003 水神の滝
外が夕闇に暮れている
ずっとベットに座り考え込んでいる
考えても考えても不安は消えない
はあ
何度目の溜息だろうか
考えるのに飽きて来た
少し横になりたい
服を脱ぐか
・・・服を、脱ぐか
・・・・・・・
ど、どこだ?ボタンはどこ?は、早く脱ぎたい
い、いや、なんか変な意味じゃなくて
し、シワになったら困るから!
良さそうな服だし
これも神様の贈り物かな?
くそっ、どこだよ!
あ、横か
変な服だな、金色の刺繍が綺麗だけど
体にピッタリフィットした体のラインがハッキリ出る服だ
ぼ、ボタンを外すぜ
あ、慌てるな、別に普通の事だ
人間は服を脱ぐときボタンを外すんだ
何も悪い事じゃない
何故か罪悪感感じるけど
一つ、二つ、三つ、四つ
あ、楽になってきた
気付かなかったけど相当窮屈な服だったんだな
首を抜き、完全にシャツを脱いだ
ドーン
・・・すげえ
こんなもんが収まっていたとは
ブラジャーはまだしているが開放感が襲って来る
これ着る時また大変そう
寄せて寄せて押し込めて
キチンとしないと着れないと思う
・・・さ、さて、ぶ、ブラジャーも外そうかな
多分もっと楽になるはずだ
疲れた体を癒してやらねば!
どこだ?ホックがあるはずだ
後ろか?これがそうなのか?
どうやったら外せるんだよ
後ろ手に試行錯誤する
ズラすのか?解らん
待て、焦るな壊しちゃったら困る
落ち着け、指先に形状を感じろ
全神経を指先に集中
ダイヤのスイッチで精神集中の能力もアップしてんのかな
そんな事どうでもいいわ!
早く外れろよチキショウ!
パチ
あ、、、外れた
ボロロン
!!!!!!!!!!!!
うっほほーーーーい
なにこれー
すっげえのが出て来たよー
バンザーイ
ありがとう神様!
ふう
一時的に触ったり揉んだりして楽しんでみたが邪魔だな
脱いでた方が楽は楽なんだけど邪魔だわこれ
ブラだけは着ておこう
女子も大変だな、こんなもんぶら下げて
しかも脱いで気づいたがウエストも細い
こんな細い腰で、こんな大きな胸を支えているのが信じられない
首を曲げ後ろを向く
美しいくびれのラインに下にキュッと上向きのお尻がある
・・・俺、良い体してやがんな
なんつーイヤラシイ体だよ
これからは男の目線が気になってしまいそうだ
男はけだものだからな
外がどんどん暗くなる
あれ?明かりは無いの?
電気・・・無いよな
ランプとか?
ああ、壁にかかってるアレがそうだろうか
・・・どうすんの?これ
なんか芯があってその先が油に浸してある
危なくないのかこれ
この芯の先っぽに火をつければ良いんだろうか
・・・怖いな、世間知らずの振りして聞いて見よう
宿が全焼したら困るしな
あ、服着なきゃ
・・・面倒な服だなこれ
胸を納めながら服を着て行く
うーんなんか違和感感じる
後ろ前に着た時のような妙な違和感
女の服には女の服の着る時のコツがあるのかもしれない
1階に降りて行く
お、お客さんが何人か居るな
皆、俺を見て眼を丸くする
「お、おい、なんちゅうべっぴんさんじゃ」
「こんな辺鄙な村に何しに来たさね」
「はあー、めんこいべやさ」
やっぱり田舎なんだな
えらく訛っている
俺はまだ自分の顔見れてないんだよな
髪が銀色って事だけしか知らない
宿屋のおばあちゃんを見つけた
「すみません、明かりは・・・」
「ああ、油が切れてたかい?じゃあこれを持って行きな」
カンテラかな?
カウンターに置いてあった手持ち式のランプをくれた
すでに火が灯っている
「ご飯はどうするんだい?」
「えっと、、、じゃあ、頂きます」
「50アランだよ」
お金を払いテーブルに座る
カンテラは取りあえずテーブルに置いた
・・・皆の視線が気になるな
温厚そうな人ばかりだが
荒くれ者とか入って来たらどうしよう
「アンタどっから来たんだい?」
「え?!、、、えっと、都会から」
「じゃあ、メルホースから来たのかい?随分遠くから来たなぁ」
メルホースが都会らしい
随分遠いらしい
走ってどれくらいだろうか
「こんな村に何しに来たさね」
「えっと、、、観光です」
「ああ、水神様の滝を見に来たのか」
水神様の滝
なんだそりゃ
「どこにあるんですか?」
「北の小道を行けばすぐだよお」
北か、どっちが北なのやら
興味ないけど
「最近は滝を見に来る人も少なくなったべなあ」
「水神様も寂しかろうて」
「あのー水神様って・・・」
「そんな事も知らんと来たんかい、龍だよ」
「龍?」
・・・信仰か何かだろうか
「昔、龍が居た伝説があるとか?」
「今も居るよ、退屈そうだから会ってやってくれ」
「は?」
「ん?」
どういう事だ?
