109 追加効果
次の日、ピーちゃんが来た
「あらぁん、素敵なお家ねぇん」
「まあ取りあえずゆっくりしてよ」
応接間に通す
今日は俺とジルとメイドちゃんしか居ない
サテンも少し前からハンター業へ行き始めた
この前女騎士が住民を注意してから大分変ったな
街に出ればまだまだ声をかけられるらしいがブームも落ち着いたみたい
クリスティもカオリの成長を見てか一人でハンター業に出かけるようになった
ジルには隠れて貰った
ピーちゃんとはベール越しに会った事あるんだけどね
「お茶をお持ちしましたの」
「エリーゼは初めてだっけ?ユーメリアのピオリム王子だ」
「姫」
「お噂はかねがね聞いてるの」
「あらぁん、あふれ出る美貌の事かしらぁん」
「カオリ様が強敵と書いて友と呼んでいたの」
あれからカオリはすごく強くなったぞ
今戦ったらピーちゃん敵わないと思う
メアリーもゴーレムを倒し少しずつだが上級依頼をこなしているらしい
みんな着々と強くなってる
「ピエトロには土龍が居るのよねぇん」
「ああ、良いヤツだぞ、会ってみるか?」
「別にいいわぁん、モグラなんでしょう?」
「それは言っちゃ駄目なんだぞ、ピーちゃんの王子みたいなもんだ」
「現実を受け止められないのねぇん」
お前が言うかね
自虐としか思えない
「ちょっとトイレ行って来るよ」
「あらぁん、女の子ならお花を摘みに行ってくると言って欲しいわぁん」
トイレはトイレでしょ
トイレから出るとジルに声をかけられた
「ジル、部屋に隠れててよ」
「すみません、後でも良かったんですが赤コウモリの羽が無くなってしまって」
本当に後で良い用事だった
そんな事で来客中に部屋から出ちゃ駄目でしょ
「すみません、研究に没頭してしまうと見境無くなっちゃって」
「赤コウモリはもう狩りつくしちゃったかも、依頼は出してるんだけど・・・」
ハンター組合に依頼は出してるのだが最近は収穫が無いみたい
もうこの辺にはいないのかな
「明日にでも他国に行って買って来るからさ」
「・・・解りました、少し休憩して気分転換します」
そうだぞ、たまには休まないと
研究を頑張ってくれてるのはありがたいが倒れられても困る
ジルは部屋に戻ってった
「ふう」
「どうしたのぉん?溜息なんかついちゃってぇん」
「ああ、赤コウモリの羽が大量に必要でね、もうこの辺には居ないから他国まで買いに行かないと」
「生きてる赤コウモリなんて見た事ないわぁん」
「希少種だからな、リンフォードのダンジョンには結構いるみたいだぞ」
俺だって生きてるのは見た事無いよ
ただ素材屋で見た感じだとコウモリが赤いってだけだ
さして興味も湧かない
「普通のコウモリと赤コウモリで何が違うのかな?」
「赤コウモリは小さいけど運動能力が高いらしいわよぉん」
「へえ」
「網で捕まえるんだけどぉん、回避能力がすごいらしいわぁん」
網が必要なのか
コウモリってたしか超音波出しながら飛んでるんだっけ?
「超音波ってなぁに?タカネちゃんは時々不思議な事を言うわねぇん」
この世界ではまだ実証されてないのか
スイッチがたくさん来てるから知識として広まっててもおかしくないんだけどな
証明できなければ信じては貰えない
俺も詳しい訳じゃ無いしな
まあ細かい事はいいや
「でも、なんでそんなに赤コウモリが必要なのぉん?」
・・・携帯の事って言って良いのかな?
