043 横笛
「ねえ、門の前にクリスティが居るよ」
「・・・・・」
大陸20傑12位のクリスティ
昨日ぶっ飛ばした女だ
朝から家の門の前に居るらしい
ストーカーめ
「昨日、王宮にメイドを紹介して貰うようお願いしたんだよね」
「ああ、橋作りに行ったんだっけ」
「月10万が3人、明日か明後日に来るはずなんだ」
「まあ、結構良いお給料しますね」
「俺が払うよ」
「駄目です、3等分です」
「マンティコア1匹分か、すぐだね」
マンティコアは報酬10万だけどそれは一人で狩った場合だ
中級依頼をパーティで回ってるサテンにはキツイ金額じゃないだろうか
「だから頑張らないと、タカネも行くよ!」
「うっ」
「タカネ、怖いので門を一緒に出ましょう」
・・・なんなんだよクリスティ
結局ハンター組合の受付のお姉さんはウチの住所教えてしまったみたい
個人情報ユルユルの世界だな
・・・仕方ない、外に出るか
「た、タカネ様、おはようございます」
「お前取りあえずカオリに謝れよ」
「はい、申し訳ありませんでした」
道端で土下座するクリスティ
頭を踏むカオリ
容赦ないな
でもクリスティは喜んでいるって言うね
カオリに任せた方が良いんじゃないだろうか
「嫌だよ、強い人が居ると活躍出来無いもん」
ああ、そうだったな
俺もカオリが強くなるためには邪魔な存在
仕方ない、どうせ俺には調教は無理だ
そのうち諦めるだろう
「た、タカネ様、素敵なエストックですね」
「ああ、ミスリルのエストックだ」
「そんなので突かれちゃったら・・・ああっ!」
「・・・・・」
モンスターにでも噛まれて来いよ
「モンスターは罵ってくれません」
さいですか
「タカネ様は男みたいな話し方です、罵って欲しい・・・」
あ、やべ
つい、いつも通りの話し方しちゃった
まあいいか
あ、そういえば
「なあ、スイッチって何か解るか?」
「・・・時々聞かれますね、それは何なんですか?」
「知らないならいいよ」
「大陸大会でも聞かれました、私が負けた相手、強かったんですよ、んふふ」
「俺より強かった?」
「まさか!その人は5位になりましたがタカネ様の方が全然強いです」
なんだ、5位でもそんなもんなの?
聞きたくなかったな
楽しみが減った
しかしスイッチ無しで12位か
クリスティはすごいやつだな
変態だけど
ハンター組合に着いた
上級でトロールがあるな
「トロール貰って良い?」
「カオリ、いいよ」
・・・上級はもうない
どうしよう
「タカネ様、ダンジョン行きましょう!ダンジョン!」
「ダンジョンあるの?」
「ホソカワムラの手前の崖を下りて行った先にありますよ」
「宝はある?」
「ごく稀にですがありますよ」
「稀かよ」
まあいいや、やる事も無いし報酬もないけど言ってみるか
「・・・これ、ダンジョンなの?」
「ホソカワムラの人間が建てたんです、トリイとか言うらしいですよ」
知ってる
ダンジョンの前に鳥居が建ってた
なんでこんなとこに鳥居建てたんだ?
