004 サテン
「あ、アンタが水神様!?」
なんかでっかいウーパールーパーみたいなのに見下ろされてる
だ、大丈夫なのか?
すっごい可愛いけど
『スイジンサマ?』
「ち、違うのか?」
『あれ、君はボクの言葉が解るんだね』
「え?」
あれ?あれか?能力か?
ダイヤのスイッチ特権か?
「えーっと、水神様が居るって聞いてやって来たんだけど」
『村人がボクの事そう呼んでるの?』
「たぶん・・・」
『良く解らないけど、ボクは水龍だよ』
「水龍・・・」
その呼び方の方がしっくり来ないんだが
『それで、何の用?』
「あ、いや、よ、用って言われると、そのー」
考えてなかった
言葉通じるのが想定外だし
ただ見に来ただけとは言いにくいなー
「名前とかあるの?」
『サページだよ』
「な、なんでこんな所に居るんですか?」
『ここはミネラルが豊富だからね、ほら、そこから流れ込んでるでしょう?』
ああ、壁の岩の間から水が出て湖に流れ込んでる
ミネラルってなんだっけ
『おかげでこんなに体が大きくなっちゃった』
「あ、ああデカイですね」
水の中から出てる部分だけでも15mくらいありそう
「ずっとここに居るって事ですか?」
『もう600年くらい居るかな』
「600年も?」
『居心地良くてね、おかげで洞窟から出れないくらい大きくなっちゃった』
「・・・・・」
出入り出来る場所が、俺が入って来た入口しか無いとしたら多分出れないだろう
体の横幅も結構あるし
『いざとなったら壊して出るけどね』
「ああ、なんだ出れるんだ」
『でも壊すと村が困るかも』
「・・・・・」
『だから出れなくなっちゃった』
優しいなw
見た目可愛いし
「ここは綺麗だし、居心地良いなら出る必要無いのでは?」
『うん、もう千年くらい居ようかな』
寿命無いのかな
どうしよう、話す事無くなってきた
あ
「あの、私、この世界の事良く知らなくて」
『え?どういう事』
「えーっと違う世界から来たって言うか」
『ああ、ユンフィスに連れて来られたの?』
「そ、そうなんです!知ってるんですか?」
『知ってるよ、この世界の神だからね』
「突然連れて来られたから途方に暮れてて」
『そうなんだ、突然違う世界に来たらそうなるのかもね』
なんだ、すごく良いヤツだ
見た目可愛いし
『まあ君は魔法も使えるみたいだし、すぐ馴染めると思うよ』
「魔法?そうだ、魔法ってどうやって使うんですか?」
『そんな事もユンフィスは教えなかったの?ヒドイなぁ』
「そうなんですよ!」
ああ、絶対良いヤツだ
俺の気持ち解ってくれてる
『効き手をかざしてイメージするんだよ、使ってみたら?』
「ここで?良いの?」
『火は困るかな、水を出すイメージして』
「は、はい」
右手を壁に向け水を出すイメージ
・・・お!出た!
チョロチョロと
『もっと勢いよく出るんじゃない?』
「い、勢いよく?」
イメージイメージ
消防車の放水のようなイメージ
バシャバシャバシャバシャ
!!
出た出た!イメージ通り!
『簡単でしょ?この世界で生きてくなら魔法は便利だよ』
「だれでも使えるんですか?」
『ううん、滅多に使える人は居ないよ』
ま、マジか、特別な能力だ
これもダイヤのスイッチのお陰か
「ありがとうございます、希望が出て来ました!」
『こんなので良いならいつでも来てよ、長く生きてるからそこそこ物知りだよ』
「・・・なんか、お供えとか要りませんか?」
『要らないよ、昔、生贄を捧げられちゃって困った事があったんだよ』
「い、生贄?」
『うん、人間の女の子だったんだけど、ボク人間なんて食べないのに』
ああ、日本でも昔はそういう事あったんだろうな
雨ごいとかそういうので
『要らないって言うのに言葉通じなくて困っちゃったよ』
「ど、どうなったんですか?その子」
『まだ沈んでるよ、この下に』
「ええ?!!!」
な、なんだよ
一気に怖い話になった
『連れてってくれない?』
「な、何を?」
『何って、女の子』
「ええっ?!!!!」
ど、どういう、え!?
生きてるの?
し、死体渡す気か?
水死体って確か、ブヨブヨになっちゃう・・・
『仮死状態にしてあるから大丈夫だよ』
「あ!そ、そう!良かった!」
・・・良かったのか?
えーっと、でも渡されてもどうすりゃいいの?
