058 explosion
次の日
朝、水晶に魔力を注入してみる
当然だが色は変わらない
「タカネ、今日も寝てるの?」
「人聞き悪いがその通りだ、魔力を少しでも回復させたいからな」
「私が最上級になってタカネを養いますからね」
「今6億稼ぐ為に頑張ってるんだって」
どうしてもニートにしか見られていない
俺は寝てるだけで金を稼げるんだよ
バルディさんが来た
「タカネ殿、もうすぐ雪が降りそうだ、そろそろ雪崩避けの壁を作って貰いたい」
「解りました、あ、今魔法水晶を作ってるんですよ」
「魔法水晶?一人でか?」
真っ赤になった水晶を見せる
「な、なんと・・・」
「明後日くらいに出来上がる予定です、ピエトロで買ってくれます?」
「の、喉から手が出るほど欲しいものだ、設備も何も無いのだが・・・」
水晶を稼働させる施設、エネルギーを消費する対象、何も作ってないらしい
そりゃそうか
発電所も街燈も無いって事だ
「買取り価格は6億で良いか?」
「ええ、構いませんよ」
「テストして問題無ければの支払いとなるが」
「それでいいです」
売却先が決まった
壁を作って欲しいという場所に連れて行かれる
「ここから、雪崩が起きても谷に流れるようにして貰いたいんだ」
「解りました」
10mくらいの壁でいいかな
厚さは3mくらいにしておこうか
ニョキニョキの壁が生えて来る
谷まで壁を伸ばす
「うーむ、あっと言う間に・・・」
「これで大丈夫ですか?」
「ああ、だがヤーインとホソカワムラ、ミクレの為にもあと6か所頼みたい」
へいへい、お安い御用ですよ
一日かけて六ケ所回る
終わったら夕方だもんな
「これはお礼だ、300万で良いか?」
「構いませんよ」
「では3日後にまた魔法水晶を見せて欲しい」
「解りました」
家に帰る
今日は結構魔法使っちゃった
夜はあまり注入できないかもな
「タカネ、どこに行ってたの?」
「働いて来たんだぞ、ほら300万」
「壁を作ってましたね」
「見かけた?雪崩対策なんだよ」
たまには働いてるとこ見せないとな
風呂
「タカネさま、今日はお疲れ様でしたわ」
「ピエトロの為に壁を作ってくれたそうで」
「さすがなの、これで雪崩に怯えなくて済むの」
「毎年雪崩の被害ってひどいの?」
「毎年何人も亡くなりますわ」
「エリーゼのおじいちゃんは雪崩で亡くなったの」
「そ、そうだったのか、スマン」
「生まれる前の話だから気にしなくていいの」
うっかりした事聞けないな
「お仕置きとしてカオリがタカネの胸を揉んでおくよ」
「なんだよ、最近触らなくなったと思ったのに」
「もう無理、魔王にでもなんでもなっていいから触らせて」
「業を背負うんだな」
カオリが我慢の限界のようだ
禁欲から解放され昇天したような顔で俺の胸を触るカオリ
触って良いって言ってないのにな
寝室
魔力を注入してみたがいつもより入って行かなかった気がする
やっぱり疲れてたのかな
zzzzz
次の日
朝、自分の魔力を7割くらい注入
「ああ、今日はみんな休みなのか?」
「タカネ、特訓してください、私はあと2回上級をこなせば最上級なんです」
「メアリーは昨日中級になったら」
「おお、おめでとう」
「クーリエと一緒に上級目指すら」
え?クーリエも
「いえ、私は・・・狼男にリベンジはしたいんですがマンティコアは流石に・・・」
「そ、そうだったらか、寂しくなるら」
「メアリー、新しいパーティを見つけなさい」
「う、うーん、解ったら」
2人で回るのもそろそろ厳しくなるだろう
魔法使えるんだからパーティ選びに困る事は無いと思うが
「タカネ、風の魔法を使えるようになったんですよ」
「おお、これで全種類制覇か?」
サテンの魔法リスト
火の魔法 そこそこ大きな火の玉を飛ばせる
水の魔法 そこそこの威力の放水を出せる
風の魔法 そよ風
土の魔法 4m四方の壁を出せるようになった
光の魔法 そこそこの威力のイナズマを出せる
「腕輪無しでこんな感じです」
「もう上級って言っても言いんじゃないかな」
その辺の区別はどうやって決めるんだろう
今度魔法研究所で聞いてみるかな
「カオリも特訓に混ぜて」
「ああ、ケチョンケチョンにしてやるよ」
「なんでよ!カオリもゆとり世代なんだよ!」
クリスティも来たので6人で稽古する事になった
クーリエは盾役か?
