028 ゴールドラッシュ
「今日はこっちの道使ってくれ、下流への近道だ」
今工事してる川は採石場をぐるりと回り込んで流れているらしい
道も混むし俺は下流から運ぶように言われた
「ちょっと道は狭くて急だがあんたなら大丈夫かと思ってな」
「ソリが通れるくらいの幅はあるんでしょ?」
「ああ、ほぼ真っすぐの道だ」
だったら問題ない
馬ソリがつっかえても手伝ってあげられないが、自分達でなんとかしてくれるだろう
確かに急な坂道だったが、ソリが止まらなくなるほどでは無い
凹凸が少ない道なので楽なくらいだ
スピードも出せる
「ムスタング、落ちるなよ」
「クー」
ソリの上に乗ってるムスタングが風を感じ時々羽をバタバタさせる
空気抵抗が大きくなるから後ろにつんのめっちゃって危ないんだよな
しかしムスタングも飛ぶ練習をしてるんだからやめろとも言えない
風を切って走る
心地よい、障害物の無い道
もう急な坂が終わった、後は下流のポイントにいって降ろすだけ
人足が川の底をさらっているのが見える
ドロを排除し、水の流れが速くなりすぎないように調節しているんだろう
山ほど居るな、汗水たらして頑張ってる
下流のポイントに着いた
石を降ろし来た道を戻る
軽くなったソリを引きずり、急な坂を上って行く
本当に近いな、これなら相当往復出来そうだ
「うわ、もう戻って来た!は、早く石を積め!」
なんだよ早すぎた?
もっと早く出来そうな道だったぞ
頑張って積んでくれ
「いて!、指挟んだ!」
慌てて指を挟んだらしい
ヒーリングで回復してあげる
「あ、ありがとう、あんた、綺麗だな」
おっとこんなとこでナンパか?
悪いがその気は無い
俺は男だからな
そっけない態度であしらい、石を積みこむのを手伝う
軽々運ぶ俺に男は怖気づいて行く
積み終わったらムスタングを乗せ、また走り出す
ナンパしてるヒマがあったらさっさと石を積み込んでくれ
またすぐ戻って来るからな
そんなこんなで今日は40往復出来た
下流から5ポイント
上流は31ポイントまで運び終わったらしい
それから三日後、俺が20ポイントまで運び終える頃
ムスタングがついに飛び始めた
坂を走る途中、俺の横を滑空する影が
早いな、俺も走ってるのにあっと言う間に坂を滑空していく
滑空するだけだから早いんだろうな、上昇するとなるとそうはいかないだろう
急な坂の終わりでムスタングが待っていた
ここからポイントまで走る
ムスタングも横を飛ぶが、ここではそこまで早くない
バタバタバタバタ、羽をバタつかせ、上下している
まだ飛ぶのが上手とは言えないな
疲れたのか飛ぶのをやめ、走り出してしまった
石を降ろすと自分からソリに乗り込んでしまう
走るのも疲れちゃったみたい
「上流も31ポイントまで進んだぞ、半分終わったな」
「いいペースですね」
「石を敷き詰めるのがやっと始まった所だ、運搬が進み過ぎなくらいだが」
「そうですか、どこかキリの良い所で1週間ほど休めますかね?」
「今すぐでも大丈夫だぞ、のこり全部馬ソリに任せても敷き詰めるのが間に合わないよ」
うーむ、そうか
じゃあメオラに行って来ようかな
帰ろうぜムスタング
疲れちゃってるから抱えて帰った
「タカネ聞いた?!ハインツさん達がメオラのダンジョンで500万アラン分の金塊見つけたらしいよ!」
「え?マジで?」
5日前に旅だったはずだ
移動に3日でもうそんな成果を出したのか
情報は伝書隼が持ってきたらしい
「地下一階の一室で見つけたらしいけど、まだまだ深そうなダンジョンなんだって!最上級の人達が慌ててメオラに向かったよ!」
ぐぬぬぬ
ゴールドラッシュが始まったのか
この波に乗りたいなあ
「タカネ、話は変わるんですがハンター組合でレアルとソシエと言う2人に話しかけられました、私がタカネのお姉さんだと思われたみたいで」
