059 魔法石
ピエトロが魔法水晶を開発したと正式発表が出た
伝書隼を通して大陸中に伝達するようだ
「なんでわざわざ発表する必要があるんだろう」
「魔法水晶の開発は武力の誇示でもあるの、単独で作る魔法力があると言う証拠になるの」
「なるほど、参ったなぁ」
「エリーゼも止めれば良かったの、考えが回らなかったの」
「いや、それは俺もだよ、みんなを危険に晒す事になるかもと思うと情けないよ」
「発表は魔法研究所での政策に成功したとなっていたの、具体的な個人名は無かったの」
「そうか、噂は消えるかな?」
「その為の早期発表だとも思うの」
バルディさんが配慮してくれたか
そうか国内の噂を書き換える為の早期発表か
先走って流れた噂が間違いって事になればいいが
「大丈夫だと思うの、人の噂なんて当てにならないと皆知ってるの」
「どこまで広まってるか解らんからな、心配だ」
「実際魔法研究所で過去に魔法水晶の研究を行っていたのは確かなの、すぐに噂は書き換えられると思うの」
エリーゼは多少の危機感があるようだ
他の2人のメイドにも迷惑かける事になるかもしれないと思い、王宮に戻して貰おうかと思った
しかしシオンとクーリエは危機感が薄いようだ
魔法水晶を兵器として使うと言う話がピンと来ないらしい
まあ、取り越し苦労の可能性も高い
俺やカオリは核の存在を知ってるから過剰に心配してしまうのだろう
「クリスティ、メアリーとクーリエについて行ってあげて」
ハンターの仕事も行かせたくは無いと最初は思ったが閉じ込めておくことも出来ない
逆に家に居ない方が安心かもしれない
皆には今まで通りハンターの仕事をして貰う
カオリは最上級だしサテンももうすぐ最上級だ
仲間もいるんだ、本当に危険かどうかハッキリしない状況で出掛けるなと言うのも納得できないだろう
クリスティの家から豪華な家具が運び込まれる
一緒に住むことになったからな
さすがは貴族、高級品ばかりだ
なんだその金ぴかのベット
かっこいいじゃないか
「ムスタング、お前も大きくなって来たんだから皆を守ってくれよ」
「クー」
ムスタングも140cmくらいになった
あと1か月くらいで人1人乗せて飛べるようになるという話だっけ
待ち遠しいな
鞍も作らないと
「シオン、買い物に行くのか?ついて行こうか?」
「う、嬉しいですが心配しすぎですわ」
うーん、そうかもな
ちょっと心配しすぎか
昨日魔法水晶作っていきなり危険な状況にはならないか
確かに神経質すぎるかもしれない
でも一応ムスタングを付いて行かせた
「エリーゼ、なんとかって国が軍事開発してるって話だったけど」
「ソビキトとニルギスなの、あくまで噂なの」
「実現可能だと思うか?」
「魔法水晶には魔力がたくさん蓄積されているの、それを一気に爆発させることが出来たらすごいエネルギーだと思うの」
「からっぽから満タンまでは上級魔法使いが3人で出来るって話だったけど」
「それはあくまで生活エネルギーに変換できる容積なの、実際には水晶を魔法水晶に保って置く魔力も蓄積されているの」
「?」
「タカネ様が注入した魔力がそれなの」
・・・・・
俺はメテオ30発撃てる
その魔力を12日間注入した
単純計算でメテオ360発分のエネルギーが蓄積されているって事?
