表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EXPlunder 〜エクスプランダー〜  作者: ローネリア・シャングリーゼ
1/20

どうやら俺は女の子の所有物だそうです。

久しぶりに投稿しようかと思います。

ボチボチアップになると思いますが、よろしくお願いします。

目が覚めたらそこは見知らぬ町の路地だった。

そして何故か女の子が木の棒で俺をツンツンしているこの状況。


「えっ!?」


「あ、生きてた!」


「あの〜、これどういう状況?」


「こんな所で寝てるから死んでるのかと思って様子見中」


木の棒を持った女の子がそう答えた。


「えっと君の名前は?」


「人の名前を聞く前に、まずあなたが名乗るべき」


「うぐっ、確かに。

俺は霧島 恋(きりしま れん)っていうんだけど、君の名前も教えてくれる?」


「きりしまれん?

変な名前。

聞いた事無い名前。

もしかして偽名?

ただの怪しい人か。

見回りの兵士に通報を」


そう言っておもむろに立ち上がる女の子。


「ちょ、ちょっと待って!

全然怪しくないから。

名前も本名だし!!」


「じゃあどこから来たの?」


「えっと神戸からだけど、分かる?」


「こうべ?

聞いた事ない町。

やっぱり怪しい。

これはもう決まり。

すぐに見回りの兵士に通報を」


そう言って駆け出そうとする。

俺は慌てて女の子の前に回り込む。


「チッ、回り込まれた」


「だから怪しくないってば!

兵庫県神戸市だよ、知らない?

日本の政令指定都市なんだけど。

確か人口が154万人くらいの」


「そんなに大きな町はこの辺りには無い。

あなた、頭大丈夫?」


「いや、普通だけど…。

特に体調はどこも悪くないよ」


「なら何でこんな路地裏で寝てた?」


「それは俺が教えて欲しいぐらいだよ。

目が覚めたらここに居たんだけど、どれくらい前から見てた?」


「私が来たのは5分程前」


「そっか、で、君の名前、そろそろ教えてくれるかな?」


「それは私をナンパしてるつもり?

変態を発見。

これは見回りの兵士に通報を」


「違う違う、深い意味はないよ」


「じゃあ教える必要はない」


「………」


ぐっ、何て気難しい女の子なんだ。

見た目中学生くらいなのに、やけにガードが固い。

女の子がジト目で俺を見ている。


「と、とにかく俺も訳が分かんないんだ。

この町の事教えて欲しい。

お願いします」


そう言って女の子に頭を下げる。


「仕方ない。教えて上げる。

でも安くない」


そう言って指で銭マークを作る女の子。

俺は仕方なくお尻のポケットに入れてたはずの財布を探した。


「な、無い!

俺の財布が!!」


「もしかして文無し?」


今更だが、俺の服装がおかしい。

何だ、この村人Aみたいな服装は!

そもそもここで倒れる前ってどこで何してたっけ?

げっ、名前とか地名以外全く思い出せん!


「何でじゃあぁぁぁぁ〜〜!!」


俺は頭を抱え空を見上げ、声高に叫んだ。

穏やかな昼下がり、雲がゆっくりと流れていた。





「とりあえず文無しという事は理解した」


女の子が一息ついて言う。


どうやら俺は見知らぬ町で文無しらしい事を悟った。

どうやって生きていけばいいんだ。

親も友達も先生も居ない見知らぬ町で。


「情報料は出世払いに期待する。

この町はルシタニア王国の東方にあるティベレスと言う」


「は〜い、ちょっと待ったぁ!

何だよ、ルシタニア王国って?

聞いた事ないぞ。

君は俺をからかってんのか?」


「からかってなんかいない。

今居る国は間違いなくルシタニア王国で、ティベレスという町」


「何だよ、ルシタニアって?

ヨーロッパかどっかの小さな国か?」


「ヨーロッパという地名は聞いた事が無い。

ここはアダムス大陸の南端、ルシタニア王国。

冒険者ギルド発祥の地、ティベレス。

寝てた場所は町の外れのスラム街だ」


「出たぁ〜!」


何言っちゃってんの、この女の子?

アダムス大陸??

冒険者ギルド???

マジですか!?


「冒険者ギルドって、マジ?」


「マジもマジの大マジ。

ティベレスはルシタニア王国の中にあって、唯一建国前から存在する町。

何故ならこの町の中心にはダンジョンがある!」


そう言って女の子は町の中心と思しき方を指差した。

路地裏なので建物の影しか見えないが…。

しかし今の言葉が本当ならば、も、も、も、もしかすると俺は、まさかまさかの地球ではないどこか違う場所に居るのではないだろうか?

しかし何故そんな事が起きる?

