050 伝承
次の日、大会まであと3日
サテンとカオリはハンター業へ
メアリーをしごいて一休み
「スパルタら、謝罪と賠償を要求するら・・・」
「うるさい、ムスタングと走って来い」
「ゆとり教育を所望するら」
「あれは失敗だ、導入した奴はどうやって責任取るんだろうな?」
「失敗と認めないら、自分の責任を認めず成功だったと言い張るら」
「良く知ってるなメアリー」
そんなどうでも良い話をして午前中が過ぎた
「明後日、向かえって何時頃来るんだろうな?」
「ピエトロからならユーメリアはそんなに遠くないの」
ペガサスの馬車が来るらしいが
どれくらい早いんだろうな
「ムスタング、ペガサスに乗るけど馬車だから許してくれよ」
「グゥ~」
「ええ?駄目なの?お前がもうちょっと大きければ乗せてってもらうんだけどな」
ムスタングが嫉妬してる
背中に乗る訳じゃ無いんだからいいじゃん
噛むなよ、反抗期か?
来年はお前に乗ってくから許して
もう来年行くって確定してるみたいだけどさ
「クーリエ、留守の間ムスタングの世話頼むな、今ちょっとヘソ曲げてるけど」
「いつもは素直でおとなしいですよ」
「ムスタングもゴブリンくらいならやっつけられるのかな?」
「ゴブリンくらいなら余裕じゃないでしょうか」
訓練すればモンスターやっつけたりするのかな
まあ別にそうさせたい訳でも無いけど
やるにしてももっと大きくなってからでいいよな
お茶の時間
「タカネ様、また寝っ転がって、下着が見えていますわ」
「動きやすいからついミニスカートを履いちゃうけど、見えちゃうのが困るよな」
「脚が長くて綺麗で羨ましいですわ」
「シオンも普段着はミニスカート履くの?」
「は、履くこともありますが、とてもタカネ様に見せられるような脚では・・・」
「お風呂で見えてるよ、良い脚だと思うけどな」
「は、恥ずかしいですわ」
シオンは普通よりは少しポチャッとしてるかな
太ってる訳じゃ無いんだけどね
胸は大きい
・・・そう言えば、メイドさん3人共、彼氏とか居るのかな
夕飯食べて風呂
「3人に質問がある、彼氏はいるの?」
「い、いませんわ」「いません」「いないの」
「タカネ、急にどうしたんですか?」
「いや、彼氏いるなら休みも作った方が良いかなと」
「3人共可愛いのに彼氏いないんだぁ」
「カオリ、眼がいやらしいぞ」
「皆様こそ、お作りにならないんですか?」
「俺は絶対に作らない」
「わたしはタカネがいるので」
「カオリは欲しいよ、でも強くなる方優先かな」
「まあ、皆様お美しいのに勿体ないですわ」
「王様やら王子様やらに言い寄られて嫌だったからホメロス出て来たって言ったっけ?」
「聞いたなの、羨ましい話なの」
「王宮に見染められるのって良い事なのかな?自由が無いような気がするけど」
「そうですね、ピエトロでも王族の方々はほとんど王宮から出る事は無いです」
「お金もあって自由もある生活がいいよ」
「メアリーは誰かに必要とされればそれでいいら」
「魔法使えるんだから大丈夫だぞ?もう時代が違うんだから・・・」
「出来れば多くの人に必要とされたいら、神と崇めたてられたいら」
「お、おう、頑張れよ」
神か、ハードル高いな
王族になるより難しそう
まあほぼムリだと思うけど、モチベーション削るのもアレだしそっとしておこう
次の日、大会まであと2日
サテンとカオリはハンター業
朝からクリスティが来たのでどうしよう
「そうだ図書館連れてってよ」
正直そこまで用があるわけでもないのだが
時間潰せればなんでもいい
以前、いろいろ調べてもらった図書館に行くことにした
ムスタングはお留守番
うーん、王宮の近くにあるのか
あんまり近づきたくは無いけど仕方ない
この街で暮らしているのだから逃げてばかりもいられない
「ほう、結構立派な図書館だな」
一階建てだが敷地が広い
天井も高く、本棚も背が高いな
ハシゴを使わないと上の方の本は取れないだろう
「タカネ様、言ってくだされば取りますよ」
俺は今日もミニスカートだからな
ハシゴに登ったら下着が丸見えだろう
クリスティはいつも長いズボン
ズボンってなんだか死語っぽいよね
でもパンツって言うとややこしいしすごい不便
なんでこんなめんどくさくするんだろう
ファッション業界とかは意識高い系多そうだからな
時々呼び方新しくしないと気がすまないのだろうか
迷惑な話だ
あ、地理の本があるな
クリスティに取ってもらう
口で取ろうとするな、公共の物だぞ
誰がそんな命令をした
「本当だ、ピエトロとユーメリアは近いんだな」
国をひとつ挟んで北西方面だった
しかし大きな大陸だ、112の国と地域があるんだっけ
・・・もう1個大陸があるな
「エルベーグ大陸は横に長いのですが、ラムドール大陸は縦に長いんです」
丁度ユーラシア大陸のような感じで今いるエルベーグ大陸があって、北アメリカ大陸・南アメリカ大陸のような感じでラムドール大陸が並んでいる
形は全然違うけどね
「この下半分は?」
「そこにはまだ何があるのか解りません、海の向こうに陸地があるかもしれませんし、無いかもしれません」
地図の下半分、南西にあたる部分が白紙だ
まだ見ぬユートピアがあるのかもしれない
いつか船でも買って旅をするのもいいかもな
お、あれは神に関わる本かな
ユンフィスの事が書いてあるのだろうか
クリスティに取ってもらう
なになに、この世界の唯一神ユンフィス
天地創造を司る全知全能の神
天界に住んでおり、おはようからおやすみまで人々の暮らしを見守る・・・
「天界って何?」
「空の上にあると言われている世界ですね」
「グリフォンで行ける?」
「すごく高い場所にあり積乱雲で囲まれているとか・・・」
なんだラ○ュタか
別に行きたくも無いな
どうせヒマな場所だ
次に歴史の本を見つける
魔王イスタークと言う名前に目が行く
なになに、およそ100年前に突如として現れた異世界人
・・・異世界人?
