057 魔法水晶
次の日、サテン、カオリ、メアリー、クーリエはハンター組合へ
クリスティが来た
「クリスティ、俺は何か新しい事を始めたいのだが」
「ハンター以外の事ですか?」
「ああ、面白い仕事は無いだろうか?」
「・・・以前、王宮の騎士達を鍛えてやってほしいと言う依頼が私に来ましたが」
「王宮は行きたくないな」
「ですよね、ではタカネ様は魔法水晶という物をご存知ですか?」
「・・・・・・ああ、ユーメリアで聞いたかも」
ユーメリアには街燈があってそれが夜になったら明るくなる
そのエネルギーの源が魔法水晶だとかって聞いたな
魔法使いが魔力を注入する事でエネルギーになるとかなんとか
「魔法水晶の制作は高い魔力を持った者にしか出来ません、タカネ様ならあるいは・・・」
「それ作るとどうなんの?」
「国家が高く買ってくれます、現在魔法水晶があるのはユーメリア他4国程度ですので・・・」
詳しく聞いてみた
魔法水晶はどこの国も欲しいエネルギーなのだが制作が難しいし時間がかかる
基本的には明かりに利用されているが、研究ではお湯を沸かしたり暖房に利用したりといった段階まで来ているらしい
あれだな、発電所って事だ
「どうやって作るの?」
「・・・知りません、詳しい話は魔法研究所の者に聞いた方が良いかと」
どこにあるんだ魔法研究所
街の外れにあるらしい
クリスティを連れていってみよう
魔法研究所
「わわ!所長!所長!大陸20傑のお二人が来ましたぁ~」
白衣を着たちっちゃい女の子があわあわしてる
可愛らしいな
「これこれケリー、騒ぐでない、お客様に失礼だろう?」
「で、ですが!ですがぁぁ!」
「やれやれいらっしゃい、私はこの研究所の所長のジェームスです」
・・・ジェームス
白髪の初老の男性が出て来た
「それでどのようなご用件で?」
「魔法水晶の作り方を知りたいんですが」
「ほっほっほ、それはそれは」
「難しいんですか?」
「はい、時間とたくさんの魔力が必要となるとても難しい作業です」
まず魔法石と魔法水晶というものがあるらしい
魔法石は宝石に魔法を閉じ込めたもので、破損しない限り半永久的に効果が続く
ダンジョンで見つけたサークレットに付いてたよな
身につけたもののみに効果を発揮する
魔法水晶は魔力を取り出し可能にした物
水晶の中で魔法は増幅してエネルギーとして送り出されるようになるらしい
充電池みたいなもんかな?
「爆発したりしませんよね?」
「?・・・聞いたことないが」
「いえ、なんでもないですすみません」
「ほっほっほ」
ただ、その充電池の状態にするまでが大変らしい
水晶にとにかく魔法の上級者が大勢でよってたかってに魔力を注ぎ込む
弱い魔力は水晶にはじかれるだけで入っていかないそうだ
魔力を注ぎ続けると無色透明な水晶は徐々に赤くなって行く
最終的に深い赤から青に変色すると完成
青い水晶体になってしまえば弱い魔法でも蓄積されるようになり、魔力の出し入れが簡単に出来るようになるとか
「一応この研究所でも挑戦してみた事がありますが、10ヶ月でほんのりピンク色になっただけでした」
変色は12段階あって10ヶ月で3段階までは行くことが出来たそうだ
しかし後半になるにつれたくさんの魔力が必要らしく、ムリと判断し諦めたそうだ
「勿体無いなぁヒマな時にでも続けてみれば・・・」
「身体の消耗がすごいので、他に何も出来なくなってしまいますからな」
「そうなんですか」
「高位の魔法使いが20人以上居る国でないと難しいと言われています」
「それがユーメリア他4国なのか・・・」
「ユーメリアはニルギス王国から買ったのです、実際に製造に成功したのはニルギスとソビキト共和国の2カ国しかありません」
「ふーん」
ソビキトとニルギスの2カ国には大陸中から注文が入るが、出来上がるのに1年半~2年かかるらしく順番待ちしている状態なんだとか
「出来上がったらいくらで売れるんですか?」
「ケリー、あれを持ってきてくれ」
あれとは以前挑戦して諦めたほんのりピンクの水晶だった
長さ20cm、太さは直径5cmくらいの水晶体
「出力にもよりますが、この大きさで街灯100基を50日間夜の間だけ照らすことが出来ます」
「からっぽになったらどうなるんですか?」
「青い水晶体になってしまえば上級の魔法使い3人でからっぽから満タンにまで魔力を補充することが出来ます」
「へえ、随分少なくて済むんですね」
「はい、画期的なエネルギーシステムです」
ふーん、わかったようなわからないような
水晶は原子炉みたいなもんなのかな?