取りあえず吹っ飛ばす
おお、左右からカオリとクリスティが同時に突っ込んで来た
クリスティを蹴っ飛ばし、カオリの剣を受ける
ぐっ、木のエストックじゃキツイなこれ
む、サテンの矢が2本飛んでくる
今はカオリとつばぜり合い中
うおお、右からはメアリーが飛び込んで来る
仕方ないのでメアリーの腹に俺の長い脚をめり込ませる
サテンの矢は左手でキャッチした
カオリは取りあえず吹っ飛ばす
「いたあい!」
「ぐおお、みぞおちら・・・」
「て、手で矢を2本同時にキャッチだなんて」
「盾なのにエストックで吹っ飛ばされました」
「タカネ様!もう一度!もう一度蹴ってください!」
「待て、なんかズルくないか?なんで俺5人も相手してんの?」
「問答無用ら、覚悟するら」
「2本同時、連射で行きますね」
「槍は捨て盾を両手で持って支えてみます」
「いたた、タカネめ、よくも!」
「蹴って!早く!」
しっちゃかめっちゃかになった
「メアリー!心臓突いたんだから死んでよ!」
「まだら!メアリーの闘志は衰えてないら!」
「サテン!壁出すなよ!魔法はズルいぞ!」
「チョコマカと動きすぎです」
「しかたねーだろ!」
こいつら本気だ
こっちは怪我しないよう手加減してんのに
「タカネ、窓の前に行かないでください、矢がガラスに当たりそうで狙えません」
「そりゃそっちの都合だろうが!」
「タカネ様、両手に盾を持ってみました」
「それ実戦で使えるのか?」
「タカネエエエ、しねええええ!」
「カオリの野郎!それが本性か!」
クリスティの攻撃がきわどい
さすがは大陸12位か
だが当たってたまるか
回し蹴りでクリスティの尻を蹴る
「ふぁぁん!」
「し、しぶとい」
「どっちがだよ、カオリももう5回殺してるんだが」
「はあはあ、何度だって蘇ってやるら」
「メアリーは蘇り過ぎだ、20回死んでるぞ」
サテンの矢が切れた
「タカネ、矢を返してください」
「嫌だよ、もう終わりたい」
「私はまだ死んでません」
「じゃあほれ」
「いたた!矢を手で飛ばしてくるなんて」
サテンの胸でポヨンポヨン矢が跳ね返る
サテンは30回死んだ
「ふう、もう昼だぞ?諦めてよ」
「はあっ、はあっ、い、一撃も、当たらないなんて」
「鬼ら、化け物がいるら」
「もうタカネは、胸ばかり狙って・・・」
「クーリエは腱鞘炎になりました、手首が痛いです」
「ああタカネ様!クリスティはもう・・・」
股間を押さえて悶えるクリスティ
やめろよ、セーフなのかアウトなのか解らん
皆にヒーリングをかける
腱鞘炎はどうなんだ?治るのか?
無理みたい、腰痛も無理だったもんな
今日はもう休みなさい
昼食を食べてゆっくりする
「あータカネのせいで疲れたー」
「ふざけろ、寄ってたかって俺を狙いやがって」
「でも自分の弱点が分かったら、タカネは容赦なく狙って来るら」
「中級相手に容赦ないとかタカネはひどいね」
「無理矢理悪者にするなよ」
「そろそろ矢を3本飛ばしてみようかしら」
「2本は正確に俺の頭と胸を狙って来てたぞ」
午後はクリスティがカオリとサテンとメアリーの相手をする事になった
カオリの攻撃が2発、サテンの攻撃が1発だけ当たった
その間カオリは5回以上死んだけどね
「さすが大陸12位・・・」
「俺の事をたまには褒めろ」
「うーん、ピエトロ10傑の人と戦ってみたいな」
「サテンのパーティメンバーが5位だっけ」
「カオリ様はもう十傑に入る力があると思います」
クリスティいわく、そうらしい
俺達がピエトロに来る前はクリスティだけが飛びぬけて強く、他は似たり寄ったりだったとか
十傑もしょっちゅう変動するらしい
「クリスティが地方大会で優勝してピエトロ1位になったのか、それで大陸12位に入って・・・」
「2位のグスタフさんがピエトロ1位になりました」
「繰り上げか」
大陸20傑はトーナメントですべて決まるが地区の10傑は依頼の達成ポイントも考慮される
11位だった人が10位に繰り上げ当選か
夕方だ、クリスティが帰って行った
夜、魔力を注入
期待したが変わらなかったな
明日は12日目だ、変わると良いけど
次の日
朝、魔力を注入
ビカビカビカビカッ
おお!青くなった!
