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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ホメロス王国編
39/134

039 別れ

「なんとか考え直してもらえないだろうか」


次の日の朝、王宮からいっぱい人が来た

ユングさん、アズバーン、その他大勢

ユングさんが代表で話し出す


「ムスタングに危害を加える気なんでしょ?気持ちは変わりません」

「王妃様もムスタングがタカネ殿の物だと知っていたので大袈裟にしたらしい、王子との婚約を断った恨みだろう」

「事あるごとに王室に逆恨みされたのではこの国で生きていける訳無いでしょう?」

「王妃様もまさか出て行くと言い出すとは思わなかったらしい」

「意地の悪い言いがかりをつけて謝らせたかったのでしょう?自身に問題がある逆恨みなのに」

「本当に申し訳なく思う、王妃に変わって我々が謝罪するので」

「それも嫌なんですよ、当事者以外の人に謝罪されたところで後味が悪い、この国に残ったところで後々ギクシャクしますよ?」

「・・・しかし王妃様も立場上、国民に頭を下げるわけにはいかんのだ」


知るかそんなもん

だったら何の為に居るんだ

周りに迷惑かける為に居るのか?

足引っ張るだけの王室なら必要ないだろ


「こうなってしまったのも我々の責任だ」

「今までもこうやって尻拭いしてきたんですか?」

「いや、ここまでの大事おおごとは初めてだ」

「私の事を大袈裟だと思ってますか?」

「そんな事は無い、怒って当たり前だと思っている」

「他の人は我慢しているだけだと思いますよ、王室が相手だから」

「・・・そうかもしれんな」


誰も言わないからこんなことになる

腐らせてしまったのか

だとしたら確かにあんたらの責任かもな


「そうやって乗り切って来たかもしれませんが私は誤魔化されません、責任の所在は明確ですから」

「・・・・・・」

「それに、万が一今回の事を王室に謝ってもらったとしても、また逆恨みされて後々害をもたらされると思います」

「・・・無いとは言い切れんな、面目ない」

「私は皆さんに尻拭いをさせるこの国の王室が嫌いです、この国の王室を軽蔑しているこんな私がホメロスに居るべきではないでしょう?だから出て行くんです」


不敬罪で捕まってもおかしくないような事を言った

だが皆、騒がず神妙な面持ちだ

良識的な人達が今回選ばれて来たのだろう

こんな優秀な人材が居るのに、この国は・・・

王室ってのはカリスマ性が必要だと思う

力があってもバラバラな方向を向いていたのでは力は分散される

ホメロスの王室に力を一つにまとめるカリスマ性があるのか

・・・恐らく無いだろう


「王室が乗り越えてはいけない線を乗り越えて来たんです、もう元には戻れません」

「どうしても駄目か?」

「意地を張っているように見えますか?だとしたら違います、私はホメロス王室を嫌いになったんです、もう許す事は出来ないでしょう」


国民の立場で王室を許す

この世界で通用するか解らない文句だ

だけど誰かが言わなければ一生気づかないままなんじゃないの?

今まで言う人が居なかったからこうなったんじゃないの?

