036 優勝決定
ベスト16が出そろった
すぐに俺が呼ばれる
衛兵に連れられ闘技場へ
「次の相手は十傑の8位だぞ」
「十傑はすごいですね、一人も欠けることなくベスト16とは」
「十傑とタカネ殿は早くにぶつからないよう組み込まれたからな」
「わ、私も?」
「今回の大会の目玉だと言っただろう」
知らないうちにシードにされてたらしい
だがそれもここまで
ここからは十傑との対戦だ
闘技場に出る
うおお、強そう
2mはありそうな巨漢
全身毛深いな
鋭い目で俺の事を睨んでいる
武器は斧か
木製の巨大な斧のような形の武器を持っている
・・・あれで俺のスピードについて来れるのか?
「タカネはここまで2試合相手を瞬殺です!音速の瞬殺ミスリル乙女、タカネ!十傑8位に対しどういった戦いを見せるのか!」
なんか通り名が追加されてた
気にしたら負けだ
目の前の敵に集中しよう
「では始めッ!」
開始の合図だ
少し様子見るかな
相手は巨大な斧を軽々振り回している
近付けなくする為だろうか
邪魔だなぁ
動きが不規則で読みずらい
流石は十傑8位と言ったところか
徐々にではあるがこっちに近づいて来ている
斧を横に振り払い攻撃して来た
俺は飛び上がる
相手の攻撃を避けながら、ムーンサルトのような状態で相手の頭の上を飛んでいく
その途中、相手の頭の天辺を宙返りしながらエストックで突く
華麗に着地
どうだ?判定は?
「な、なんと!宙返りしながら相手の急所を突きました!」
相手がガックリ膝をつく
勝ち判定って事で良いんだよね?
会場からは感嘆の溜息
「す、すごい」
「見たか今の・・・」
「なんて美しい戦い方・・・」
少しの間を置いて歓声に包まれる
俺は手を上げ歓声に答える
これでベスト8か
より一層の歓声に包まれた会場を後にした
「ふう、カオリの試合もすぐなの?」
「お、応援してね」
「・・・仕方ないな、相手は十傑?」
「うん、ソマリさん、ハインツさんの奥さんだよ」
「4位か」
強敵だな
相手はたぶん弓だ
近付けさせて貰えるのだろうか
「・・・盾使おうかな」
「カオリはロングソードでしょ?使っても良いだろうけど」
「使い慣れて無い物いきなり使って大丈夫でしょうか?」
「そうなんだよね」
動きが鈍るだけかもしれない
近距離に近づけなければどうしようもないだろう
しかし盾があれば矢を弾ける
どうするのが正解なのか
「決めた、いつも通りで行くよ」
「ああ、それが良いかもな」
「頑張ってくださいね」
カオリが呼ばれる
俺達も立ち見席へ
ハインツさんの奥さん、ソマリさんって言うのか
亜麻色の髪の綺麗な人だったよな
「やあタカネ、順調だな」
「ハインツさんのパーティも全員残ってるじゃないですか」
「いや、ちょうど今ティータがワッツに負けた」
「あらら、ワッツさんの試合見ておきたかったなぁ」
どんな能力持ってるのかな
見て確かめる事が出来るかどうかも解らないけど
万全の状態で臨みたい
カオリとソマリさんが出て来た
ソマリさんは薄い羽衣のような出で立ちだ
セクシーだな
自前の弓に準備された先の尖ってない矢を持っている
尖ってないとはいえ当たれば痛いだろうな
負けるなよカオリ
開始の合図だ
カオリが一気に距離を詰めようとする
ソマリさんの弓攻撃
矢を取り出し弓を引くまでの動きが早い
距離をとりながら、弓を放つ
カオリが避けようとするが避けきれない
肩に矢が当たった
大丈夫か?
大会では鎧をつけていない
衝撃がもろに伝わっているだろう
カオリの顔が歪んだが、それでも突進をやめなかった
ソマリさんもすでに2発目を用意している
動作に一切の無駄が無いな
矢を放つソマリさん
カオリが矢を剣で弾いた
やるなカオリ、あの近距離で弾くとは
しかしソマリさんはすでに3発目を準備している
カオリとソマリさんの距離が詰まる
カオリの攻撃が始まった
ソマリさんは避けようとするが、わき腹をかすったようだ
苦痛にソマリさんの顔が歪む
だが同時に矢を発射した
カオリの腰にモロに当たった
カオリも顔が歪む
これで1対2か?
