痛い、痛すぎますよナコルさん!
テンションやや下り目のレン。
一方マイペースに突き進むナコル。
二人のダンジョン探索は二階層目に突入していきます。
さぁて、自信満々とは言えない。
むしろビクビクしながら二階層へ突入した俺。
「ナコル、二階層はどんなモンスターが出るんだ?」
「基本は同じ、それにバットとウルフ、スピリットも出てくる」
「無理ゲーだな。
ナコルすぐ撤退だ、撤退。
急げよっ!」
俺がすぐさま回れ右をして駆け出そうとしたら、服を掴まれ、逆に引っ張れる形になった。
ナコル、お前女の子だよな?
「今失礼な事を考えた?」
「いや、ナコルの横顔が可愛いなぁなんてね」
「ダンジョンで何を考えてる、バカ!」
褒めたのにグーが飛んできました。
何で?
引っ張れるのもそろそろ飽きたので、歩く事にする。
「出た、スピリット。
レン、頑張れ」
そう言って俺を矢面に立たせるナコル。
スピリット系って物理攻撃効かないんじゃねぇの?
見た目モヤモヤしてるから攻撃効かなそう。
大丈夫な訳?
俺取り付かれたりしない?
意を決して俺は棍棒を振りかぶった。
タイミングをよく見てイチローの振り子打法だ。
「今だ!」
スカッ。
やっぱり!
思った通りだ。
モヤモヤしたスピリットは、俺に取り付いてきた。
「こら、まとわり付くな、離れろよ!」
棍棒をブンブン振り回すも喰らう様子は無し。
お手上げなんですけど、ナコルさん。
「はぁ〜、本当に頭が悪い」
落胆した様子のナコルは、地面に転がっていた石ころを両手に持って近づいくる。
「ナコルさん、何を?」
「黙って見てて」
俺のそばというより、スピリットのそばに来ると、両手に持った石ころをカチカチと火打石のようにぶつけ合う。
火花がパチパチと飛ぶ。
「燃えろ!」
その火花がスピリットに触れた瞬間、
「熱ちぃ〜〜!!」
燃え上がった、俺と共に。
熱さにビックリして慌てて火を振り払う。
あわわ〜、服が少し焦げたやんけ。
何すんねん、ナコルさん。
危ない倒し方やな。
さりげなく俺を巻き込もうとしたな、今。
「スピリットに近づかれる前にこうやって倒す」
簡単そうに言うてくらはりますけど、こっちは命かかってんねん。
「何か?」
「何でもないです…」
そのゴミを見るような目を止めて下さい。
俺が弱くてすいません。
「次行く」
そそくさと歩き出すナコルを追いかける。
モンスターによって色々と倒し方があるんだな。
先程の倒し方をインプットしながら、次の戦いのため身構える。
「来た、ウルフ」
「うわ〜、会いたくなかったよ。
ウルフ強そう」
「うまく棍棒を噛ませると楽に倒せる」
そんなに上手くいくか〜?
この人俺に無理難題を吹っかけてくるわ〜。
俺は棍棒を構え、ウルフに向き合う。
低い唸り声を上げながら、にじり寄ってくるウルフ。
見た目も厳ついので怖い。
歯を剥き出して近づいてくるが、あれで噛まれたら相当痛そうだ。
下手したら腕喰い千切られるんじゃないか?
俺の頬を汗が伝う。
一瞬、まさに一瞬だった。
ウルフは大きく顎を開き、俺に飛びかかってきた。
「怖っ!」
俺は棍棒を突き出そうとしたが、あまりの迫力に、思わず尻餅をついた。
「うぎゃあぁぁぁ!!」
左腕に噛み付かれた。
痛い、痛い、痛い!
血が出てる、肉も裂けてる!!
ヤバい、マジで。
俺は顔面蒼白でナコルを呼ぶ。
「ナコル!
助けてくれ!!」
「チッ、世話の焼ける」
そう吐き棄てながらウルフの腹を蹴り上げた。
ウルフはもんどりうって転げ、力尽きた。
俺は腕を押さえ、出血が止まりやすいように腕を頭の上に挙げた。
それでも結構血が出てる。
一部肉が見える部分もある。
「すごく痛いんだけど…」
「仕方ない、ポーションを使う」
ナコルはたすき掛けにしていた焦げ茶のカバンから試験管のような物に入れられた緑色の液体を腕の傷に振りかけた。
するとみるみるうちに傷が塞がっていく。
「これはポーション。
もちろん有料」
「それも出世払いですかね?」
コクリと頷くナコル。
「ウルフは見た目は厳ついが、動きはそんなに早くない。
飛びかかってきたらかわして、腹を狙うと良い」
「そういうアドバイスは先に言ってもらえます」
「出世払いなら」
「分かった、ちゃんと払うから情報は前もってくれ」
「そうする。
さぁ、次に行く」
「はいはい」
傷の治った腕を確かめながら、ナコルについていく。
その後はナコルのアドバイスをもとに、トード、ゴブリン、バブル、ウルフ、バット、スピリットと何とか倒す事が出来た。
ナコルの言う通り、二階層も何とか戦えるようだ。
「じゃあ今日はここまで。
ダンジョンを出る」
「分かった。
やっと終わりか」
「この後は、特訓」
「え〜、マジかよ。
今日は結構疲れたのに?」
「もう少し鍛えないと、これからが、きつい」
どうもまだ終わらないようだ。
結局、その後はギルドの隣の鍛錬場に連れて行かれ、ナコルにボコられ、青タンをいくつも作りながら、戦うコツを少し身につけた。
最後に力が漲ってきたので、少し力がついたかな?
特訓の後はギルドの食堂で晩飯を食い、ナコルの家に厄介になった。
もちろん俺は床だったけどね。
やっと1日を終えたレン。
今日はお疲れ様。
明日はいい日になるかな?
いい夢見てね☆