026 メテオ
翌朝、今は7時くらいかな
宿を引き払い、近くの食堂に行き、朝ごはんを食べる
「あ!タカネさん!おはようございます!」
昨日の2人だ
レアルとソシエだっけ
男の子2人も居る
面倒だな
「一緒に食べていいですかぁ?」
「テーブル4人掛けだよ?余っちゃう」
「いいのいいのアイツらは」
アイツらと言われた男の子の一人はムッとした
一人は俺に見とれてボーっとしてて気づかない
ムッとした子がボーっとしてる子をひっぱり他の席についた
「良かったの?」
「う、うん、へへへ、へっちゃらだよ」
「ソシエ、動揺がすごいよ・・・」
目が泳ぎまくっているソシエ
言いすぎたと思ってるけど引っ込みつかないのかな
結構気が強そうなタイプに見えたけどそうでもないらしい
「エストック使ってるんですね、しかもミスリル!」
「す、すごい」
2人はレイピアと弓みたいだ
鎧が可愛らしいデザイン
多分、機能性よりファッションなんだろうな
「あーここ傷ついちゃってるー」
「うそ、ホントだ、昨日のオークかな?」
鎧の傷が気になるようだ
鎧なんて傷ついてなんぼって気もするが
「みんなは今日何の依頼受けるの?」
「んーどうしよっかなー」
「レアル決めて決めてー」
決まってないのか
「きょ、今日はタカネさんに着いていって良いですか?戦い方を見せて欲しいんです」
「あ、それいいねーレアル、ナイスアイディア」
うわーめんどくさいことになっちゃった
「うーん私の戦い方は魔法も使うし参考にならないかと・・・」
「魔法?すごい!」
「ぜ、絶対邪魔しないんでお願いします!」
「自信無くすだけだと思うよ?前にパーティ組んでた2人も他へ行って生き生きしてるし」
「へぇ?そうなんですか?」
「ふーん、なんでだろ」
・・・説明難しいよな
俺が強すぎるからとか自分で言うのもバカみたいだし
あー面倒だなー
「離れたところから見せてもらうだけでいいんで、お願いします!」
「私もレイピア使ってるんで、参考にさせてください!」
レイピアも突く武器だけどさ
でも絶対参考にならないと思うよ?
だがそれを説明する言葉が見つからない
うーん
「遠くから見るだけなら、絶対邪魔はしないでね」
「やったー」「ばんざーい」
はあ、嫌だなぁ
俺が戦ってる姿ってどう見えるんだろう
あんまり見せたいもんじゃないな
ハンター組合に行く
「まだ討伐されてませんよね?」
「大丈夫ですよ、期限は昼まで、頑張ってください」
「・・・本当にミスリルゴーレムだったんだ」
土建屋
「じゃあソリ借りていきますね」
「ああ、どうやって・・・」
「よいしょ」
「え?ええ?えええ、ええええええ!」
「タ、タカネさん」「見かけによらず、力持ちなんですね・・・」
ソリを引きずり街の出入り口へ
「門開けてくださーい!」
「き、昨日の」
「ソリ出したいんで早くしてください」
「あ、ああ、待ってろ」
大きな門が開けられる
ソリを街の外に出す
お礼を言うと門がしまった
さてと、ミスリルゴーレムやっつけに行くか
女の子達2人と男の子達2人も着いてきた
昼までの時間制限だから走って行きたいんだけどな
「早足でいい?」
「え?は、はい」「そ、そんなソリ持って」
「ソリも危ないから離れて着いてきて」
構わずソリを早足で引っ張る
1.5tのソリが走り出す
これぐらい出来ないと最上級にはなれないんだぜ
嘘だけど
結局30分かかってしまった
みんなすぐにバテテしまったからだ
スピードを合わせて走ってあげた
こんなことならソリに乗せれば良かったかな
さてさて、20m先にはミスリルゴーレムがいます
でかいな、6mくらいありそう
こっちを見ているな
しかし、ダンジョンの前からは動かない
あのダンジョンを守るよう命令されているからだ
「出来るだけ離れて、声かけるのもやめてね」
好意のつもりでも応援とか気になってしまうから必要ない
集中力が切れてしまうと困る
ふうっと深呼吸を一つ
手を前に出す
イメージイメージ
隕石が落ちてくるイメージ
・・・難しいな
実際隕石が落ちるのなんて見たことない
燃えながら落てくるんだっけ
ん?空から何かが
光の筋が見える
どんどん大きくなる
昼間なのに流れ星みたい・・・
綺麗だな
って、や、やばくないかあの大きさ
まっすぐゴーレムに・・・
ゴガアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!
