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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ホメロス王国編
24/134

024 ミスリル

「え?今日も上級依頼無いの?」


ハンター組合に来ている

今日も雨だが昨日も来なかったし上級依頼があったらチャンスを逃したくない


「昨日はあったの?」

「ありませんでした」


なんだよ、ここに来て足踏みだな

あと4回上級をこなせば昇格なのに


「上級を受けたければメオラに行くと良いですよ、辺境なので手ごわいモンスターが多いです」

「どこにあるの?」

「東に馬で3日くらいですね」

「メオラにもハンター組合あるんだ」

「どこにでもありますよ」


流石に遠すぎるな

俺が最初にこの世界に来て立ち寄ったノッティカウンから首都までが馬で3日だったはずだ

それと同じ距離なら俺の足でも日帰りは無理だろう

ノッティカウンから東に3日で首都、そこからまた東に3日でメオラか

この国は結構広いんだな

ホメロスは大きな国みたいだ


「メオラに行くのか?」

「ああ、ハインツさん、こんにちは」


ホメロス王国10傑の一位のハインツさん


「いや、遠いから諦めようかと」

「そうか、タカネならもしかしてと思ったんだが」

「なにがですか?」


メオラには過去53年間、誰も達成した事の無い依頼があるらしい


「53年も?そんなに放っておいて被害はないんですか?」

「近づかなければ無害だ、ダンジョンを守っているからな」

「ダンジョン?」

「宝が山ほど眠っていると言われているダンジョンだ、しかし宝を隠した男はその入口に最大の宝を置いた」

「?」

「ミスリルのゴーレムだ」


なんと、ミスリルのゴーレム

俺のエストックと同じ素材の・・・


「5tはあるゴーレムだ、倒して売るだけで20億アランくらいにはなるはずだ」

「に、20億?!」

「私も以前挑戦したが駄目だった、苦い思い出だ」

「弱点はあるんですか?」

「通常ゴーレムは頭が弱点だ、しかし頭もミスリル製だからな」

「魔法は?」

「効かない、隕石でも落とせば別かも知れんが」


メテオか

俺に使えるのかな

うーん、行きたいな

駄目でも良いから挑戦してみたい


「勿論、最上級の依頼だが」


・・・さいですか

待てよ、メオラに行ってすぐに上級4つ受けてすぐに挑戦すれば・・・

いや、ゴーレム倒してもダンジョンの中に宝があるならそれも欲しい

ある程度の時間がある時に行きたいな

どうせ急がなくても誰も攻略できないだろう


雨が止んで来た

今日は河川工事に行くか


「おお、2日ぶりだな」

「昨日は予定があったんで」

「馬ソリが15台に増えてるぞ、混雑してる場所もあるが気を付けてくれ」


10台から15台になったのか

2往復出来るって言ってたから馬の方は一日60t運べる計算だな

すでに300tくらい運んでるから残りは1700t

それが終わっても更に大きな川がまだ2つある

気が遠くなるな

明日には5tソリがもう一個出来上がるので効率化は更に進むとは思うが・・・


ソリにはすでに石が積んであった

ずっとこのままにしてあったのだろうか

昨日来なくて悪かったかな

邪魔だっただろうに

ムスタングを石の上に乗せ、ソリを引きずり走り出す

・・・しばらく走ると渋滞していた

一番前の馬ソリが引っかかってる

更にその横を通り過ぎようとしたソリも引っかかったようだ

やれやれ


後ろからソリを押し、動かしてやる

その隣のソリも押す

後ろで止まってたソリも

6台くらい押してやった


自分も動き出すが、前のソリが邪魔だなー

広い場所に出ないと抜かせないぞ

ロスが勿体ない

歯がゆい


やっと広い場所に出て前のソリを抜かす