鳥居の奥には岩穴が続いている
「このダンジョンのどこかに土の龍神様がいるらしいです」
「へえ」
土の龍神か
ホメロスのノッティカウンに水龍がいたよな
サページとかって名前だったっけ
どう見てもウーパールーパーだったけど
「さあ入りましょう!」
「迷子にならない?」
「地下4階までなら入った事あります!」
「・・・その武器なに?」
「サーベルです!」
クリスティが張り切って鞘から武器を抜いた
片刃の反り返りのある剣だ
良く斬れそうだなー
ダンジョンにはいる
ここも広いな
明かりの魔法を出す
「ま、魔法も出せるんですか!」
「ああ、一通り使えるよ」
「し、死なない程度にクリスティをビリビリさせてくれませんかね」
「嫌だ」
「きゅーん、そんなばっさり・・・」
広いけどメオラのダンジョンほど複雑に入り組んでいない
クリスティはスイスイ道を進んでいく
ムスタング、あまりそいつに近寄るな、変態だぞ
「この辺にはモンスターいないの?」
「出るのは3階くらいからですよ」
「コカトリス居ないよね?」
「見た事あるんですか?ここには居ませんよ?」
コカトリスだけは嫌だ
見られただけで石になるとかひどいチートだ
俺が言うのもなんだけど
地下3階に来た
地下2階を進んでる時にも気配を感じたが、どんなモンスターが居るんだろ
「クリスティ、ここは・・・む」
「・・・居ますね、キメラです」
キメラか
正直敵ではない
さっと片付け次の階に向かおう
8体倒して地下4階へ
「ここはサイクロプスが出ますよ」
「へえ、俺狩った事無いや、出たら俺に狩らせて」
「きゅーん、おあずけですね、受け入れます」
「・・・」
サイクロプスって最上級の依頼のモンスターだよな
一度討伐を見に行った事がある
お、気配が3体か
初対決で3体は無理し過ぎかな
しかし、お預けしてしまった以上引っ込みがつかない
明かりを飛ばす
サイクロプスが3体浮かび上がる
俺達の姿を見つけ、襲い掛かって来る
瞬時に一体の眼をエストックで突く
他の2体は俺の姿を見失った
倒れるサイクロプス
攻撃されたことに気付く2体
だが俺はすでに後ろに回り込んでいる
1体の心臓を後ろから突く
何が起こったか解らないまま倒れる
最後の一体が怒って襲い掛かって来た
金棒が振り落とされる
空を斬り、地面を破壊した
おおすごい力だな
岩の破片が飛び散り、地面が抉れる
横からサイクロプスの頭を刺す
横に移動したことに気付かなかっただろうな
力なく膝をつき、倒れていくサイクロプス
静かな空間に戻った
「サイクロプス3体をあっと言う間に・・・」
「お前だって1人でドラゴンやっつけた事あるんだろ?」
「す、すごい苦労したんですが、半日以上かかって消耗戦で・・・」
「ミリスルゴーレムの方が100倍手ごわいよ」
ちょろい
次からは魔法で済まそう
サイクロプスを20体ほど倒したところで地下5階の階段を見つけた
「ぅぅ、一体も倒させて貰えない」
「遅いんだもん、待ってられないよ」
「きゅーん・・・地下5階はなにが出るか解りません」
「そうなの?ここまで宝箱も無かったなー」
地下5階に降りる
あ、ドラゴンだ
地を這う黄色いドラゴンだな
赤いドラゴンは氷の魔法で倒せたけど
属性なのかな
黄色は何だ?
まあいいや、氷の魔法を放つ
大きなつららが10本飛んでいく
凍り付くドラゴン
気配が無くなる
絶命したと思う
属性の相性が有ろうが無かろうが、オーバーキルでやっつけりゃいい
これ持って帰れば高値で売れるんだけどな
流石にダンジョンを上まで引きずっていくのは厳しいと思う
その後崖登らなきゃいけないし
「帰りに高い部位を剥ぎ取りましょう」
「ああ、そうか、勿体ないもんな」
あ、また気配
ドラゴンかな
「右になんかいるけど行く?」
「選択権が私にあるんですか?」
「え?無いのかな・・・」
「右へ行けと言うなら地の果てまで行きますが」
「海には入らないんだ」
「きゅーん、入れと言うなら入ります!」
右に行く
ドラゴンが居た
クリスティに戦わせる
おー無駄のない戦いだ
ジャブを打ちまくる感じかな
右へ左へ上へ
ドラゴンの攻撃の当たらない死角に絶えず移動
あ、岩の床で滑った
ドラゴンの尻尾に薙ぎ払われる
ダンジョンの壁に飛ばされるクリスティ
ここまでか、氷の魔法を撃つ
ドラゴンが固まった
「大丈夫か?」
「きゅーんな一撃でした」
ヒーリングをかけてやる
「ヒーリングもこんなに早く・・・」
さっさと次に・・・お!
壁に穴があり木箱発見!
5階は探索されてないのかな
さっそく開けてみる
罠ないよな?