うおおおおおおお!
衝撃でついてきた4人が吹っ飛ばされる
ソリも少し動いた
あ!ダンジョンの入口が壊れちゃった
肝心のゴーレムは立っていた
ちょっとグラついたが立っていた
隕石は粉々に砕けてしまった
マジかよ、圧死を想像してたのに
グラついてはいるけどほぼ無傷じゃないか?
動き出した
ゴーレムが動き出した
おいおい、動かないって話はどうなったんだ
ヤバイ、すごい怒ってる気がする
入口が壊れたからか?
守るものから開放されたんだろうか
今はそんなことはどうでもいい
エストックを投げ捨て、距離を取り、両手を出した
メテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオ
空から光の筋がたくさん下りてくる
綺麗だ
ヤバイ離れなきゃ
4人は無事か?
動いてはいるがぶっ倒れて何が起きたか解ってないみたいだ
「衝撃に備えろ!」
隕石がゴーレムにブチあたる
それも連続で
破片が飛び散る
危ない
ゴーレムの首がぐわんぐわん揺れてる
ムチ打ちにならないのかな、ゴーレムって
10こ目が落ちた
ゴーレムは立っていた
「な、なんで立ってられるんだ」
首がゆらゆらしてる
脳震盪のような状態だろうか
次第に回復し頭を振った
・・・怒ってる、無茶苦茶怒ってる
しかも俺がやったってバレてるな
オレに向かって動き出そうとした
・・・しかし動けない
ヒザまで地面に埋まっていた
チャ、チャンスなのかこれ?
解らん、どうしていいか解らん
ゴーレムは手を伸ばし俺を捕まえようとする
おっとリーチが長い
だが捕まらない
でもどうしよう
メテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオ
メテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオメテオ
はあっはあっ
は、初めて魔法で息切れした
こ、これ以上は限界なのか?
これで終わらせたいが
ゴーレムの脳天にブチ当たる隕石
次第にゴーレムを土に体を埋めていく
行けるか?行けるのかこれ?
しかしなんという硬さだ
よく首もげないよな
最後の隕石が落ちてくる
ゴーレムにぶち当たり
砕け散った
「・・・・・」
肩のあたりまで埋まった
頭と腕は出ている
動いている
なんとか出ようと動いている
体は埋まってるものの元気いっぱいだ
「どうすりゃいいんだ?これ」
エストックを拾い、ゴーレムの後ろに回る
腕が届かない方向へ
エストックの先で軽くゴーレムの頭を突いてやる
・・・硬い
思いっきり突いてもエストックが折れるだけだろう
「まいったなぁ」
ゴーレムは動けない
暴れてはいるが出られる気配が無い
うーむ・・・
待てよ
ミスリルだって金属だ
武器にだって成形出来る
だとしたら
左手で炎を出す
なるべく高い温度の炎をイメージ
それをゴーレムの頭に浴びせ続ける
途切れないように
うう、疲れてる
片膝をついてしまう
だが炎を出し続ける
火炎放射器のように
4人が立ち上がってきた
呆然と見つめてる
何をしているかわかってるかな
たのむから邪魔だけはしないでくれよ
10分くらい経っただろうか
げ、限界
もう魔法出ない
炎が途切れる
ゴーレムの頭が半分くらい赤くなっていた
最後だ
これで駄目なら依頼は失敗だ
息を整え、エストックを構える
最後の力を振り絞って
全身全霊を持ってして
エストックを引き、ただ真っすぐに
ブレる事の無い一本の真っすぐな軌道
エストックがミスリルゴーレムの頭に刺さる
・・・だが貫けない
途中で止まってしまった
衝撃に俺の指が悲鳴をあげる
ぐおおおおおおお、いてええええ
どうなんだ?
