030 ダンジョン
接続障害に萎える
朝ご飯を食べ、ハンター組合へ
ハインツさんが居た
「ティータが石化された?!」
昨日ダンジョンの地下2階に降りたハインツさん達
モンスターに石化されたそうだ
「うむ・・・今教会で治して貰っているが」
「治せるんだ、良かった」
「コカトリスだ、始めて見た、気を付けろ」
コカトリス
雄鶏の上半身、ドラゴンの羽と胴、蛇の尻尾
眼があっただけで石化し猛毒も持っている
そんなもんどうやって倒せばいいんだ
ちなみに飛べないらしい
「あまり頭は良くないし鈍感だ、速攻で後ろから倒せば大丈夫だとは思うが」
「最初からこっち見てたらどうするの?」
「石でも投げて音で後ろを向かせればいけるだろう」
簡単に言うけどさ
いやだよ、角を曲がったらいきなりご対面とか
察知能力あるから大丈夫だと思うけど
サテンとカオリが不安そうな顔をしている
「地下1階には居ないんでしょ?」
「解らん、とにかく広いからな、まだ探索しきれて無いだろう」
「そうですか、気を付けます、ありがとう」
「どうする?2人共怖くなったなら・・・」
「た、タカネは行くんでしょ、だ、大丈夫だよ!」
「うう、どうしましょう」
サテンは怖気づいてしまったようだ
「今日はとりあえず地下1階だけにしておく?」
「・・・はい」
足取りの重いサテンをひっぱりダンジョンへ
入口に怪我人だらけだ
「だ、大丈夫ですか?」
「うう、トロールの大群が・・・」
「き、気を付けろ」
「・・・・・」
取りあえずヒーリングで治してあげる
サテンが青い顔してるな
本当に行けるのかこれ
「サテン、大丈夫?」
「だ・・・いじょうぶです」
「サテン、私が守るからね」
・・・・・行くか
階段を下りていく
長い階段だ
100段くらいある
終わりが見えて来た
お?なんだこれ
「うわあ、広い・・・」
いきなり野球場くらいの洞窟が広がっていた
天井も高そう
光り苔かな?
微かにだが明るい
光の魔法を使い、天井に飛ばす
一気に明るくなった
あ、奥にトロールが3匹居た
やばい、その手前にハンターが居るじゃないか
トロールがハンター達を見つけ、走り出す
逃げ出すハンター
ヤバイヤバイ、氷の魔法を撃つ
10本以上のつららが飛んでいき、トロールに当たった
3匹とも凍った
「すみません、不用意な事しちゃって」
「お、おお、ビックリしたよ」
「あんな近くに居たとはな」
気付いてなかったか
俺も気づいてなかった
100mくらい離れてたからかな
「しかし助かったよ、松明ではモンスターをおびき寄せてしまうからな」
「こうも広いとどうしていいやら」
改めて見回す
野球場くらいの洞窟
横穴がいくつも開いている
どこから調べればいいのやら途方に暮れる数だ
「更に枝別れしてたり繋がってたり、もうこんがらがってしまうよ」
「地下2階はあそこらしい、ハインツが印をつけてた」
見ると一つの横穴に赤い文字で大きく『↓』と書いてあった
モンスターの血で書いたのかな
結構えげつない事するなあ
「どうする?」
「どこが探査済みかも解んないね」
「あっちにモンスターが居るな」
「そっか探知出来るんだ」
だが壁の向こうだ
その方向には穴が2つ開いている
どっちだろう
穴に近付いてみる
むむ、気配が増えた
6匹?かな
待てよ別方向からも気配が
すごい密集率だ
エサとかどうしてるんだろ
「多分こっちだと思う」
「入ってみる?」
「サテン、離れないで」
「は、はい」
横穴を進む
・・・居るな
光の魔法を飛ばす
うわ、また随分と広い部屋だ
横穴が無数に開いている
その部屋の中にミノタウロスが6匹居た
瞬時にイマズマの魔法を撃とうと思ったが出ない
洞窟の中だからかな
ミノタウロスが気づいて向かって来る
カオリが身構える
俺は火の魔法を撃とうとして躊躇した
火が燃えれば酸素が減る
洞窟の中の酸素を奪うのはどうなのだろうか?
