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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ピエトロ王国編
134/134

134 プロデュース

次の日


「おや?シェリルじゃないか、お前何で歩いてるの?」

「歩いてるくらい良いじゃない」


いや、お前捕虜でしょ

ゲルマニーの魔法使いで兵器開発者

魔法を使えないように水晶部屋に居たじゃないか


「何でも協力する条件で出して貰ったよ」

「・・・信用できるのかなぁ」

「出来るよ、私この国から美人コンテストに出るんだもん」


お前もか

どいつもこいつもコンテストに夢中かよ

しかし、捕虜なのに出場できるのかなぁ

お前は一応魔王に捕まってる事になってるんだけど


「魔王とポスカは共闘関係でしょ?」

「う、うん、そうなったけど」

「だったら捕虜の私は魔王様の為にコンテストで賞金を稼がされるの」

「ええ?その前提が嫌なんだけど・・・それに魔王の資金源となると出場許可が出るかどうか」

「ユーメリアは永世中立国だよ?魔王も差別しないでしょ?」


いや、魔王は別物らしいぞ

一応ピーちゃんが取り計らってくれるとは言ったけど、どこまで融通して貰えるか・・・


「出れたとしても、魔王の捕虜に票が入るかなぁ」

「賞金持って帰らないと殺されるって情に訴えるよ」

「俺がどんどん悪者になるじゃないか」

「でも賞金はあげないからね」

「い、いらんけどよう」


もう賞金確定のつもりかよ

大体地方予選もあるんだぞ?

つか、ポスカ自体出場を許されるかどうか・・・


「こんな田舎に私より綺麗な子が居る訳無いでしょ?」

「それは解らないじゃないか、いくら魔王の捕虜とは言え特別扱いは無しだからな」

「いいもん、実力で勝つから」


そう言ってお尻フリフリ去って言った

26歳のクセに子供みたいな話し方しやがって

やれやれ


「ゾイドさん、シェリルが歩いてましたけど」

「魔王も歩いてるのに怖がることも無いだろう」

「そ、そうですけど」


てっきりゾイドさんが私的に特別扱いしたのかと思ったけど違うようだ


「えーと、何でも協力する事を条件にしたとか」

「ああ、兵器の開発者だからな、わが国でも抑止力の為に開発せんわけにはいかんだろう」

「・・・やっぱそうなっちゃいますか」

「思う所はあるだろうが仕方のない事だよ、それに並行して魔法水晶開発にも取り掛かる」


そっか、そっちも止めようが無いとは思っていたが


「力をつけなければまた同じことの繰り返しだ、いつまでも魔王に頼りきりでいられるとも思ってない」


当然の判断

ゲルマニーとソビキトという危険な国に挟まれてるもんな・・・

軍事侵攻をしようとする者が居なくならない限り、牽制が無くなる事は無い

仕方のない事とは言え、気持ちが沈んでしまう


俺がすべてを丸く収める事が出来るなんて思ってない

だが、魔王としてすべてを征服してしまえば・・・

いやいや、良くない考えに取りつかれそうになった

これじゃあ歴代魔王と同じ道を辿ってしまう


すべてを丸く収めるか

18歳の未熟な俺にそんな都合の良い考えは思いつかない

一体何をどうしたら正しいと言えるのか・・・


部屋に戻るとメイドちゃんが掃除をしてくれていた

おっと、邪魔しちゃ悪いかな


「魔王様、掃除をしていたらこんな物が」

「!、そ、それは」


メイドちゃんが手に持っているのはクリスティからのプレゼントのボンデージスーツ

あ、あいつ、持って来たのは知ってたけどおいていったのかよ


「これは・・・魔王様のコスチュームですか?」

「ち、違うよ!そんな恥ずかしい服着れるか!」

「ですが、禍々しさを感じる漆黒の艶やかな素材、魔王と言う肩書きにピッタリの・・・」

「い、いやいや、俺は親しまれる魔王を目指してるから」

「これを着て命令されると口答えできない気がします」


メイドちゃんMなの?