弱点に届いたのか?
駄目だったか?
どうなんだ?
暴れていたミスリルゴーレムの腕が落ちる
首も転がった
土から出ているゴーレムが関節部分から離れていく
ゴーレムの眼が光を失う
終わった・・・
大の字になって寝っ転がる
肩で大きく息をし、汗が凄い
や、ヤバかった
こんなに苦労させられるとは
さすがは53年間ダンジョンを守って来ただけの事はある
ちょっと自分を過信してた
あっさり終わっちゃうんじゃないかと思ってた
そんなやわじゃ無かった
隕石に耐えたミスリルゴーレムをモンスターながらに称えたいと思った
「・・・す、すげえ」
「な、何が起こったの?」
「世界の終わりみたいだったね・・・」
隕石の衝撃であたりの風景はボロボロだ
ダンジョンの入口は崩れ、木々はなぎ倒され、地面がえぐられている
ここまでする気は無かったんだが
強敵だった
「お、おめでとうございます」
レアルが近づいて来た
「お、俺!街に伝えてくるよ!」
「お、俺も!」
ああ、どっちでもいいけど
「こ、これが最上級なのね」
ソシエが呟く
いや、ここまでにならなくても最上級になれるよ
そう言いたいが疲れてて声にならない
「す、すごかった、まさかミスリルゴーレム討伐の瞬間に立ち会えるなんて」
「これって歴史的瞬間だよね・・・」
そうなのかもな
53年の歴史に終止符を打った
少し息が整って来た
起き上がるか
ソリを持ってくるミスリルゴーレムを積み込み始める
指、腕、頭
肩から下は埋まってるな
まず胸板を引き抜く
これだけで1tくらいありそう
次は腹だが1mくらい先の地面に埋まってる
どうしたもんかな
スコップでも持ってこればよかった
こんな事になるなんて思わないもんな
穴に入り、両足を広げ穴の側面に脚を固定
そのまま腹を掴む
変な体制だが馬鹿力で動かす
縦にして、地上にいったん自分の体を出し引き抜く
同じ要領で残りも地面から引き抜いた
服がドロドロだ
足の指は無かったよな?
あったら5m以上地面の下に埋まってる事になる
流石に掘る元気は無い
ふう、あらかたソリに積み込んだだろうか
崩れたダンジョンの入口を見る
隠された財宝にも興味があったが、今はそんな余裕も無い
いったん街に帰ろう
2人を促し、街に戻る
走る元気は無い
ゆっくりゆっくり街に向かう
途中で衛兵達がやってくる
街の人間も何人かやって来た
「お、お前、本当にやっつけたのか!」
「・・・そう言ったでしょ」
今は喋る気力も無い
邪魔しないでさっさと戻らせてほしい
道を塞がないで
ソリを方向転換させるのも大変なんだ
あ、ゴーレムに触るなよ
俺が苦労してやっつけたんだ
部外者が触らないで欲しい
街に近づくほどに人がどんどん出てくる
なんだよコイツら
男の子2人が呼んだのか?
余計な事してくれたな
人の手柄を自分の手柄のように話してるらしい
子供だなー
「開けてくださーい」
少し元気になってきた
炎の魔法を空に打ち上げる
「開けてくださーい」
人の波が空いた
「通れません、開けてくださーい」
少し低めに炎の魔法を撃ってやる
騒めきながら前が大きく開いた
走ろう
駆け足で人混みをソリを持ってすり抜けた
更にパラパラと近寄って来る人にぶつからないよう、ソリを蛇行させ街に向かう
お、門が空いてた
これだけは有り難い
門をすり抜け人をすり抜け一気にハンター組合の前へ
「すみませーん、ミスリルゴーレム狩ったんで査定お願いします」
組合の中の全員が振り返る
半信半疑で外に出てくる
驚き固まる
受付のお姉さんが出て来た
「ま、まさか、倒す人が現れるとは」
「あ、そう言えばダンジョンの入口崩しちゃったんですけど」
「ダンジョン?!」
違う方向から声がした
「ダンジョンの前からゴーレムが居なくなったって事か!」
・・・そうなるね
でも崩れちゃってるよ?
