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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ピエトロ王国編
55/134

055 いざこざ

「よーし、帰るか」


ペガサスの馬車に乗り込む

また5時間の旅か

忘れ物はないな?


「来年はカオリも・・・」

「そうだな、ピエトロ10傑ならもう余裕なんじゃないか?」

「余裕って事は無いよ、カオリにとっては皆強敵だよ」

「わたしも最上級に上がって地方大会くらいは経験してみたくなりました」

「そっか、弓も上達してるもんな」

「来年は10万持って来るの」

「エリーゼ、来年ついて来れるかはシオンかクリーエにも聞いてみないと」

「そ、そうだったの」


エリーゼはユーメリアを堪能しただろう

来年は他の子を連れてきてあげたい

それに俺に10万賭けても優勝出来るとは限らないぞ?

今回それを実感した

俺はダイヤだが魔法も使える万能型

相手がルビーでも剣術特化型には苦戦する事もあるんだろう

能力の相性もあるんだろうな

いままで頼りにしてた察知能力を弱められたのには参った

あんなの察知能力が無い人はどうやって避けるんだ?

スローモーションを封じたれたらどうなるんだろう

俺に成す術があるのかな


「どうしたのタカネ?真剣な顔して」

「ん?ああ、ミヤビさんは強敵だったよ」

「タカネキョロキョロしてたもんね、見えてないみたいだった」

「客席からは見えてたの?」

「残像みたいだったよ、兎に角タカネの視界に入らないよう移動してた、クナイを投げる時は止まってたからハッキリ見えたけど」

「そうか、決勝までにミヤビさんの試合を1試合でも見ておくんだったなー」

「カオリは見てたけど決勝は別人だったよ、手の内隠してたんだと思う」


さすが忍者

シビれる戦いだった

次に会った時は尊敬の念を持って接しよう

風呂場で見た時は変態としか思えなかったもんな


------------------------------------


5時間後


「ペガサスの馬車ら!帰って来たら!」

「結果はどうだったのでしょう?」

「お迎えしますわ」


ゆっくりペガサスが我が家に降り立つ

馬車のドアを開け、俺が地面を踏む


「勝ったよ、優勝して来た、俺が大陸20位だ!」

「まあ・・・」

「す、すごいですわ」

「すごいら?すごいら?」


暖かい歓迎を受け、1週間ぶりの我が家に戻った

ムスタングも久しぶり、ペガサスが来るから家の中に入れられてたらしい


「ああ、やっぱりウチが一番だなー」

「随分長い間留守にした気分です」

「落ち着けるよねー」


団欒室のソファに寝っ転がる3人

シオンが紅茶を持って来てくれる


「長旅お疲れでしょう?今日はゆっくり休んでください」

「ああ、そーするよ」

「シオンちゃん会いたかったよーん」

「か、カオリ様、抱きついては危ないですわ!」


ああ、賑やかだな

大会中はどこか張り詰めていたのかな

日常が戻って来た気がする


クーリエが来た


「タカネ様、そろそろメアリーさんもハンターの仕事を始めて良いと思います」

「そう?体力ついた?」

「はい、魔法の飛距離も15m、30発以上打てるようになりました」

「十分かな」

「ナイフも随分上達したのでホブゴブリンくらいには遅れをとる事はないかと」


明日からメアリーはクーリエと一緒にハンター業に出る事になった

依頼報酬は二人で折半

メイドの仕事は他の2人に負担がかかるが余裕があるので問題ないとシオンが言った

クーリエも朝と夜にメイドの仕事を頑張るらしい

