かに生きるには、また引っ越すくらいしか思いつかないが・・・


「その容姿ではどうしても目立ってしまうと思います、絡まれればあしらわない訳にも行かないですし」

「そうなんだよな、黙って尻を触らせる訳にも行かないもんな」

「よっぽど田舎に行かない限りは、皆放っておいてくれないでしょうね」

「うーん・・・」


今すぐには答えが出ないな

修正していくにも時間が必要だろう

取りあえず今はビックフットを何とかしてやらないと

これも引き受けるべきでは無かったのかもしれないが・・・


クリスティを待たせていたがそろそろ出かけるか

足取りが重い、まったくもって気が進まない依頼ではあるが


「タカネ様、どうするおつもりで?」

「解らん、だが言葉が通じるなら何とか説得してみようと思う」


俺達はヤーインに向かった

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