そんな期待するような目で見ないでくれよ

なにか良くない性癖に火をつけてしまったのかな


「お尻丸出しなんだよ?変態みたいじゃないか」

「マントを羽織ればいいじゃないですか!」

「ええ?なんで怒ってんの?」


なんだか鼻息が荒い気がする

ここはハッキリと断っておかなければ


「絶対に、着る事はありません」


メイドちゃんは目に見えてガッカリした

もう、捨てちゃおうかな

でもプレゼントだからなぁ

罪悪感湧くから捨てれない

はあ、つくづく厄介なもんを貰ってしまったもんだ


「ですが、これはしっかりと手入れをしないとカビが生えてしまうのでは」


うん、通気性の悪い皮素材だからね

ああ、カビが生えてしまえば諦めも付くな

『せっかくのプレゼントだけどもう着れないな~』とか言って

クリスティもカビの生えた物を俺に着せようとは思わないだろう

・・・また新しいの買って来そうな気もするけど


「いけません!私がしっかりとお手入れをして保管しておきますので」

「ええ?そ、そこまでしなくても・・・」

「同じ色のマントがあればより魔王っぽく・・・」ブツブツ

「・・・・・・」


勝手にプロデュースしようとしてはるわ

ぜ、絶対着ないからな!

言ったからな!


「なるほどプロデュースですか・・・」

「ん?おお、エスト、何してるの?」


最近出世したポスカ軍上等兵エストが通りかかったみたいだ

戦争中は俺と行動する事も多かった

部下も出来て良かったな


「ゲルマニーにアイドル的な象徴の女の子が居るらしいんですよ」

「ああ、カミラちゃんでしょ?」


俺が守りたかったもう一つの理由

エストにはまだ話してなかったっけ


「で、プロデュースと何の関係があるの?」

「タカネさんは親しまれる魔王を目指すんですよね?アイドル路線はどうでしょうか?」


アイドル路線?

唄って踊って握手会とかする人達の事?


「なんですか?それ?」

「俺が知ってるアイドルってこういうのだけど」

「はあ、それも悪くないと思いますが・・・」


エスト曰く、アイドルとは皆に活力を与える象徴

様々なイベントに呼ばれ、時には他国からも来賓として招待を受ける事があるんだとか


「・・・それ、大陸美女じゃん」

「美人コンテストは今年から行なわれたイベントじゃないですか、それ以前からそう言った象徴は居たんですよ」


例えばトロワの女神、ユングリット

サテンに負けた大陸美女2位の人だな

彼女も若い頃はアイドル扱いだったらしい

ハタチを越えてからは女神に鞍替えしたらしいが

アイドルと女神の線引きは謎だ


「魔王がアイドルか・・・悪くないとは思うけど」


でも俺に向いてるのかな

顔は童顔だけど、体はどっちかと言うとグラビアアイドルだぞ

年齢も18、若いとは言えない


「愛想を振りまくのも苦手そうですね」

「うん、得意ではないと思う」

「でも、人気者になれますよ?」


うん、結構良いアイディアだと思う

ただ、自分にそのポテンシャルがあるかどうか不安だ

好かれる為なら多少の努力はするつもりだが

・・・しかし、中身が男だと言うのが致命的な気がするんだよな

ボーイッシュ路線は需要有るの?