すんごい光り輝いて眩しい!
「出来上がったぞ6億!」
「ええ?頂戴!」
「駄目だ!」
「ケチー」
「すごく輝いてますね」
「タカネ様、盗まないから触らせてほしいの」
「いいぞ、ほら」
「重く感じるの、これが魔法水晶・・・」
「始めて見ましたわ」
「すごいですね」
これだけで明かりになるな
もっと小っちゃい水晶集めて明かりとして使うかな
寝るときはは布被せておけばいいし
「き、危険ですわ、魔法水晶があると知れたら」
「他の国から泥棒が来ると思うの」
「そっか、どの国も欲しいエネルギーなんだっけ」
仕方ない、明日まで布に入れて俺が肌身離さず持ち歩こう
・・・よく考えたらひょっとして危険な事してるのかな
俺が作った事が知れるとこの家に魔の手が忍び寄るのでは・・・
「ううむ、1個目はピエトロに売るけど口外しないようにしてもらわんとな」
「あと2個作るんでしょ?」
「うん、どうやって捌こう」
「タカネ様が作った事を口外しなければ魔法研究所だと思われるの、魔法研究所に迷惑がかかるかもしれないの」
「む、むむむ、それは困るな」
あそこは小っちゃい子もいるし心配になって来たな
考えなしで作っちゃったけどそんな弊害があるとは
ちょっと浅はかだったかも知れない
「・・・タカネ、それって軍事利用も出来るのかな?」
「え?!何を言いだすんだよカオリ」
「魔力を増幅させてエネルギーに変えるんでしょ?それって・・・」
「・・・・・・」
最初に思ったんだよな
原子炉みたいだって
「カオリ様の言う通りなの、ソビキトとニルギスは軍事に使おうと研究してるらしいの」
「ま、マジかよ!」
「タカネ様が一人で作った事は公表しない方が良いの、タカネ様自体が狙われると思うの」
「お、俺だけなら自分で守れるけど」
「周りの人間も狙われるの、人質を取ってタカネ様に言う事を聞かせようとするの」
・・・なんてこった
そんなヤバイものを作っていただなんて
「すぐに研究所と王宮とクリスティに口止めしてくれ」
メイド達は王宮に
カオリとサテンはハンター組合へ行って今日は休むと言ってから研究所に
俺とメアリーはクリスティの家に
「タカネ様が会いに来てくれるなんて、きゅーん」
「ちょっと真剣な話だ」
「なるほど確かに危険ですね、そんな物を作れと言ってしまった私はどう責任を取れば良いのか」
「仕方ないよ、俺もまったく気が付かなかった」
クリスティは家族に話してしまったそうだ
だが、全然信用して貰えなかった
一人で作るとかあり得ない事なんだろう
「クリスティ、俺は魔法水晶作りを諦めた事にしてくれ」
「解りました、すぐに話して来ます」
「頼んだぞ」
研究所に行ってみるか
サテン達がハンター組合の後に向かってるが俺達の方が早いかも知れない
研究所
「2人共、来てたか」
「今話してたんだよ、でも研究職員が全員知っててその家族にも・・・」
「ああ、そうか・・・一度見せに来ちゃったからなあ」
「タカネは大陸20傑だから有名みたいで、結構広まっちゃってるかも」
魔法水晶は皆が待ち望んでるエネルギー
出来上がるかもしれないとなると素晴らしいニュース
皆期待を込めて噂をする
それを作ってるのが大陸20傑ともなるとビックリニュースとして話したくてたまらない訳か
「・・・手遅れだったか」
「仕方ありませんタカネ、貴方が悪い訳ではありませんよ、それを悪用しようとする者達が悪いのです」
「しかし、サテンにも魔の手が忍び寄るかも知れんのだぞ?」
カオリやサテンやメアリー、メイドちゃんにも
「いまいちピンと来ないのですが、そんなに恐ろしいものなんですか?」
「ああ、たぶんだが・・・」
俺やカオリだってどれくらい恐ろしい物なのかはっきり解って居る訳では無い
核
日本では2発で20万人以上亡くなった
被爆を入れるともっとだ
今持ってる魔法水晶はどれほどの威力があるものなのか
内政官バルディさんが来た
「ここに居たか!出来上がったらしいな!」
「・・・はい、ですが」
事情を話す
