102 地方巡業2
朝だな
はーあ、気が乗らない
お、サテン、今日は違うドレスだな
メイドちゃんが持って来てくれてたの?
よくサイズが合ったな
朝御飯もそこそこに国の式典にサテンが参加
上辺だけの愛想笑い
王子の求婚断ったせいかなんにも貰えなかった
すごい盛り上がりだが気まずいしさっさとズラかろうぜ
「ふう、ひょっとして今日もどっかの王宮にお泊り?」
「はい・・・申し訳ありません」
「しょうがないか、来年もサテンが1位になるから配慮してよね」
「はい・・・というかすごい自信ですね」
「このエロい体見てよ」
「タカネ、恥ずかしいのでやめてください」
はいはい次の国
次の国は上品な国だな
王様も王妃様もニコニコで優しい
なんだよこの国で泊まりたかったわ
王様の趣味はバードウォッチング?
趣味も素敵だな
王妃様が10分くらいで俺とサテンの絵のデッサンを書いてくれた
凄く上手だった
「こういうプレゼントが一番うれしいかも」
「本当にお上手ですね」
ずっとここに居たいが次が詰まってるので飛び立つ
王様と王妃様がずっと手を振ってくれた
ああ、マジで良い国だ
次の国はなんだか雰囲気が冷たい
え?代表が独裁者なの?
仕方ない、無難にやりすごそうぜ
冷たい目の独裁者
髙そうな刃物を貰った、特産品らしい
サテンには興味無さそうで良かった
え?ああ、男色なの?
まったくどいつもこいつも
次の国は開放的な国だな
海があって暖かいせいか露出の多い人が多い
え?サテンにも水着になってほしいの?
仕方ないな、サテン着替えて来なさい
水着でも堂々と式典に出席するサテン
とんでもない盛り上がりだった
これなに?ワイン?
50年物?100万もするの?
飲めないけど良いもの貰ったな
次の国は工業の国らしい
煙がモクモク上がってるなあ
空が黒い、海も汚すので前の国とは仲が悪いんだとか
でも工業って何作ってんの?
久し振りに文明に触れられるのかな
へえ、足踏みミシンとか作ってんだ
それはあると便利かも
メイドちゃん達に買ってあげたいけど荷物になるから無理か
プレゼントもシルクの絹織物だった
次の国、ああ女王様が治める国なの?
明らかにブスなのにサテンに対抗してくる女王
・・・めんどくさい
そりゃ家臣は女王の方が綺麗って言うよ
そう言わなきゃ首が飛ぶんでしょ?
しかし明らかなウソをつかされて家臣が心苦しそうだ
誰も眼をあわせようとしない
もういいから次行こうぜ
え?この高そうな毛皮のコートくれるの?
ふわふわじゃん
許す
さて、次で今日は最後か
お、あの山綺麗だな
鉱山都市?資源が豊富な国か
そういう国は強いよな
おお、大理石の建物がチラホラ
立派だなー
国王おっとこまえの独身かよー
サテンが誠意を持って求婚される
申し訳なさそうに断るサテン
悲しそうな顔をする国王
うーん、心が痛いぜ
フった後も無理な笑顔で接してくれる国王
え?今日ここで泊まるの?
・・・気まずい
夕食食べてお風呂に入って部屋に閉じこもる
「タカネ、ちょっと辛いです」
「良い人だとフるのも辛いな」
「大陸1位という枷を付けられた気分です」
「・・・俺は自分が投げ出した物をサテンに求めてしまったんだな」
「・・・いえ、まだタカネほどの重荷を背負ってはいないでしょうけど」
「投げ出すのは無責任だが俺は責めないぞ」
「いえ・・・タカネの背中を軽くします、私がタカネが背負うはずだったものを背負いましょう」
「サテン・・・」
無理に背負う物でもない
出場しなければいいだけだ
しかし回りは期待する
国の代表として争う事を
しがらみってやつだ
その者が背負ってしまう重い荷物の事など誰も考えない
「それにご褒美を貰えれば私にとっては軽い荷物です」
「お、おう」
サテンとねっちょりした
次の日、朝からペガサスの馬車で飛び立つ
国王がお土産をくれて見送ってくれた
良い人すぎて心が痛い
寂しい笑顔が頭から離れない
「ら、来年は宿を予約しますんで」
「今日は?」
「・・・王宮泊まりです」
そっすか
眼を合わせなさいよミラベルさん
今日10か所?!!
