010 首都
一般は埋もれちゃうんだな
「衛兵もグルだったそうだ、逃げてしまったがすぐに捕まるだろう」
そうですか
そう言うのはホメロス王国の騎士アズバーン
「もう貴方達は首都に向かって良い、今から行くと夜中だが」
「ここには残りたくないよ」
「そうだな、私が送ろう」
ん?送ってくれるの?
罪人はどうするの?
「騎士が二人残る、罪人は明日にでも迎えに行かせる」
そうか解った
「では、タカネ殿は私の後ろに乗ってくれ」
え?男の後ろに?嫌だなあ
・・・あれ?月明りだけどアズバーンの顔が赤く見える
・・・・・
「いえ、私は走って行くので大丈夫です」
「は、走って?」
「馬より早いので大丈夫です」
「そ、そんなバカな」
狼狽している
断られると思っていなかったようだ
何か、目論見も外れたのかな?
「先にあの丘の上まで行きましょう」
500mくらいだろうか
全速力で走る
20秒くらいで着いた
豆粒になったサテン達に手を振る
サテンとカオリが手を振り返した
アズバーンは唖然としているのか固まってるな
1分くらいでサテン達が追いついてきた
「で、でも疲れるだろう、後ろに乗ったら・・・」
「いえ、健康の為に走りたいんです」
「し、しかし」
「馬にも負担かけたくないんで」
しょんぼりするアズバーン
苦笑いするサテンとカオリ
男の後ろになんか絶対乗らんぞ
3時間後 首都に着いた
「今日は王宮に泊まって頂きたい、明日にでもカントナの現状を救ってくれた褒美を取らせよう」
「カントナの事に王宮は気づいてなかったんですか?」
「カントナ方面に向かった者で戻らない者が多いのは把握してたんだが、旅先の事故は日常茶飯事だからな、そこまで気にして無かった」
盗賊だらけだからな
旅行者自体も少ない
あまり見かけなかった
「夜も遅いので遠慮なく泊まらせて頂きます」
ひゃっほーい
王宮に泊まれるぞーい
首都に入る
整った石畳の道だ
綺麗な街だな
家々の窓から光が漏れている
淡い光のせいか幻想的に見える
ゆるやかなカーブの道を進む
大きな街みたいだ
馬にあわせてしばらく走ってると王宮が見えて来た
立派だな
ここに泊まれるのか
風呂は当然あるよね
王宮に着き、宿泊部屋に案内される
広い部屋だ、ベットが4つある
装飾も豪華だな
魔法の明かりが灯してある
この王宮にも魔法使いが居るのか
メイドさんが来た
風呂に入りたいと言うと案内してくれる
脱衣所で服を脱ぎ浴場へ
「広いなぁ」
30人は入れるんじゃないかと思う石作りの湯船
溢れんばかりのお湯が沸きだしている
どうやって沸かしてるのかと聞いたら温泉を通しているらしい
あれ?メイドさんも服を脱ぐの?
まさか・・・
メイドさんが体を洗ってくれるらしい
やったー
・・・出来れば男の体で体験したかったな
シャンプーかな?泡の出る液体で髪を洗ってもらう
「タカネ様はとても美しいお髪をされていますね」
「そう?ありがとう」
「お顔も美しくて、スタイルも素晴らしくて羨ましいです」
「ははは、照れるなあ」
俺の体を丹念に洗ってくれるメイドさん
あんたも小柄で可愛いけどな
一生懸命洗ってくれている
・・・・・
「男の人の体も洗うの?」
「い、いえ、まさかそんな」
変な質問だったようだ
だって気になっちゃったし
王様とかもこんな良い思いしてんのかなって
メイドさんが赤くなってしまった
ごめんね
洗い終わって湯船に入る
メイドさんは風呂場の隅で待機
一緒に入ればいいのに
サテンとカオリも入って来た
それぞれメイドが付き添っている
おお、天国じゃないか
今、裸の女が6人いる
自分を含めてだが
体を洗って貰ってる2人を見つめゆっくりする
ああ、ここで暮らしたいな
贅沢に溺れてしまいそう
サテンとカオリが洗い終わったようだ
湯船に飛び込んで来るカオリ
ザバアアアアン
「行儀悪いよ、カオリ」
「だ、だって、こんなに大きいお風呂、嬉しくなっちゃって」
「あ、熱い」
「サテンはやっぱり熱いお湯苦手なんだ」
「よく長い時間入ってられますね」
いくらでも入ってられる
胸が浮くから風呂の方が楽なくらいだ
「い、いいなあ、香織もちょっと大きくなったけど、浮くほどではないからなあ」
「ちょっとってどれくらい?」
「え!」
「どれくらい大きくなったの?」
「・・・・・AからD」
ちょっとwww
激変じゃねえか!