この世界は成長が遅い

この世界の唯一神、ユンフィスの言葉だ

神様が何考えてるか解らないが、神様の思い通りに動くつもりもない

俺は自分が正しいと思った道を行く


「解った、時間をとらせてすまなかった」

「後で王宮に預けているお金を取りに行きます、全額下ろすつもりです」

「・・・解った、準備させておこう」


俺を説得できなかった事で、ユングさん達は責任をとらされるのかな

見当違いの人間が責任を取るシステムがここにもあるのだろうか


「・・・少し、可哀そうだったね」

「ああ、ユングさん達には申し訳ないよ」

「王室が悪いのにね、変な世界・・・」

「俺達の住んでた世界にだって北○鮮みたいな国もあったじゃないか」

「ああ、確かに」

「北○鮮?」

「サテン、忘れてくれ」


そう考えると俺達の住んでた世界も人の事は言えないな

ホメロスが全然マシで許せてくる

自分が意地張ってた気分になるじゃないか

・・・違う、やっぱりこっちに非が無いもの

病気を治したのに裏切られ

良かれと思ってムスタングを貸し出したのに裏切られた

1億で一晩の相手を断ったのにしつこくされた事を含め、もう許せないよ


「俺は湖の魔法を解いて、採石場へ行って事情を話してくる」

「解った、私はサテンとハンター組合に行ってお別れ言って来る、その後一緒に家を引き払う手続きに行くね」

「どこかで待ち合わせるか?」

「そうだね、終わったらハンター組合に戻るよ」

「ああ、俺も大陸大会辞退する事言わないと」


俺はムスタングを連れ走り出す

まずは湖の湖尻

河川工事の現場責任者がいた


「・・・事情はあらかた聞いてる、ここに来たって事は説得は無理だったか」

「はい、工事の皆さんには関係の無い話なので申し訳ないのですが」

「残念だよ、人足は今日は川に居ない、水門も出来上がってるが耐えられるか解らん、ゆっくり魔法を解除して欲しい」

「解りました」


一気に水が押し寄せないようゆっくりと魔法を解除する

魔法の壁と水門の間に少しずつ水が流れ出す


「・・・この水門もアンタのアイディアなんだってな」

「いえ、知識として知っていただけです、私が考えた物ではありません」

「それでもアンタからまだまだ学べることがあっただろうに、残念だ」

「・・・・・」


始めて会った人なのに、俺の事を惜しんでくれている

中途半端で放り出す事になってごめんなさい

水門は問題なく機能した


「ありがとうな、今までありがとう」

「いえ、最後まで出来なくてすみません」

「十分だよ、川の中からアンタが頑張ってる姿をずっと見てた、どれだけ励まされた事か」

「残りの工事の無事を祈ってます」


俺はその場を後にした

次は採石場だ、ムスタング、着いて来て


「やあ、アンタか、聞いてるよ」

「すみません、突然の事で」

「残念だな、馬ソリの連中も一言礼を言いたくて待ってるぞ」

「え?」


「アンタに何度ソリを押して貰ったか、覚えてないくらいだ」

「俺は怪我も治して貰った」

「馬を気遣ってくれた事、忘れないよ」

「王室の野郎、こんな良い子を・・・」

「ムっちゃんに罰を与えようとしたらしいぞ」

「許せねえな」

「私の事は気にしないでください、違う国で頑張りますから」

「・・・寂しくなるな」

「きつい仕事の中で目の保養だったのに」

「バカ、そんな言い方あるか」

「あははw良いですよ」


別れを伝える

・・・名残惜しいもんだな

事故が無いよう残りの工事を頑張ってくれと伝え、その場を後にした


さて、次はハンター組合か

ムスタングを連れ走る

サテンとカオリが居た


「あ、ごめん、まだ不動産屋行ってない」

「いいよ、話してて」


最後なんだ、積もる話もあるだろう

サテンのパーティの一人が泣いてサテンとの別れを惜しんでいる

やっぱり申し訳ないな

2人は残ってもいいのにな

受付のお姉さんの元へ


「聞こえてきました、ホメロスを出るとか・・・」

「ええ、それで勝手で申し訳ないんですが、大陸大会の代表を辞退させてください」

「・・・そうですか、今年はホメロスから久し振りに大陸20傑が出てくれると思って楽しみにしてたんですが」

「期待に応えられなくてすみません」

「仕方ありません・・・ハンター登録証は他の国へ行っても使えるので、そのままお持ちください」

「そうなんですか、解りました」


「タカネ、ホメロスを出るらしいな」

「ハインツさん」

「何かあったのか?」


ざっと事情を話した


「あの王様は私の嫁の事もイヤラシイ目で見てたんだよな」

「そうでしたね」

「しかし王妃もそんな調子なのか、困ったものだな」

「王宮の他の人達は良い人なんですけどね」


テスタさんだ


「出て行っちまうんだってね?寂しくなるよ」

「お世話になったのに、こんな形でお別れになるとは」

「聞いたよ、王室に嫌がらせされたって、とんでもない連中だね」

「どこか良い国知りませんか?」

「どんな国が良いんだい?」

「治安が良くて・・・女性が治めている国が良いかな」

「・・・よっぽど王様には苦労させられたんだね」

「ははは・・・」

「ピエトロがいいよ、少し遠いけどね」


ピエトロ

高原にある中規模の国らしい

女が治めているなら側室が無いだろうと言う安易な考えだ