まじかよ!
飛んでは降り飛んでは降りの繰り返し
正月の市議会議員みたいにあちこちの新年会に顔を出してる気分だ
「何それ」
「純金で作ったソロバンだそうです」
「純金で作る意味あるの?」
次の国次の国
「サテン様、化粧を直します」
「このお土産そっちのシートの下に入らない?」
「こちらのシートはサテン様のドレスでいっぱいです」
バタバタバタバタ
「あの国の大臣俺の尻触ろうとしたぞ」
「まあ、滅ぼしますか?」
「サテンが魔王みたいだよ」
次々次々
「今の国は見物客が一番多くなかったか?」
「失業率が高いので」
「それであんなに居たのか、数居た割に元気が無かったな」
「虚ろな目で見られて怖かったです」
はい次はい次
「おい崖の途中に村があるぞが」
「この辺は薬草の宝庫です、それを他国に売って生活しています」
「へえ、あそこには寄らないの?」
「小さな村なので」
「あ、グリフォンだ、こっちに来るけど」
「大丈夫です」
馬車の従者が何かを投げる
落ちていくそれにグリフォンが引き寄せられていく
「あれなに?」
「酒甕ですよ、グリフォンは酒が大好きなんです」
「へえ、知らなかった」
ムスタングも好きなのかな
機会があったら飲ませて見るか
「はあ、次で最後?」
「はい、ですが泊まりはまた次の国で明日は朝から式典です、それが終わればユーメリアに帰れますよ」
本日最後の式典を終える
サテンお疲れさま
笑顔でよく頑張ったよ
「ではニルギスに向かいます」
「最後の国ってニルギスなんだ」
「少し海を越えます、ニルギスは島国なので」
「暗くなって来たけど・・・」
「ニルギスは魔法水晶があるので明るいですよ」
魔法水晶が7つも稼働している国らしい
軍事研究の噂もチラホラ
「ユーメリアの魔法水晶もニルギスから買ったんですよ、友好的な関係です」
「ユーメリアって永世中立国なんでしょ?その定義がいまいち解んないんだよな」
「他国同士の戦争に介入しないというだけで仲の良い悪いは有りますよ、すぐ北のエステバンやソビキトとはあまり関係が良くないです」
「ピエトロとは?」
「普通・・・より少し悪いくらいでしょうか」
「そうなんだ」
「タカネ様が王子をぶっ飛ばすたびメイド一同ハラハラしてます」
「wwwそれは申し訳なかった」
王子だもんなあれでも
でも俺だけが悪いとは思えない
「普通の王子ならぶっ飛ばす事も無いんだよ」
「ええ」「はい・・・」
「どうしてああなっちゃったの?」
「さあ」「何故でしょう?」
ミラベルさんもメイドちゃんも知らないようだ
俺も聞いてみたけどどうでもいいや
責任の所在をうやむやにしたかっただけだもの
「ニルギスです」
暗くなった空に浮かび上がる夜景
光の数がすごい
一目で大都市だと解る
「人口6000万、船での交易も盛んな大陸一の国です」
「島国なのに大陸に数えられているのか」
「各種重工業も盛んで噂では蒸気で走る鉄の馬車も研究されているとか」
蒸気機関車?!