実際は朝夜に分けて注入したからもっとだろう
もしそのエネルギーを一気に放出することが出来たなら
それはものすごい爆発を起こすだろう
「忘れてるかも知れないけど魔力は水晶の中で増幅されるの」
・・・やっぱ核レベルだな
「エリーゼ、危機感のあるお前は俺に仕える事をやめても良いぞ、王宮に戻る事を取り成すし退職金も出そう」
「それは気にしなくていいの、タカネ様について行くの」
「しかし、もし他国が俺を狙うなら周りも狙われると言ったのはお前じゃないか」
「エリーゼはそんなに薄情じゃないの、お金よりも大事な事があるの」
まだ俺に仕えて1か月ちょっとなのに
そこまでする義理も無いと思うが
「12日で魔法水晶を作るようなすごい人は他に居ないの、エリーゼはすごい人に仕えたいの」
「それが危険でもか?」
「いざとなったら守ってくれると信じているの」
・・・わかった、守ろう
お前の忠義に答えるのが主人の役目だろう
バルディさんが来た
「魔法水晶を開発したと発表した途端、近隣国から制作依頼が来た」
「昨日も言いましたが、もう二度と作る気はありません」
「ふむ解った、我々の国では制作に時間がかかり過ぎるので無理だと断っておこう」
聞き訳が良くて良かった
国益にもなる事なんだろうが、俺がそこまで協力する事も無いだろう
もう橋を作って雪崩避けの壁も作ったんだしな
「取りあえず魔法水晶の稼働場所を作って街燈を立てようと思う」
「そうですか、生活に根づいた物に使われるなら安心です」
「・・・女王は軍事研究に使えと言うので困ってしまったが」
「ああ、そうなんですか」
「手に入れてしまうと欲が出るのが人間の悪い癖だな」
皆の説得により女王は諦めてくれたらしい
今回は、と付け加えられたが
また作れって言われそうだな
はあ、まだ安心できないか
「なあ、それより魔力を魔法石に込める仕事をしないか?」
「水晶じゃ無くて宝石に?」
「ああ、かなり良い金額で売れるぞ」
ダンジョンで手に入れたサークレットに魔法石が付いている
力と魔力と素早さが2倍になる優れもの
売ると6400万になるって話だっけ
「タカネ殿ほどの魔力があればもっとすごい効果を産めるかもしれん」
「うーん、でもあれも兵士が付けるとドーピングになってしまうしなあ」
「さすがに兵士に装備させるには高価過ぎるよ、敵に奪われれば脅威がそのまま返ってくるしな」
そうか、確かにそうだな
じゃあどんな人が買うんだろう
「まあ国家の要人や貴族が多いかな」
「装備すると体力の消耗が激しいですが」
「それでもいざという時身を守れるのは大きい」
そうだな、作ってみるか
いや待て、水晶で失敗したばかりだ、ここは慎重になるか
「ちなみにどんな宝石に魔力を注入するんですか?」
「ダイヤだ、他の宝石には魔力は入って行かない」
「やっぱり透明な宝石なんですね」
水晶も色付きは駄目だった
「大きい物ほどたくさん魔力を注入できて効果も大きくなるが、当然値段も高くなる」
「・・・考えておきますよ」
バルディさんは帰って行った
うーむ、どうしようかな
作ってみたい気持ちもあるけど
・・・取りあえず宝石店に行ってみようかな
この街の宝石店ってどこだろ
ホメロスでは一度売りにいった事あるけど
シオンに場所を聞いて向かってみる
宝石店
「おや!これはお美しいお嬢様、よくぞいらっしゃいました」
「ダイヤを見せて欲しいんですけど」
「指輪がよろしいですか?ネックレス、小物、いろいろ揃えておりますが」
・・・どうしよう
戦闘に使う物だ、しっかりとした壊れにくい物が良いと思うが
「カットしただけの物ってありますか」
「ございますよ、大きさはどれくらいの物を?」
・・・解らん
あ、サークレットに付いているのと同じくらいので良いや
でもあれってカラットにするとどれくらいなんだろう
いや、今思い出してみるとどれくらいの大きさかもうろ覚えだ
「い、1カラットで!」
「ではこちらになります」
ダイヤの粒が目の前に出された
あれ、1カラットってこんなもんなのか
随分小さいような気がするな
「これで1粒いくらなんですか?」
「透明度、気泡の有無によって様々ですが、20~30万くらいでしょうか」
うーん、ホメロスで宝石売った時は確か20個で5400万だったよな
あれは色んな宝石が20個だったけどもっと大きかったよな
サークレットの宝石はもっと小さいけどこの1カラットよりは大きい気がする
「1.5カラットを見せてください」
「こちらです」
あれ?1カラットとそんなに変わらんような
容積なのか?
それとも重さ?
「3カラットをお願いします」
「3カラットですか、あまり数はありませんが」
「この一番きれいなのでいくらなんですか?」
「410万です」
なんと、1カラットから13倍になったか
大きいほど希少価値も高くなるのかな
まあいいや、買おう
「有難うございました」
・・・あれ?