また弊害起こるかな
仲間内でだけ使おうと思ってたんだけど・・・
・・・いや、すでにジャミロが作ってるんだっけ
生活が向上する者なら弊害は少ないと思う
「離れた場所でも会話できる魔道具を研究中なんだよ」
「まあ、タカネちゃんもなの?その研究をしてる人多いわよねぇん」
「そうなの?」
「ええ、出来上がれば生活が変わるって、ウチの国の魔法使いも研究してるわよぉん」
スイッチだな
考えれば当たり前の事だ
携帯の存在を知ってる物がこの世界に送りこまれている
あれば便利な物は作ってみようと考える者も居るだろう
ニルギスでは電車を作ろうとしてるって言ってたしな
「でもぉ、お手上げみたいよぉん?全然取っ掛かりすら掴めないんだってぇ」
「すでに作った人も居るんだよ、死んじゃったけど」
「うそぉ?」
「ただ魔法使いにしか使えない物だったから改良中だ」
「タカネちゃん、貴方そんな物作っちゃったらまた目立つわよぉん?目立ちたくないから20位も返上したんでしょおん?」
「いや、俺が作ってる訳じゃな・・・」
あ、ジルの存在も内緒だっけ
「あくまで仲間内で使おうと思ってね、今のとこ口外する気は無いからピーちゃんも内緒にしてよ」
「解ったわぁん、でも出来上がったら私も欲しいんだけどぉん」
「いいよ、成功するか解んないけどね」
「じゃあ私も協力したいわぁん、ユーメリアに連絡して赤コウモリを送って貰うわぁん」
「おお、助かるよ」
その日は、やいのやいの言って時間が過ぎて行った
次の日
「タカネちゃん、赤コウモリを持って来たわよぉん」
「え?もう?」
朝からピーちゃんが来た
昨日伝書隼を送ってすぐに素材屋を回り夜の内にペガサスの馬車が飛び立ったらしい
王子の権力すごいな
「20匹くらいあるね」
「足りるかしらぁん?」
「いや、そんなに簡単では無いからね、大事に使わせては貰うけど・・・」
「まだ足りないのぉん?じゃあユーメリアのハンターに依頼を出しておくわぁん」
「助かるよ」
赤コウモリをこっそりジルに渡す
お陰で他国に買いに行かずに済んだ
リンフォードもキリングもめんどくさい国だからな
助かったぜ
「今日はメアリーちゃんが居るのねぇん」
「休みらー」
「出掛けるのか?」
「ビックフットに会って来るら、ムっちゃん借りるら―」
「なぁに?ビックフットって」
「足の大きなやつだ、人間とはちょっと違うんだ」
「大丈夫なのぉん?」
「大丈夫だよ、寂しがりやなんだ」
ムスタングで飛んでちゃった
これで今日は俺も出掛けられないな
「ピーちゃん愛馬のペガサスで来たの?」
「そうよぉん、放牧してあるわぁん、乗ってみるぅん?」
「いや、ムスタングが嫉妬するんだよ、居ないとこで乗っても匂いでバレそうだ」
「あらぁん、可愛いわねぇん」
「自分は誰でも乗せる癖に俺の事は束縛するんだぜ?」
不公平じゃないだろうか
まあいいけどさ
「ねぇん、お話も良いけど稽古しましょうよぉん」
「そうだな、ピーちゃんも次の大会では上位を目指すんでしょ?」
「勿論よぉん15位くらいにはなりたいわぁん」
15位か
結構控えめなんだな
「クルセイドで16位と戦って思い知ったわぁん、上位の壁は厚いわよねぇん」
ピーちゃんはレイピアで穴だらけにされた
勝負にはなんとか勝ったけど大会ルールでなら負けてたよな
よし外に出て稽古しよう
「あの岩なんなのぉん?」
「ああ、カオリが持ち上げてトレーニングしてるんだよ」
「う、ウソでしょお?」
300kgの岩
大きさにすると墓石の上部分くらいだろうか
「ぐ、ぐおおおおおお」
「持ち上がるんだね」
コキ「いでえ!!!こ、腰がァ嗚呼アア」
