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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ピエトロ王国編
116/134

116 エレメント

次の日、皆帰り支度をしている


「ペガサスの馬車は昼頃に来ると思います」


テントを片付け荷物を小さくしていく


「タカネ様、こちらは謝礼になります」

「・・・・・・」


力なくそれを受け取る

イスタークがダイヤのスイッチの為に用意したモンスターをやっつけただけなのに

俺の為に準備した物を退治しただけ

受けとる気にはなれなかったが断るのも面倒な気分だった


「おう!俺達は一足先に帰るよ」

「・・・マリクか、お疲れさん」

「元気ねえな!疲れたのか?がっはっは」


ああ、主に精神的に疲れた

早く帰ってフカフカのベットに顔を埋めたい


「俺も今年は剣技大会に出て見ようと思うよ、自分がまだまだだと気づいたからな」

「そうか、頑張ってな」

「他人事だな!お前も出るんだろ?」

「出ないよ、おれ・・・私は興味ない」

「そうなのか?・・・勿体ねえ」


何か言いたそうだったが構わないでくれ

俺にもいろいろ事情があるんだ

マリク達、リンフォードのハンターは各自自分達の街へ帰って行った


テントもあらかた片付けられ、リンフォード騎士団の物だけになったな


「タカネ、水浴びでもしてきたらどうだ?荷物は俺が見てるぞ」

「グスタフさん」


ピエトロから手伝いに来てたグスタフさん

クリスティと一緒に回ってくれていた


「タカネ、ご厚意に甘えて行きましょう」

「サテンか」

「タカネ、気が抜けてしまったような顔してるら」

「タカネ様、クリスティがお体を洗いますので」

「・・・・・・」


連れられるままに泉へ向かう

ピエトロの女ハンターも付いて来た

・・・たしかに気が抜けてしまった

トリボーで話を聞いた後、ダンジョンのモンスターは駆逐しなければならないと思った

1匹も残してはならないと思った

いざそれが終わると、空虚な気持ちが残った


泉に着き壁を建てる

気もそぞろだが、ここ2週間ほどやってきた作業

いつも通りに仕上げる


服を脱ぐ気になれない

脱いだらまた着なきゃいけない

そう思ったらすごく面倒に感じる

このやたら大きい胸をしまうのは大変だ

なんでこんなに大きいんだよ

腹が立って来た

なんでこんな体に・・・


「た、タカネ、どうしたんですか?」


ああ、見られてしまったか

多分あまり良くない顔をしていたと思う

サテンがすごく心配そう

・・・ふう、気持ちを切り替えたい

だがそんなに簡単では無い


「タカネ、ボーっとしてるら、帰りはメアリーがムっちゃんに乗るら」

「そのほうが良さそうですね、タカネ様はクリスティと同じ馬車に乗りましょう」


心配されているな

クリスティもダイヤのスイッチの事は知ってる

トリボーの街で話を聞いた時どう思われただろうか

俺の事をどんな目で見ているのだろうか


「さあタカネ様、少し泉でスッキリしましょう」

「タカネをひん剥くら?手伝うら」

「タカネ、腕を上げてください」


されるがままにされる

どう見えてるんだろ

ダメ人間になった気分だ


ヒザ程の深さしかない泉に寝そべる

大の字になり、空を見上げる

冷たい水だな、頭がクリアになって行く

胸が浮くから溺れる事は無い

髪が水面に広がって行く


ああ、このまま眠ってしまいたい

水に溶けて消えてしまいたい

目を瞑る、水の音が心地よいな


「タカネ、寝ると丸見えら」

「いいぞ、好きなだけ見てくれ」

「どうしたら?ツルツルなんだから気を付けなきゃ駄目ら」


こっちからだとお前らも丸見えなんだけど

そんなに無防備に横に立つなよ


「タカネ、頭を冷やし過ぎるのは良くないですよ」

「うん・・・でも気持ちいいんだ、このままずっと浮かんでいたい」

「本当ら?メアリーもやってみるら」バチャン

「波はたてないでよ」

「・・・うーん、浮かぶけど安定感が無いら、巨乳じゃないと無理ら」

「メアリーさんは筋肉質になって来ましたもんね、当然クリスティも無理です」


クリスティが浮かばないのは胸の・・・どうでもいいや


「・・・カオリは元気かな」

「皆に迷惑をかけてないと良いですけど」

「クーリエたんが寝取られてないか心配ら」


なんだろう、急に会いたくなった

あいつの明るさが今は懐かしい


「もうすぐ会えるじゃないですか」

「カオリに会いたいなんて変なタカネら」

「また強くなってるでしょうか?もうクリスティは抜かれそうです」


エメラルドなのに強くなったよな

ルビーにも負けないくらいに

頑張って報われるって良いよな

・・・羨ましい


「タカネ、そろそろ起きてください、さすがに心配です」

「うーん、サテンのケチ」

「ほら、しっかりしてください」

「エッチ、どこ触ってんの?」

「た、タカネったら」


サテンとイチャイチャしながら起き上がる

少し頭がすっきりした



泉から戻り、ぼんやりしてたらペガサスの馬車が来た

乗り込みピエトロへと向かう

メアリーはムスタングへ

リンフォード騎士団の面々が手を振ってくれた

俺は複雑だ

自分のせいじゃないのに迷惑かけた気分だ

イスターク教か

他の国にもあるのだろうか?