そうか、エメラルドのスイッチはカップを3サイズあげてくれたのか
「AからDに変わった人も居れば、男から女に変わった人も居るのか・・・」
「あははw」
「ため息が出ちゃうよ」
ホロリと涙が出た
風呂から上がる
メイドさんが体を拭いてくれた
丹念に丹念に
俺は突っ立ってるだけ
偉くなった気分だ
服を着て寝室へ
フカフカのベットに寝転がる
ああ、気持ちいい
今日は疲れたな
ああ、眠い
服脱がなきゃ
・・・・・
カオリが何か言ってる
・・・・・
zzzzz
翌朝
・・・・・
ああ、寝ちゃったんだ
服は誰かが脱がしてくれたのか
お腹空いた
昨日の朝から何も食べてない
体を起こす
2人はまだ寝ている
外は明るい
下着姿のまま窓に近寄る
ああ、バルコニーがあるのか
このまま出るのは良くないな
でも着るのもめんどくさい
出るのは諦めよう
・・・もう一回寝ようかな
こんな良いベットに次いつ寝れるか解らない
もう一度布団に潜り込む
ああ、最高だ
動きたくない
・・・・・・
zzzzz
「タカネ!起きて!」
「・・・・・ん」
「タカネはお寝坊さんですね」
「ああ、おはよう」
「食事を準備してくれてるって」
服を着て食事を取る
「美味しいな、これ」
「すごいね、朝御飯なのに」
「まあ、上品なお味・・・」
部屋に戻る
「・・・褒美くれるって言ってたっけ」
「なにかなー」
「王宮にお仕え出来ないでしょうか?」
「明かり係はもう居るみたいだけど」
「私程度では駄目ですよね・・・」
「聞くだけ聞いて見たら?」
「・・・タカネ、聞いて見て貰えませんか?」
「うーん、良いけど積極性ってのも大事だと思うんだよな、自分から売り込むくらいの方が良いんじゃないか?」
「・・・出来ません」
「・・・・・」
サテンは自立出来るのかな
少し甘やかしすぎな気がしてきた
コンコン
「はーい」
ガチャ「大臣がお呼びです」
いよいよご褒美タイムかな
メイドさんに連れられどこかの個室へ
ヒゲを生やした偉そうな人が居た
「・・・おお、これは本当に美しい」
「タカネです」「サテンです」「カオリです」
「いやはや、よもやこんなに美しいとは」
カオリが居心地悪そうだ
カオリも人一倍可愛いが俺とサテンと一緒だと気後れしてしまうらしい
「このたびはカントナの現状を救ってくれたそうで、かたじけない」
「・・・・・」
「それと同時に、カントナの現状に気付けなかった為に迷惑をかけてしまった事を謝罪する」
「・・・・・」
「少しではあるが褒美を用意した、受け取るが良い」
『ありがとうございます』
代表で受け取ったがなんだろう
たぶん金だな
「さて、つかぬ事を聞くがメルホースへはどうして?」
「職を探しにです、ちなみにここに居るサテンは魔法を使えるのですが、王宮で雇って貰えませんか?」
「なるほど、魔法を」
「火の魔法と水の魔法、あと光の魔法を使えます」
「報告によるとタカネ殿はもっと強力な魔法が使えると聞いたが」
あらら、聞いてたか
俺は良いよ
サテンを優先して欲しい
「使えますが、やりたいことがあるので」
「それは?」
う、考えてない
「い、いろいろと試してみたいんです、どんな職があるかも良く知らないので」
「・・・側室に入る気はないか?」
え?!