「ま、待ってろ再生の杖持って来る!」
治してあげた
世話が焼けるな
「こ、こんなの無理よぉ」
「カオリは結構丈夫だからな」
「うぅ、か弱いと損よねぇん」
「はいはい、稽古しようぜ」
ピーちゃんをギッタギタに鍛錬した
再生の杖を使いながら繰り返し繰り返し
「はあ、はあ」
「もう夕方だな」
「おーい、カオリちゃんのお帰りだよー」
サテンとカオリとクリスティが帰って来た
「ええ?カオリだってドーピングアイテム使って持ち上げてるんだよ?」
「ああ、そうなのねぇん、焦っちゃったわぁん」
「このブレスレットを使えばほれっ!」
「鷲掴みじゃないのぉ、どうなってるのぉ?」
指だけで岩を持ち上げダンベルのように上下
軽々やってるな
「カオリ気を付けろよ?脚に落としたら大変だぞ?」
「解ってるよ、それより岩を大きくしようと思ってるんだけど」
「怪我だけはしないようにな、再生の杖があるからって無茶しちゃ駄目だぞ」
「はーい」
「ねえどうなってるのぉん?」
カオリ曰く、ドーピングアイテム使えばトレーニング効率が上がるらしい
「そうは言っても、能力アップアイテムなんて2倍がせいぜいじゃないのぉ」
「このブレスレットは力が5倍になるんだよ!」
「うそぉ」
「普通は体が付いていかないよ、カオリは化け物だから」
「タカネが言うな」
「とんでもない鍛錬をしてるのねぇん、20位を死守できるかしらぁ?」
深く突っ込まれなかったけど普通は2倍がせいぜいなんだな
5倍なんて普通は体が付いていかない
スイッチ持ちの丈夫な体だから出来るのだと思う
「・・・タカネ、サテンが作っていた魔法石が出来上がったんですが」
「おおそうか、効果は調べて来たのか?」
3週間くらい前に買った1カラットのダイヤ
サテンが魔法を送りこみ、魔法石を作っていた
水色の魔法石だ
「1カラットで魔力が1.5倍になっただけでした」
「そうか、まあいいじゃん」
「正直ガッカリです」
1.5倍って言うとオリハルコンのブレスレットと一緒だな
「すごい能力が付いたらタカネに使って貰おうと思ってたのに」
「いいよ、使わせて貰うよ」
「サークレットの方が能力が上がるじゃないですか」
高騰のサークレットは力、素早さ、魔力が2倍だ
ちなみに自分が作った魔法石は自分で使っても効果が無い
「サテンが作った物の方が俺にとっては価値が上だよ」
「た、タカネ!」ぶちゅー
「相変わらず仲良いわねぇん」
サテンが俺の頬にキスをする
どさくさにカオリが俺の胸を揉む
「タカネをやっつけるら?」
「おお、おかえりメアリー、ムスタング」
「ケーン」
「暗くなって来たわねぇん、そろそろホテルに戻るわぁん」
「ピーちゃん、明日はカオリが休みだからねー」
手を振ってピーちゃんが帰って行った
次の日
「今日はカオリがピーちゃんの相手をするよ」
「おお、喧嘩するなよ?」
応接間に消えていく2人
後で稽古もするらしい
「サテンも休みなの?」
「タカネ、魔法石の台座を買いに行きましょう、私がプレゼントします」
「お、おう」
宝石店に行って台座を選ぶ
左手の薬指で大きさを合わせられた
サテンが更に注文
指輪の裏に『愛するサテンより』と掘られた
店を出てさっそく指輪をはめる
「ありがとうな、サテン」
「次はもっと大きい魔法石を作ってもっと効果の大きい物を・・・」
「いいよ、オーバースペックだから」
現状でも十分だ
ドラゴン倒すのだってそんなに強力な魔法は必要ない
・・・あれっ?
「サテン、鑑定では魔力UPしか出なかったんだよな?」
「はい、どうかしましたか?」
なんか体がおかしい
いつもと違う
・・・なんだろ?