ふう、フラストレーションがたまったぜ

・・・後ろがざわついた

一台引っかかってる

はあ・・・

戻って押してやる

その間に5台に抜かれてた

もう一度抜き返す

抜くとき馬を驚かさないように気を使うんだよな

出来ればあまりやりたくないのだが

やっと現場にたどり着き、石を降ろす

この後6台の馬ソリが一気に来て、ここも渋滞するんだろうな

馬ソリが増えて、効率は上がったのかも知れないが、ストレスが増えた


結局今日は8往復しか出来なかった

馬ソリと合わせて丁度100tだな

俺が毎日出れば、最低16日で1本目の石運搬が終わるのか・・・

いや、最低でも上級4つはその間に片づけたいな

まだ四分の一も終わってないんだ、先は長い


「ムスタング、今日は走るか?」

「クー」


ずっと石の上に乗ってるムスタングにも運動させなきゃな

家までムスタングの速度に合わせ、走って帰った


次の日、今日も上級依頼は無かった

仕方ない、気持ちを切り替え河川工事へ

今日はスムーズだ

全然引っかかってるソリが居ない

たまにはこんな日も無いとな

5tソリも2台に増えたのでスムーズに運ぶ事が出来る

気持ち良いもんだな


結局16往復出来た

昨日の倍じゃないか

効率化が進んだとは言え、助けるソリがないとこんなに運べるんだな

いかに時間のロスがあったかハッキリ解った

全体で140t、合計540tを運んだことになる


「今日は随分運んだな、採石も負けてられん」

「毎日大変でしょう?休みはあるんですか?」

「採石は毎日続けてるが休みは交代で取ってるよ」


そうか、それなら良かった

ムスタングを走らせ、家に帰った


「タカネ、帰る時にミノタウロスの依頼があったよ」

「うそ、行って来ようかな」

「残念、他のパーティが依頼受けちゃったよ」

「・・・そっか」


タイミングが合わないとそんなもんだ

あーあ、久々の上級依頼だったのに

ご飯食べて風呂入って不貞寝



次の日、上級依頼があった


「おお、ゴーレムか」


結局この前のゴーレムは倒さずじまいだったからな

今度こそ倒してみたい

そのうち挑戦するミスリルゴーレムの為にも練習はしておきたい

依頼を受ける

ムスタングを抱え依頼場所へ

・・・居た、歩いていた

今回のゴーレムは所有者が亡くなり野良化したらしい

頭が弱点らしいよな

4mくらいか?土のゴーレムだからエストックが刺さると思うが

ゴーレムがこちらに気付く

こっちに歩いて来たが動きはあまり早くない

報酬が20万だからそこまで強くは無いだろう

攻撃させてみるか

ムスタングを後ろに下がらせ迎え撃つ

ゴーレムが俺の近くまで来て、拳を上げた

ドスン

パンチを撃って来たので避ける

拳が地面に触れ抉れる

重そうなパンチだが全然早くないな

もうちょっと様子見るか

研究しておきたいからな

だが、パンチ撃ってくるだけ

攻撃が一辺倒だ

つまらん

もう終わらせるか

ジャンプして頭にミスリルのエストックを突き刺す

ゴーレムの動きが止まる

ゴーレムの体が崩れ始める

ほどなく土塊の山になった


「弱いな」


土のゴーレムはこんなもんか

土だからエストックが簡単に刺さったがこれが石や鉄ならどうなのだろうか

ミスリルの方が硬いだろうが質量が全然違う

こんな細身の剣が突き刺さるのだろうか

元々は鎖帷子を貫く武器だと聞いた

隙間が無いと意味ないんじゃないかな

関節でも狙ってみるか?

しかし、弱点は頭らしいし・・・

うーん、実際に戦ってみないと解んないな



四日後

この間、上級依頼を一つこなし、石を運び続けた

運ばれた石の総数は1000tを越えた

そしてハンター組合

ストーンゴーレムの依頼がある

報酬は30万

強いのかな

討伐に行ってみる

だがガッカリ

攻撃はただのゴーレムと一緒だ

ただ硬くなっただけ

さて、頭にエストックが刺さるだろうか?

