054 20位決定
「タカネ、起きてください、もうお昼ですよ」
「・・・ああ、サテン、おはよう」
ぐっすり寝た
今日は決勝トーナメント
昼飯食べたら闘技場か
「ふう、うーーーーーん」
「タカネ寝すぎだよ、体が硬くならない?」
「ああ、でもすぐほぐれるよ」
「今日は見届けるなの、4日間好きにさせてくれてありがとうなの」
「おお、俺の雄姿を見届けてくれ」
闘技場
すでに満員だな
俺は何試合目だ?
5試合目からか
「本日は王様が観覧されます、試合前に一礼をお願いします」
「はいはい」
「16人になったので控室を変えます、本来は20傑用の控室です」
おお、ひろいな
20畳ほどの部屋にベット、ソファ2つにテーブル
リラックス出来る空間だ
「タカネ、寝ては駄目ですよ」
「マッサージ用なのかな?このベット」
「寝るならサテンの膝の上で寝てください」
「じゃあ遠慮なく」
今日も待ち時間はサテンの膝枕
俺ほど充実した待ち時間を過ごしている者は他に居ないだろう
5試合目か、どれくらい待たされるかな
「カオリは立ち見席で見て来るね」
「混雑してるんじゃないか?」
「予選落ちの人達は今日は観客席なんだって」
「そっか」
「エリーゼも行ってきますなの、タカネ様を応援してるの」
16人とその連れだけなら大したことないよな
俺も見に行くか?
いや、それよりもサテンの膝枕の方が大事だ
微かに歓声が聞こえた
何試合目かが終わり、誰かが勝ったのだろう
「タカネ、そわそわしてますね」
「ああ、少し楽しみなのかもしれない」
手応えの無い戦いが続いてるからな
12位がアレだから期待できないかもしれないが・・・
「なでなでして落ち着こう」
「た、タカネ!いけません!あっ!」
サテンの太腿をなでなでして落ち着いた
「タカネ殿、準備をしてください」
「はいはい」
「私は決勝だけ見ます」
負けを予想していない
その気持ちが心強いな
木のエストックを取り会場へ
「来ました!彼女は先の本大会でホメロスの代表になったにもかかわらず、それを辞退し今回ピエトロの代表としてやってきました!」
お、決勝は実況があるんだな
「ホメロスの大会で彼女は『光速の瞬殺ミスリル乙女タカネ』と呼ばれていたとかッ!!」
・・・一気にやる気をなくす
「見てください!あの美貌、あのスタイル!予選では他者をまったく寄せ付けず13戦全勝です!!」
ワーワーキャー
素敵ーー
こっち向いてーー
はあ、帰りたい
早く控室に帰ってサテンの股ぐらに潜り込みたい
相手はだれだ?
ああ、パーティで1番最初にナンパしてきたヤツか
1回戦で当たるって事は2位になったのか
昨日負けたんだな
あ、王様に一礼しなきゃ
「それでは準備は良いですか?・・・始め」
一瞬で左横に回り込む
相手が左を向こうとした瞬間その後ろに回り込む
俺を見失った
後ろから相手の心臓を突く
おしまい
「す、すごい!!動きがまったく見えませんでした!気が付いたら終わってました!!」
はいはい、俺は帰ります
一層大きくなった歓声を背に会場を後にした
「すごいの!あんなに強いとは知らなかったの!」
「エリーゼは始めて見るか」
「相手は一歩も動いてなかったね」
やんややんやとカオリとエリーゼが騒ぐ
俺はサテンの膝の定位置へ