メアリーについて貰う期間も当然メイドの賃金は払う


「しかし、クーリエも気を付けてよ、朝から晩まで働いて休む暇がないじゃないか」

「はい、依頼は一日1つか2つまでとします、あまり遠くには行きません、それにユーメリアに連れて行って貰った分エリーゼが頑張ってくれるそうです」

「ナンパにも気を付けてよ、二人とも可愛いんだから」

「あしらい方も解ってます、これでも中級ハンターなので」


そうだったか

クーリエは以前中級ハンターまで行ったんだっけ

カッコいい装備も持っていた


「心配なら私がついて行きます、危なくなったら手助けすると言う形で」

「サテン、前のパーティは?」

「抜けました、もっと良いパーティを探します」


・・・・・・

前のパーティは俺のせいでおかしくなっちゃったんだよな

強さに対する畏怖、嫉妬、僻み

誰もが心の奥底に持っているものだとは思うが

俺もついて行こうかと思ったがハンター組合に顔を出さない方がいいかな

しかしいつまでもそんな事いってられないよなあ

俺だって働かないと


「クーリエも腕が鈍っているかも知れません、稽古をつけて貰えないでしょうか?」

「カオリがやりたいー」

「最上級ハンターに稽古をつけて貰えて光栄です」


庭で稽古する二人

クーリエは槍と盾なんだよな、ロングソードのカオリの横への速い動きにはついて行けない

槍は突進した時に貫通力があるから強い武器だとは思うが・・・

マンティコアみたいな動きが早い敵に当てるのは難しそう


「クーリエ、他の武器は使えるの?」

「剣も少しなら使えますが・・・」


ショートソードを持ってきた

持ってたんだ

剣と盾でカオリと稽古を始める

あ、大振りすぎるな

それじゃあ隙が出来てしまう

カオリに隙を突かれる

すぐにカオリも指摘した


「リーチが長い相手だと防戦一方です」

「盾で弾いて隙作るとかしないとな」


まあそうは言ってもカオリは最上級

エメラルドのスイッチ持ちだ

そう簡単に勝てる相手では無い

しかしクーリエは根性があるな

何度も何度も立ち向かっていく


「・・・これなら狼男に勝てたのかも・・・」


クーリエが呟いた

何か掴んだのかな?

狼男に殺されそうになって怖くなったって言ってたっけ

狼男も素早い敵だ

槍だと相性悪いかも知れない

標的が大きかったり動きが鈍い敵なら槍も効果は高そうだが、標的が小さかったり動きが素早いと狙いが定めにくいよね

突き武器は一点集中だからな

エストックもそう


「はあ、はあ、有難うございました」

「真剣だと思い切りやれないよね?闘技大会みたいな木の武器って売ってるのかな」

「武器屋に行けばありますよ、すごく安いです」

「俺も練習したいし一通り買ってみるかな・・・」

「タカネはもう強くならなくていいよ」

「ミヤビさんみたいな相手なら盾使った方が楽だと思ったんだよな」


カオリのいう事は無視して少し揃えてみるか


そんな訳で揃えて見た

剣は5種類、ショートソード、ロングソード、エストック、サーベル、ナイフ

槍は2種類、只の木の棒、先端が細くなってて持ち手の方が太くなってて拳を守るカバーみたいになってるやつ

ハンマーや斧やモーニングスターも買ってみた

使わないと思うけどね

盾は大中小3種類

先の尖ってない矢も買った

カオリが前に持ってたけど武器屋で手に入れた物だったのか


「自由に使っていいからね」


俺も使うけど皆の練習にも使えばいい

すぐにメアリーが興味を持っていた

・・・ハンマーに

メアリーの今の体力では逆に振り回されるだけだろう

しかし体力づくりの為に振り回すのは良いかもな

家の壁とか壊すなよ?


