033 区切り
「まあでも、インキュバスの影響を受けたって事は、カオリは正常だったんだな」
「正常ってどういう意味よ、人の事を変態みたいに」
・・・変態じゃないですか
ほら今も俺の胸を触ろうとしてる
「そりゃ私も彼氏くらい欲しいわよ、頼れる彼氏が」
「見つければ良いでしょ」
「タカネが一番頼りになるんだもの、比べてしまうと物足りないのよね」
俺のせいでしたか
人の事さんざんビビリって言ったくせに
正常と言うより両刀が正しいのかもしれない
さて今日は首都メルホースに帰る日だ
2人は馬なので俺は先に帰る
メオラの入口で別れ、ムスタングと走り出す
すぐに飛び始めるムスタング
随分なめらかに飛んでるな
スピードも上がってる
元々滑空の時はすごいスピードだったんだよな
この分だと平地でも俺より早く飛ぶようになるだろう
途中、ハインツさん達を見かけた
ハインツさん達も首都に帰るのか
抜き去り際に軽く手を振る
馬に乗ってたが、俺とムスタングの敵では無い
あっさり抜かしてやった
呆れてたな
そんなこんなで6時間程で首都に着いた
ムスタングも良く頑張ってくれた
道中2回ほど疲れたので抱きかかえて走ったが
家に帰り、荷物を置く
1週間ぶりの我が家だ
空気を入れ替えてやり、休憩
ふう、やっぱり家が一番落ち着くな
すこし休んで風呂へ
変わらず湯を湛えている
ああ、気持ち良い
洗濯どうしようかな
旅の間に溜まった洗濯物があるんだが
・・・明日でいいか
今日はゆっくりしよう
風呂から上がり、夕飯の買い出しへ
ムスタングを連れ商店街を歩く
なんだか1週間離れただけで随分懐かしいな
戻って来たぜ、我がホームへ
買い出しついでにハンター組合へ
え?北の街でドラゴン出たって?
メオラに行ってるハンターが多いから苦戦しているらしい
昨日最上級の人達が8人で即席パーティ組んで出かけたそうだ
明日にでも様子見に行ってみるか
今日は帰ってゆっくりした
翌日、ハンター組合
「まだ狩られていないの?」
準備万端でハンター組合へ
昨日8人パーティが挑んだが、逃がしてしまったらしい
被害も多く失敗になった
「依頼を受けるなら北の街ホメットで受けてください、ここでは扱ってません」
そうか、受諾がダブるとやっかいなのか近くの街以外では依頼を引き受けられなくなってるらしい
依頼横取りとかで揉めそうだもんな
ムスタングを連れホメットへ
30分くらいで着いた
ホメット ハンター組合
尻を触られそうになったがムスタングを見て後ずさる下品そうなハンター
またこれか
新しい街に来るたびこれじゃないか
「すみません、ドラゴンの依頼受けたいんですが」
「・・・貴方がタカネさんですか、お噂はかねがね聞いてます」
ハンター登録証を見て受付のお姉さんはそう言った
組合の中が少しざわついたな
俺の噂がここまで届いているらしい
「翼竜です、動きが早いので気をつけてください」
翼竜?
空飛ぶのか
この前のドラゴンとは別物なんだな
目撃場所へ急ぐ
沼地だ、少し歩きづらい
ムスタングは飛びっぱなしだ
足を取られるから嫌なんだろう
居た、汚い水場に居た
こんな汚い水よく飲めるな
緑色のドラゴン
10mほどだろうか
こっちに気がついた
途端に飛び立つドラゴン
翼を広げると横にデカいな
20mくらいあるかもしれない
30mほど上空に飛び上がりホバリング
どうしよっかなー
お、滑空してきた
すごい早さだ
だが横に避ければ済む
小回りは利かないだろう
うお!風圧がすごい
反対側の避けたムスタングが地面に転がる
大丈夫か?