「じゃあまた他の試合見て来るよ」
「行ってくるの」
一気に静かになったなー
「メイドさん、紅茶淹れて貰える?」
「はい、かしこまりました」
俺とサテンに紅茶が注がれる
「メイドさん・・・シェリーさんだっけ?ユーメリアは発展してて良い国だね」
「ありがとうございます、この国に使える事が出来て幸せです」
「・・・ピオリム王子はどんな人?」
「と!・・・とても良いおう・・・姫様です」
あははw
「対戦する事になったら勝っちゃってもいいのかな」
「勝負は真剣勝負ですので、姫様もそれを望んでおられる筈です」
「そっか、良かった、不敬罪とかになるのかと」
「それはありません、ユーメリアからも20傑を出したいのですがなかなか・・・王子が毎年頑張ってはいらっしゃるのですが」
王子って言っちゃってるけど無視しよう
「でも大会に出てるって事はハンターをやってるんだよね?」
「はい、第一王子なのですが、弟様も優秀な方なので王宮もあまりうるさく言わなく・・・」
・・・それって
跡継ぎは弟の方にしたいんじゃないだろうか
むしろハンターとしてどこかで亡くなってくれたらって・・・
「剣と花を愛すとても優しい方です」
そうか、でも怖かったよマジで
次の出番が来た
相手は誰だ?知らない男だ
槍と盾か
小回り効かないタイプだな
「さあ今度はどんな戦いを見せてくれるのか!光速の瞬殺ミスリル乙女タカネ!」
力抜けるからやめて欲しい
王様に一礼
「良いですか?始めッ!」
後ろに回り込む
ついて来てるな
じゃあもう半周
隙が出来た
心臓に打ち込んだ
おっと、槍を振り回して来た
慌てて避ける
・・・・・・
あれ?判定が出ない
心臓に打ち込んだの見えてなかったか?
相手もドギマギしてる
言えよ、お前は負けただろ?
「さあ!これからどんな攻撃が繰り出されるのか!」
相手が構え直した
きったねえ、言わないつもりかよ
お前みたいののは20傑にふさわしくないだろう
少しお灸を据えてやろう
相手の突きをかわし、槍の上に乗る
相手は槍を離してしまう
続いて盾を蹴り飛ばす
相手の手から吹っ飛んで行った
槍も蹴っ飛ばす
相手の手が届かないところに
丸腰のハンターが完成
相手の顔の前にエストックを据える
さあどうする?
「・・・・・・ま、参りました」
「す、すごおい!一瞬!まさに一瞬!相手をあっと言う間に丸裸!光速の瞬殺ミスリル乙女タカネ!準決勝に進出です!」
わああああああああああ!!!
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「ズルいよねえ、アイツ言わなかったよ」
「カオリは見えてたのか」
ぷんすか憤慨してるカオリを尻目にサテンの太腿にダイブ
「まあ相手も必死だったから突かれたという確信が持てなかったのかもなあ」
「背中だと心臓の位置感じにくいかもだけど・・・」
「どういうことなの?」
エリーゼには見えてなかったらしい
カオリが説明してくれた
「ズルは駄目なの、許せないの、ちょっと抗議してくるの」
「え?ちょ!カオリ止めて」
「だ、駄目だよエリーゼちゃん、どんなならず者だか解らないんだから」
カオリ以上に憤慨するエリーゼ
結構正義感強いんだな
「タカネ様に賭けた1万が無駄になるとこだったの、許せないの」
え?