カオリはもう一回攻撃くらったらおしまいだ
苦悶の表情で更に距離を詰めるカオリ
・・・なんかエロいな
ソマリさんが矢を準備する
カオリが一瞬迷った
剣で受けようか攻撃しようか迷ったな
ソマリさんはその隙を見逃さなかった
カオリは足に矢を受けて終了
あの近距離で剣で全身を守れる訳無いんだ
あの場面では攻撃あるのみだったと思う
ソマリさんが試合巧者だったのだろう
ガックリ膝をつくカオリ
それでも4位から1撃奪えた
健闘したと言って良いだろう
試合が終わり、治療を受ける2人
骨に異常が無ければいいんだが
・・・大丈夫だったようだ
「く、悔しいよぉ」
「惜しかった、実に惜しかった」
「残念でしたね・・・」
「タカネ、仇とってね」
「ああ、任せてくれ」
しばらくしてベスト8が出揃う
少し休憩を挟むみたい
今のうちにトーナメント表見ておくか
うーむ、俺の次の相手はソマリさんか
すごいな、残ってるのは俺と十傑の7位までだ
順当すぎる結果だ
順調に勝てれば準決でハインツさん、決勝でワッツさんかな
「タカネ、マッサージしようか?」
「別にいい」
「善意だからぁ、変なトコ揉まないからぁ」
「・・・解った、頼むよ」
全然疲れてないのだが揉ませてあげるか
カオリもやる事無くなったから役に立ちたいのだろう
控室のベットに寝転がる
腕を揉み、足を揉むカオリ
頑張れ~頑張れ~と呪いのようにブツブツ呟いている
うつ伏せになるとカオリが背中に乗っかって来た
背中を押し、腰を押し、筋肉を揉み解してくれた
ガシャ「タカネ殿、そろそろ出番です」
「はーい」
2人の激励を受け闘技場へ
ああ、マッサージ受けたら少し眠くなっちゃったな
両頬をバチンと叩き、気合を入れて闘技場へ出た
「皆さんお待ちかね!美女対決です!」
ソマリさん、気合入ってるな
弓の張りを入念にチェックしてる
国王に一礼する
・・・エロそうな国王だな、顔がにやけている
そう言えば側室に誘われたことあったっけ
美女対決らしいから、国王も興味津々だ
「では始めッ!」
俺は動かず様子見る事にした
ソマリさんは横に動きながら矢を放つ
はい、スローモーションになった
矢をエストックで弾く
更に2発目が飛んでくる
それをエストックで弾く
ソマリさんの顔に焦りの色が
矢を2本準備した
同時に2本放つ
俺はエストックを左右に振り、2本とも弾く
ソマリさんの動きが止まった
ざわつく会場
「あんなに連続で弾けるものなのか?」
「見えてるの?」
「長い獲物で余裕で弾いてるよな」
ソマリさんが矢を3本準備した
3本同時?
撃てるのか?
俺が動かないのでしっかり狙いを定めている
3本の矢が飛んで来た
どれも俺の体を捕らえている
すごい技術だな
上下にエストックを払い、すべて弾いた
「・・・ま、参りました」
ソマリさんが膝をつく
勝てないと悟ったようだ
「しょ、勝者タカネ!!」
一瞬静まり返る会場
次の瞬間歓声に包まれる
俺は手を挙げて会場を後にした
「よ、余裕だったね、トホホ」
カオリが項垂れている
自分が負けた相手に余裕で俺が勝ったんだ
ショックかもしれないな
これもダイヤのスイッチのお陰
何の苦労もせず手に入れた力だ
考えてみれば不公平だよな
他の試合見に行こうかな
いいや、少し眠たい
このまま休んでよう
すぐに出番が来た
トーナメントだから試合が進むごとに間隔が短くなるな
大きく伸びをして会場に向かう
予想通り相手はハインツさんか
奥さんの敵とばかりに睨まれちゃった
怖い怖い
「ここまで一撃も浴びることなく勝ち進んで来たタカネ!しかし次の相手は十傑1位だ!1位のプライドに賭けてハインツはどう戦うか!」
ハインツさんは両手剣だな
盾も使わないなら隙が多そうだが
さてさてどう戦おうか
「それでは両者構えてください・・・・・・始めッ!!」
ハインツさんは幅の広い両手剣を盾のようにして構えている
隙が無いな
迂闊に飛び込んだらエストックは弾かれてしまうだろう
こっちが体制を崩した瞬間、両手剣を入れられてしまいそうだ
恐らくカウンター狙いだな
よし、左右に大きくステップを踏む
ハインツさんは俺の動きに合わせ盾代わりの両手剣の方向を変える
左にステップを踏んだ時に頭を狙って突きを入れた
ハインツさんがそれに反応し、頭のガードに入る
しかし俺の攻撃はフェイントだ
すぐに右にステップを移し、頭をガードしたために空いた胸に突きを入れる
少し強めに入ってしまった
ハインツさんもフェイントに気付き瞬時に胸のガードに入るが間に合わない
俺のエストックはハインツさんの心臓を突いた
「うぐうッ!」
エストックを引き、判定を待つ
・・・あれ?