魔力を増幅させて排出するらしい
3人で50日ならすごい効率だ
1人が3日間かけて注入でも良いだろうし
「おっと、値段の話でしたな、この大きさで約6億」
「おお、すごいですね」
「出来上がれば大儲けできますな」
「とにかく水晶の中に魔力を注ぎ込んでみればいいんですね」
「水晶は透明なものに限ります、不純物が混ざっていたりすると魔力は入っていきません」
「なるほど」
「・・・作るつもりですか?」
「はい、ヒマなので」
「そんな簡単に出来上がるものでは・・・」
ふーむ、上級の魔法使いが20人で1年半、530日くらいか
一人でやると10600日かかる計算か
29年?!そりゃ諦めるわな
「ありがとうございました」
「・・・またなにかあったらお越しください、お役に立てるかもしれません」
「ええ、その時は伺います」
魔法研究所を出る
「クリスティ、水晶ってどこに売ってるの?」
「珍しい物ではありません、土産物屋や雑貨屋で見かける事もありますが・・・先日メアリーさんが水晶から出てきたような」
「ああ、そうだったな!あれって使えるのかな?」
「透明だったんでしょうか?暗かったので良く解りませんでしたが」
「行ってみるか」
ダンジョン地下6階
メアリーを救い出した時の水晶が散乱していた
丁度良さそうな大きさの物もあるけどな
お、奥に土龍が居た
『それはボクが作った水晶だから天然ものでは無いんだ』
「じゃあ魔力流し込むのは無理ですかね?」
『透明なのが欲しいの?待ってて』
ペイルが潜って行った
この辺にあるのか?
音が戻って来た
『プハァ、エレエレエレ』
「わ、わあ」
ペイルが口から水晶を山ほど吐き出した
・・・ベタベタだ
言っちゃ悪いが汚い
『この中に丁度いいの無い?ボクは眼がそんなに良くないんだよね』
「うーん、暗くてよく解んないな、あきらかに色ついてるのもあるけど」
『全部持って行ってよ、戻すのもめんどくさいし』
ペイルが言うにはこの下に大きな水晶の洞窟があるらしい
今持ってきた物より全然大きいのもあるんだって
『結構重いからね、手頃なのを持って来たんだ』
「ありがとうございます、何かお礼したいんですが」
『いいよ、また生贄出されても困っちゃう』
「そ、そうですか」
なんならクリスティを生贄に出してもいい
割と本気で
クリスティが革袋を持っていた
ハンターの必需品らしい
モンスターの素材を入れるのか
丸ごと引きずってくる俺には関係ない
「全部入る?」
「入りましたが結構重いですね、革袋が持つかな・・・」
「明らかに違うのは置いてったら怒るかな」
『怒らないけど悲しいよ』
「す、すみません」
クリスティに無理矢理持たせる
底を持って抱えれば大丈夫だろ
ぶつかり合ってキズつかないよう注意しろよ
家まで運ぶご褒美にクリスティのケツを一発蹴る事になった
変態め
「それじゃあ失礼しますね」
『うん、バイバイ』
「キリキリ歩け!」バシィン
「ひぃぃん」
『人間て変だね』
ああ、オカマとマゾヒストの組み合わせだ
そう言われても仕方ないと思う
全然モンスターに合わないな
もうこのダンジョンは狩りつくしちゃったのかな
家に戻る
家に戻ると芝生の上に水晶を並べる
悪気はないが水の魔法で水晶をすべて洗った
「クリスティ、ありがとな!」バシィィン
「あふぅぅん!!」
恩を仇で返す行為に心が痛い
本人喜んでるから仕方ないんだけどさ
革袋も洗ってあげたいけどこれって洗っても大丈夫なの?