「見た目がボーイッシュじゃ無いじゃないですか、タカネさんは『ちょっぴりエッチなミスリル乙女』と言うコンセプトで」

「なんだよそれw」


エストがプロデュースを始めた

俺がミスリル乙女と呼ばれてた事を誰かに聞いたらしい

どうせカオリだろう


「ちょっぴりエッチはどこから来たんだ?」

「体からです」


単刀直入だった

どうせスケベな体ですよ


「まずはセクシーな衣装でイベントに参加しまくって国民達を悩殺しましょう」

「ボンデージじゃないよな?」

「あれは変態の恰好です」


分別のあるプロデューサーみたいだ

乗っかってみようかな

でも今の所あまり民と接触するなって言われてるんだよね

魔王との共存に動揺も大きいらしくてさ


「では、動揺が収まるまでレッスンしましょう、アイドルへの道はレッスンからです」

「は、はあ」


エストがアイドルの何を知ってるのか解らないがそう言う事になった



----------------------------------------



「もっと谷間を強調して!何気ない仕草の中で自然に見せるように!」

「は、はい」


何故か鬼軍曹と化したエストに露出の多い服を着せられ、普段の動作から矯正される


「ほら!また猫背になってるでしょ!何回行ったら解かるの!?」

「す、すみません」

「パンツ見えてる!見えそうで見えないラインを守れ!」


む、難しいよう

今まで女性的な仕草なんて意識してこなかったもの


「アイドル舐めてんのか!!!」


ゲッソリした

エストの部下もこんな扱いなのかな

辞めなきゃいいけど



「はあ酷い目にあった」

「あれぇー?魔王様じゃん、どうしたのぉ?」


お前はエストの部下の13歳イリヤ

ちょっとギャルっぽい子だ

いちいち説明臭くなるのは何故だろうか


「女のたしなみを習ってたんだよ」

「たしなみ?化粧の事ぉ?魔王様いつもすっぴんだよねー?」


ああ、化粧なんかした事無い


「えぇー?可愛いのに勿体ないよー」

「化粧なんかしなくても超絶可愛いだろ?」

「た、確かに、悔しいくらい可愛いけどさー、化粧で更に変わるよ?」


えぇ・・・

なんかオカマみたいで抵抗あるなぁ

いや体は女だけどさ

その作業自体に抵抗あると言うか

自分で口紅を塗ってる姿とか想像すると情けなくなる


「じゃあ私が化粧してあげるよー」

「ええ?いいよ」

「遠慮しないでー友達でしょー?」


だから違うって

お前の友達の定義はどうなってるんだ


「いいからぁ、メイクすればハーシュハイザー中尉を簡単に落とせるよぉ?」

「誰だそれは」

「ケンブリッジ内務補佐官もいけるかもぉー」

「だから誰だ」

「いいからぁ」


・・・嫌だけど試してみるかな

アイドルになるなら必須のような気もするし

・・・・・・よし、物は試しだ



-----------------------------



「・・・ちょっとエロくないか?」

「えぇー?超可愛いよぉ」


随分派手に仕上げたなぁ

大人っぽいと言うか、夜の蝶っぽいと言うか


「綺麗だけどなんか老けた気がする」

「だってミヒャンコ・フラッシュピコバンバン曹長は年上好きだよぉ?」

「だから誰なんだよ、ホントに居るのかそれ」


会ってみたいな、ミヒャンコ・フラッシュピコバンバン


「もういいや、元の方がアイドルっぽい」

「ええ?アイドル目指してんのー?ウケるー」

「嫌いか?アイドル」

「だって彼氏作れないじゃーん」


こっちの世界でもそうなのか

いや、元の世界のアイドルもなんだかんだで隠れて作ってそうだったけど

俺はスキャンダルの無いアイドルを目指すんだ


「これ洗えばいいの?」

「待ってー、落としたげる」


うーむ、落とし方があるのか

肌を傷めないよう優しく丁寧に時間をかけて落としてくれた

心配しなくても丈夫な体なんだけどな

まあ勉強になったよ、ありがとう



「ううむ、アイドル、アイドル・・・」

「呼んだかしら?」

「アイドル、アイドル」

「ちょっと!無視しないでよ!」


なんだコニーか

お前は嫌われ者じゃないか


「ひ、ひどいわね」

「あ、ごめん、つい本音が」

「ま、まあいいわ、魔王に優しさを求めてもね・・・」


おっと良くない

愛される魔王として不適格な発言だった


「確かに、コニーは天真爛漫アイドルって感じがしないでも無いな」

「でしょ?・・・天真爛漫って良い意味なの?」


どちらとも言えない

馬鹿とか我儘をボカしてそう言う場合もある

嘘をつきたくないから曖昧な言葉を選んでしまったか

しかしキツさはあるものの美少女なのは確かだ

そういう生意気路線ってのも、需要有るのかな


「うーん、タカネはエッチな体をしてるから、それだけで気取った感じがするのよね」

「そ、そうか?」

「何か庶民的で無いと言うか、ゴージャスすぎると言うか」


ああ、言ってる事は何となく解らないでも無いな

女優とかがたまにバラエティに出演してみても、空気読めてないなと思う事がある

気取った感じを崩さずに浮いてると言うか

キャスティング自体がミスってて、司会者が困った感じになるんだよなぁ


「俺は親しみやすい魔王を目指してるんだけど・・・」

「うーん、媚びてみたらどうかしら?」


媚びるか

それもやり方間違えるといやらしさが出そうだなぁ

媚びる魔王・・・うーん、イメージ出来ない


「取りあえず会う人会う人に対して靴を舐めてみたらどうかしら?」

「ざ、斬新だなぁ、つか嫌だよそんなの」

「クリスティを見て思ったのね、何かの大陸12位なのに気取ったところが全然無いじゃない」

「あれは変態なだけだ、あんなアイドル居ないよ」

「靴舐めアイドル・・・新しい時代の幕開けだわ」

「・・・・・・」


元々コニーにアドバイス貰おうなんて思ってなかったんだよね

付き合ってみたらこの結果だ

時間の無駄だった


「ムスタング、俺のアイドル道は始まったばかりだ」

「キュピィーン?」


目指せ、魔王アイドル化計画

・・・いいのかな、これで

不安だ

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