・・・笛だ
なんか銀色の横笛が入ってた
「それ、眠りの笛ですよ!すごい!」
「眠りの笛?」
「モンスターが眠っちゃうんです!超レアアイテムですよ!」
へえ・・・でも吹けないしな、いらない
「俺は要らないかな、クリスティいる?」
「え!私なんかにこんな良いものくれるんですか?」
「二人でダンジョン回ってるんだし別にいいでしょ」
「じゃあ床に置いてください!口で拾いますから!」
「・・・・・」
床に置いた
早く解放されたい
眠りの笛はモンスターに眠気を誘う笛らしい
ぐっすり眠ってしまうモンスターもいれば、まったく効かないモンスターも居るらしいけどね
「ドラゴンなら少し動きが鈍る程度ですが、これでもっと早く倒せるかも」
「ちなみに売るといくらくらいなの?」
「4000万くらいでしょうか」
・・・勿体なかったかな
その後、ドラゴンを2体倒してお腹空いた
そろそろ夕方くらいかな
「剥ぎ取りは任せてください!」
クリスティがドラゴンの高く売れる部位を剥ぎ取ってくれる
4匹分、持てるだけ
今日はこれで帰ろう
ダンジョンを出てハンター組合へ
サテンとカオリが帰って来てた
「タカネ、どうだった?」
「ドラゴン4匹狩って来たよ」
「え?!!!!」
「素材換金してくるよ」
2100万だった
「クリスティ、半分こしよう」
「え?!ふ、笛貰いましたけど・・・」
「前のパーティではあんまり金貰ってなかったんでしょ?」
「で、ですが」
「選択権あると思ってんの?」
「きゅーん!」
1050万ずつ分けた
これで縁切れないかな
駄目?
・・・余計懐かれた気がした
「明日、明後日は用事あるから休む」
「そ、そうですか」
クリスティがチラチラ振り返りながらトボトボ帰って行った
・・・疲れたな、精神的に
「タカネ、うまくやってるみたいだね」
「・・・そう見えた?まあ、ダンジョン教えて貰ったのは良かったけど」
「嫉妬してしまいます、私も頑張ってタカネと回れるように・・・」
お?サテンのやる気がアップしたようだ
伸び盛りな上にやる気十分とか
サテンは化けるかもな
家に帰る
「そういや、眠りの笛とか言うのダンジョンで見つけたんだよね」
「なにそれ?」
「モンスターが眠っちゃうんだって」
「まあ、逃げたい時便利ですね」
「サテン欲しかった?クリスティにあげちゃったんだけど」
「いえ、腕輪に笛まで使ってしまったら自分の力を見誤ってしまいそうです」
「でも、不意に強力なモンスターとばったり出会ってしまった時とか便利だよね」
「そうかもな」
「気前よくあげるなんてタカネったら・・・」
「そうだな、良く考えたらコカトリスとかに使えば有効だったかな、でも笛なんて吹けないし別にいいかなって思っちゃったんだよ」
横笛だったんだよな
リコーダーも苦手だったのに難易度高すぎる
「誰かの使った後だと嫌だろ?前の持ち主がどんな人か解らないと俺は吹けないな」
「どんな人の後なら吹けるんですか?」
「え?・・・サテンやカオリの後なら吹けるかな」
「タカネ、そうだったんだ、コップとか大丈夫かな」
「お、おいおい」
「私の歯ブラシとか使ってませんよね?」
「つ、使ってないよ」
「お風呂でもカオリをやらしい目で・・・」
「だったら後から入ってくるなよ」
「冗談だよ、マジにならないで」
「・・・・・」
なんだよまったく
「俺は明日からメイドさんと風呂に入るからな」
「ちょっと待って、元男のタカネがメイドさんとお風呂に入るのはどうなの?」
「いかがわしい感じがしますね」
「お前らと一緒に入るのはどうなんだよ」
「タカネは女の体じゃない」
「何の問題もありませんね」
「・・・・・」
そうだった
女とは物事を都合よく解釈する生き物だった
結局3人で風呂に入る
「6人で入れるかな?このお風呂」
「メイドさん3人と俺達か、いけるでしょ」
「メイドさんが一緒に入ってくれるのは確定なんですか?」
「解らん、可愛いかどうかも解らん」
「都合よく可愛いメイドさんが3人か、ありえない話だけど」
「何故か可愛いメイドさんが3人来る気がしますね」
「俺もそんな気がする」
何故だか解らないけどそれぞれタイプの違う3人のメイドさんが来る気がした