018 グリフォン
今日は朝からミスリルのエストックを取りに武器屋へ行く
80万もしたんだ、ちゃんと仕上がってるといいが
「いい出来だぞ、確認してくれ」
武器屋のおじさんは自信満々だ
見た目がすごく綺麗だな
銀の輝き、神々しい
全体で120cm、刃渡りは1mくらいだろうか
刃渡りって言っていいのかな?刃は無くて突く武器なんだけどさ
あと、結構軽い
見た目は重そうなんだけどな
長くて使いこなせるか不安だが、これでショートソードとお別れだ
「すごく綺麗だね・・・」
「カオリの武器は素材なんなんだろね?」
「解んない、でもすごく丈夫だよ?キズ一つつかないし」
よく解らない素材だが輝いて見える
ミスリルよりもっと良い素材なんじゃないかな
おっとそれよりも今はエストックだ
鞘が無いんだよな
どうやって持ち歩こう
「肩に担いで運ぶんだよ」
武器屋のおじさんがそう言った
そうなのか
後ろに気を付けなきゃな
エストックを担いでハンター組合に行く
エストックがかなり目立つせいかジロジロ見られる
俺の顔と体もジロジロ見られる
これはいつもの事だが
サテンをテスタに預ける
今日もよろしくお願いします
さて、俺とカオリは・・・
「上級依頼ある?」
「・・・一個だけ、でも結構遠いよ」
グリフォン
報酬 35万
家畜、特に馬を襲うらしい
「ホンダが襲われると大変です」
サテン、まだ居たのか
テスタさんに連れて行かれる
そうだな、随分遠くて本来なら泊まりこみでやるような依頼みたいだが
依頼を受けた
「カオリ、背中に乗ってくれ」
「え?」
「おんぶしていく、舌噛むなよ」
「え?ウソ?ホントに?」
恥ずかしがるカオリをおぶる
全速力で走り出す
「わ!わぁぁぁぁ」
街を出て野を越え丘を越え
分かれ道に来た
いったんストップ
「どっちだ?」
「ひ、ひだり」
更に走る
20分くらいで集落が見えて来た
「あ、歩きだと7時間くらいかかるはずなのに」
「便利だろ?乗り心地はどうだった?」
「・・・あんまり良くないね」
そうなのか
さて何故この集落に来たかと言うと家畜が襲われたからだ
話を聞き、グリフォンが飛んで行った方向を聞く
「アバウトな依頼だな、見つかるかな?」
「大きいらしいから見つかるんじゃない?」
聞いた話だと牛一頭まるごと足で掴んで飛んで行ったらしい
凄いな
「飛んでるならカオリの出番あるかな・・・」
「え!酷い!どうする気?」
「魔法で落とすとか」
「手加減出来ないの?」
「手を抜くなってカオリ前に言わなかったっけ?」
「・・・・・」
取りあえず飛んでった方向に向かってみる
カオリも俺も速足で
30分くらい歩いただろうか、気配を感じた
「居るぞ、カオリ」
「どこ?」
「向こうも気づいた、感が良いな」
「そんな事も解るの?」
木の陰に隠れ様子を伺う
・・・あの崖の上か?
いや、すでに飛んでるな
俺達の後ろに回り込んでる
「カオリ、後ろだ」
「え?」
その時すごい勢いで俺達に向かって来る影が
低空飛行+地面を蹴ってスピードを増してる
俺達は左右に避ける
グリフォンは俺達が隠れていた木を登りそのまま上空へ
こっちを向きホバリング
「デッカイな」
「5mくらいありそうね」
鷲の上半身、ライオンの下半身、肩から羽が生えている
かっこいいな
俺を狙い急降下して来た
避ける
カオリが飛びかかる
当たらない
「早すぎるよ!」
上空の戻ったグリフォン
今度はカオリに向かって急降下
あ、やばい
グリフォンのクチバシが開いた
カオリを捕らえようとする
間一髪、カオリが避けた
だが翼がカオリに当たってしまう
「ぐぅ!!」
吹っ飛ばされるカオリ
大丈夫か?
上空に戻ったグリフォン
こっちは見ていない
カオリを狙ってるな!
咄嗟に手を出す
何の魔法を使うか考えてなかった
外したくない、そう思って出た魔法は・・・
上空から蛇行する一筋の光
それがグリフォンに突き刺さり、貫通して真下の木に落ちた
木が燃え上がる
上空のグリフォンは動きが固まり、落ちた
ドスゥゥゥゥゥン!!
カオリは大丈夫か?