考えると嫌な気持ちになる


馬車には俺とサテンとクリスティとグスタフさん

グスタフさんハーレムだな


「ふーむ、報酬は一人500万か、良いのか悪いのか」

「グスタフさん、早速ですか」

「タカネはいくらだった?お前はもっと貰っても良いと思うが」

「知らない、サテンは貰ったの?」

「私にもくださると言ってくれたのですが断りました、何もしてないので」

「上で回復作業は手伝ったんでしょ?」

「はい、ですがタカネが殆んど回復してくれたのでヒマな物でしたよ」


俺は1000万だった

ピエトロのハンター達は一律500万

リンフォードのハンター達は自国の為だったのでもっと安かったんだとか

それでも結構な数のハンターが居たからリンフォードとしては大きな出費だったろう


「イスターク教の奴らが悪いんだってな?」


背筋がヒヤリとした


「グスタフさん、イスターク教って他の国にもあるの?」

「解らん、だが時々噂を耳にするな」

「クリスティが聞いた話では、正体を隠して行動していると聞きましたが」


それが普通だよな

魔王の名前を看板にしたら活動できないよな

トリボーの連中はバレちゃったのな


「だとしたらピエトロにも居るかもしれないって事か」

「うーむ、ピエトロは敬虔なユンフィス教信者が多いと思ってたが」


ユンフィス

この世界の唯一神だ

スイッチを送りこんでる奴


「ユンフィスもロクなもんじゃないと思うけど」

「タカネ、さてはお前イスターク教か?」

「違うってw」

「ははは、まあ若い内は信仰心も薄いよな」


存在を信じてはいるよ

信仰はしないけど


「なあ、それよりお前達とこの狭い馬車に身を寄せ合いながら乗ってる姿を嫁に見られたらどうしよう」

「なんでこの馬車にしたの?」

「楽しそうだったからだ、で、後になって怖くなって来た」


知らないよそんなの

さっきから俺の長い脚が対面のグスタフさんにチラチラ当たる

ねえねえどんな気持ち?

ドキドキしてるの?


「好みはサテンの方なんだ、スマン」

「謝られると俺がフラれたみたいじゃないか」

「タカネ様の何が不満なんですか?」

「クリスティ、ややこしくなるから」

「グスタフさん、気持ち嬉しいのですが私にはタカネが居るので」

「サテンまで、冗談だって」

「・・・くう、フラれたか」

「マジなのかよ」


やいのやいの言い合う

ああ、救われるな

嫌な事を忘れさせてくれる

元気が無いから気を使われてるのかな

ごめんな、みんな


3時間後、ピエトロの首都のハンター組合の前にペガサスの馬車が降り立つ

帰って来たか

同行した者達に軽く挨拶をし、家路を急ぐ


我が家


「ただいまー」

「あ、みんなおかえりー」

「カオリ、早速胸を揉むなよ」

「皆様、おかえりなさい!」

「クーリエた~ん」

「め、メアリーさん!やめてください!」


シオンとエリーゼも出て来た


「ジルは?」

「部屋に居るの、研究に没頭してるの」

「そっか、少しは進んだのかな」

「あ、ピーちゃんがまた赤コウモリを送って来てくれたよ」

「そうか、お礼の手紙でも書くかな」

「タカネ様、お疲れでしょう?休んでくださいませ」

「ああ、ありがとうシオン」


ベットに行きたいところだが取りあえず団欒室へ

ソファに寝っ転がる

ああ、懐かしい感触


「タカネ、さっそくパンツが見えてるよ」

「見て良いぞ、大サービスだ」

「チラりと見えるくらいが良いんでしょ?解ってないなあタカネは」


そうっすか

ああ、家に帰って来たって感じがするなー


「カオリ、会いたかったよ」ギュ

「え?!ど、どうしたの?」

「なんら?カオリをやっつけるら?」

「ああ、押さえてるからくすぐっていいぞ」

「ちょ!」

「うへへ、観念するら」

「あ!うひゃひゃ!らめらからー」


カオリがぐったりした

俺は少し元気が出た

ありがとうカオリ

お前の犠牲のお陰だ


「タカネ、明日からどうするんですか?」

「また引きこもりの生活かなぁ?」

「頑張ったのでしばらくは休んでも良いとは思いますが・・・」


何かする気は起きない

やったところで裏目に出る


どたどたどた「た、タカネさん!」

「おお?ジルかどうしたの?」

「こ、これを見てください!」


長方形のアンテナっぽい物が付いた物体

・・・こ、これは


「トランシーバーです」

「え?・・・携帯じゃないの?」

「もうちょっとなんですけど・・・」


ま、まあいいか

取りあえず試してみるか?