『今出すね』
「え?は、はあ」
は、話が進んじゃってるんだが
困ったな
要らないって言うのもな
あ、何か浮かんで来てる
水面に近づいて来てる
水面に浮かぶ
金髪の美女
20歳くらいかな
素っ裸だった
『服は500年の間に自然に帰っちゃった』
「ご!500年前の女の子って事?!」
・・・・・どうしよう
家族なんて生きてるはずもない
そんな事があったって事も皆知らないんじゃ・・・
「生贄はこの子一人だよね?」
『うん、日照り続きで生贄出されたから、その後は水が不足しないようコントロールしてるんだ』
「そ、そう」
と、取りあえず水から出すか
しかし、何も来てない状況では・・・
水に入る
つ、冷たい
腰まで沈む
結局濡れてしまったか
女の子を引き寄せる
・・・この子も胸がデカいな
俺に負けないくらいスタイルが良い
生贄に選ばれるくらいだから村一番の美女とかだったのかな
水から上げる
軽い
そう感じるのは馬鹿力のせいか
取りあえず床に寝かせる
『眼を覚ますよ』
「も、もう?」
こっちの心の準備が出来てない
ゆっくり眼を開ける女の子
焦点があって無い
ぼんやりしている
「大丈夫?」
声をかけるとこっちを見た
ゆっくり口を開く
「あ、貴方は・・・」
「えーっと、タカネ」
「・・・こ、ここは」
寝ながら首だけを動かしあたりを見回す
水龍が目に入って固まる
「キャア!!」
「だ、大丈夫だよ」
「わ、私、は、裸・・!」
「ああ、状況覚えてる?」
身を起こし、考え込む女の子
段々と顔に生気が戻って来る
「あ、私・・・生贄として」
「そう、水龍も困ってたらしくて」
事情を話した
「あれから500年も・・・」
「ああ、そうみたい」
「・・・・・」
大丈夫かな?
自分の状況受け入れられるのかな?
「あ、あの、服は無いですか?」
「うーん、ちょっと待ってて」
村に全速力で帰る
もう太陽が出てるな
村人発見
「すみません、洋服って売ってます?」
「この村にかい?皆、自分で縫ってるからなぁ」
「無いですか」
「うーん、ああ、土産物屋にポンチョならあったかな」
土産物屋の場所を聞いた
まだ開いてない
裏口へ
「すみませーん」
「んん?早いな、おいすごい美人だな」
「ポンチョ売ってるって聞いたんですが」
「ああ、500アランだよ」
痛い出費だが仕方ない
ダッシュで帰る
風で自分のスカートが乾いていく
便利だなー
「取りあえずこれで我慢して」
「はい、ありがとうございます」
ポンチョを着た
ポンチョの下から覗く足がエロいなぁ
・・・これからどうすりゃいいの?
自分の事も考えなきゃいけないのに
・・・村長さんとか居るかな
偉い人に相談するべきだと思う
『もう大丈夫?』
「あ、ごめんなさい、待っててもらって、後はこっちで何とかしますんで」
『うん、よろしく頼むよ』
水龍が水の中に沈んで行った
・・・・・
「・・・行こうか、名前は?」
「サテンです」
俺達は村長の家まで行った
結論から言うとまったく信じて貰えなかった
「そんな話聞いた事も無いよ」
「500年ほど前の話らしいんですが」
「うーん、500年前と言われてもなあ」
子孫くらい残ってないのかな
話を聞いていくうちにこの国では庶民は名字が無い事を知った
名字があるのは王族や貴族だけらしい
「解らないよ」
「・・・・・」
500年前に一度だけ行った生贄の儀式
封印された村の黒い過去なのかも知れない
こりゃ無理かな
「・・・解りました、お邪魔しました」
村長宅を出る
どうしよう
「私はこれからどうすれば・・・」
サテンが不安そうだ
そりゃいきなり500年後に復活させられたら途方に暮れるよな
俺もどうして良いのやら
・・・取りあえずこの村に居ても仕方ないかな
「サテン、お腹は空いてる?」
「いえ、今の所は・・・不思議ですね」
「じゃあ、近くの街に行ってみよう」
「はあ・・・タカネ様がそう言うのなら」
「呼び捨てで良いよ」
「は、はい、た、、、タカネ」
村の入口に行く
昨日の衛兵さんが立ってた
「お、おいおい、美人が増えたぞ、どっから入ったんだ?」
「すみません、近くに街はありますか?」
「一番近い街はメンフィスだよ、通って来ただろう?」
「この道をまっすぐ行くと着きますか?」
「・・・そうだが」
「よし、サテン、乗って」
「え?お、おんぶですか?自分で歩きますよ」
「靴履いてないし、山賊が居るかもしれない、一気に走り抜ける」
「は、はあ」
訳も解らずサテンが背中に乗る
お尻見えないようにポンチョの後ろ側をしっかり掴んであげた
「舌噛まないように注意してね」
「は、はい」
「お、おい、走って行く気か?」
衛兵さんには申し訳ないが説明が面倒だ
俺は全速力で走り出した
背中からサテンの悲鳴が聞こえた