「ふーむ、ソビキトとニルギスが軍事利用しようと言う噂は聞いているが絵空事としか・・・だがもし研究が成功したとしたら水晶を簡単に魔法水晶に変えられるタカネ殿の身が危ないのは確かかもな」
「私はともかく回りのみんなが、ピエトロにだって迷惑をかけてしまうかもしれません」
「ふーむ・・・」
「バルディさんは誰かに話しましたか?」
「ああ、女王様にも言った・・・まてよ、わが国でも軍事研究が始まるかも知れんな」
「え?」
「女王様は嫌いな国が多いからな、主に私怨で」
「・・・・・・」
はあ、参ったな
まさかこんな事になるとは
「軍事利用に協力する気はありません」
「ううむ、私も穏健派だからそんな研究はさせたくないのだが、どうしたもんかな」
答えが出ない問題のような気がした
「取りあえず一人で作ったのでは無く魔法研究所で共同で作った事にしよう、それも12日で作ったのではなく随分前から研究していたことにしよう」
「もう私が一人で作っていると言ってしまったのでは」
「言った、だがそんなもの信じるやつの方が少ない、すぐに噂は書き換えられるだろう、タカネ殿はピエトロに来てから少しだけ協力したという事にしておけばいい」
クリスティの家族は信じてなかった
それで大丈夫だろうか?
不安が消えない
だが今はそれしかない気がする
「魔法研究所に迷惑をかけるのは・・・」
「本日から魔法研究所には厳重な警備を付ける、タカネ殿は気に病むことは無い」
「余計な負担をかけてしまいますね」
「いや、魔法水晶とはそういうものなのだ、稼働場所や研究機関には厳重な警備が施される、どの国も喉から手が出るほど欲しい物なのだからな」
そうか、改めてとんでもない物を作ってしまったんだな
「そろそろ魔法水晶を見せてくれないか?ここならすぐにテスト出来る」
「あ、はい」
「おお、これが・・・」
魔法水晶を渡す
光り輝く青色の水晶
出来上がった時は大喜びだったが今はその光が憎たらしい
魔法研究所所長がおかしな装置に水晶をセットした
あれで検査するのか?
どういう仕組みかはよく解らんが装置の上に別の水晶がついている
「ああ、すごい・・・こんなに爆発的に魔力が増幅する物なのか・・・」
爆発と言う言葉が心にひっかかる
装置に最初からついていた水晶が輝きだした
うお、とても眩しい
「テストは成功です、これは間違いなく魔法水晶です」
「おお!ついに我が国も魔法水晶を手に入れる事が出来たのか!」
「・・・・・・6億は結構です、水晶は寄付します」
『え?!』
「な、なんと・・・それでいいのか?」
一歩間違えば破滅をもたらすシステムだ
俺がそんなものを作り出してしまう事になるとは
とてもじゃないがお金を受け取る気にはなれない
「今後一切魔法水晶作りからは手を引きます、軍事研究などには絶対に手を貸しません」
「ううむ、そこまで気に病むとは」
「先程の提案は女王にもしっかり言っておいてください、私が一人で作った物では無く、長年の研究に少し手を貸しただけだと」
「解った、それは私が責任を持って訂正しておく」
バルディさんから我が家の警備も提案されたがそれはお断りした
一般人の家を王宮の騎士が警備してたら逆に怪しい
噂が書き換えられる障害になるだろう
ああなんだか精神的に疲れた
重い足取りで家に帰る
家の前にクリスティが居た
「タカネ様!私のせいでこんな事になってしまって」
「・・・いや、俺もよく考えずに作っちゃったから」
「この責任は私が一緒に住んで皆さんをお守りする事で果たさせてください!!」
「・・・え?」
一瞬頭が回らない
一緒に住む?
クリスティが?
「だ、駄目でしょうか?」
「・・・他意は無いんだよな?」
「ありません!」
・・・まあいいか
メイドちゃん達も心配だし、外出する時はクリスティに付いて行って貰えば
しかし毎日顔を合わせる事になるのが嫌だ
「タカネ良いじゃない、稽古相手が増えるし」
「大陸12位がいてくれれば心強いじゃないですか」
「解った解った、じゃあクリスティお願いするよ」
「・・・言い方が違います」
「馬車馬のように働けこのメスブタがッ!」
「はいいい!」
心配事がすごく増えた
俺は何やってんだろ
また一つため息が出た