「王様もたいそう元気な方でな、絶賛募集中だ」
ヤバイぞこれ、サテンはその覚悟があったのか?
サテンの方を見る
・・・動揺がスゴイな
予想して無かったよな?
あ、カオリもかな?
カオリを見る
?って顔をさせた
自分が入ってるとは考えて無いようだ
実際そうかも知れんが
「申し訳ないんですが私は・・・」
「そうかそうか、いや、ムリにとは言わない、サテン殿の方はどうだ?」
「わ、わたしは・・・」
言え
言いたい事をハッキリ言え
お前の気持ちを全部は解ってやれない
「も、申し訳ありません!」
「そうか、残念だ、、、ではカオリ殿はどうだ?」
「へ?わ、わたし?」
変な声を出したな
「わ、私は剣の道を究めたいので!」
「ぅうむ、残念だな」
あまりしつこくは言って来ない
良かった
「それではこれで帰って良い、ご苦労だった、気が変わったらいつでも来てくれ」
王宮を出た
「ふう、危なかったぜ」
「そ、側室だなんて」
「私に聞くの最後だったよね」
「ああ、あのベットともお別れか」
「側室に入れば寝てられるよw」
「寝てるだけじゃ済まないもの」
「あははw」
褒美を見た
30万アラン入ってた
一人10万か
多いのか少ないのか解らない
「これからどうする?」
「職探しでしょ?」
「・・・私に職が見つかるでしょうか?」
「魔法使えるんだから見つかるんじゃない?」
「で、ですが、また妾になれと言われるのでは」
「うーん、無いとは言い切れんが」
「い、嫌です!た、タカネ、捨てないで!」
「ええ?そうなるの?」
サテンに抱きつかれる
こ、困ったなぁ
首都に来たらサテンも職が見つかって俺の役目も終わりかと思ってたのに
「うう、タカネ、私をメイドとして雇ってください、なんでもしますので」
「・・・・・」
と、取りあえず職探しに行こうぜ!
「で、職ってどこで見つけるんだ?」
「え?は、ハロワ?」
「あるのかな、ハロワ」
「衛兵さんに聞いてみようよ」
衛兵さんの話では職業紹介所があるらしいので行ってみる
「うーん、どう?」
「ピンと来ないね」
「どれも難しそうです・・・」
ナンパされた
ここに来てるって事は職無しなんじゃないの?
そんな状態でナンパされてもなあ
「カオリはどんな仕事が良いの?」
「剣使える仕事?」
「ガードマンとかあるのかな」
「もっと派手な仕事が良い」
「あ!明かり係の仕事あるぞ!貴族だ!好待遇だ!」
「妾は嫌です・・・」
「い、いや、明かり・・・」
「妾は嫌」
「・・・・・」
明かり係は月10万だった
月5万以下の仕事が多いので多分良い方なのだと思うが
「ねえ、タカネ、あれ見て」
カオリが壁を指さす
壁にはハンター募集中の張り紙
「ハンター?」
「モンスターを狩るお仕事だよ」
「モンスター?」
・・・水龍がいるからモンスターも居るのか?