「2台作りました、これがチャンネルです」


なるほど、チャンネルを同期させると繋がるのか


「どのくらいの距離まで繋がるか試してみよう」


1台持って外へ


「繋がってる?」

『はい、繋がってますよ』


ホソカワムラ方面へ行くか


橋の前


「繋がってる?」

『繋がってますよ』


ええ?すごいな

結構距離あるはずだけど

・・・ダンジョンの中に入ってみるか


ホソカワムラ方面 ダンジョン地下6階


「繋がってる?」

『繋がってますよ』

「すげえな」


外に出て兎に角全速力で遠くへ

100kmくらい走ったかな


「繋がってる?」

『繋がってますよ』

「すげえな、音もクリアだよ」

『時間差も無いみたいですね』


もうこれで良いんじゃないだろうか

家に帰ろう


我が家


「電波で無く魔法で繋がっているので距離は関係無いのかも知れません」

「ジャミロの通信鏡も距離関係無さそうだったもんな」


魔法は自然界のエレメントに深く関係している

エレメントが発生する場所ならどこでも繋がるのかも


「3台あれば会議通話とかも出来るの?」

「解りません、作って試してみないと」

「・・・これで良いんじゃないかな?正直携帯と変わらないような」

「チャンネルが6個しかありません、6人しか使えない事になります」

「・・・同じチャンネルを併用できるんでしょ?」

「内緒話は出来なくなりますが」


・・・あんまりよくないのかな

解らん


「でも、チャンネル増やすのはなかなか難しいんです、今は火、水、風、土、光、闇、6つのエレメントで繋いでますが」

「ああそういう仕組みなの?闇も?」

「闇もです、魔法は使えなくても体の中に資質はあるもんなんですよ?」


闇の魔法は禁忌だと聞いた事がある

でも使う才能は潜在しているって事か


「例えばこの六大元素を数字として考えて、火、水、火、みたいな感じで配列すると無限に組み合わせが出来て携帯に近く出来ます」


010、みたいな感じか?

配列を長くすれば確かに無限に出来るだろうけど

む、難しいなあ


「それに組み合わせにした方が良いと思います、例えば今は土のチャンネルで繋いでましたが、ムスタングで空を飛んだ場合、土のエレメントの支配力は弱くなります」

「え?じゃあ火の近くでないと火のチャンネルは使えないって事?」

「いえ、火の魔法が発生する場所であれば・・・ダンジョンだと風の魔法は使えなくなりますよね?」

「ああ、それにイナズマも・・・あれ?でも明かりは出せるよ」

「イナズマは正確には光と風のエレメントが組み合わさった魔法なんです」


そうなんだ

だからダンジョンの中で使えなかったのか

知らんかったな

じゃあダンジョンの中で風のチャンネルは使えないって事か


「メテオは火と土が組み合わさった物、そんな感じでチャンネルは増やして行けますが、やはり配列にした方が実用的だと思いますよ、その方がどれか一つでもエレメントが存在する場所なら繋げる事が可能になると思います、エレメントの大元は一つなんで」


お、おう、そうか

半分くらいしか解ってないけどジルがそう言うなら


「・・・ジルってメテオ使えるの?」

「使えません、でも資質はあるんです」

「ほほう」


まあいいか

俺には難しすぎる話だった


夕食


「ああ、家のご飯だ」

「おかわりもありますわ」

「ありがとうシオン」


久々の家のご飯

美味しいなぁ

暖かみが違うよな


「美味いなサテン、クリスティ、メアリー」

「はい、美味しいです」「美味しいらー」

「なんでカオリちゃんを省いたのよー」

「お前はずっと家で食ってたじゃん」


うーむ、午前中はカオリに会いたいと思ってたのにもうウザいな


風呂


「ああ、風呂だー」

「タカネ達はお風呂どうしてたの?」

「泉か魔法のシャワーだな」

「ああ、ピエトロに来るまでの道中を思い出しちゃった」

「あれは辛かったよな」


ふう、やっぱり家が一番だよな

定番すぎるセリフだが実際そうなんだから仕方ない


「カオリちゃんもパーティメンバー帰って来たし明日会って来るよ」

「休みの間は何してたんだ?」

「ひたすらトレーニング」


また強くなったのかな

まあ俺らも山ほどモンスター倒したし強くなってると思うけど


「メアリーもビックフットに会って来るら、ムっちゃん借りるら」


そうだな、半月ぶりくらいか?

寂しがってると思うぞ


「サテンは3日間の休みです、パーティメンバーも疲れていたので」

「そっか、リンフォードで頑張ってたもんな」

「クリスティは家に一度戻ってきます」

「そうだな、たまには帰らないとな」


俺はどうすっかな

明日は休むにしてもその後だ


・・・考えても答え出ないんだよな

また俺は無駄な事を


寝室


「うおおお、ベットだあ」


ダイブしてしまった

すぐに眠気が来る


「ああ・・・おやすみ」


普通の事が幸せだ

でもこれもすぐに当たり前になる

そしてまた退屈な日々に悩むんだろうな

zzzzz

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