「賭けやってるの?この大会」
「うん、売り場があったよ、カオリもタカネに10万賭けた」
「・・・俺、何倍?」
「初日に買ったから24倍くらいだったよ、今はもっと下がってると思う」
「・・・・・・」
エリーゼはお金が好きなだけだった
俺の為に怒ってくれたのかと思ったのに
「じゃあカオリ達は他の試合見て来るね」
「いってらっしゃい」
ユーメリア逞しいな
賭けもやってんのか
ホメロスの大会でもやってたのかな
全然気づかなかった
お、呼ばれた
人数少なくなるからどんどん感覚が短くなる
係員と会場に向かう
「相手は?」
「クルセイド人イデアです」
「王子は残ってるの?」
「次の試合で忍びのミヤビ殿と対戦です」
女ばっかりじゃないか
いや待て一人はオカマか
いや待てよ、俺もオカマか
・・・何言ってんだ俺
会場に姿を出す
歓声が大きくなる
向こうからも出て来た
鋭い殺気を放ってるなあ
「さあ準決勝第一試合は光速の瞬殺ミスリル乙女タカネと大本命クルセイドの狂犬イデア!果たして勝負の軍配はどちらに上がるのか!」
やたらでっかい大剣を持っている
盾は無しだ
小回り効かなそうだがどうしよっかな
「では始めッ!」
両者動かない
出方を見ようかと思ったが向こうもそのつもりか
いや、しきりに横を気にしてるな
俺が後ろに回り込むのを知ってるんだな
見られてたか
では相手の左横へ
お、左横に大剣を振り落として来た
スローモーション発動
慌ててバックステップ
早いな、もう構え直してる
こっちの動きにカウンター合わせる気か
確かに強いんだろうな
でも・・・
「おーっとタカネが無防備で前に歩き出した!」
エストックを構えず前に進む
イデアが俺に剣を振り下ろす
スローモーション発動
俺は後ろに回り込む
イデアはまだ剣を振り下ろしている途中だ
イデアの心臓を後ろから突く
「き、決まった~~!一瞬のうちに後ろに回り込んだタカネ!イデアは顔面蒼白だ~~~!!」
一生懸命強くなったのだろう
それなのにこんなチート野郎に負けちゃって・・・
なんか申し訳ない
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「タカネ、決勝は30分後だってさ」
「相手は誰?」
「ミヤビさん!」
メイドさんが少し沈んだ
やっぱ期待してたんだろうな
でも決勝はチート同士か
少し気が楽だ
「タカネ様、腰をお揉みしますなの、ベットに寝て欲しいの」
「俺が勝つと24万かー」
「そ、そうじゃないの、本当に応援してるの」
仕方ない、揉ませてやるよ
「胸を潰しては駄目ですよ、形が悪くなります」
「え?じゃあエビぞり?」
「横に寝てください、私は脚を揉みます」
「じゃあカオリは胸・・・」
「240万欲しいなら腕にしといてくれ」
3人にマッサージされ王様気分
ふう、癒されるぜ
「でもなんで10万?もっと賭けろよ」
「一人10万までだったんだよ、大穴に大金賭けて優勝しちゃったら国が損しちゃうでしょ?」
変動制だけど賭けた時点の倍率は変わらないからか
どっかのサッカーチームが何千倍もの倍率で優勝した事あったっけ
「こんなことなら10万持って来るんだったの」
「・・・・・・」
エリーゼは俺の実力知らなかっただろ
1万賭けるときも半信半疑だったんじゃないの?
賭けなんてそんなもんだ、後になってから後悔する
「タカネ殿、決勝戦お願いします」
「はーい」
入場口に向かう
サテンとカオリとエリーゼも関係者立ち見席に向かった
会場に出る
歓声がこだまする
「さあ!決勝戦はこの2人!光速の瞬殺ミスリル乙女タカネVS元20傑の陽炎くノ一ミヤビ!!」
そっか、日本人対決でもあるのか
「両者ともここまで一太刀も浴びずに勝ち進んでいます!軍配はどちらに上がるか!!」
さあ、これで終わりか、気を抜かずに全力で行くぜ
「それでは準備は良いですか?・・・始めッ!!」
目の前からミヤビが消える
あれ?どこだ?気配が消えた!
どこ?どこ?
おかしい、50m範囲で発動する察知能力が・・・
ん?回りの風景がスローモーションになった!
攻撃されているのか!!
どこだ?
どこにいる??
いきなり後ろから何かを感じる
木のクナイが5m程まで迫っていた
慌ててそれをエストックで弾く
まだ相手の姿は見つからない
どこだ?どこなんだ?
また後ろに何か
クナイだ
それを弾いたらすぐに真横から
またクナイだ
弾いて落とす
スローモーションだから余裕で間に合うが相手の姿が見つからないのが怖い
一体どこに居るんだ?
・・・気配を消せるのか?
察知能力が50mから5mまで縮められてると言うのか?
また後ろから何かを感じた
俺の頭と喉と心臓めがけてクナイが3本同時に飛んでいる
それをエストックを上下に払い弾いた
どうする?