おかしいな、反応が無い
「審判!心臓を突かれた!俺の負けだ!」
「な、なんと!全然見えませんでした!勝者タカネ!」
ガックリ膝をつくハインツさん
少し強めに突いちゃったけど大丈夫かな?
「も、問題ない、しかし呆れる速さだ、こんなにあっさりやられるとは・・・」
「正に光速!光速の瞬殺ミスリル乙女タカネ!決勝に進出です!」
音速から光速になっちゃった
やれやれ好きにしてくれ
さて、次の試合はワッツさんと3位のモヒカンの人か
このまま試合を見ていくかな
俺は立ち見席に移動した
「タカネ、決勝進出おめでとう!」
「ああ、ありがとう」
「全然見えませんでした」
「見てても楽しくないかな?」
「観客も何が起こったか解ってないみたいね」
うん、歓声も少なかったな
呆然としてるようだった
でも仕方ないじゃないか、強敵なんだから
エストックを折られても困るから一気に決めるほか無かった
「あ、出て来たよ」
もう一つの準決勝が始まる
ワッツさんはロングソードに盾か
3位のモヒカンは棍棒と盾だ
あの棍棒を盾で受けれるのかな
試合が始まる
両者睨みあいだ
先に動いたのはモヒカン
棍棒を細かく振り回す
ジャブだなあれは
盾で受けるワッツさん
受けながら隙を探す
しかし重い棍棒の衝撃に少し体制を崩してしまった
ここぞとばかりにモヒカンが大きく棍棒を振り下ろす
それをまともに受けず、滑らせるように盾でいなすワッツさん
棍棒がワッツさんの体の横に振り下ろされた
大きく隙が出来たモヒカンの首筋に剣を突き立てるワッツさん
勝負あったな
「勝者ワッツ!これで9年連続優勝に王手です!」
うーん、結局どんな能力持ってるのか解んなかった
戦ってみないと難しいかな
「少し休憩に入ります!次はいよいよ決勝!8年連続優勝のワッツが勝つか!それとも新鋭のタカネが勝つか!今しばらくお待ちください!」
さてさて、じゃあ控室に戻るか
「勝てそう?タカネ」
「解らないよ、どんな能力もってるんだろ」
「動きが見えないほどではありませんでしたが・・・」
「油断は禁物だ」
ムスタングを抱きかかえリラックス
ふう、癒されるぜ
重くなったなムスタング
お前の成長が楽しみだ
うーん、休憩どれくらいあるんだろ
あんまり待たされると眠くなりそうだ
そろそろ夕方だな
早く帰って風呂に入りたい
30分ほど経っただろうか
「タカネ殿、決勝戦、お願いします」
「はい」
長い廊下を会場に向かう
今日何回目だっけ?
6回目?長時間だから待ち疲れちゃったな
エストックを取り扉を通り抜ける
大歓声に迎えられた
手を挙げて声援に答える
より一層の歓声
気持ち良いもんだな
ワッツさんも出て来た
おや?ロングソードからショートソードに変えたな
盾は変わらず持っている
小回り重視にしたのかな
しかしそれだとリーチが・・・
まあこっちのスピードを警戒しての選択と思えば解らんでもないけど
まあ何があるか解らない、用心しよう
「さあ8年連続優勝のワッツか!それとも光速の瞬殺ミスリル乙女、タカネか!勝利の女神はどちらに!」
乙女はやめて欲しい
力が抜けるわ
「それでは両者、準備は良いですか?・・・・では、始めッ!」
・・・動かない
カウンターか?