龍が居るの?
会うって何?
「・・・危険は無いんですか?」
「はははw可愛いもんだよ、滝の裏に居るから見て見ると良い」
「・・・・・」
「お待ちどう」
食事が来た
簡単な食事だな
・・・味は普通
なにか物足りなく感じるのは、化学調味料の味に慣れているからだろうか
自分の口がいつもより小さい
食べづらいな
木のフォークとスプーンで何とかたいらげた
「じゃあ、これお借りします」
「はいよ」
カンテラを掲げ階段を上っていく
あ、後ろからパンツ見えてないよな?
振り向いたら皆が視線を逸らした
・・・見えてたんだな
こんな短いスカートじゃな・・・
くそぉ、俺の純潔が
部屋に入り、カンテラをテーブルの上に置く
鍵を閉めカーテンを引き、取りあえずまたシャツを脱いだ
ふう、楽になった
さて・・・・・やる事が無い
どうしよう
今持ち物はお金の入った汚い袋だけだ
いくらあるかな?
・・・2260アラン
少ないよな
この宿屋にあと4泊出来るくらいだ
いや、ここに居ても仕方ない
ここでは仕事も無いだろう
もっと街に行かなきゃ駄目だ
メルホースだっけ?そこを目指してみるか
あと気になる事がもう一つ
龍が居るって話だったな
危険は無いって事だけど・・・
うーん、せっかくだし見て行くかな
この村にまた来る事も無いような気がするし
スカートも脱ぐ
ベットに寝そべる
ノミとか大丈夫かな
なるべく肌出さないほうが良いかな
そんな事を考える
男の時はそんな心配しなかったのに
思考も女になってるのかな
俺、どんな顔になったんだろ
この世界に鏡はあるのかな?
窓ガラスに映った姿見て見ようか
いや、ガラスも歪んでいた
ハッキリとは見えないだろう
どこか、湖でもあれば自分の姿が映るかな
あ、一個大事な事思い出した
魔法使えるって話だったな
魔法ってどんなの?
火とか出せるの?
それとも街から街へ飛べるようなヤツ?
呪文とか必要なの?
・・・何も解らない
もうちょっと居て欲しかったな
もっと情報聞いておくんだった
話し相手としてでも・・・
独りぼっちだ
ここには知り合いが誰も居ない
世界に取り残されたような気持ちになって来た
こんな女の姿で独りぼっち
心細い
枕を引き寄せようとしてやめた
シミだらけだ
きっと涎だろうな
シーツの上で丸くなる
少し眠たくなって来たな
今何時何だろ
色々考えすぎて疲れた
もう今日は何も考えたくない
ウトウトしてそのまま寝てしまった
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・・・・・・・・・・
ああ、寝ちゃったんだ
今何時だろう
カーテンを開けてみる
まだ暗いな
時計は・・・勿論無い
時計無いと本当に時間が解らないな
カンテラの明かりが点いている
ああ、消さずに寝ちゃったのか
燃料は何だろう?
解らない
勿体ないから消してしまうかな
点け方が解んないけど
でも燃料が貴重な物だと申し訳無いし
不便だけど我慢しよう
再度ベットに戻る
天井を見上げ考える
実際は暗闇で何も見えないが
・・・どんな仕事しようかな
まず、自分は働けるのか?
17歳の高校生だぞ?
今の姿は何歳くらいに見えるのだろうか
胸を見る限りでは二十歳以上と言っても過言ではないが
戸籍もない
こんなんで雇ってもらえるの?
と、言うか家も無いんだっけ、どうすりゃいいんだ
エミールが言った言葉が頭をよぎる
王宮や貴族にでも嫁入り
そんな事が可能なのか?
いや、やっぱそれは嫌だよ
なんで男と結婚しなくちゃいけないの?
意味解らん
・・・俺は善人だったのか
確かに悪い事はした事が無い
犯罪は勿論、人の悪口すらあまり言った事が無い
良い行いはしてたのだろうか
・・・心当たりが無いな
この程度で2割に入る事が出来るのか?