飛ばされた方向に走って行く
でんぐり返しのような恰好で木にぶつかってた
・・・恥ずかしい格好だ
ショートパンツを履いてるので変な物は見えてないが
「大丈夫か!カオリ!」
「いてて・・・や、やだぁ!」
慌てて体制を直すカオリ
・・・怪我は擦り傷だけのようだ
一応ヒーリングで治してあげる
「すごい衝撃だったけど、鎧のお陰で助かったよ」
「良かった、普通なら絶対死んでるよ」
「あんなにデカいのにすごい速さだったね・・・」
落ち着いたところでグリフォンを見に行く
木が燃えてるので危ないな
水の魔法で消火
・・・・・黒焦げだ
間違いなく死んでいるだろう
結局エストック使わなかったな
「グリフォンって素材高く売れたのかな?」
「解んない」
黒焦げになってしまえばどうしようもない
しばし呆然と見つめてたが諦めよう
「あそこになんかあるな」
崖の中腹に何かが見える
「巣じゃない?」
見て見るか
もう一匹いるような事は無いと思うが
羽でも落ちてれば狩った証拠になる
1日で狩って戻って来るのはおかしい距離だからな
20mくらい上だろうか
思いっきりジャンプ
余裕で飛び過ぎた
あ、タマゴだ
30cmくらいの大きな卵
下半身はライオンだけど鳥類なのか
巣に降り立ち、近づいてみると・・・
「割れ始めてるな」
赤ちゃんグリフォンが内側から卵を突っついてる様だ
・・・どうしよう
いきなり攻撃してくるかもしれないから身構える
頭が出て来た
こっちを見る
キ~と一鳴き
殻を破壊し歩いて来た
40cmくらいの赤ちゃんグリフォンが俺の足に頬を擦りつけ甘えてくる
・・・刷り込みか
俺の事を親だと思っちゃったか
・・・どうしよう
「なんかあるーー?」
下からカオリが問いかけて来る
仕方ない、グリフォンの赤ちゃんを抱きかかえる
顔を俺の胸にすり寄せ甘えてくる
可愛いな
しかし危険は無いのかな
下に飛び降りる
赤ちゃんに衝撃が行かないように・・・
そう思ったら本能だろうか
落ちる感覚に翼をバタバタさせるグリフォンの赤ちゃん
危ない危ない、落ちちゃうよ
なんとか上手に着地する事が出来た
「た、タカネ!どうしたの、それ!」
「いや、丁度生まれたんだ」
「タカネから?」
「バカ」
でも、本当にどうしよう
連れて帰っていいのかな
取りあえず集落まで戻ってみる
「ぐ、グリフォンの子供捕まえたのかい?!」
驚く集落の人々
親は退治したから安心してね
「懐いてるな、大きくなったら乗れるようになるぞ」
「そうなんですか?」
「エサ代大変だけどな」
そう言えばお腹空かしてそう
何を食べるんだろう
「鶏で良いだろう、退治してくれたお礼に一匹絞めてくるよ」
・・・・・30分後
首を斬られ、毛をむしられ
無残な姿になった鶏を持って来てくれた
グリフォンの前に置いてやる
鶏を脚で押さえ、クチバシで肉を突っつく
引きちぎり、胃の中に収めていく
嬉しそうに頬張るグリフォン
うーむ、可愛いな
8割方食べたところでお腹いっぱいになったようだ
「連れて帰るか」
「うん、乗れるんなら飼おうよ」
よし、カオリにグリフォンを抱っこして貰う
大人しくしているな
そのカオリを俺がおんぶする
あまり揺らさないようにゆっくり走り出す
馬よりも遅いくらいだ
1時間くらいかけて首都メルホースに帰った
ハンター組合に行く
グリフォンを抱っこしてるから余計目立つ
また注目を浴びてしまった
「グリフォンを退治ですか?早いですね」
「これが証拠です」
「・・・グリフォンの子供ですね、どうするんですか?」
「飼おうかと」
「エサは一日2回です、忘れると家畜を襲ったりするので気を付けてください、あと道端にフンをさせないように」
良いんだ
結構アッサリしてるんだな
報酬の35万を貰った
「大きくなるほど大量にエサが必要になるので王宮の専門家に相談すると良いでしょう」
そっか、牛一頭まるごとさらっていったって話だった
そんなに食べるようになると困るな
王宮に行く
見張りの衛兵に話してみる
「ぐ、グリフォンの子供か、珍しいな」
「乗れるようになるって聞いたけど」
「ああ、過去に何度か成功した話は聞いた事あるが・・・」
「専門家が居るって聞きましたが」
「ああ、待ってくれ、呼んで来るよ、きっと喜ぶぞ」
衛兵が奥へ行った
すぐに年配のおじさんが飛んできた
「なんと!グリフォンの子供!」