こっちが飛び込んだところをかわすか受けるかして攻撃してくる作戦か
まあ、俺の対処法としてはそれが一番妥当なのかもな
かといっていきなり飛び込むのは嫌だ
何が待っているか解らない
俺は高速で相手の後ろに回り込もうとする
・・・ついて来るな
俺の動きに合わせ、体を反転させた
見えているのか?
流石はルビー
更に後ろに回り込もうとする
ついて来るな
いきなり逆回転
それでもついて来た、これは・・・
探知能力だ
眼で見えてるというよりは俺の位置を探知している
そうか、俺も持っている探知能力をワッツさんも持っているのか
ならば揺さぶりはやめだ
正面から対峙しよう
俺の意図を感じてか、ワッツさんが守りを固める
突く
ひたすら突きまくった
長いリーチ相手にワッツさんは防戦一方だ
頭を狙い、足を狙い
盾が追いついて来なくなる
足に1発、肩に1発、入ったところでワッツさんがたまらず後ろに飛びのく
あと一撃で俺の勝ちだ
審判には見えているだろうか
ワッツさんの息が荒い
どうする?一気に決めるか?
カウンターを狙ってるな
打たせても良い、どうせスローモーションになるんだ
俺はワッツさんの足元にちょっと深めに打ち込んだ
それを避け、右手をいっぱいに伸ばしカウンターを打って来るワッツさん
スローモーションになる
俺はワッツさんのカウンターを避け、後ろに回り込んだ
軽く、エストックで後頭部を突く
「な、なんだと」
ワッツさんの声が震える
探知は出来たのだろうが腕を伸ばしきった状態ではどうしようも出来ない
俺の位置が瞬時に変わってしまった事にも納得は出来ないだろう
だがこれがダイヤの能力だ
不公平だがルビーでもここまでの差があるんだな
「しょ、勝負あり!ゆ、優勝は!光速の瞬殺ミスリル乙女!タカネ!!!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
「タカネには賞金500万と1か月後の大陸闘技大会への参加資格が与えられます!!」
大歓声の中、ホメロス闘技大会は幕を閉じた
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「ふう、疲れた」
あの後王様から賞金とトロフィーを貰った
王様の眼が俺の体を舐めまわしてた
やれやれ、気持ち悪いぜ
ワッツさんも勝てるとは思ってなかったみたいだがそれでも相当なショックだったようだ
顔面蒼白になり、ちょっと同情してしまうくらい落ち込んでいた
ここまでの差だとは思わなかったんだろうな
良い人なのに、闇落ちしそうだった
「うーん、危なげなかったね」
「改めて感じたよ、俺の能力はズルいよな」
「うん、すごく羨ましい・・・」
「優勝はしたけど後味が悪い」
実力じゃないもんな
それを言ってしまえば、ワッツさんやハインツさん、カオリもそうなっちゃうんだけどさ
ここまで差があるのでは勝負にならない
まだこの世界に来て2,3カ月なのに長年頑張って来たルビー、エメラルドにあっけなく勝ってしまうのでは・・・
「タカネ、後日発表だそうですが、十傑にランクインするそうですよ」
「そうか、何位になるんだろ」
「詳しく集計してからだそうですが、5位か6位だそうです」
「ふーん、なんか特典あるのかな」
「さあ・・・」
大陸闘技大会の権利だけでいいか
さて、帰ろう
遅くなったから夕食は外で済ませる
ムスタングも入れて貰える大衆食堂
俺が優勝したことを知ってる人が居て奢って貰えた
お礼を言って帰宅
風呂に入る
「・・・ダイヤのスイッチ持ちってのは隠した方が良いのかな」
「ああ、嫉妬の対象かもね」
「ワッツさんの落ち込みようが見ていて痛々しかったよ」
もう結構知られてしまっているが
不用意に言うべきでは無かったのかもしれない
そういうもんかもな、考えなしだったけど
これからは気を付けるか
ん?そういや俺がダイヤだって言ったのはカオリだけなんだよな
カオリがハインツさんに言って、ハインツさんがワッツさんに言って・・・
もう止めよう無いかもな
嫉妬、僻みの対象ってのは嫌だなぁ
ロクな事にならない気がする
「そうだよタカネ、だからカオリはタカネの胸を揉むんだよ」モミモミ
・・・そうだったのか
ダイヤのスイッチの代償は大きいんだな
カオリのセクハラも仕方がないそんな訳あるか
カオリのお尻をペンペンして寝た