「ああ、あの2人帰って来てるの?」
「近隣の街から来たハンターだらけになってしまったそうですよ、依頼も取り合いだそうで」
ダンジョンが開通したからだろう
まさにゴールドラッシュになってしまった
「パーティは解散したそうです、なんの事か解りませんが」
ああ、あの男の子2人捨てられちゃったか
15,6歳で上級なんだからそれなりに腕は経つんだろうけどな
「うう、私も行きたいなあ」
「焦るのは良くないよ、せめて最上級になってからでないと」
「タカネがミスリルゴーレム倒しちゃうから悪いんでしょ!もう1か月待ってくれれば良かったのに!」
そんな事言われてもw
「決めた!私も行く!サテン、ホンダを貸して!」
「嫌ですよ、そんな危ない所に」
「カオリ、馬を操れるの?」
「操れません!」
こいつ何言ってんだ
「サテンも一緒に行こうよ!旅行がてら!」
「嫌です」
「パーティどうすんだよ、そんな簡単に出入りして良いのか?」
「うう、じゃあみんなで一緒に・・・」
「最上級だらけなんだろ?肩身狭い思いするだけだぞ」
カオリがガックリ項垂れた
「今こうしているうちにもお宝が、お宝が・・・」
それは俺も気になるところだけどさ
しかし命あっての物種だ
いくら金があっても死んだら使えない
「俺も、1週間くらい行こうかなと思ってたんだけどさ」
「!・・・連れてって!」
「う、うーん」
「独りぼっちは嫌です、タカネが行くのなら私も連れて行ってください」
「え、ええ?」
カオリはともかくサテンはダンジョンに入らせたくないな
いくらでも守ってやるけど、危ない事に変わりは無い
「と、取りあえずパーティメンバーに許可とりなよ、そんなに休むなら迷惑かける事になるんじゃないの?」
「タカネは知らないだろうけど、怪我で休むとかしょっちゅうなんだよ?タカネは知らないだろうけど」
そんな嫌味混ぜなくても良いじゃないか
「私のパーティはのんびりしてるので、お土産買ってこれば大丈夫だと思います」
「・・・・・」
取りあえず、明日それぞれのパーティに話してみるって
一緒に行く事決定なの?
どのみち2人は移動に3日だ
明後日、先に2人がホンダで出発し、俺が3日目に追いかける
で、5日間ダンジョン潜って俺が先に帰り、2人は後から帰って来る
そんな感じに勝手に決められた
2人は都合11日間首都から離れる事になるな
「泊まるとこあるのかな、野宿は嫌だぞ」
「ハンターだらけだけど、高い宿屋は空いてるってレアルが言ってたよ」
「そんな事まで聞いたのか」
もう行く気満々だったんだな
はあ、仕方ない
2人は俺が守るぜ
さて、取りあえず後3日は石運び頑張るか
次の日、2人はハンター組合に行く
今日は依頼受けて話をするのだろう
俺は採石場へ
下りでムスタングが飛ぶ
上りはソリに乗ってお休み
楽してるな、なんかズルい
でも飛ぶのが上手くなってきている
ムスタングも楽しそうだ
40往復してお疲れさま
「許可貰えたよー」
「お土産は燻製が良いそうです」
あっさりしてるんだな
燻製?名物なのかな
この前は観光してるヒマは全然なかった
「じゃあ、明日経つの?」
「うん」「はい」
「気を付けてね」
「私がサテンを守るよ!」
「私だってもうオークくらいなら1人でも戦えます」
オークが大丈夫なら盗賊6、7人くらいでも大丈夫なんじゃないだろうか
すごい成長してるなぁ
魔法使えるってのはやっぱすごい有利なんだろうな
風呂に入る
「サテン、また引き締まったな」
「サイズは変わってないんですが・・・」
「お腹に筋肉の筋が見えて来たね」
「や、やだ!あまり見ないでください」
カッコいいけどな
お尻もプリっと上向きで引き締まっている
「私達は見た目変わらないよね」
「元々贅肉も少なかったけどさ」
「・・・胸にいっぱいあるでしょ」
またその話か