前からは来ない、全部後ろだ
しかし後ろにばかり集中してると裏をかかれそうで怖い
どこから来る?どこから・・・
後ろだ
小刀を逆手に持ち頭を狙ってミヤビが来ていた
しかしスローモーションになっている
小刀を振りかぶってがら空きになっている心臓を狙う
胸を突いては可愛そうだ
胸の下あたりを軽く突き、突っ込んで来るミヤビを避けた
俺の横を通り過ぎるミヤビ
動きが止まった
「ど、どうなったのでしょうか!!両者とも早すぎて見えません!!」
ミヤビが手をあげる
「心臓を突かれた!拙者の負けだ!!」
「な、なんと!!終わっていました!まったく見えませんでした!!」
わ、わあああああああああああああ!!!!!!!
大歓声に包まれる闘技場
見えなくても楽しいのかな?
取りあえず手をあげ歓声に答えた
その後すぐに表彰式が行われる
これで大陸20傑20位だ
王様から20位の証である指輪を貰う
特殊な金属で出来ていて複製不可能らしい
伸縮自在なのか中指に綺麗に収まる
これがあれば色々優遇されるという
ハンター組合の伝書隼でペガサスの馬車を呼ぶ事が出来るとか
しかも運賃はタダ
その他諸々色々特典があるそうだ
あと、賞金1000万
拍手と共に闘技大会が終わった
「いやあ、強かったでござる、完敗でござるよ」
「こっちのセリフですよ、12位のクリスティなんかより全然強いじゃないですか」
「拙者の能力、何か解ったでござるか?」
「ええ、気配を消すのと、あと素早さが尋常じゃなかった」
「あたりでござる」
「でも、最後なんで突っ込んで来たんですか?クナイを山ほど投げられたら避けきれたかどうか・・・」
「拙者、クナイは6本までと決めてるでござるよ、右足と左足に3本ずつ」
そういって脚についているクナイを刺ししまうベルトみたいなのを指さした
右と左に3本ずつしまえる様になっている
セクシーな脚だな、色っぽい
「重装備の忍びなど忍びでは無いでござる」
「・・・すごい」
ポリシーがあるんだな
クナイを山ほど持てば簡単にもっと上に行ける人だ
ちょっと尊敬した
「それに、この能力はその・・・卑怯でござろう?」
「ぐっ!」
「だから自分で制限をかけているでござる」
全力で戦っちゃった
勝ったけど負けた気分だ
ミヤビさんはルビーの剣術特化型なんだろうな
恐ろしい能力だった
「あと、一つタカネ殿に謝らなければならない事が」
「?」
「予選リーグでクナイをわざとタカネ殿に飛ばしたでござる」
「ああ」
予選リーグ一試合目で入場した時飛んできたんだよな
前日の風呂でイデアを締め上げた俺の実力を確かめたかったらしい
「しかし、恐るべき反応速度でござった、感服いたしました」
「いや、私のも能力なので・・・」
素直に喜べないなあ
俺も次からは何か制限かけようかな
苦笑いしながらミヤビさんと別れ、控室へ
「タカネ!優勝おめでとう!」
「ありがとう、カオリも240万おめでとう、何もしてないのに」
「うっ!こ、今度奢るからさ」
別にいいよ
すっきりとした優勝じゃ無かっただけに、ちょっと当たっちゃったな
「タカネ、おめでとうございます」
「ありがとう、サテンの膝枕のお陰だよ」
「タカネ様、おめでとうなの、一生ついて行くの」
「眼が$マークだぞ、エリーゼ」
24万おめでとう
宿舎に帰りベットに横たわる
疲れた、最後の試合でどっと疲れた
「タカネ、また服を脱がずに・・・」
「うーん、脱がせて」
「ご飯はどうするんですか?」
「持って来て貰って食べさせて」
「もう、子供みたいに」
そう言いながらもサテンは服を脱がしてくれ、メイドさんが持って来てくれた食事を寝ている俺に食べさせてくれる
「お風呂はどうするんですか?」
「今日は良いや」
「もう・・・じゃあゆっくり寝てください」
サテンが背中を撫でてくれている
俺はゆっくりと眠りに落ちた