あらゆる物を破壊し略奪の限りを尽くしたが、同じ異世界人の5人の勇者によって討ち取られる・・・
「なあクリスティ、この異世界人って・・・」
「時々現れるというとんでもない力を持った人達の事ですね」
「認知されているの?」
「いえ、伝説上の生物に近いような扱いでしょうか」
伝説上の生物って言うとペガサスとかグリフォンとか・・・
いやいや、それらはこの世界では実在している
ややこしいな
「物語みたいなもんなのかな」
「本が作られたのも近代の話です、伝承なんて大袈裟に伝わるものなのであてにはなりません」
「なあクリスティ、もし俺が実は異世界人だって言ったら・・・」
「へ?・・・・・・い、いえ、タカネ様が黒と言えば白い物も黒です!!」
こいつは駄目だ、参考にならん
だが多分信じては無いだろう
俺の力を知ってるクリスティですら、突飛な夢物語のように感じてしまうのだろう
証拠がないもんな
本をよく見返してみると、大なり小なりしょっちゅう魔王みたいなのが生まれてるみたい
力を持つと人は変わってしまうって最初に妖精が言ってたっけ
善人ガチャで選ばれた人でもそうなってしまうんだな・・・
あ、そろそろ昼か、帰ろうかな
「タカネ様、いつもお邪魔してばかりで申し訳ないのでたまにはウチに来ませんか?」
「え?」
クリスティの家は貴族なんだっけ
興味が無いと言えばウソになるな
どんな暮らしをしてるんだろうか
よし、行ってみよう
「なんだ近所じゃないか」
「高級住宅街ですので」
「ここ?ウチより大きいじゃないか、生意気な」
「きゅーん」
大きな門をくぐると3階建ての建物が
横にも長く、奥行きもありそう
手前には噴水だ、水道無いのにどんな仕組みで水を噴射してるのだろう
装飾の施された豪華な馬車もあるな
あれは何だ?・・・水は入ってないけどプールか?
プールが家にあるのか?
「はい、夏にはまた遊びに来て下さい」
「はー・・・1辺25mくらいあるよな?」
「はい」
高原でプールに入れるのか
贅沢だなあ
俺が温水を出せば今の季節でも・・・
まあいいか
家の中に入る
メイドさんが5名出迎えてくれる
「メイドさん5人も居るのか」
「全部で10人です、執事も2名居ます」
「自慢か?偉くなったな」
「い、いえ、すみません」
ちょっと僻んじゃった
まあでもウチのメイドさんの方が可愛いし
痛み分けって事にしといてやるよ!
エントランスには大きなシャンデリア
蝋燭を灯すタイプか?
めんどくさそうだな
床は大理石みたいだが、廊下、階段すべてに赤い絨毯が敷いてある
偉くなった気分で応接間に
ふっかふかのソファ
深く沈みすぎだろ、このソファ
すぐ眠くなりそう
テーブルもうねり狂った彫刻がしてあるぞ
メイドさんが紅茶を持って来る
このカップ、絶対高いヤツだよな?