少し面食らったみたいだが大丈夫そうだ
沼地で体が汚れちゃったな
後で洗ってやらないと
ホバリングで俺たちを見つめるドラゴン
よくもムスタングを汚してくれたな
俺はこの前覚えたかまいたちの魔法を使う
翼膜が切り裂かれ、空中でバランスを失ったドラゴンが地面に落ちる
だが下は柔らかい沼地だ
これで死んだりはしないだろう
地上で体勢を立て直し、咆哮をあげるドラゴン
当たり前だけど、すごい怒ってるな
おや、お腹側が柔らかそう
この前のドラゴンは地面を這いずり回ってるせいか、お腹側も硬そうだったが
胸板がある、心臓の位置がわかりやすい
終わらせるか
俺は一気に距離を詰め、ジャンプして心臓にエストックを突き立てた
大きく唸り声をあげるドラゴン
素早くエストックを抜き離れる
大暴れしているが次第に力が無くなっていく
頭がどんどん下がっていき、力尽きた
うーむ、こんなもんか
「ムスタング、大丈夫か」
「クー・・・」
羽に泥が付いたせいか飛びにくそうだ
抱き上げ、ドラゴンの上に乗せる
俺はドラゴンのシッポを持ち、引きずる
沼地なので引きずりにくいな
でもこの前のドラゴンより随分軽い
そのままホメットまで引きずっていった
ホメット、ハンター組合
「すみません、ドラゴン狩ってきたんで査定してください」
「え?!もうですか?」
外にはすでに人だかりが出来ている
受付のお姉さんが外に出て呆然とした
「・・・・・一匹丸ごと・・・少しお時間ください」
はいはい、じっくり鑑定してくださいよ
報酬は400万だったが査定は600万だった
翼竜は素材として使える部分が少ないらしい
柔らかい部分多いもんな
まあ仕方ないか
1000万受け取り、首都に帰った
昼くらいだろうか
ムスタングを洗おう
大きな桶にお湯を汲む
水の中に入るの見たことないけど大丈夫かな
・・・大人しくしてる
洗ってくれていると解っているようだ
羽を丁寧に洗ってあげないと・・・
洗いにくい、お湯をかけながら羽を一本一本洗っていく
気持ちよさそうだ
これから時々は体を洗ってやるか
ムスタングの体を乾かし、さてどうしよう
少ししか時間ないけど採石場へ行ってみよう
「おお、来てくれたのか、これで今日で終わりそうだ」
俺が12往復すれば第2工事のポイントすべてに石を運び終えるらしい
じゃあ頑張りますか
1週間ぶりに石を運ぶ
・・・軽く感じるな
俺はまた鍛えられたのだろうか
ムスタングが飛ぶ
帰り道も頑張って上昇する
ムスタングももう一人前だな
12往復してお疲れ様
「さてさて、石を敷き詰めるのが全然追いついていない、川の開通は10日後くらいだと思ってくれ」
「そうですか、じゃあ明日から次の川に石を運びます」
明日はサテンとカオリが家に帰ってくるからな
午前中だけ石を運ぼうかな
ムスタングと一緒に夕食の買出しへ
少し遅くなっちゃった
家に戻り、夕飯食べて風呂入って寝る
あくる日、今日も朝から採掘場へ
「さて、今度の川もポイントを100ヶ所に分けた、ただし一ヶ所の必要数が120tになるから気をつけてくれ」
「解りました」
「次の現場は1本目と2本目の真ん中の大きな川だ、馬ソリで1日3往復の距離だな」
「そうですか」
「それで、上流から数えて81~100、下流の20ポイントは馬ソリだと遠すぎて一日3回運べない、あんたに頼みたいんだが・・・」
「いいですよ」
そういう事らしい
一番負担がかかるけど、しょうがないよね
第二河川工事に使った道も遠回りになるので使えないらしい
仕方ない、また混雑した道を行くか
・・・結局午前中は8往復しか出来なかった
40tか、全然だな
実際遠すぎるから仕方ない
切り上げて家に帰る
「さて、何時頃帰ってくるだろうか」
昼食を軽く済まし、ゆっくりしてたら帰ってきた
「やっとついたぁ」
「おかえり」
「3日は長いですね・・・」
「トラブル無かった?」
「カオリが馬上の後ろから私の胸を揉むんですよ」
「駄目だぞカオリ、危ないじゃないか」
「だ、だってぇ~」
腰にしがみついてたら揺れる胸が気になるのは解るけどさ
あの誘惑には俺も負けそうだった
「お風呂入りたい」
「私も・・・」
「入ってきなよ」
「タカネは入らないの?」
「俺は夜でいい」
「タカネ、洗濯物貯めすぎです」
あ、ヤバイ、忘れてた
「仕方ないですね、洗っておきますから」
サテン、疲れているだろうにすまない
「タカネには私の体を洗わせてあげるよ」
「・・・・・」
結局3人で風呂に入ることになった
サテンは洗濯しながら
俺はカオリとサテンの体を洗ってあげる
「ふう、やっぱり家のお風呂が落ち着きますね」
「そうだね、狭いけど3人くっついて入るのがいいよね」
「・・・それは同意出来ないけど」
脚伸ばせたほうが良いじゃないか
狭いからカオリが胸を触ろうとしてくる訳だし
今も狙われてるな
キッと睨むとカオリがビクっとした
風呂から上がりゆっくりする
サテンも洗濯を終え、リビングで椅子に寝っ転がる
何事もなく初めての遠出が終わったな
お疲れ様
二人も明日くらいはゆっくりしてほしい
「まだだよ、まだ終わってないよ」
「ん?」