あまり不満も言った事は無いが、今はすごく神様に文句言いたい気分だ
暗闇に眼が慣れて来た
それともこれは眼が良くなる能力なのだろうか
考えすぎか
なんとなく寝ながら足を上げてみる
・・・長い、細い
この足であのスピードで走れるのか
色々な法則を無視している気がする
異世界という時点で常識を無視しているんだが
あ、歯を磨いてない
この世界に歯ブラシはあるのかな
その他生活必需品の事も考えないと
・・・下着も今着ている一組だけだ
買わないとな
自分が身に着けてるレースの下着を見る
こんなもん買いに行くの憂鬱だな
どこに売ってるんだよ
今着ている服すべてが特殊な気がする
村の人達はもっと質素な恰好だった
茶色、灰色、そんな色の服しか着ていなかった
田舎だからか?
都会に行けばもっと華やかになるのか?
文明レベルも少しは上がるのだろうか?
今は想像して不安になる事しか出来ないな
おや、外が明るくなって来たな
今何時・・・無いんだった
当たり前だった便利さが今は懐かしい
不便になって始めてありがたみが解るな
窓を開けてみる
あ、下着姿だった
まあいいか、こんな時間に誰も見てないだろう
空気が澄んでいる
朝独特の空気
田舎だから空気が美味しいのかな
空気の味なんてどう違うのだろう?
俺には解らない
でも部屋が埃っぽいから気分的に違うような気がした
あ、あれが北の小道?
林の中へ続いている
北かどうかは解らないが・・・
おっと、遠くの家から人が出てきた
朝早いんだな
窓を閉め、カーテンを閉めた
埃っぽい部屋に戻る
そろそろ宿屋のおばあちゃん起きてるかな
お年寄りは朝早いもんな
起きてるなら宿を出てしまおう
服を着た
おかしいとこ無いよな?
鏡が無いから確かめる事も出来ない
昨日風呂に入れなかったけど髪がさらっとしてる
体質も変わったのかな
当然か
見た目がすべて変わったんだから
階段を下りて行く
「おや、早いねえ」
おばあちゃん起きてた
「おはようございます、竜神様の滝に行きたいんですが」
おばあちゃんが教えてくれた
やっぱり窓から見えた小道がそうだった
一応トイレに行ってからチェックアウト
この世界ではその辺のトイレがあるとも思えないからな
男の姿なら小さい方は外でするのも平気だとは思うが、この姿では・・・
なんか色々気を使うなあ
なんで俺がこんな目に
外に出る
朝日はまだ出てない
滝に向かうか
・・・・・・
本当に大丈夫なのかな
滝の裏って言ってたっけ
水を被らないと入れないのか?
だったら諦めよう
風邪ひきたくない
・・・病気になったらどうすんだろ?
医者くらい居るよな?
でもお金が・・・
一つ新しい事を考えるとすぐに行き止まりになる
めげそうだ
北の小道を進む
細く曲がりくねった小道
すぐに滝の音が聞こえてくる
木々の間から滝の頭頂部が少し見えた
・・・高いな
水圧も凄そう
ヘタしたら流されちゃわないかな
心配だ
滝の全貌が見えて来た
ああ、滝の横に入口が見える
滝の裏って話だったけど、水に濡れずに入れそうだ
近付いて見る
水が落ちてくる場所とは距離があるがそれでもしぶきが飛んでくる
濡れちゃわないうちに中に入ってしまおう
洞窟?
奥は見えない
いや、微かに何かが光ってるな
苔か
ヒカリゴケってやつだ
ラ○ュタで見たわ
微かな明かりを頼りに奥に進む
・・・大丈夫なのかな
やっぱ不安を拭えない
恐る恐る奥へ進む
いざとなったら来た道を全力疾走で帰ろう
昨日の速さを考えれば追いつける生物が居るとは思えない
しばらく進む
奥が明るいな
外に出るのか?
いや、そういう明るさじゃない
なんというか、前にTVで見た外国の青の○窟のような
天井が揺れている
水面が反射してそう見えるんだ
広い場所に出た
「すごいな・・・」
洞窟の中に湖のような場所がある
壁の岩の隙間から湖に水が流れ込んでいる
湖の底が青く光っているのか全体が明るい
どういう現象なんだろう?
謎だ
水神様とやらはどこに居るんだろ
湖の中かな?
深い場所もありそうだ
水を手ですくってみる
冷たい
綺麗なのか?
そこまで明るくないから解らない
どうしよう
声かけてみるかな
いつでも逃げれる準備をして
「す、すみませーん」
洞窟のこだまする
・・・何も起こらないな
いや待て
水の中を何かが来た
で、デッカイ!!
ザバアアアアアアアア
「あ、アンタが水神様?!!」
予想と違う
龍って言うとなんか蛇のでかいのに角とヒゲが生えてるような
もしくトカゲをデカく荒々しくしたものを想像してた
目の前に現れたそれは、でっかいウーパールーパーに近かった