ここに来るまでの道中まったく会わなかったけど
「私、ハンターになろうかな?」
「・・・経験・資格不問って書いてあるな、兼業もOKらしい、詳しくはハンター協同組合まで、か」
「他にパっとした仕事も無いし、話聞いてみるだけでも」
「そうだな、しかしイメージ的に荒くれ者が多そうだな」
「た、タカネ、危ないお仕事はしないでください」
「サテンはどうするの?決めないと」
「うう、タカネのメイドにしてください~」
・・・・・
駄目だこりゃ
ニートまっしぐら
自立しなければならないという危機感も無い
助けすぎたかもしれない
頼る事が当たり前になってしまったか
「サテン、働かないと暮らしていけないよ?」
「ぅぅ、いやぁ、こんな厳しい世界に急に放りだされて・・・こんな事なら湖の下で眠っていたかった」
「・・・・・」
適応出来てない
でもそれは無理もない事だ
500年も時空を超えたんだ
浦島太郎症候群というやつだろうか
俺やカオリは適応しようと努力しているが、サテンのような状態が普通なのだろう
気持ちの切り替えを簡単に出来ないのが普通なんじゃないだろうか
プラチナ以下のスイッチの人は前の世界の記憶無くすって話だったな
そっちの方が幸せなのかもな
「取りあえず、ハンター協同組合まで話だけでも聞きに行こうよ」
「・・・・・」
「さ、サテン、元気だしてっ、大丈夫だよ!」
俺達はサテンを引っ張りハンター協同組合まで行った
「やっぱ男が多いな」
ハンター協同組合に来てみたが男が8割だ
そりゃそうかモンスターと戦うんだもの
ガラの悪そうな人も多い
イメージ通りだ
俺達が入ってくると一斉にイヤラシイ目で見られた
近付いて来る男が3人
「おい、すげえ美人が来たぜ」
「ホントだな、うちのパーティに入らないか?」
「うちでなら何もしなくても置いてやるぜ、夜は働いて貰うけどな、ぐっへっへ」
ああ、イメージ通り
サテンがビビってる
やっぱりハンターなんてこんなもんか
元の世界でモン○ンやった時もコメントで『タヒタヒタヒタヒ』って書かれたっけ
あ、お尻触ろうとしてるなコイツ
俺はお尻に触られる前に男の腕を締め上げた
「いててててて!!」
「おお、やるなあ姉ちゃん」
「はははwケツなんて触ろうとするからだw」
「わ、悪かった、勘弁してくれ!」
俺は手を離してやった
「おお、痛てえ、人は見かけによらないなぁ」
「ああ、動きが一瞬見えなかったぞ」
「すげえ力だった」
「ははw許してやってくれ、普段は悪いヤツじゃないんだ」
意外とアッサリ引いてくれた
「機会があったらパーティ組もうぜ~」
「じゃあなー」
男達は出て行った
「タカネ、大丈夫?」
「ああ、何ともない」
「わ、私、怖いです」
「そこまで話の分からない連中でも無いみたいだよ」
俺達を見る眼が変わっている
イヤラシイ目からすげえ奴が来たかも?みたいな目に
好奇心の目に変わった
受付があるな、話聞いてみるか
受付のお姉さんが言うには、まず登録して貰って依頼引き受けて、達成したら報酬が貰える簡単システム
他の仕事と兼用でやってる人も多く、時間が空いた時に出来る手軽な仕事らしい
ただし、依頼には期限があり、それを過ぎると失敗した物として、また掲示板に張り出される
何度も失敗してると依頼達成を遅らせる迷惑行為とみなされ、ハンター資格を抹消される
そんな感じらしい
「兼業で出来るんなら登録しておいて損はないよな?」
「うん、私早速登録しようっと」
「サテンはどうする?」
「・・・・・」
登録しないみたい
「た、タカネ!住所が無いと駄目みたい!」
「ああ、そりゃそうかも」
「家どうしよう・・・」
「取りあえず3人一緒に住むか?」
「う、うん」
「じゃあ探しに行こう」
時間は昼くらい
俺達は不動産屋に向かう