一休みしたあと、宝石と小切手持って外に出る
そうか、換金がまだだったね
まずは宝石屋で査定してもらう
「むむ、どれも素晴らしい!5400万でどうでしょう!」
メオラで査定してもらった時より1400万もあがったぞ
首都だと貴族も多く需要が多いからだそうだ
メオラで売ってもどのみち首都に運ばれたんだろうな
それで1400万も違ってくるとは・・・
1800万ずつ分け、王宮へ
「ああ、伝書隼が届いてるよ」
ハンター組合も、オリハルコンの商人もしっかり連絡しておいてくれたらしい
1億と2千万の小切手を渡す
3人で分けると4千万だ
「ど、どうしよう、5800万だよ」
「こんなに家に置いておくのは不安です」
「じゃあ預ければ?」
2人とも5000万だけ王宮に預けることにした
指紋を取られ、引き出すときに必要だと説明を受ける
簡単すぎる手順にカオリはちょっと不安そうだ
日本の銀行だともっとややこしいもんな
でも商人たちも利用しているシステムだ
誤魔化されるような事もないだろう
俺も持ち金が9300万くらいあるが
・・・1億になったらまた預けに来るか
ただ今の所持金
預け 手持ち
タカネ 21億 9290万
サテン 5000万 830万
カオリ 5000万 1020万
「大分余裕が出来たね」
「というか贅沢しなければもう働かなくていいかも・・・」
「サテン、そういう考えは良くない」
「す、すみません」
実際そうかもしれない
この首都では安い家なら500万くらい、高い家でも3000万くらいで土地付きで買えるらしいからな
ちなみに今住んでいる家は賃貸で月12万の家賃だ
購入となると1500万くらいの物件だそうだが
夕方になった
サテンとカオリはお土産をパーティメンバーに渡してくるって
俺は夕飯の買い物をして家に戻る
俺が先に家に着いた
うーむ、では夕飯の準備をするか
夕飯の準備が終わった頃に2人が帰って来た
積もる話もあったのだろう
明日は2人共休むそうだ
疲れが貯まってるだろうからゆっくりするといい
「タカネは休んでるの?」
「いや、休んでないな、でも河川工事があるからなあ」
「無理は駄目ですよ」
「ああ、解ってる」
・・・それから10日後
3番目の河の下流から7つ目のポイントまで石を運びきった頃
王宮から内政官のユングさんが来た
「第二河川工事の石の敷き詰め、最終点検が終わった、止めていた水を流して欲しい」
はいはい、湖の湖尻に行き氷の魔法を解き、土の壁の魔法を解く
ここも水門が作られていた
水が川に流れ始める
下流まで確認、問題ない
「・・・問題無いようだな、報酬は400万+石運びで200万だ」
「ありがとうございます」
「次の川は一番大きな川だな」
湖の湖尻に戻る
大きな湖尻だ、幅が25mくらいある
例によって湖をえぐるように凍らせる
その内側を土の壁の魔法で補強
「うむ、相変わらず見事だ」
「早く終わらせたいですね」
「ああ、この川が一番重要な川だからな」
一番大きな川をせき止めた事で他の川の水量が増えているはずだ
この為に他の川から先に工事したのだろう
ユングさんはそれを見に行くって
十分余裕がありそうだったから大丈夫だと思うが
氾濫したりしてないよな?
・・・俺は帰るか、なにかあればユングさんが呼びに来るだろう
ふう、川の工事も2つ終わったか
区切りがつくとホっとするよね
最後の川が一番大変だけど
川の成形だけでもすごく時間かかりそう
俺はそれが終わるまでに少しでも多くの石を運ばなければ
2人が帰って来た
「タカネ、カオリ様が最上級になったよ~」
「おお、おめでとう」
「サテンも上級になりました」
「え?マンティコア倒せたの?」
「はい、コカトリスに比べると全然怖くないですね」
そうか、メオラまでの旅は2人を大きく成長させたのかもしれない
良かった良かった
「まあ、当分は上級で腕磨くけどね」
「私もマンティコア5匹くらい倒すまで上級は挑戦しません」
油断、奢りも無いようだ
感心感心
夕飯を食べ、風呂に入る
「でも最上級になったらホっとしちゃった」
「ああ、一つの区切りだからな」
「私は最上級になれなくても良いです」
「上級でも十分だと思うよ、サテン」
カオリはいつか最上級になると思っていたがサテンが上級まで来るとはね
全然予想できなかったな
最初の頃はビクビクしてたもんな
やっていけるか心配だった
「私はまだまだですよ、慢心するなとテスタさんに言われてますので、たとえゴブリンでも死に面した場面では意外なほどの力を出すのだそうです」
火事場のバカ力ってやつか
皆生きる為に必死なんだ
別に不思議な事じゃ無い
「明日はお休みです」
「そうなの?私もー」
「そうか、俺も工事一区切りしたし休もうかな」
「皆休み?だったら海に行こうよ」
海だと?
「南に馬で2時間ほどの場所にリゾート地があるらしいよ」
「へえ」
「良いですね、私は海初めてです」
そうか、サテンは山奥で生まれたからな
でも海って事は
「2人の水着はカオリが選んであげるからね!」
「絶対ヤだ」「それは嫌です」
「えええ~~!」
海か、久し振りだな
少し楽しみだ