広いとは言え・・・
迷っていたらサテンが土の壁を出した
2匹が壁にぶつかる
更にもう一つ壁を出す
ミノタウロスの片足の下から壁が出現し転ばせた
そのミノタウロスに脚を引っ掛け更に転ぶ
ナイスだサテン
俺とカオリは飛び出す
俺は立ってる2匹を処理する
カオリは倒れてる2匹の頭を2発
次は壁にぶつかった奴らだ
頭を抱えてるミノタウロスに一撃
倒れていた一匹に一撃
終わったか
まだ気配がするが遠くだ
別の部屋だろう
「ふう、助かったよサテン」
「タカネ、なんで魔法撃たなかったの?」
「出なかったんだ、イナズマと炎は使えないかな」
「そうなんだ」
はっきりしたことは解らないけどその2つは封印しよう
「ねえ、どうしよっか」
「・・・・・」
改めて部屋を見渡す
さっきよりは狭いがそれでも50m四方くらいあるんじゃないかな
その横に無数の穴が
更に床にも穴が開いている
これは地下2階に繋がっているのだろうか
光の魔法を飛ばしてみる
・・・延々落ちて行って見えなくなった
300m以上の深さだと思う
「・・・途方に暮れちゃうね」
「・・・ああ、そうとう深いダンジョンなのかもな」
これだけ広いと財宝を見つけるのも運だと思う
とてもじゃないが1週間で調べきれるとは思えない
「ムスタング、落ちるなよ」
穴を覗きこんでいるムスタング
まあお前は飛べるからなんとかなるかも知れないけど・・・
自分の手を見ているサテンに気付く
「どうした?サテン」
「ま、魔法が大きかったような」
「・・・ああ、腕輪の効果でしょ?」
「おもちゃじゃ無かったんですか?」
「ちゃんとしてくれてるんだね、俺のプレゼント」
効果は自分で試したから折り紙付きだ
大切にしてくれよ
「こっち行ってみようか」
「何か居るの?」
「この穴かどうかは解らないけど」
違った
うねり狂った横穴はまた広い部屋に出た
部屋の中には何もいない
またも無数の穴が開いている
「これ、迷子になるんじゃ」
「そうだな、マッピングとかした方が良いのかな」
「私、自信無い・・・」
「俺もやった事無いよ」
こんなややこしいとマッピングも無理なんじゃないだろうか
「私がやってみます」
サテンがやってくれるらしい
紙と書くものも持っているのか、準備が良いな
いったん最初の野球場ほどの部屋に戻る
入口から近い横穴から順番に探っていくか
この辺は一番最初に他のハンターが調べて居そうだが・・・
長い横穴
ああ、広い部屋に出た
横穴がたくさん開いている
いったいいくつ部屋があるんだ
すぐ隣の穴に入ろう
うねっている
随分長い
どこに出るんだ
あれ?明かりが見えて来た
ここは・・・
ミノタウロスが転がってる
床に穴が開いている部屋だ
こんなとこに出るのかよ
「サテン、大丈夫?」
「はい、さっきはあの穴から出て来ました」
「よく解るね」
俺にはどの穴だか見分けがつかない
カオリを見ると手を上げ首を振った
いったん戻り、隣の穴に入る
お、ここは先に何かが居そう
慎重に行こう
皆にそう伝え進んでいく
2匹だ
トロールか
光の魔法を部屋の中央に飛ばす
トロールが気づいた
こっちに向かって来る
サテンが土の壁を出す
トロールの下から盛り上がり、一匹を転ばせた
カオリがそちらに向かう
じゃあ俺は立ってる方
一気に間合いを詰め、心臓を一突き
カオリも転がってるトロールの心臓を突いた
ここは比較的せまい部屋だ
横穴も入って来た穴を含め3つしかない
じゃあその内の一つへ入ってみようか
うねり狂った道を進む
明かりが見えて来た
行った事のある部屋に出るのだろうか
・・・最初の部屋だ
でも随分おかしな方向から出たな
方向感覚を狂わせられてる
戻るか
残ってた穴に入る
枝分かれしていた
右に行ってみるか
・・・ああ、また広い部屋だ
暗いから始めてくる部屋か
明かりの魔法を出す
無数の横穴が出現する
・・・・・・・・・
「もう、なんなの?すごい疲れた!」
宿に戻り、椅子にドカっと座るカオリ
ダンジョンの中、時間の感覚も狂ってしまったが一度出てみると夕方だった
「結局収穫が何も無かったな」
「ちょっとマップを整理してみます」
結局見つけただけで27部屋
だがまだまだありそう
サテンはよく区別がつくよな
「でも二人ともモンスターは余裕だったな」
「サテンの土の魔法の使いどころが良かったよ」
「ああ、俺も思った」
いいタイミングで出すんだよな
モンスターがうまい事引っかかる
「パーティで戦う内に慣れたのです」
「パーティで戦うのはサテンが一番経験あるもんな」
俺みたいに一人で戦ってると気づかない連携
前衛の邪魔をしない補助的な働き
テスタさんはよくここまでサテンを育ててくれた
「ダンジョンで炎の魔法が使えないなら、私には弓と土の壁の魔法しか残りません」
「頼りにしてるぞ、サテン」
サテンのマッピングにもかかっている
一番重要だと思う
明日も地下1階の探索かな
何か見つかるといいけど
就寝
次の日の朝、出かけようとしたら先に宿泊代払ってくれと言われる
高級な宿なので通常は後払いなのだが
俺たちがハンターだとは思わなかったらしく
ハンターは帰らない可能性があるからと言われた
ああ、死んじゃうってことね
仕方ない、36万払う
お金減る一方だなあ
とりあえずハンター組合へ
「また、ハンターが石化されたそうだ」
そういうのはハインツさん
ティータが後ろで不貞腐れてる
治ったんだ、良かったね
「救出依頼が出てるぞ、3人分」
「3人も石化されちゃったんですか」
「1人残ったが手に負えず帰ってきたそうだ」
地下2階での話だ
可愛そうだが今行っても迷いそう
俺達はじっくり地下一階から攻略していきたい
ダンジョンへ行く
朝から怪我人多いな
夜も潜ってるのかな
それとも迷ってしまって出るのに時間かかったとか?