年頃の息子とか居ないと良いけど

北東に位置し、馬で3週間くらいかかるそうだ

テスタさんにお礼を言って別れる

サテンが涙を流してお礼を言っていた


以前、ドラゴン討伐の時に助けた最上級ハンター達にお礼を言われた

お陰で怪我も治り、ハンターの仕事を再開出来たそうだ

恩を返せないうちに居なくなってしまうのかと嘆いていた


「そろそろ行こう」

「・・・うん、名残惜しいけど」

「皆さんお元気で」


不動産屋へ

引き払って来た

家具はそのままでいいらしい

次借りる人に使って貰おう


「ちょっと寄りたいとこあるんだけど」


胸を大きくする薬作ってた女の子の魔法使いの工房へ


「え!?おねえさん居なくなっちゃうの?」

「うん、だからこれが最後になっちゃうんだけど」

「そっかぁ、残念だなぁ」

「髪、肩くらいまで切ってくれない?お金も要らないよ」

「だ、駄目だよぉ、こんな綺麗なのに、勿体ないよぉ」


最後なのでバッサリ切って渡そうと思ったが、断られた

毛先の伸びた分だけチョンチョンと切られた


「まだしぼんでないね」

「すごいよ!おねえさんの髪!胸が大きいと大変なのが解ったよ!」

「名前聞いてなかったね、なんて言うの?」

「ユーニス、お姉さんは?」

「タカネ」

「遠くに行くの?お金要らないならお薬持って行って!長旅なら必需品だよ!」


ユーニスから薬を山ほど貰う

手を振り、お礼を言って別れる


「可愛い子でしたね」

「サテンの胸も凝視してたな」

「髪あげたほうが良かったでしょうか?」

「いや、十分だよ」


魔力が強い方が良いらしいからな

サテンも魔法は使えるけど俺の髪の方が良いだろう


「ねえ、どこの国に行くつもりなの?」

「ピエトロって言う国が良いって聞いた」

「マリーベルも良いらしいですよ」

「そうなの?たしかベヒーモスが居るって言う・・・」

「はい、ベヒーモスが居るので他のモンスターが少ないそうです、とても平和だそうですよ」

「・・・ハンターとしてはそれはどうなんだろう」


やっぱピエトロにした

・・・さあ、王宮に行くか

ムスタングを王宮の中に居れたくないな

万が一王妃に見つかったらどうなるんだ?

そう思って王宮に行くとユングとアズバーンが門の前で待っていた


「馬車を貰ってくれ、せめてもの罪滅ぼしだ」

「お金は3人分積んでおいた、確認して欲しい」


幌馬車があった

屋根は幌だが、車体は頑丈そう

お金が荷台に積んである

これまた頑丈そうな鍵付きの木箱がいくつか乗っていた

木箱の鍵を貰う


「タカネ殿の金だけで500kgくらいあったからな」

「馬も頂いて良いんですか?」

「この馬車は2頭引きだ、1頭持ってただろう?」


馬が1匹ついて来た

ホンダを連れて来る

2頭並べて幌馬車にくっ付けて貰う

自分達の荷物も積んだ


「・・・最後にもう一度だけ言わせてくれ、考え直してくれんか?」

「お二人には申し訳ないんですが、王室が変わってくれない限りは・・・」

「・・・そうだな、結局また失望させる事になるか」


「タカネ殿、本来はこの国で稼いだ分、税金を払って貰わねばならないが、免除しておいた」

「え?良いですよ、払いますよ」

「いや、この国はタカネ殿に何もしてあげられなかった、税金を貰う権利は無いよ」


・・・立派だ

王室以外は本当に立派だ

ん?だれか近づいて来た


「タカネ様、私はアクア様の乳母でございます、アクア様の躾が出来てなくて申し訳ありません」

「姫様の?」

「我儘放題に育ててしまいました、その結果、タカネ様に迷惑をかける事になってしまって・・・」

「王妃様に溺愛されてるんでしょ?貴方のせいではないと思いますよ」

「いえ、そんな恐れ多い、わたくしめの責任でございます」


こっちが申し訳なくなるくらい頭を下げた

姫がムスタングを離そうとしなかった事を悔いているらしい

貴方のせいじゃないよ、躾をさせて貰えなかったんじゃないの?

乳母さんは何度も何度も頭を下げた


「では行きます、幌馬車ありがとうございました」

「本当にすまなかった」

「気が変わったら何時でも戻って来てほしい」


サテンが馬車を動かす

出来るんだ、頼もしい

サテンのとなりにカオリが座る

手綱の扱いを習うらしい

俺とムスタングは荷台

大金が乗っかってるから用心しなきゃ


「カオリ、馬に名前つけてあげなよ」

「え?いいの?」

「ホンダはサテンのだから、そっちはカオリの馬だ」

「じゃあ、メスだから・・・シャネルちゃん」

「良いのかな」

「解んない、名前変えるかも」


色々難しい世の中だからな

というかメスなのか

いつの間にか確認してたらしい

さすがセクハラ剣士


首都メルホースの街を出る


「・・・名残惜しいね」

「ああ、でも俺は住めない」

「王室の事だけが悔やまれますね・・・」


どこへ行ったって全てが上手くいく訳じゃ無い

妥協だって必要だろう

だが王様、王妃様の事が嫌いってのは致命的だ

替えの効かないものだしどうしようもない


のどかな土の道を馬車がゆっくり走る

俺達の次の生活が始まる

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