スプーンは銀?贅沢な・・・
「昼食が準備出来ました」
食堂に通される
やたら長いテーブル
ん?前の方に誰か座ってるな
家族だろうか
「娘がいつも世話になっているそうだな」
「お父さんですか?娘さんの教育について苦言があります」
「む、むう、大体解っておる、申し訳ない」
「おほほ、クリスティは素直な良い子でしょう?」
「お母さんですか?甘やかすタイプですか?」
「お母様、兄上は?」
「今日は出かけてます」
げ、兄ちゃんいるのか
会いたくないな
居なくて良かった
食事が運ばれてくる
コースみたいに一品ずつか
「昼からすごい贅沢ですね」
「メインは子牛のステーキだ」
「昼から?すごいですね・・・」
「しかし大陸大会の代表に選ばれたとか、若く美しいのに大したものだな
「娘さんこそ大陸12位じゃないですか」
「ハンターなんてやめて花嫁修業でもしてほしいのだが」
「どこか遠くに嫁に行って欲しいです」
「きゅーん」
「訳の解らん男共とパーティを組んでる時はどうなるかと思ったが」
「たちの悪い連中だったみたいですね」
「貴族の娘だと知っていたらしいのでおかしな事はされてないみたいだが」
どういう事?
性的な事?
でも口で色んなもん拾わされてると思うよ
どっちにしろ傷物じゃないかな
食事終わってまた応接間へ
・・・来てはみたもののヒマだな
話するしかないっていうね
「クリスティは何歳だっけ」
「22歳です」
「彼氏は居ないの?」
「な、何度かお付き合いした事はあるんですが、皆優しくて」
良いじゃないかよ
それが悪いみたいな言い方すんな
「やっぱ貴族同士で結婚するものなの?」
「はい、それが多いでしょうか」
「王子がどこの誰とも解らん俺に求婚ってどう思う?」
「庶民との結婚も無い訳ではないですよ、タカネ様くらい美しければ、求婚されても仕方ないかと」
「ふーん」
否定して欲しかったのに
無い事は無いのか
俺くらい美しければ仕方ないのか
俺の美しさが悪い
なら俺を作った神が悪いって事か
その後たわいのない話をして夕方になった
クリスティは家族が居るのでスイッチでは無い事が確定だな
まだ心の中で少しだけ疑ってたんだけど
家に帰ろう
サテンとカオリが帰って来てた
3人だけしか居ない事を確認し図書館で仕入れて来た情報を話す
「そういう訳だ、カオリが魔王になってしまったら俺が退治してやるからな」
「なんでよ!タカネこそ大丈夫なの?強力な力を持ってるんだから」
「実はカオリに胸を触られる度に自分の中で黒い物が増幅して・・・」
「私が魔王を作っちゃったの?!」
「どっちにしろカオリの罪は重いな」
「うぐぐぐ・・・」
俺とカオリが異世界から来たってのはこの家では今居る3人しか知らない
もうあんまり広めない方が良い気がする
と言うか、散々一緒に風呂入ってるのに今更元男ですとか言えないわ
一緒に風呂に入りたい事を優先して言うのすっかり忘れてたな
いや、それを言ってしまうと一緒には入れなくなるか
最初から言う気が無かったんだな、俺
夕飯を食べて風呂に入る
今日はカオリは俺の胸を触ろうとしなかった
魔王の伝承はチカン対策として有効活用された
次の日、大会前日
今日はユーメリアへの移動日
迎えに来るはずなので家に居よう
クリスティが来た
おい、2日に1回って言ったのに
見送り?じゃあ仕方ないか
ヒマだったのでメアリーをしごき
お茶を飲んでヒマを潰す
荷造り確認
着替えとエストックくらいでいいよな
昼近くにペガサスの馬車が来た
1頭引きなんだ
力持ちなのかな?
豪華な馬車を引いている
少し休ませてくれと言われたのでペガサスに桶で水を飲ませる
ユーメリアから休み無しで飛んで来たのか?
大変だったな、よく知らないけど
俺とサテンとカオリとエリーゼが乗り込む
みんな、留守は頼んだぞ
ムスタング、そんなに唸るなよ
中に入るとゆったり空間
4人乗りとは言えこんな大きな馬車を1頭で引くのか
従者がいるから5人か
どっちにしろ大したもんだ
ゆっくりと馬車が浮き上がる
不思議だな、なんで水平を保てるんだろう
この世界にはまだまだ謎が多い
この世界は成長が遅いと言う話だったけど、魔法は便利だしペガサスのような移動方法があるのなら、進化は必要が無い気もする
自然を壊して資源を使いつくす
ユンフィスはあんな世界を望んでいるのかなぁ
結構高くまで飛び上がったな
お、進み始めた
すぐに窓の外の景色が流れ始める
早い、雲を斬って走るペガサス
雲の合間に大地が見える
もう首都ランバートは見えなくなったな
「タカネ、5時間くらいで着くらしいよ」
「休み無しで飛ぶのかな」
「1頭でよく働きますね」
「楽しみなの、タカネ様、連れて行ってくれてありがとうなの」
「エリーゼは世界中を回ってみたいんだよな、ムスタングが2人くらい乗っけて飛べるようになったら、近隣国なら連れて行ってあげられるよ」
「嬉しいの、タカネ様に雇って頂いて本当に良かったの」
ペガサスの馬車が飛んでゆく
ユーメリアか、どんな国なんだろうな
5時間後が楽しみだ