なんで買っちゃったんだろ
「それで買って来ちゃったの?タカネ大丈夫?」
家に帰ると皆が帰って来てた
カオリに額に手を当てられた
「うーん、買うつもり無かったんだけどな」
「410万も、勿体ない」
サテンも顔をしかめた
・・・うん、流されて買っちゃったよな
「解った、これに魔力を込めてカオリにプレゼントするよ」
「え?いいの?でもなんでカオリに?」
「実はサテンの腕輪は300万だからだ」
「ええ?!ズルい!」
カオリが俺の肩をポカポカと叩いて来る
あれはメオラのダンジョンに行く途中で買った
オリハルコンの腕輪だったっけ
「じゃあ魔力を注入してみるよ」
宝石を握りしめ魔力を注入
じかに触っちゃ駄目って聞いた事あるけどなぁ
でもこの場合は仕方ない
7割くらい入れてみるか
・・・・・・
どうだろうか
おや、宝石が紫っぽくなった様な
「完成が解んないな」
「魔力が入らなくなったら完成じゃない?」
「そうか、まだ入りそうだ」
・・・サークレットの宝石は橙色だったような
色によって効果が変わってくるのかな
その辺は謎だ
ハンター組合で鑑定して貰えば結果が出ると思うが
「タカネ様!今日は狼男を狩って来ました!」
「おお、クーリエやったな!」
「クリスティ様が見守ってくれていたので安心して戦えたのですが、そこまで手ごわく感じませんでした」
クーリエも成長したか
「ショートソードで戦ったんです、皆さんに訓練して貰えたおかげです」
以前は槍で戦って失敗したんだっけ
「め、メアリーは苦戦したら」
「むう、今度はメアリーが壁に突き当たったか」
「しばらくは中級で腕を磨くら、少し慢心してたら」
まだしばらくはクーリエと一緒に回るらしい
同時にメアリーは新しいパーティを探すって
クーリエは中級までって約束だったもんな
「クリスティもありがとうな、2人に付き添ってくれて」
「いえ、こうしてタカネ様と一緒に暮らせるだけで私は幸せです」
「そういやお前の家具が運び込まれたぞ、豪華な家具だな生意気だぞ」
「きゅーん、すみません」
時々罵ってあげないといけないのが面倒だ
やれやれだぜ
しかし腐っても大陸12位だ
頼れることは確か
「ああいう家具どこで買うんだ?」
「すべて特注品だったかと・・・」
オーダーメイドってヤツか
上には上がいるなあ
夕飯を食べて風呂へ
昨日からクリスティも一緒に入っている
8人になるがまだ余裕だ
「タカネ様、本当に素晴らしいお体です」
「余計なトコ触るなよクリスティ、セクハラはカオリだけで十分だ」
「なによー」
カオリがふくれている
本当の事だろうが
クリスティは胸は小さいけど引き締まったなかなか良い体だな
顔も綺麗だし性格さえ何とかなんとかすれば十分モテるだろうに
「お付き合いしたくない訳ではありませんが、やはり罵ってくれる方でないと」
「一応貴族なんだからさ、なかなか居ないと思うぞ」
クリスティとパーティ組んでたやつらは悪い奴らだったけどそれでもクリスティは幸せだったんだろうな
寄生虫行為でハンター資格を取り上げてしまったんだよな
まああいつらがS級ってのは国に取っても面汚しだとは思うが
「タカネ様と比べてしまうと全然物足りません、何故あんな者達と一緒にいたのか」
「・・・貴族を罵るような奴もそうそう居ないからじゃないか?」
「そうですね、だから妥協してしまったのだと思います」
聞けば最初は男達も戸惑ったが、クリスティの方から要求したらしい
それで調子に乗ってしまったと
それってクリスティも悪いんじゃないか?
まあいいか
寝室
さて、寝る前にもう一度宝石に魔力を注入しよう
・・・お?
手の中で宝石が光り輝く
もう出来上がったのか?
手の平を広げ宝石を見る
光が収まってゆくな
深い紫の美しい宝石が残った
どんな効果が得られるんだろうな
宝石を握っているけど良く解らない
何の効果も無いんじゃないだろうか
眠いからすぐに試す気にはならない
・・・寝よ