「こ、こうしちゃいられねえ!すぐに行かなくちゃ!」
「ま、待て!ズルいぞ!」
「さ、先を越されるな!行くぞ!」
・・・くそぉ、俺も行きたいが疲れも酷い
査定待ちだし
受付のお姉さん以外誰も居なくなった
「中でお待ちください、時間がかかると思います」
「・・・はい」
ダンジョンに後ろ髪引かれるけど仕方ない、中で待とう
30分後
「あ、あー!タカネさん居たぁー」
「急に走り出すんだもの・・・」
「ごめんね、人が集まり過ぎたからさ」
「ああ、あいつらバカだから」
「もうパーティ解散しよっか?」
受付のお姉さんが来た
「査定が終わりました、21億0200万アランです、よろしいですか?」
「はい」
「に、21億・・・」「す、すごい」
「現金がここには無いので小切手を作ります、出来れば首都の王宮まで取りに行って頂きたいのですが」
「どうせ首都に帰るんでいいですよ」
「伝書隼を送ります、明日以降でしたら話が通じるようになっていると思います」
「解りました」
小切手を切って貰った
王宮がハンター組合運営してるのかな
まあいいか
ふう、一段落だ
さあ、どうしよう
「ダンジョンも気になるんだけどなぁ」
「みんな向かってますよ」「眼の色変わってたね」
「二人は行かなくていいの?」
「埋まったの見たんで」「あれ掘り起こすの大変じゃないかな?」
「そ、そうだったね」
あれはマズかったかな
俺も掘り起こす体力は無い
今日はベットに横になりたい
「ああ、私は疲れたから宿取って寝るよ」
「そっか、仕方ないね」「良い物見せて貰いました」
2人は頭を下げ組合を出て行った
俺も立ち上がる
エストックを持ち上げる
ふと先端に眼が行く
ん?
・・・欠けてる
尖ってた部分が少し欠けてた
無傷では済まなかったか
このまま使えない事も無いが
21億の代償
仕方ないか
宿を取り、汚れた服を着替える
風呂も入ろうかな
21億の小切手置いて風呂に行く勇気が無い
いいや、寝よう
まだ昼だけど
zzzzzz
・・・ん?夕方かな?
お腹空いた
一度宿を出て食堂に行くか
道を歩く
ナンパされない
注目は浴びている
俺がゴーレムを倒した事を知ってるんだろう
食事を取る
元気が出て来た
眠気もはれて来た
ああ、俺、ミスリルゴーレム倒したんだな
急に実感が湧いて来た
やったぜ
どうしようかな
ちょっとダンジョン行って来ようかな
元気になったら欲が出て来た
先を越される前に俺も宝を探したい
小切手持ってるから用心の為にエストックも持って来ている
行ってみるか
10分、ダンジョンの前に着く
人がいっぱい居る
崩れたダンジョンの入口が見える
もう岩を取り除いたのか
あれ?みんな神妙な面持ちだ
中入って宝探そうよ
実は何も無かったとか?
だれかがもう見つけちゃった?
「どうしたんですか?」
「モンスターだらけだ、ミノタウロスが6匹も居たらしい」
ダンジョン
入口から地下に降りる階段が見える
その地下一階にいきなりミノタウロスが6匹いる部屋があったらしい
他にも強力なモンスターの目撃情報がチラホラ
「どっから入ったんですか?入口にゴーレムが居たのに」
「解らん、他に入口があるのかも知れんし、ゴーレムもモンスターには攻撃しなかったのかもしれん」
「そうゆう事もあるのか」
あ、誰かが出て来た
「だ、駄目だ、トロールが4匹も」
「て、手に負えん」
・・・・・
まだ俺も体力が完全に回復してない
エストックも完全ではない
21億の小切手持ったままで不安
乗り込むのはやめておくか
この分だとすぐに攻略される事もなさそうだ
一度、首都に帰るか
街に帰り
宿に戻りまた寝た