カオリもDあるんだから良いじゃないかよ
次の日
出発するサテンとカオリを見送る
ホンダも久しぶりだな
俺の事を覚えていたみたい
ごめんな、全然会いに来なくて
ムスタングと初顔合わせだ
ホンダが興味深そうにムスタングに顔を近づける
サテンはハラハラしてるが大丈夫だよ
気を付けて行くんだぞ
ついでに王宮へ
「すみません、1か月という話でしたが寂しいのでもう少し伸ばしたいんですけど・・・」
「うーむ、幼い内に王宮の者にも馴れさせておきたいんだが」
ムスタングの話だ
期間延長を申し出ている
「大人しい子なのですぐ馴れると思いますよ」
「うーむ、元々お前さんのグリフォンだ、無理は言えんが・・・」
「申し訳ありません」
体が大きくなってどうしようもなければ預けるほか無いだろう
せめてそれまでは一緒に居たい
「体も大きくなったな、抱かせてもらっていいか?」
「どうぞ、今60cmくらいになりました、飛ぶ事も出来ますよ」
寝床も小さくなって来た
メオラから帰って来たら新しい木箱を買ってあげよう
「可愛い子だ、本当に大人しいな」
「大きくなったらホメロスの為に働かせますので」
「そうか、それは助かる」
なんとか納得して貰えた
あ、ついでにあそこへ行ってこよう
「おねえさん!久し振りだね!わあ、グリフォン!」
以前、胸が大きくなる薬を作った小さい魔法使いの元へ来た
「すごいよ!まだ胸が縮まないよ!」
うん、見て解った
もう一か月以上経つはずだが、小さな魔法使いの胸はアンバランスに大きい
「おねえさんのお陰でわたしの評価も鰻登りだよ!」
そうなのか、それは良かった
髪が少し長くなったので切って貰おうと思う
「毛先をちょ~っとずつ」
「上手だね」
「綺麗なおねえさんだから緊張するよ~!」
全体的に少しずつカット
上手に整えてくれた
「これでまた薬が作れるよ~!」
「何人分くらい作れるの?」
「これだけあれば10人分くらいかな!」
お礼として100万貰う
「こんなに?」
「貴族様に高く売れるんだ!」
そうなのか
女の美の追求はすさまじい
さて、少し寄り道したが採石場へ
今日も40往復頑張った
暗くなっちゃったけどどうせ今日は1人だしな
ムスタングと夕食を食べ、一人で風呂に入る
「ああ、足が延ばせていいなあ」
一人っきりの入浴
今頃サテンとカオリは中継の街かな
カオリが強いから危険は無いか
盗賊やっつけて儲けてるくらいだろう
次の日、今日も採掘場
頑張って40往復
10分で1往復してる計算だ
ムスタングが登りでも飛び始める
スピードは速くないが頑張ってる
休憩も多いけどね
やっぱり上昇って大変なんだろうな
今日で下流のポイントを35か所まで、上流は40ポイントまで進んだらしい
「あと25か所か、もう四分の三、終わったんだな」
「明日から1週間休みます」
「そうか、その頃には21か所くらいは終わってる計算になるかな」
「次の川もあるからまだまだですよ」
これが終わっても最後に一番大きな川が待っている
まだ半分も終わってないと考えても良い
ムスタングと帰る
採石場からすごいスピードで滑空する
滑空中は手ぶらの俺でも追いつけない
すごい速さだ
平地に出ても飛び続けるムスタング
今日は頑張ってるな
街まで飛び続けた
「頑張ったなムスタング」
街の入口で疲れて降りた
歩きで夕飯の買い物へ
明日から留守にするから余分には買えない
明日の朝すべて胃の中に片づけなければ
家に戻りムスタングに水をやる
随分喉が渇いていたみたい
ご飯を食べて風呂に入る
「ふう、明日からこの家ともしばらくお別れかー」
一人だと伸び伸び足を伸ばせるお風呂
胸が浮き、水面に浮かぶ
気持ち良いなあ
明日には俺もメオラに向かう
サテン達と途中で合流出来るかな
カオリが盗賊狩りにかまけてないと良いけど
明日の準備をして寝た