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全部神様が悪い  作者: 無二エル
ピエトロ王国編
115/134

115 痕跡

次の日の朝


「タカネ、泉に行きましょう」


昨日シャワーを浴びれなかったので今日は他の女性陣と一緒に水浴びしよう

泉に向かい、囲むように壁を建てる


「50mくらいにしとけば絶対覗けないかな?」

「もう、天井を作ってしまえばどうですか?」


せっかくの朝の空気を感じとれなくなっちゃうのもな

空が見えると開放感が違う


「まあいいや、おかしな気配を察知したら魔法撃って追尾してみる」

「壁に阻まれていても追尾できるんですか?」


解らん

死なない程度の魔法を壁を飛び越えて適当に察知した辺りに落としてみればいいや

追っ払う事くらいは出来るでしょ


「いいから入ろう」


メアリーはもう服を脱いで飛び込んでる

視線を感じるな

女だって俺やサテンの体を見たいのだろう

ご期待に沿う為勢いよく脱いでやる

ボロンチョと飛び出る俺の巨大な胸

どうよ?


『す、すごい』

『女神様の聖なる裸身・・・』


またみんな土下座だ

もうめんどいからほっとく


朝の泉に入る

うう、冷たい

温かいお湯に慣れている体には堪える冷たさだ

でもサラっとした清らかな感触

すごく綺麗な水なんだと肌で感じる


「ふう、慣れると気持ちいいな」


柔らかな軟水

これが硬水だと髪がゴワゴワしちゃったりするんだよな


お湯や洗剤を使わなければ肌の脂や老廃物を綺麗に落としきれないかも知れない

それでも爽快感が残るのは清らかな水だからだろう


「タカネ、食らうらー」バシャ

「おっと」ヒョイ

「避けちゃ駄目ら、綺麗な水ら」

「そうは言うけど冷たいじゃん」

「タカネ、魔法で水を出してみるら」

「ほれ」ピュー

「・・・うーん、これは飲めない事は無いけど純粋な水では無いら」


悪かったな

どういうカラクリなんだろうな

魔力と引き換えに発生するエレメント

自然の物とは違う自然な何か


む、察知能力が働いた

俺の手から炎の玉が発射される

そびえ立つ壁を越え、そこから急降下

火の玉が地面にぶつかる感触

逃したか

だが気配が慌てて遠ざかっていくのが解る

追っ払うのには成功した様だ


「ふう」

「ごくろうさま、タカネ」


俺の行動を察してくれるサテン

うーむ、良い胸してやがんな

ちょっと揉んでやろうかと思ったけど


「ふふ、カオリが居ないと警戒せず入れて良いですね」


やめといた

カオリと同レベルじゃ情けない

大人しく水浴びを楽しみ、サッパリした



さて、今日からフロア3の攻略か


「マリク、疲れは残ってない?」

「がはは、一晩寝れば復活だ」


本当にタフだな

一応後ろからコッソリ再生の杖を使っておく

今日も頑張って貰う為に万全な状態で望んで貰いたい


フロア2とフロア3の昇降通路へ

壁を解除し本日も頑張ろう

正直同じ作業の繰り返しだ

敵も変わらない、だが少しずつ広くなってる気がする


ああ、ホメロスの河川工事を思い出すな

延々と石を運び、降ろして戻るの繰り返しの単純作業

おっと相手はモンスターだ

油断して気を抜くとやられてしまう

向こうだって必死なんだ、気を抜かずに行こう


「フロア4の通路が見つかった?じゃあ塞いで来る」


まずはフロア3だ、一つ一つ片付けて行かないと

しかしフロア4か、明日も潜る事確定、一体どこまで続いているのかな

いや待て、まずフロア3が今日中に終わるかも解らない

先走るのは早い、焦らずじっくり行こう




4日後


「ああ、飽きた―」

「明日は休みにしますか、終わりが見えないので少しは休まないと」


ダンジョンはフロア5まで攻略が終わった

しかしフロア6に続く通路も見つかっている


「下に行くほどどんどん広くなっていきますね」


隊長と話し合う

まるでピラミッドのように降りる程に広がって行くダンジョン

敵の逃げ場が多くなるから広くなると攻略が面倒になる

見逃しが無いか、確認に神経もすり減って行く


起伏の無い作業だ

敵は相変わらず一緒

討伐隊も慣れて来たのか立ち回りもしっかりしてきた

だが慣れて来た故のうっかりミスも多いので怪我は相変わらず


「マリク、明日はやすみだって」

「うむ、仕方ない」


せっかちだったマリクもすっかり落ち着いたようだ

焦っても仕方ないと気付いてきたのだろう

生半可なダンジョンでは無いと皆が思い始めている

テントに戻るとサテンと女ハンター達が談笑していた


「明日は休みになったよ」


久々の休みに皆の顔がほころぶ