夜、風呂


「あーーー、長旅の疲れが癒されるーーー」

「半分外なので、少し寒いですね」

「時期的に仕方ないよな、でも雪降ったらもっと寒いよ」

「メイドさんも早く洗って入っておいでよー」


換気の為に半分露天になっている

雪が降ったらどうすればいいのかな


「タカネ、温風出して」

「ほれ」

「だ、出せるんだ、あったかいー」


練習しておいたんだぜ

でも乾燥肌になりそうだからもっといい方法ないかなぁ


「少しお湯を熱めに焚けば大丈夫ですわ」

「シオン、胸触っても良い?」

「ど、どうぞ」

「カオリ、金払えよ」

「それは逆に失礼だよ?」

「娼婦ではありませんわ」

「すまなかった」

「お詫びにタカネの胸揉んでいいよ」

「では・・・す、すごい!」

「揉むんだね」


キャッキャしながら夜が更けていった



次の日


サテン、カオリ、メアリー、クーリエはハンター組合へ

俺は何しよっかな

クリスティが来た


「タカネ様、優勝おめでとうございます」

「もう聞いたの?」

「はい、ピエトロから20傑が2人も出て組合では祝杯ムードです」


一人はお前だな

12位クリスティ

俺も来年はもっと上位に行くぜ


「クリスティ、稽古しようぜ」


盾を上手に使いたい

木のショートソードと木の小さい盾を持つ

稽古を始める

なるほど、こうやって受けると流せるのか

スローモーションになるから相手の剣の流れが解りやすい


次に中くらいの盾を持つ

おお、真ん中で攻撃を受けると弾けるんだな

質量が多くなった分弾きやすくなった


最後に大きな盾を持つ

クリスティは横に回り込もうとする

そうするしか無いよな

軽々振り回しクリスティの攻撃について行く

盾のどこに当たってもクリスティの攻撃は弾かれる

サーベルだと軽すぎるのか


「はあ、はあ、そんな大きな盾を軽々と」

「ドラゴンに比べりゃ屁でも無いよ」

「揺さぶりも全然効かない・・・」


スローモーションになってるもんで


「私はもっと修業が必要です」

「山籠もりでもするの?」

「いえ、タカネ様!もっと稽古を!」


・・・解った解った、午前中一杯稽古してあげた


お昼を食べて一休みしてたら王宮から騎士が来た

ホメロスからピエトロに来た時に会った女騎士だな


「タカネ殿、女王様が20傑入選のお祝いを述べたいとおっしゃられているので王宮まで来てほしい」

「うっ、嫌な予感が・・・」

「大丈夫だ、ホメロスであったような事はここでは無いと思う」


重い足取りで王宮へ

クリスティもついて来た

ムスタングは置いていく


ピエトロ王宮


40歳くらいだろうか

綺麗な女王様だ

毅然とした態度で姿勢が良い


「この国から女性の20傑が二人も、なんと素晴らしい事か」

「お褒めに預かり光栄です」

「やはり男よりも女の方が優秀!所詮男など俗物に過ぎぬ!」


・・・・・・なんか嫌な感じだな

女尊男卑なのかな

内政官バルディさんが下を向いて居心地の悪そうな顔をしている

他の男の士官も然り


「褒美を取らせよ、そして良ければ剣の腕前を見せて欲しい」


なんか良く解らない勲章を貰った

・・・これだけ?

栄誉だけか


王宮内の兵士訓練場に連れて来られる

木のエストックを借りた

女王も上の方で見てるな

さて、腕前見せろって事だけど


男の兵士が前に出た

アンタが相手?

鎧着てるから少し強く打っても大丈夫そう

合図と共に兵士が剣を振り下ろしてくる

俺はそれをかわし、一瞬で後ろに回り込み心臓の位置を突いた


「おお・・・!なんと素晴らしい」

「ご満足いただけたでしょうか?」

「まだじゃ」

「え?」


女王が合図をし、次から次へと男が出て来る

今度は3人が相手か

別に良いけどさ

合図と同時に襲い掛かって来る男達

隙間を見つけ、そこを移動しながら2人を撃破

鎧の金属音が響く

最後に残った1人の兜を横から突く

会場に金属音がキー――ンと響く

一瞬だったけど見えてるかな?


「な、なんと!なんと!!」

「どうでしたか?」

「次で全員を倒してみせよ」

「え?」


会場に居た男全員が前に出た

12人居るな

もうめんどくさい・・・

合図、だが誰も動かない

今度は慎重だな

仕方ない、一番右の兵士に向かって歩き出す

戸惑う兵士

更に歩く

そろそろ相手の間合いに入る

来ないのか?


意を決して、剣を打って来る兵士

スローモーションになった

一瞬で後ろに回り込み、右から高速で順番に兜を打っていく

打たれたと解りやすいように、後ろから兜が前のめりになるように

眼が隠れるよにして兜をずらしてやった

あっと言う間に12人全員の兜をズラす

会場に響き渡る12回の金属音

前が見えなくなって慌てる兵士たち

これで充分でしょ?


