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EXPlunder 〜エクスプランダー〜  作者: ローネリア・シャングリーゼ
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ダンジョン二日目

さてさてレンは今日も頑張ります。

少しずつ強くなってるのかな?

疲れてたからか、昨日床に寝そべった後の記憶が無い。

多分すぐに寝入ったんだろうな。

よく寝たのでスッキリしてるし、日の光で目も覚めたから起き上がってみる。

ナコルはまだベッドで寝てるようだ。


そうだ、昨日のお返しに寝顔でも覗いておくか。

俺はそおっとナコルが眠るベッドに近づく。

クークーと眠るナコル。

あどけなさの残る可愛いらしい顔をしている。

黙ってりゃ可愛いのにな。

口を開くと一気に好感度が下がる。

抑揚の無い声とナイフのような鋭いツッコミは、本当に容赦が無い。


どうもナコルはこのボロ屋で一人暮らしをしているようで、他に人の気配はしない。

スラムの近くのボロ屋で、雨風が凌げるだけの簡素な造りだ。

よく見れば所々傷んでる部分もある。

長年使っているのだろう。

どおりであのスラム街に詳しいわけだ。

この辺りにはボロ屋ばかりが並んでいるし、一歩入ればスラム街だ。

昨日俺が居た辺りは、彼女の庭みたいなもんだろう。


「んっ」


微かな吐息と共にナコルが寝返りをうった。

お陰で服がはだけて際どい事になっている。

仕方ねぇなぁ。

俺は布団を掛けてやるべくベッドに近付き、


「痛ってぇ〜」


パチンと頬を叩かれた。

何故か汚物を見るような目で俺を見ながら、肩を抱きしめているナコル。


これは完全に勘違いされてますな。

まぁ、一々説明すんのもめんどくさい。

善意の行動も時と場合によっては、相手に悪意ととられる事もある。

絶賛その最中な俺は、すこぶる気分が悪いがね。

まぁ、いつものこった。

そう自分に言い聞かして納得するしかない。

そう、俺は度胸無しのヘタレなのである。

およそ男らしくないこの性格が幸いして、女子からは草食系男子と呼ばれていたがね。


「女の子の寝込みを襲うとは最低な奴」


俺のお株はこうして今日も下がった。

果たして上がる日はくるのだろうか?





朝ご飯をサッと済まして今日もダンジョンに入り浸る。

決して好んで入ってるわけではない。


「バブルだ」


一階層最初に出くわしたのはバブル。

先を歩くナコルが教えてくれる。


俺は今日も棍棒を構える。

昨日一日で対処法は身をもって理解した。

後はそれをどう活かすかだ。


今日の俺は一味違うぜ。

見てろよ、ナコル。


にじり寄って来るバブルを棍棒で殴りつけ、吹っ飛んだ所を押さえつける。

こうして身動きを封じて、後は至近距離でひたすらスキルゴブリンパンチをお見舞いしてやるのだ。


所がゴブリンパンチを繰り出そうとしていた矢先、また右手の甲の紋章が光りだした。


「ん?」


何で光るのかは分からないが、一度経験してるので、頭に浮かんだ言葉を叫ぶ。


強制強奪(エクスプランダー)!」


バブルから吸い出した何かが、俺の右手の紋章に吸い込まれていく。

まただ。

頭の中に新たな力のイメージが浮かんでくる。

新たに手に入れた力は、特殊アビリティのようだ。

物理耐性アップ(小)か。


このバブルはもう用済みだな。


「じゃあな、必殺ゴブリンパ〜ンチ!」


俺のパンチは、バブルを一発ノックアウトした。

ん、何か威力が増したのか?

前は三、四回殴らないと倒せなかったのに一発でKOとは。


「今のエクスプランダーって何?」


ナコルが尋ねてくる。


「ん〜、俺自身もよく分かってないんだけど、頭の中に浮かぶんだよ。

何かのスキルかな?」


「スキル?

そんなのは聞いた事がない。

一体何が起こった?」


「さぁな、まぁ、倒したからいいんじゃね?」


「ん、じゃあこのまま進む」


歩き出したナコルの後を追いながら今の出来事について考える。

あのエクスプランダーとは一体。

モンスターから能力を奪う力か?