いきなり時代が飛んでるな
・・・絶対スイッチが絡んでると思う
まあ魔法水晶と言う発電所がある時点で順番がしっちゃかめっちゃかなのだが
「その水晶で走る車も理論上は考えられているそうですよ」
電車か
蒸気すっとばしてそっちに行っても良かったと思うが
「ですが、鉄の成型技術や耐久技術が全然追いついていないそうです、開発されるのはまだまだ先でしょうね」
「ふーん」
順番すっ飛ばした結果がそれか
まあ難しい事は俺には解んないけど
開発するなら弊害怒らないようにしてほしいもんだ
王宮に降り立つ
高い建物だな
今までの国とは群を抜いている
ニルギス関係者が出て来た
王族は明日の朝まで面会は無いらしい
ほっとした
部屋に案内される
2人で一室、2部屋与えられた
うおー豪華だな
天井がすごく高い
なんじゃあのシャンデリアは
水晶が光ってるな、これも魔法水晶の技術だろうか
食事を貰って風呂に入る
大浴場も広いな
メイドが洗ってくれるサービスは無いらしい
「立派な風呂だなー」
「お湯の湧きだす量がすごいですよ、温泉でしょうか?」
「・・・解らん」
ん?だれか入って来た
・・・老婆だ
服を着ている、様子がおかしい
こっちを見て薄気味の悪い笑みを浮かべる
「・・・なにか?」
「・・・どっちがスイッチだい」
なんだよ、いきなりかよ
しらばっくれるか
「何の話だ?あんたは誰だよ」
「ピエトロで魔法水晶が開発されたんだろう?お前達からすごい魔力を感じるよ」
「魔力を感じる?そんな事が可能なのか?」
「スイッチの能力さ、意味が解るだろう?」
能力かよ
いきなり退路を塞がれた気がする
「それとも両方ともスイッチかい?2人共魔法を使えるみたいだが」
サテンが疑われるのは嫌だな
言ってしまうか?
「私がスイッチです」
「ば、馬鹿、サテン、庇ってるつもりか?」
「あんたがかい?どれどれ目が悪くてね・・・なるほどすごい美人だ」
「・・・違う、俺がスイッチだ、サテンはこの世界の人間だよ」
「タカネ!」
「んん?・・・あんたもすごい美人だね、もうどっちがどっちだか」
「俺だよ、大雑把にしか解らないの?」
「触れば魔力の大きさがはっきり解るよ、触らせてくれるかい?」
「目的が解らん、スイッチならどうだと言うんだ」
「・・・ニルギスにとって、危険かどうか確かめさせてもらう」
ううむ、絶対安全だとは思われないと思う
俺ってそう言う運命だし
はあ・・・
「国への忠誠心か?危険と判断した時はどうするの?」
「・・・・・・」
「殺す、とか?」
「やれやれ、随分余裕だねぇ、不気味な奴だよ」
「こっちのセリフだよ、素っ裸のとこ来られて脅されて」
「さて、どうけじめをつけたもんかねぇ」
「お互いの為、干渉しあわない方が良さそうだけど」
「おや?ひょっとして怖気づいたのかい?」
揺さぶりをかけて来てるな
俺は老婆の後ろに移動した
高速でね
「争うなら、そっちが後悔する事になるよ」
「な!・・・い、いつの間に」
「触られるのも拒否するよ、良い印象を与えられないと思うからね」
「・・・ルビー、いや・・・」
「答えないぞ、詮索はやめろ」
「・・・・・・」
高速で湯船に戻る
「まあニルギスに恨みは無いよ、貴方の行動次第では憎しみを持つことになるかもしれないけど」
「この世界に来て60年、今まで平穏に過ごせて来たのに」
「俺が脅威になりそうって事?」
「解らん、しかしそのポテンシャルはありそうだ」
「そんな事言われてもな・・・大体どうしてそんなにニルギスに義理立てるの?生まれ故郷でも何でも無いでしょ?」
「60年世話になって来たんだ、子供もいる」
「そっか、俺はまだ来て1年経ってないからその辺は解らないや、ピエトロも2国目だし」