回復してあげる
治ったらまたダンジョンに飛び込んでいった
懲りないな
金のためか飽くなき探究心か
命だけは大切にして欲しい
俺たちも入るか
正直腰が重いんだけどね
昨日俺が作った明かりの魔法がまだ残ってる
放っておけば一ヶ月以上明るいままだろう
持続時間は俺にも解らない
見える範囲にはモンスターは居ないな
だが下から気配をたくさん感じる
地下2階のものなのか、3階のものなのか
昨日ここでは感じなかったからモンスターも移動しているんだろう
当たり前と言えば当たり前の事だが
サテンの指示に従い、横穴に入る
昨日の続きだが、もうごちゃごちゃしてて俺には解らなくなってる
モンスターを警戒しながら前に進む
部屋に出ては横穴へ、戻っては横穴へ
お、気配を感じるぞ
それも5匹
皆に伝え慎重に進む
暗い部屋だ
初侵入に部屋だな
部屋の中央辺りに明かりの魔法を飛ばす
うわ、トロールだよ
これはヤバイ
瞬時に氷の魔法を飛ばす
3匹が凍りついた
サテンが土の壁を出す
1匹が転ぶ
それにカオリが走り出す
じゃあ俺は立ってるもう一匹
振り向いたところを距離を詰め、エストックで瞬殺
カオリも倒れてるトロールの心臓を突いた
ふう・・・なんかある!
壁の一辺、床から1m半くらいのところにくぼみが
そのくぼみに木箱がある
カオリが走った
ズルイ
木箱を空けるカオリ
おいおい、もうちょっと警戒して欲しい
中から剣を取り出した
輝く剣、綺麗だ
「それって、ミスリル?」
「わ、解んない、すごく重いよ」
「・・・銀ですね」
銀か
刃がない、装飾用の剣みたいだ
高く売れるのかな
ふう、やっと一つGET
宿代くらいにはなって欲しい
ん?誰か来た
俺たちが入ってきた横穴の反対側から
他のハンターパーティだ
トロールの死体を見て後ずさり
何も言わず戻っていった
お宝見つけたところだからちょっと緊張した
横取りしようとか考える奴もいるかもしれない
気をつけなきゃ
その後、サテンの指示に従い、あっち行ったり、こっち行ったり
ぅぅ、辛い
どこも似たような部屋に見える
サテンはどうして見分けがつくんだろうな
他のパーティにバッタリ
こんなとこでナンパすんなよ
ムスタングが威嚇してくれる
ダンジョンモンスターと勘違いしたのか構えるハンター
俺の怒りの右ストレート
死なない程度にぶっ飛ばした
次の通路、戻る、また次の横穴・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「はあ、結局何部屋あったの?」
「今確認します」
宿に戻ってきた
地下1階は取り敢えず、すべて探索したらしい
外に出ると結構暗くなってた
精神的に疲れたなあ
「結局この3つだったね」
「ああ、高く売れるといいな」
銀の剣の他に、金の装飾品を2個見つけた
2つとも同じ部屋にあった
価値は今のところ解らない
時間が無くて換金に行けなかったから明日にしよう
「部屋数が解りました、63部屋でした」
「そんなにあったのか」
「直径3kmの円の中にそれだけの部屋があると思ってください」
「3km?!」
大きさまで把握してるのか
でもたぶんそれくらいありそう
3kmの中をあっちこっち行ったり来たりしてたのか・・・
途中、大きな部屋の中央に川もあったんだよな
どこから流れて、どこへ流れて行くのか・・・
サテンの地図を見てみる
円の中を無数の部屋とうねり狂った通路が書き込まれていた
ややこしすぎて頭痛くなる
こういう細かい作業は俺向いてないな
延々石を運ぶような脳筋作業が俺にはお似合いだ
夕飯を食べ、風呂に入る
「ふー、染み渡るー」
「タカネ、おじさんみたい」
「頭が疲れちゃってさー」
「確かに・・・」
「弱音なんてタカネらしくない、明日もあるのに」
「・・・・・」
サテンがやる気まんまんだ
休みたいとは言えない雰囲気だ
休みたいなあ・・・
「でもさ、地下一階は他のパーティが倒したせいもあってかモンスター少なかったけど、地下2階はウジャウジャいるよ」
「慎重に行きましょう」
「は、はい」
ダメか
明日も頑張るしかないのか
嫌だなあ
仕方ない、明日に備え体を休めよう
就寝