右手の紋章が光って、対象から力を吸収しているように感じる。

まだ定かではないが、バブルを一発で倒せたのも、そのせいかもな。

少しでも強くなれたら、それはそれでOK。


その後、バブル×3、トード×2、ビー×3、ゴブリン×4と調子よく倒した。

そのお陰か、俺の気力も充実している。

今日は一日絶好調な予感。


サクサクと進んで、いつの間にか二階層へ突入。

そうこうしているうちに、モンスターと遭遇したようだ。


「来た、スピリットが二匹」


「了解、今度はちゃんと石ころ準備OK!」


両手に石ころを装備してスピリットを迎え討つ。

この絵はきっとガキにも笑われるだろうな。

魔法が使えるならどんなに格好良く倒せたか。

ナコル曰く、この世界には魔法が存在するらしい。

ぜひお目にかかってみたいものだ。


「ふっ、喰らえ、火花!!」


俺は両手に装備した石ころを思い切り打ち付けた。

予定では火花が飛び散るはずが、何も起こらず、あえなくスピリットに纏わり憑かれた。


「くっ、このっ、こら、火花、出ろ!」


ガキガキと石ころをぶつけ合うも火花は起こらず。

ぐっ、スピリットが二匹共纏わりついて、俺に精神ダメージを与えてくる。


あぁ〜、駄目だ。

俺のヤル気スイッチが一気にオフに。

さっきまでの勢いどこ行った?

俺は弱い、弱すぎる。

俺は絶賛マイナス思考にスパイラルシフト中。

いかん、このままだと鬱か引きニートになりそう。

俺、きっと冒険者に向いてないんだろうな。

別の道も視野に入れるかな。


「いつまでブツクサ言ってる」


「あ、え?

ぎょえぇぇぇ〜!!」


俺の身体が燃え上がる。


「熱ちぃ〜!

焼け死ぬ、おい、ナコル、水、水を〜〜!!」





俺に纏わりついていたスピリット共は、ナコルによって無事退治された。

その結果、俺は全身ボロボロだ。

モンスターと戦うよりも酷いやられ方。

ちょっと酷いんじゃねぇかと文句を言っても、自分はモンスターを退治しただけだと言う始末。

可愛くね〜、見た目と性格が相反してるな、ナコル。

だから彼氏もいねぇ訳だ。


ナコルからグーパンチが飛んでくる。

痛いが、前より少し弱く感じる。

これが特殊アビリティの効果だろうか?


「バットが出た」


またモンスターが出たようだ。

コウモリ型モンスターバット。

素早さは中々だが、攻撃自体は大した事がない雑魚らしい。

ナコル曰くだが。

俺はこいつに空振り三振、バッターアウトをスリーアウトも喰らってる。

俺にとってこいつは松坂大輔に見える。

伸びのある突撃に俺の棍棒は、またもや空を切る。


「くそ、また三振か。

棍棒にかすりもしねぇ」


「脇が甘い」


「プロ野球解説者みたいな事言ってんじゃねぇよ!」


「何だ?

そのプロ何とかとは?」


「すまん、忘れてくれ」


真面目に返されても困る。

バットの主な攻撃は二パターン。

突撃と吸血。

そして今俺は吸血されている。


「ぐおぉぉぉ、痛ぇ〜、血を吸うな!

離れやがれコウモリ風情が!!」


身体にへばりついまバットを引っ掴んで引き剥がしにかかる。

するとまた、俺の右手の紋章が光りだした。

どうもモンスターに触れると紋章が光りだすような気がするな。

二度ある事は三度あるか。

そして俺は声高に叫んだ。


強制強奪(エクスプランダー)!!」


バットから俺の右手の紋章に何かが流れ込んでくる感覚。

これが新たな力か。

今回俺が手にした力は、素早さアップ(小)。

見た目そのまんまで、分かりやすい。


よっしゃ、バットめ、リベンジしちゃる!

俺はバットを引き剥がして、投げる。

バットは空中で体勢を整え、ふたたび俺に向かってくる。

やはりだ、先程よりもゆっくりに見える。

何度も煮え湯を飲まされたが、今度は違うぜ。

俺は小笠原道大だ。


「もらったぁ、必殺のフルスイング!」


カキーン、バットの真芯を捉えた俺の棍棒。

予備動作で勢いを流しながら、飛んでった方を見つめるが、退治したようだ。


「いきなり身体のキレが上がった?」


ナコルが何か呟いていたが、よく聞こえなかった。


「今日は調子が良いみたいだ。

さぁ、次行こう次!」


そして俺たちは歩き出す。

新たな特殊アビリティを身に付け、日進月歩で強くなっていくレン。

そんなレンの事を不思議に思うナコル。

この二人の関係は今後どうなっていくのでしょうか?

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