「2国目?」
「ホメロスから始まったんだけど嫌になって出ちゃった」
「・・・まだ忠誠心は薄いという事か」
「無いと言って良いよ、ピエトロも女王が嫌な奴だったし」
「・・・フッ」
老婆が軽く笑う
「一応聞かせてくれ、魔法水晶作りに手を貸したりしたか?」
「・・・ああ、でももう手伝わないよ、軍事利用の話は後で聞いたんだ」
「そういう噂があるというだけだ、誤解しないように」
「でも、まんま原子炉だし」
「ゲンシロ・・・チキュウから来たのか」
「ん?・・・なんかボロ出しちゃった?」
「私が元居た世界にはゲンシロという言葉は無かった、その言葉を使うのは地球から来た者だけだ」
「地球だって60年前に原子炉があったか解らないよ」
「いや、どのみち後から私の世界から来た者でもゲンシロと言う言葉は知らないんだ」
「ニルギスってそんなにスイッチがたくさん居るの?」
「すでに7つ稼働してるんだ、察してくれ」
「しかも他の国にも売ってるし、か」
「ソビキトも多いはずだ、国土がとてつもなく広いからな、スイッチが出現する割合が高いだろう」
「ピエトロなんて気にしないでそっち気にしなよ」
「無論心配はしておる、挑発的な国だからな」
「ふーん、とにかく俺には関係ないよ、静かに暮らすのが最近の夢だ」
「間違っても、ソビキトに行く事は無いか?」
ああ、そんな心配してるのか
「解った、もうピエトロを出る事になってもニルギスとソビキトは選ばないよ」
「ニルギスは選んでくれてもいいんだぞ、魔力の強いものは高待遇で迎えておる」
「魔法水晶作りには関わらない、地球人を知ってるなら核の話も聞いてるんじゃないか?」
「ああ、聞いている」
「そんなもんに関わりたくないんだよ」
「うーんむ・・・」
なんだろう、スカウトだったのかな
って事は逆を言えば敵側に行ったら脅威って事だ
「魔力の不均衡はこの世界に破滅をもたらすんじゃないかな?ニルギスが魔法使いを集めているなら俺はニルギスが危険な国だと思う」
「なんと、我が国が?」
「どこか1国が過剰な力を持ってしまえば世界を征服したくなるもんでしょ?」
「・・・・・・」
「タカネ、のぼせて来ちゃいました」
「あ!サテン大丈夫か?おい、明日の式典に影響出たら困るんだけど」
「・・・タカネとサテン、覚えておくよ」
「そっちは?」
「ニルギスのジャミロ、『演算のジャミロ』とは私の事だよ」
「・・・まだ来て1年経ってないからさ」
「知らないのかい、憎たらしいねぇ」
そう言ってジャミロは出て行った
なんとか事なきを得たのかな
「なんだったのでしょう?タカネ、怖いです」
「今日は一緒のベットで寝よう」
「察知能力は働いてたんですか?私は指輪を外していたので・・・」
「いや全然、でも敵意を消せるのかも知れないし解らないよ」
やれやれ、取りあえずミラベルさんに話聞いてみるか
「演算のジャミロ?魔法水晶を最初に開発した人ですよ、ルーベリア賞も取ってる凄い人です」
「へえ、有名人なんだ」
「そんな人に目を付けられちゃったんですか?」
「うん、王宮なんかに泊まったせいでね」
「ぐっ・・・」
魔法水晶を最初に開発した人か
諸悪の根源となりうる人
だが地球外から来たみたいだ
だとしたら核の脅威も解ってないのかも知れない
まあミラベルさんにも多くは話せない
自分の部屋に戻るか
「はあやれやれ、サテンごめんな、俺がコンテストに出ろなんて言ったもんだから」
「構いませんよ、それより早く寝ましょう、寝不足で式典に出たくはないです」
「ああ、寝れそうか?」
「抱きしめてください」
「解った」
「あ、あん・・・」
サテンと抱き合って寝た