縮んだりするのと嫌なのでそのままにしておくか
どうせクリスティの家にはメイドがたくさん居るんだ
洗い方も心得ているだろう
さて、水晶を選ぶか
50本くらいあるな
まず色がついているのは除外
透明なのは14本
亀裂なのかな?ヒビみたいなのが入ってるのが多い
それも除外
無色透明な水晶が3本残った
「大きさも研究所で見せて貰ったのとそんなに変わらないかな」
「はい、曇り一つないとても良い水晶だと思います」
「これに魔力を・・・やってみるか」
水晶を手に握り魔力を流し込もうとする
こうかな?むむ?
おお?何かが俺の右手から出ていく感覚
「あ、変色しましたね」
「・・・あ、ヤバイ、スッカラカンになった」
立ってられない
膝をついてしまう
一瞬で魔力が尽きてしまった
「だ、大丈夫ですか?」
「す、水晶は?」
ほんのりピンク色
研究所で見たのと遜色ないな
「すごいです、もう研究所の10か月と並びましたよ!」
「け、研究所は何人でやってたんだろうな?」
10カ月って事は300日だ
1人でやってたら300倍の効率、2人でやってたなら600倍の効率って事になるが
さすがに単純計算すぎるか
「き、聞いて来ます!」
クリスティが走って行った
俺はぶっ倒れる
「タカネ様、大丈夫ですかなの?」
「ああ、大丈夫だエリーゼ」
「・・・これは魔法水晶なの?」
「おう、まだ途中だがな」
クリスティが戻って来る
はやいな
「研究所では3人でやっていたそうです」
「3人か、10年でなんとか出来上がるペースか」
「他に何も出来なくなってしまうのでは10年はかけられないでしょう」
「そっか」
6億とは言え買った方が早いかもな
どうせ国が買うんだろうし、払えない額じゃない
取りあえず単純計算だが900倍くらいかな
俺の体には上級の魔法使いの900倍の容量の魔力が眠っているというザックリ計算
10600日かかる計算だと12日で行けるか?
すごい楽観視した計算だな
「メテオ30発しか撃てなかったけどなー」
「・・・メテオ使えるんですか?そんな人が居るなんて」
「珍しいの?」
「初めて聞きましたよ、伝説の魔法だと思ってました」
ふーん、疲れてるからどうでも良い
「魔王イスタークがメテオを使って国を攻めたそうです」
「ああ、この前図書館で調べた・・・」
「あくまで伝承ですよ、本当かどうか」
メオラのダンジョンの入口が一撃で粉々になったっけ
それくらい出来ても不思議じゃないかも
だがミスリルゴーレムには苦労したぜ?