ゆっくり疲れを癒してくれ


「タカネ、明日はどうするんですか?」

「うーん寝てるかなぁ?」

「私達は首都に行って羽を伸ばして来ます」


首都か、ムスタングで30分の距離

馬だと3時間らしい

往復6時間じゃん

余計疲れそうだけどな


「もっと近くに村か街は無いの?」

「北にありますよ、馬で40分くらいでしょうか?」


だったらムスタングで10分かからないだろう

ヒマならそっちに行ってみようかな


次の日


「ここがトリボーの街か」


ダンジョンの北の街へ来た

ムスタングが戻って行く

最初に俺とサテン

次にクリスティとメアリーを乗せて飛んでくる

クリスティはムスタングに乗るのが恐れ多いってまだ言ってたけど

残るのも嫌らしく渋々乗る事を承諾した

15分ほどで2人が飛んで来た


「近いな、これならテントじゃ無くて宿屋で泊まっても良いような」

「私達だけ宿屋ですか?それもなんだか申し訳無いような」

「メアリーはムっちゃんと寝られればそれでいいら」


そっか、ムスタングの事があったっけ

グリフォンを一緒に泊めてくれるとは限らない


街に入ると土下座民

はいはい、下からパンツ覗かないでね

結構大きな街だな


「失礼ですが、南のダンジョンの討伐隊の方々でしょうか?」


騎士に話しかけられた

ピエトロから手伝いに来たと答える


「実は、南のダンジョンにラムドール大陸のモンスターが居る事に付いて少しご報告が」

「え?なんか解ったんですか?」


騎士に付いて来るよう促される

通りを抜け、少し寂しい場所に連れて来られた

廃墟だな、なんなのここ?


「ここでは10年前までイスターク教の奴らが活動していました」


イスターク教?

イスターク・・・

・・・100年前の魔王イスタークか!


「街の人々といざこざがあり、今は滅ぼされてしまいましたが」

「・・・こんな所で何をしてたんですか?布教活動?」

「・・・これを、当時のイスターク教の活動記録です」


一冊のボロボロの本

表紙には禍々しい紋章が書き添えてある

中身は南のダンジョンに関する記載ばかりだった


「南のダンジョンを監視してたって事なんですか?」

「恐らくそうだと思います、当時は何の事だか分らなかったんですが・・・」

「通路が見つかり、ラムドール大陸のモンスターが見つかってそれに関係してるのではないかという事ですか?」

「・・・一番最後のページを見てください」



―――いつか現れるダイヤのスイッチの為に

    魔王イスターク―――


なっ・・・!

何の事だこれ

ダイヤのスイッチの為に?


「ダイヤのスイッチというのが何の事だか解りませんが、イスタークは様々な能力を持っていたと言われます、モンスターを操るのもその能力の内の一つで・・・」

「・・・イスタークはモンスターを操れた」

「恐らくは南のダンジョンにラムドール大陸のモンスターを連れて来たのは魔王イスタークではないかと」

「な、何の為に」

「侵略の為ではないでしょうか?先ほども言いましたがイスタークはモンスターを操れたので」

「・・・・・・」


侵略の為にモンスターを・・・

あんなに増やして・・・

で、でも、ダイヤのスイッチの為にって


「イスタークの意思を受け継ぐ者の事では無いでしょうか?」

「!!・・・・・・」


・・・・・・・・・・・・



「タカネ、大丈夫ですか?」

「・・・ああサテン、すまない」


頭がクラクラした

少し休みたくなったので宿を取り、ベットに横になっていた


「クリスティとメアリーは?」

「街を見ていますよ」

「そうか・・・」

「・・・タカネ、さっきの事なんですが」


意味が解らない

聞かれても俺には意味が解らないぞ

だが俺はダイヤのスイッチだ

魔王が指名して来たのは俺だ

何も悪い事をしてないのに、冤罪をかけられた気分

俺の為に魔王が何かを準備していた


「どういう事なのでしょう?」

「・・・解らん、けど推測は出来る、イスタークは俺に魔王を受け継いで欲しいんだろう」

「その為に、モンスターを準備しておいたと?」

「対処法が解らないラムドールのモンスターを使って国盗りをしろって事なんじゃないかな?たぶん」

「なぜタカネがそんな事を」

「・・・俺も、魔王になると思ったんじゃないかな、正確にはダイヤのスイッチを持って生まれた者が、この世界に溶け込むことが出来ないと予測したと言うか」


当たらずとも遠からずだ

俺はこの世界に溶け込めてはいない

力を持て余し、難儀している

絶望とまでは行かないまでも、それに近い状態にまでなった事もある


「余計なお世話だ、畜生ッ!」

「タカネ・・・」


だからって魔王になれ?

