レンとナコル
風邪をひいてしまいました。
昨日は熱があり、死んでました。
すいません。
出すモノを出して、身体が軽くなった俺は、調子を取り戻し、次々と迫り来るモンスターを撃破していく。
ボア、ラット、ラプトルには辛くも勝利した。
その中で、強制強奪についても検証してみた。
その結果、モンスターに右手で触れる事によって、意識的にモンスターからスキルや特殊アビリティを奪う事ができるようだった。
これって凄いんじゃないか?
モンスターから奪えば奪う程、俺は強くなれる可能性があるって事だよな。
それに気付いてからは、モンスターからスキルを奪う事を重点に置いて戦った。
しかし、同じモンスターからは一度しか奪えないようで、試行錯誤しているうちにモンスターの攻撃を何度も喰らってしまった。
生傷が絶えない。
しかし、その甲斐あってか、戦果は上々だ。
トード→跳躍アップ(小)
ビー→毒耐性アップ(小)
スピリット→精神耐性アップ(小)
ウルフ→スタミナアップ(小)
ボア→ラッシュ
ラット→みかわしアップ(小)
ラプトル→賢さアップ(小)
ランドヒヒ→腕力アップ(小)
と、三階層までに出てくるモンスターからは全て奪う事ができた。
モンスターとの戦いでも、徐々に自分のペースに持ち込めるようになり、有利な状況で勝てる事が多くなった。
ナコルも俺の成長に気付いたのか、やや言葉が柔らかくなったような気がする。
ちなみに、ナコル曰く、たまに力が漲る時があるが、あれはグロースと呼ばれているそうだ。
経験を積む事によって、自分の中の能力が一ランク上がった時に起こる現象で、グロースを多く経験すればする程、強くなっているという事らしい。
あの感覚は詰まる所、レベルが上がった時だと納得した。
俺は今までに4度程グロースらしき感覚を経験している。
レベル4か、序盤だな。
このレベルだときっとムドーさんにも勝てないだろうな。
凍える吹雪で瞬殺されて終わりだろうか?
はたまた両脇のピエロさんに斬られて終わりか?
まぁ、そんな事はどうでもいいが、どんどんグロースを経験していく必要があるな。
主に俺がナコルの手から生き残る為に。
俺は気持ちを引き締めてナコルの後を追う。
☆
私の名はナコル。
貴族ではないので、姓はない。
歳は15歳だ。
スラム街近くのボロ屋に一人で住んでいる。
父さんも母さんも私が10歳の頃に死んだ。
それから私はずっと一人で暮らしてきた。
冒険者の真似事をしながら日銭を稼ぐ毎日。
はっきり言って貧乏だ。
何とかその日の食事が食べられるかといった収入しかない。
そんな毎日を送っていた私だが、ある日うちの近くでのたれ死んでいた男を拾った。
その男は、レンと言った。
貧弱で見るべきところが全くない。
およそ冒険者には相応しくない、そんな弱っちい男だった。
案の定、一階層に出てくる雑魚モンスターのバブルやゴブリンにもヤられる始末。
私はそんな貧弱なレンになけなしの金で、食事を与えた。
レンはそれを美味しそうに食べた。
私も久しぶりに食事が美味しく感じた。
やはり食事は誰かと食べるのがいい。
レンはモンスターと戦う度に、少しずつ強くなっていく。
本当に少しずつだ。
時折、私の知らないスキルとかいうものを使う。
その時レンの右手には、魔法陣みたいなものが浮かぶ。
淡く緑色に光る魔法陣。
レンに聞いても、本人もよく分からないらしい。
スキルと言えば、達人が何十年も修行して、やっと一つ会得できるかという程のものだ。
何故レンがスキルを会得しているのか意味が分からない。
こんな貧弱でおバカな奴が。
私でさえ、スキルを一つも会得していないというのに。
少しムカついたので、厳しく躾る事にした。
レンは文句を言いながらもちゃんとついてくる。
そうだ、レンは私が拾ったのだから、私の所有物だ。
そういう事にしておこう。
これで私は一人でダンジョンに行かなくてもいい。
私は5年程ダンジョンに潜っているが、段々とキツくなってきている。
一人では七階層ぐらいが限界だ。
だが、レンを鍛えて二人で挑めば、もう少し深く潜れるだろう。
ここは一つ我慢して、レンをみっちり鍛えよう。
今日は、レンがランドヒヒと戦った。
呆気なく両腕に捕まり、ウンピーが漏れそうだと言う。
私は思わず花を摘んだ。
何て下品な男だ。
ウンピー、ウンピーと連呼するな。
ましてや女の私にウンピーの話をふるな。
デリカシーの無い奴め。
こんなデリカシーの無い男に罰をくれてやる。
レン、今に見てろ。
レンは少しずつ強くなっているようです。
ナコルは、そんなレンを羨ましく思いつつも、二人でいる時間を楽しんでいるのかな?