「私の事を親だと思ってるみたいで」
「刷り込みに成功したか!珍しい!」
専門家の話では1カ月くらいで飛べるようになり、半年くらいで人一人乗せれるようになり、1年くらいで人2人乗せれるようになり、2年くらいで5mの成鳥になるらしい
「エサは大変だぞ、なんなら王宮で面倒見るが」
「どれくらい必要なんですか?」
最終的には牛一頭を3日で食べるくらいになるそうだ
・・・フンもすごいことになりそうだな
「個人の家で飼うのは大変だぞ?庭は広いのか?」
「・・・あまり広くは無いですね」
「悪い事は言わん、いつでも会わせてやるから王宮に預けろ」
「私の事忘れちゃわないですかね?」
「それは大丈夫だ、しっかり躾もするから安心せい」
・・・そうだな
育て方解らない俺が育てるよりもそっちの方が良いかも知れない
そう思いグリフォンを見る
ちょっと不安そうな顔をしているな
・・・親離れはまだ早いんじゃないだろうか
「取りあえず1か月だけ飼って良いですか?」
「解った、じゃあ家の中で飼え、トイレだけ庭でさせろ」
「解りました」
「寝床は木箱に藁か柔らかい布を何重か敷いてやれ」
「了解です」
「生きてる物を食べさせるなよ、野生に目覚めるかもしれない」
「解りました」
大変かな
今の所大人しいけど
そのうちやんちゃになるんだろうか
「メスみたいだからそんなに手はかからないと思うが」
そうか、メスだったのか
「後は名前を決めてやれ」
そうだ、重要な事を忘れてた
王宮を後にする
「名前、どうするの?」
「うーん」
飛ぶから飛行機の名前にしようかな
「ムスタングってどうかな?」
「憎き米兵の飛行機じゃない!」
「く、詳しいね、カオリ・・・」
女の子なのに詳しいんだな
でもゼロセンってのもなんだかな
艦○れに紫電改ってのが出てきたっけ?
シデン、シデンカイ、どうもしっくり来ない
「まあいいわ、ムスタングで」
いいのかよ
ハンター組合に戻って来た
「おやおや、グリフォンじゃないかい!」
テスタさんが近寄って来た
サテンも一緒だ
「タカネ、狩らなかったんですか?ホンダが危険なのに」
「狩ったよ、その子供だよ」
あ、俺ってムスタングの親の敵になるんだな
今気づいた
なんか悪い気がしてきた
ごめんなムスタング
ギュッと抱きしめる
俺に顔を押し付けてくるムスタング
可愛いぜ
「1か月だけ飼う事にしたんだよ」
俺は事情を説明し、なんとかサテンをなだめる
「ホンダには近づけさせませんからね」
そうですか
仲良くさせたかったのに
夕飯を買って帰る
ムスタングには鳥一匹、明日の朝の分も買う
木箱と布も買って帰る
ムスタングが敷地外に出ちゃわないよう門を閉めておくか
猫科の運動性能ならすぐに門飛び越えちゃうと思うけど
近所の犬とか咥えて帰って来たらどうしよう
言われた通り、基本は家から出さない方が良いかな
桶に水を汲んでやる
そう言えば水を全然飲ませてなかった
喉乾いてるだろう
クチバシを突っ込み水を飲むムスタング
我慢してたのかな、結構な量を飲んだ
ふう、遠出したから疲れたな
椅子に腰を下ろす
ムスタングが膝の上に乗って来る
丸まって眼を閉じた
お前も疲れたか
優しく撫でてやる
ク~と、か細い声を出す
丈夫に育てよ
しばらくしたら起き上がり、外の扉を爪でガリガリする
外に出たいのかな
扉を開けてやる
敷地外に逃げ出さないよう注意だ
そんな心配も虚しく庭にフンをする
ちゃんと外にするんだな
・・・しっかりしてるな
世話がかからないのは良い
終わったら家の中に戻って来た
フンは後で集めてトイレに流そう
夕飯、鳥一匹をムスタングの前に出す
肉を脚で押さえ突っつく
幸せそう
やっぱり8割ほど食べ、後は残した
多すぎるのかな?
明日は別の肉をちょっと少なめに与えてみるか
風呂に入る
ムスタングは行水するのだろうか
鳥類ならするだろうが、猫科なら水は嫌いだろう
大きめの桶に水を入れ置いてみたが飲むだけだった
また扉をガリガリ
外に出してやる
今度はおしっこか
キチンと外でしてくれる
手が掛からなくて助かるぜ
俺の部屋に木箱を置く
木箱に布を敷きムスタングを入れる
匂いを嗅いだ後、座り込んだ
気にいってくれたかな?
俺も寝るか
ムスタングがベットに上がって来た
一緒に寝たいのか
・・・今日だけだぞ
しっかり躾なきゃ
1か月後には離れるんだから
おやすみ、ムスタング