冗談じゃない、なんでそんな物に・・・

モンスターを用意しました?

お生憎だが俺にモンスターは操れない・・・よな?


「・・・どうやって操るんだ?」

「稀に魔獣使いと言われる人は居ます、どうやるのかは解りませんが・・・」


ああ、図書館でもあるなら調べてこようかな

だが体に力が入らない

何もする気が起きない


「イスターク教・・・この街のは滅ぼされたみたいだけどまだ他にもあるのかな」

「さあ・・・」


サテンが寄り添って来る

寝ている俺の頭を優しく撫でてくれる


「あ、ムスタングは?」

「メアリーが連れて行きましたよ」


ハッとした

ムスタングで試してみようかと一瞬思ってしまった

どうやって操るのか

いかんいかん、ムスタングにそんな事はしたくない


「もう少し休んでください、サテンが横に居ますから」

「・・・ありがとう」


サテンの胸に顔を埋めた

俺は深い眠りについた




それから10日後

俺達はダンジョンを攻略する

結局フロアは8まであった

フロア8には地底湖があり、モンスターの楽園になっていた

地底湖から生み出されるように湧きだすモンスター達

本当に終わらないかと思ったがフロア8の攻略に入って3日目、モンスターの排出に陰りが見えて来た

地底湖の水の出口を見つけ、破壊

穴を大きくして地底湖の水を減らしていく

隠れていたモンスター達が露わになる

総力戦、回復しながら縦横無尽に動き回った


「もう居ないか!!隅々まで探してくれ!」

「ああ、やり切った、大きくした穴から逃げてないよな?」

「ああ、見てたから大丈夫」


土の壁を網目状に出し大きなものは流れないようにした

穴の出口はクレパスに繋がっていた

かなり深そうな亀裂

ここへ流れて行った水はどこへ行くのだろうか


「居ないか?終わったのか?」

「タカネ様、終わりですよ」

「そうか・・・」


妙な気持ちだった

イスタークが俺の為に用意した物を、俺の手で壊した

安堵の気持ちと罪悪感が入り混じった何か

だが余計なお世話だ、俺はこんなものを望んじゃいない


魔獣使いの事も結局調べなかった

操れるようになってどうすると言うのだ

そんな力を身に着けて何になると言うのだ

可能性の問題だが、俺は知る事を拒否した


壁をすべて解除し最終確認

全員で移動し、一つずつ調べながらダンジョンを上って行く

見逃しは無いか?ここで1匹でも見逃したらどんな弊害が起こるか解らない

慎重に慎重に、天井まで調べていく

フロア1の上の階まで

見逃しは無かったようだ


「しばらくは我々が待機します、1週間ほど見回りをして異常が無ければ我々も撤退しましょう」


騎士団が残るようだ

俺達はダンジョンから出て空を見上げる


「タカネ、終わったのですね、ではペガサスの馬車を呼ぶのでムスタングを貸してください」


サテンがトリボーの街へ飛ぶ

ハンター組合から伝書隼を使い、明日にはペガサスの馬車がやって来る手筈

20分ほどでサテンが戻って来た


「・・・終わったのですね」

「・・・ああ、終わった」


後味が悪い

またこんな感じか

余計な事しやがって

勝手に期待しやがって


「・・・タカネ、以前も言いましたが・・・サテンは付いて行きますからね」

「なんだよ、サテンも俺が魔王になると思ってんの?」

「そうじゃありませんが・・・」


それ以上何も言わなかった

絶対にそうはならないとは俺にも言えないから助かった

でも、もし俺が魔王になるようなら・・・


付いてこなくていい

俺を倒す側に回って欲しい


イゴールが言ってたっけ

馬鹿な俺を終わらせてくれって


今ならすごく解る

誰かに終わらせてほしい


俺を止めて欲しい

自分では出来るか解らない


弱いんだ

心は高校生程度の強さしかない


俺が間違えて、後戻りできなくなっていたら


終わらせてほしい

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