どっかの国よりもミスリルゴーレム1匹の方が手ごわいってなるな
実際そうか
「疲れたわ、クリスティ、水晶いるか?」
「いえ、必要ありません」
「エリーゼ、その透明なの以外は必要ないから皆で分けていいぞ」
「いいんですかなの?綺麗なの」
「そんなに価値は無いらしいけどな」
必要なのは3本だけ
残りの47本は皆で分けなさい
夕方
クリスティが帰り、皆が戻って来る
「へえ、これ貰って良いの?」
「綺麗ですね、タカネには腕輪も貰ったのに何も返せていません」
「い、いらないら、長年閉じ込められていたトラウマら」
「これはアメジストですわ」
「売っていいなの?どれが価値高いなの?」
「こ、こらエリーゼ」
「別に売っても良いぞ、そんな価値の高いもんでもないんだろ?」
それぞれ気にいったのを1、2個ずつ
残りは40個くらいエリーゼが持って行った
80kgくらいだぞそれ
台車に乗せすぐに売りに行くエリーゼ
お金が大好きエリーゼ
1時間ほどで帰って来る
「ひどいの、10万くらいで売ってるのに買取り価格は5000なの」
「すんごいぼったくりだな」
「でも全部で20万になったの」
「結局売ったのかよ」
「重いし持って帰りたくなかったの」
ブック○フみたいだな
あれは持って帰るのがめんどくさいと言う心理を突いて買い取り価格を出していると思う
今は本が売れない時代になって大変みたいだけどね
夕食
「タカネ様にはすでに給料以外で43万も儲けさせてもらったの」
「ああ、闘技大会でも俺にかけてたもんな」
「その薄ピンクの水晶も青くなったら欲しいの」
「駄目に決まってるだろw」
エリーゼが笑う
冗談だったようだ
良かった、マジかと思った
寝室
どうせ寝る前だし魔力注入してみるか
あとは寝るだけだしな
少しは回復した気がするし
ベットに横たわり魔力注入
ああ、疲労感が来る
色は変わんないな
後半につれたくさん魔力がいるって話だった
どんどん色は変わりにくくなるのだろう
次の日、朝
動けなくなると困るし少しだけ注入してみよう
お、すぐに色が変わった
・・・あ、やばいやばい、注入しすぎたかな
7割くらい持ってかれた気がする
まあ3割くらい残ってれば平気か
徐々に回復していくしな
夜、また全部注入しちゃおう
昼寝もしたし結構回復してると思うんだけどな
ベットに寝て魔法を注入
あ、また色変わったな
これで5段階目まで来たか
うう、疲れた
zzzzz
次の日
朝は色は変わらなかった
メアリーが下級になった
明日はみんな休みらしい
俺はずっと休みみたいなもんだ
一応金を儲ける為に魔法水晶作ってるのに働いてる気がしない
注入して昼寝して注入して寝るだけ
一体何やってんだろうって気分になる
明日は注入休みにして皆と行動しようかな
夜の注入で1段階色が変わった
これで6段階目か
zzzzzz
次の日
やっぱり気になっちゃって朝注入しちゃった
色は変わらず
休みなのに皆稽古したいと言う
仕方ないから相手になる
午前も午後もみっちりやるんだな
これじゃあ休みの意味ないような
カオリ、強くなってたな
盾の使い方がうまくなってた
クーリエも稽古してほしいと言って来た
狼男にリベンジしたいんだって
足腰が立たなくなるまで頑張ってた
夜の注入で1段階色が変わる
3日後
朝の時点で9段階まで来た
サテンがトロール倒したらしい
あと4回上級やれば最上級になるんだって
あのサテンが最上級・・・
ちょっと涙が出た
夜の注入では色変わらず
2日後
昨日の夜の時点で10段階目
もう真っ赤に見えるがあと2段階あるのか
いったん研究所に見せてみる
研究所所長ジェームスとその助手ケリーはビックリしていた
ジェームスがこっそりスイッチか?と聞いて来る
ジェームスもスイッチらしい、ピエトロに来て初めてスイッチに会ったな
アメリカ生まれのエメラルド魔法特化らしい
俺はスイッチだとは打ち明けたがその辺は濁しておいた
でもルビー以上だとはバレたと思う
こんなに早く水晶の色変えてるんだもの
エメラルドな訳無いよな
しかも大陸20傑の万能型だ
ダイヤだと思われているかもしれない
まあいろいろ事情があって話したくないんだ
ジェームスは初老の男性、ガツガツ聞いては来なかった
空気読んで貰えて助かります
次の日の夜
「うおお、燃えるような赤になったな」
残り1段階
次で青になるはずだ
このペースならあと3日かな
12日ペースだ、ざっくり計算だがあってた
そう思いながら眼を瞑る
魔力が尽きてぐったりだ
今カオリが俺の胸を触りに来ても起きれないかも
察知能力も働かないかもな・・・
zzzzz