あ、ナンパだ
はいはいさような・・・
ナンパ男が倒れた
「ど、どうしたんだ?」
「鼻血を出して倒れましたね」
「どういう事だ?」
ヒーリングをかけてあげる
肩を振って無理矢理起こす
気が付いたが俺を見てまた倒れた
「どうなってんの?」
何事かと人が集まって来る
バタバタ倒れていく
「ええええ!?」
な、なんだこれ
「まあ、皆タカネの魅力にメロメロなのでしょうか?」
「ええ?今更?」
いくら俺が絶世の美女だとしてもだ
地上に舞い降りた天使だとしてもだ
こんな事は今まで無かった
「・・・指輪か?」
すぐに指輪を外す
取りあえず倒れた人達を解放する
皆気が付いてポカーンとしていた
良かった、指輪を外せばいつも通りだ
慌てて家に帰る
試しにカオリに付けさせ街を歩いて来て貰った
「す、すごいよこの指輪!モテモテ!カオリちゃんがモテモテ!」
「なんだろ?魅了の効果でもあるのかな?」
「タカネが言ってたみたいな気絶は無かったよ?」
「まあベースがカオリならそんなもんでしょ」
「な、なんだとう」
カオリに胸を揉まれながら考える
これは恐らく察知能力みたいに鑑定では出ない効果の一つなんだろう
「どうするの?そのモテモテ指輪」
「うーん、危険だよな」
「ぅう、呪われたアイテムを作ってしまったのでしょうか?」
「欲しいわぁん、私にくれないかしらぁん」
「いや駄目だよ、サテンのプレゼントなんだから」
この場でピーちゃんが指輪を付けたらどうなるのか
俺だってピーちゃんに抱きついちゃうかもしれない
やべえ、これはヤバすぎる指輪だ
「サテンは何ともなかったよね?」
「タカネが指輪を付けた時ですか?サテンはもうすでにタカネにメロメロなんですよ?」
「お、おう、そうか」
効果の大きさや範囲はハッキリしないけどまた付けて試す気にはなれないな
まあその内何かに役立つかもしれない
「ごめんなサテン、肌身離さず付けるつもりだったんだけど」
「いえ、仕方ありません、タカネがモテるのも嫌ですし」
「サテン、カオリちゃんにも作ってよ」
「悪用しかしないだろカオリは」
「モテるのは罪だと言うの?だったらタカネもサテンも地獄に落ちろ」
何言ってんだカオリの野郎は
取りあえず鍵の付いた箱を買って来て金庫の奥に封印した
夕方になりピーちゃんが帰って行く
俺はジルの部屋へ行き経緯を伝える
「夢魔の魅惑の幻術に似ていますね」
「ああ、サキュバスとかか?」
「サテンさんが魔法石作るとそんな効果が付くんですね」
「すげえな、ジルが魔法石作っても特殊な効果乗るのか?」
「いえ・・・あ、でもひょっとしたら」
ジルが部屋を漁り始めた
何かを探してるけど・・・
「ありました、これはジルが以前作った魔法石です」
「・・・1カラットくらいか?」
「鑑定の結果では魔力アップしか出なかったんですよ、試して見て貰えませんか?」
以前そんな事言ってたな
魔力アップしか付かなかったので魔法使い自体が少ないこの世界では需要が無いと
ジルの魔法石を付けてみる
・・・良く解らん
「ジルは重力の魔法が得意です」
そうだったな
その関連で追加効果が無いだろうか
・・・うーん、はめただけじゃ解んないな
「水の上を歩けるって言ってたよな?」
「はい、早くは歩けないんですが」
風呂場に行ってお湯を出し足を突っ込む
暖かい
普通にお湯の中に足が沈んだ
「浮くイメージを持ってください、ジルは水面から50cmくらい浮かびますよ」
「やってみてるんだけどな」
駄目なのかな
隠し効果は無いのかな
「うーん、もうちょっと借りていいか?」
「はい、何か隠し効果が見つかると嬉しいんですが」
今のとこ解んないや
そんなにポンポン隠し効果が見つかるってのもおかしい気がするし
今まで聞いた事も無いもんな
隠しスキルを付けることが出来る魔法使いは稀なのかな
俺のは察知能力
敵意に反応し察知することが出来る
サテンのは魅惑
これはひょっとしたら無敵かもしれない
敵がぶっ倒れるんでしょ?
いや、カオリだとそうはならなかったか
もっと検証したいけど怖いなー
まあその内使う機会あるかもな
取りあえずはジルの指輪をしばらく調べてみよう