「素晴らしい・・・素晴らしいぞ!」

「ありがとうございます」

「やはり、男など役に立たぬ!手も足も出ないではないか!」


え?そっちなの?

なんでそっちなの?


「自国の兵士を咎めるような発言は・・・」

「な、なんだ!なにか文句があるのか!」

「ありません、ですが相手が女性兵士だとしても結果は同じです」

「ぬぬぅ~~・・・!!」


やば

またやっちゃったかも


「~~~も、もおよい!下がれ!下がらせろ!」


----------------------------


「タカネ殿、あれはちょっとマズかった」

「でも、なにかやたら男を敵視してるような」

「・・・外交の場で、女だからと舐められることも多くてな」

「だからと行って自国の兵士に八つ当たりしなくても、あれじゃあ、いざと言う時守ってくれるかどうか」


たしかにホメロスみたいな事はなかったけどさ

胸糞悪いったらない

それは俺が元男だからだろうな

女だったらムカつかないのかもしれないが

国民は宝だ

大事にしなければ自分も大事にしてもらえないのではないか

無償の奉仕などあるのか


「我々も言い過ぎだとは思うのだが・・・」

「実際そうでしょ、貴方なら私に勝てますか?」

「いや、早すぎて見えなかった、手も足も出ないだろう」

「女12人ならなんとかなります?」

「・・・無理だろうな」


ああ、王宮ってのはどこもこうなのかな

我儘放題で現実を知らない子供みたいな事ばかり・・・

なんなんだよもう

女騎士に挨拶して王宮から帰る


「クリスティもあれやらされたの?」

「はい、私は5人まででしたが」

「何とも思わなかった?」

「す、すみません、特には・・・」


女ならそうか


「ただ、10人くらいに囲まれて成すすべなく攻撃を入れられたかったです・・・」

「・・・・・」


女王は5人くらいで限界と判断したんだろうな

女が負けてしまっては女王の面目も潰れるのだろう

カオリは盗賊なら20人くらいでも一人で相手出来るって以前言ってたけど、今回の相手は騎士だ

騎士だって盗賊なら5人くらい一度に相手出来るだろう

所詮烏合の衆、まともに統率も取れてない奴らだ

盗賊がゴブリンなら騎士は狼男くらい違うと思う


「お、狼男10匹に・・・ああ」

「クリスティ、話題がずれてるからさ」

「すいません」


何とも言えない不快な思いで家に帰った


「ああ、女王様はそういうとこがあるの」

「執事には強く当たってましたわ、可哀そうでしたわ」

「良いとこはあるの?」

「女性には優しかったですわ」

「偏り過ぎだよ」

「確かに・・・」


王宮に居る男はみんな我慢してるのかな

女王が嫌いでも国の為ならと思う者もいるだろうが・・・

不満が爆発しなければいいけど


皆が帰って来た


「もう、またタカネは王室とトラブル起こすー」

「いざとなったら俺だけ出てくよ」

「またそんな事言って・・・」


サテンが俺の腕を掴み、顔をしかめる


「この世界に嫌気がさして魔王にでもなろうかな」

「サテンは付いて行きますよ」

「冗談だってw」

「カオリは退治して勇者になるからわざと負けてね」

「わかったわかった」


何となく解った

異世界から来た人間で魔王になってしまう者の気持ちが

この世界にガッカリした者もいるんだろう

理解されず仕方なくそちらの道を選んだ者もいるのだろう

ヘタな力を与えられてしまうが故に異端の存在になってしまった者もいるのだろう

この世界の唯一神ユンフィス

一体何をしたいんだろうな

世界を混乱させているようにも見えてしまう


「・・・プラチナが一番当たりなのかもな」

「え?」

「いや、なんでもない」


記憶なんて無くした方が良かった

以前の記憶があればどうしたって比べてしまう

顔も体も変わってしまった

お陰で余計なトラブルが増えた

性別が変わってしまった

気持ちを切り替えて、王子の妃にでもなれって?


考えれば考える程ため息が出た

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