ジャンプする

力が最大限伝わるように真っすぐ突き刺す

・・・貫通した

頭が砕ける

関節からストーンゴーレムがバラバラになった


ただのゴーレムは粉々になったが、ストーンゴーレムは関節でバラバラになっちゃうんだな

パーツで分かれてしまう

ミスリルゴーレムも恐らくこうなるだろう

こうなっちゃうと全部運べないな

パーツが多すぎる

繋がっててくれれば引きずって運ぶのに


「ソリでも持っていくかな」


馬で3日かかる場所までソリを持ってくか

現実的じゃ無いな

メオラにだってソリくらいあるだろう


さて、これであと一回上級に行けば昇格だが

・・・アイアンゴーレムの依頼来ないかな

そんな都合よく来るわけないか

機会逃がすのは良くない

次の依頼がなんであれ、受けて昇格してしまおう



2日後

上級依頼があった

トロールか・・・

やっぱそんなに都合よく来ないよな


「アイアンゴーレムなんて滅多に出ませんよ、鉄を何tも準備するのだって大変なんですから」


ハンター組合のお姉さんがそう言った

そりゃそうか

5tのアイアンゴーレム作るには5tの鉄が必要って事か

ラビオリは良く準備出来たなぁ


トロール討伐に行く

この前はカオリが前線だったから、今日はエストックで戦ってみるか

・・・やっぱり動きが鈍いな

しかもスローモーションになる訳だし

駄目だ、相手にならない

心臓にエストックを突き刺し終わらせた


「タカネ、最上級おめでとう!」

「すごいですね、もう最上級だなんて」

「ありがとう」

「私もそろそろ上級こなしていこうかな」

「・・・私はまだ下級で良いです」

「明日から河川工事に専念するよ」

「最近全然休んでないじゃないですか」

「最上級の依頼が出たらどうするの?」

「やりたい事がある、最上級の依頼も他の人に任せるよ」


ドラゴン出ても今は興味ないな

ミスリルゴーレム以外眼中にない

すぐにでもメオラに行きたいが河の工事も一本くらい終わらせておきたい


次の日


「早いな、もう運んでいたのかい」


採石場の人達が来る前から勝手に石を積み込み運んでいた


「ちょっとやりたいことがあるんでこっちをキリの良い所までやっておきたくて」

「そうか、では我々も残業して少しでも石を切り出しておこう」

「良いんですか?」

「あんたにも都合があるだろう、こっちの仕事にばかり拘束させても申し訳ないしな」

「ありがとうございます」

「こっちのセリフだ、あんたが居なければこの計画自体無かったんだから」


石を運ぶ

朝から晩まで

暗くなったら採石場と現場までの道のりに明かりの魔法を出す

暗い中で作業するのは危険だからな

馬ソリは2往復が限界らしい

馬の体力の問題だ

じゃあやはり俺が頑張らなければ

夕食の時間になると一度帰ってムスタングを置いて来る

育ち盛りの時期の食事と睡眠は大事だ

夕食を食べた後に出かける俺について来ようとするが大人しく待ってるように言う

大丈夫だから休んでてくれ

少し寂しそうだが言う事聞いてくれた

聞き訳のある良い子だな


朝から晩まで頑張ったおかげで3日半で最初の河川の必要量2000tを運びきることが出来た


「ご苦労さん、よく頑張ったな」

「湖の魔法を解くのはいつ頃になりそうですか?」

「敷き詰めるのが全然間に合ってない、おかしな場所が無いか最終検査もしたい、5日ほど先じゃないかな」


そうなのか

急いで全部運ぶ必要も無かったのかな

馬ソリはその間休みなのだろうか


「いや、次の河川の現場に運ばせて準備しておくよ」


なら良かった

次の河川の現場は近い

少しでも多く運んでおいてほしい


半日だけ休むか

ムスタングを走らせ家に帰る

少し大きくなったよな

50cmくらいになった

走る速さも早くなってる

時々羽をバタバタさせてるのは飛ぶ練習だろうか

早く飛ぶところを見たいな


家に着き、ベットに寝転がる

久し振りにゆっくり出来る

ああ、幸せだ

体の疲れは感じないが、頭が疲れていたのかもしれない


服を脱ぎ、下着姿になり眼を閉じる

ああ、心地よい

ムスタングも寝床で丸くなる

お前も疲れたのか?

引っ張り回して悪かったな

zzzzzzz



「タカネ、ご飯ですよ」

「・・・ああ、寝ちゃったのか、おかえり」

「河川工事は終わったんですか?」

「俺の仕事は一段落した」


「タカネ、グッスリだったね」

「ああ、疲れていたのかも知れない」

「朝から晩まで働いてたもんね」

「おかげで一段落したよ」


夕食を食べ、風呂に入る


「なあ、明日からメオラって街に行きたいんだ、ムスタングの面倒見てくれない?」

「え?どこそれ?遠いの?」

「一人で行くんですか?」

「ああ、馬だと3日らしいからな、俺一人なら1日で行ける」

「そっか、着いて行きたいけどそういう事なら・・・」

「何をしに行くんですか?」


俺は事情を話した


「ご、53年?!」

「に、20億・・・」

「俺の最上級依頼の記念すべき1つ目に選んだ」

「か、勝てるの?」

「解らないけど、負ける事も無いと思う」

「あ、危なくないんですか?」

「動きはニブイから大丈夫だと思う」

『・・・・・』


呆れているのだろうか

かける言葉が見つから無いようだ


「・・・い、いいなあ、タカネばっかり楽しそう」

「私は心配です・・・」

「ハインツさんも断念したらしいからムリはしないよ」


倒せはしなかったがやられもしなかったんだろう

何人で挑戦したんだろうな

少しワクワクして来た


よし、明日の備えて今日はゆっくり休むぞ

体調を万全にして挑みたい

待ってろよ、ミスリルゴーレム

53年の歴史に終止符を打ってやる

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