訳が分からん、マジで。


「ついてくるといい」


そう言って女の子は歩き出す。

とりあえずこの町唯一の知り合いである女の子についていくしかないか。


「はぁ〜〜」


俺はため息をついて後を追う。


ため息を吐くと幸せが逃げていくという。

今きっと俺の幸せが逃げてったな。


俺は気を取り直して、前を歩く女の子の後ろ姿を見る。

彼女の服装もどうやら地球のものではないようだ。


頭に白いバンダナ、首には銀の首飾り、耳には細長のイヤリング、藍色の半袖チュニックのような上着と、両腕には腕輪、ベルトの代わりか腰巻のような赤色の帯、そこには金色の輪が三つシャラシャラと音を立てている。

白くてシワが多目の長パンツに赤茶の革靴。

たすき掛けにした焦げ茶のカバン。

髪は黄金色でショートカットにしている。

そういや瞳の色も翠だったな。

地球ではおよそ一般的ではない服装と容姿。

どちらかといえば中東かエジプト系に近いか。


やはりここは地球ではないのか、街並みもレンガ造りや木で作られたものが多い。

コンクリートは見当たらない。

電信柱などは無く、こじんまりとした商店が続いている。

売っているものも、見た事もない奇抜な色の果物やヘンテコな動物、何に使うか見当もつかない道具類ばかり。

そんな商店の人達が安いよ〜、良い品だよ〜と呼び込みを掛けている。


そんな中を脇目も振らず、黙々と歩く女の子。

一方の俺は御上りさんよろしくキョロキョロと周りを見ながらついていく。

スラム街を抜けてからは、ほぼ一直線のようだ。

しばらく行くと、


「ここで手続きをする」


「えっ、何の?」


「ここは冒険者ギルド。

ならする事は一つしかない。

冒険者登録」


「あ〜、俺はまだ登録するって決めてないんだけど」


「じゃあ情報料は払えるのか?」


「うぐっ、払えません」


俺は女の子に何も言い返せずがっくりと項垂れた。

流石に文無しはきつい。

しかしこれって所謂強制労働?

労働基準法に違反だと断固協議したい!

でもここは神戸でも、日本でも、ましてや地球でもない。

治外法権もない。

郷に入っては郷に従えか。


冒険者ギルドに入ると中は結構賑わっている。

主にガチムチのオッサンで。

マッチョバーみたいな光景が広がっているが、俺は男色ではないので遠慮しときますと引き返そうとすると、ガシっと腕を掴まれた。


「情報料」


ですよね〜。

どうやら逃してはくれないようだ。

ちょこっと町の名前を聞いただけなのに…。

女の子に連れられてカウンターにつくと、


「ご用件は何でしょうか?」


「冒険者登録しに来た、この人が」


そう言って俺をカウンターに座らせる女の子。


「ではこちらの用紙にお名前、年齢、種族、主武装(メインウエポン)についてお書き下さい」


「ん」


そう言って女の子は俺に紙とペンを手渡してくる。


「はいはい、書きますよ、書けばいいんでしょ」


用紙を受け取り、欄を埋めていく。

埋め終わるまで気づかなかったが、俺が書いた文字は平仮名やカタカナじゃない。

何で?

楔形文字のような棒と横棒を組み合わせたギザギザした文字だった。

確かに「きりしま れん」と書いてあるし、読める。

よう分からんが文字で困る事は無いようだ。

少しホッとした。

それを受付のお姉さんに渡すと、


「レン キリシマさんですね。

17歳、独身、人族で、主武装(メインウエポン)は拳でよろしいですか?」


「俺他に何か武器持ってるように見えます?

後、独身とは書いてませんが…」


「し、失礼しました」


お姉さんは泣きそうな顔で、書き書きしている。

ちょっとしたジョークのつもりだったのか。


「では、こちらに冒険者登録をしますので、指を出して下さい」


何で?と思いながらも右手を差し出すと、


「ちょっとチクッとしますよ」


痛ッ。

お姉さん、いきなり何すんねん!

痛いやないかぁ!!


「レ、レンさん、血をこちらに」


やや涙ぐんだ目でお姉さんが何やらクレジットガードみたいな物を差し出してきたので、血を一滴垂らすと一瞬ピカッと光った。


「これで登録は終了です。

こちらがレンさんのギルドプレートになります。

肌身離さず持っておいて下さい。

そちらのプレートで報酬の振込や出金を行いますので」


「なるほど、便利な物ですね」


「はい、それとギルドやクエストについてのルールのご説明は必要ですか?」


「いらない」


「いや、いります。

何勝手に断ってんの、俺は知らないんだから知る権利があるはず。

情報公開制度万歳だ!

ぜひお願いします」


「むぅ」


女の子はふくれっ面で睨んでくるが無視だ、無視。


「わ、分かりました。

では簡単にご説明しますね。

まずギルドについてですが、一階は主に登録、クエストの受注、完了報告、報酬の受け渡しなどのカウンター業務を、二階は酒場兼食堂です。

三階は特別なクエストの依頼業務と資料室、四階は職員の休憩室及びギルドマスター室となっております。

次に冒険者ランクについてですが、ブロンズ、アイアン、シルバー、ゴールド、ミスリル、アダマンタイトの6ランクとなっています。

レンさんは駆け出しのブロンズランクからのスタートとなり、クエストも一つ上のアイアンランクのものまでしか受けられません」


「成る程、死ぬ確率を減らすためですね」


「えぇ、それとクエスト成功率を高めるためでもあります。

特に依頼系のクエストのための措置ですね。

実力のない冒険者が依頼を受注しますと失敗したり、未達成となったりして、クエストの達成までに時間がかかるからです。

依頼系のクエストでは、失敗した場合違約金が発生しますので、ご注意下さい。

討伐系のクエストでは失敗しても違約金はありません。

しかし亡くなった場合には家族に手当等も出ませんので、ご了承下さい。

以上ですが、何かご質問はありますか?」


「ない」


「だから何で君が答えるの?

受付のお姉さんは俺に聞いてるんだよ!

えっと、ダンジョンってどんな感じの造りになってるんですか?」


「ではティベレスのダンジョンについてご説明しますね。

ルシタニア王国建国以前から存在する最古のダンジョンで、攻略階層は18階。

未だに何階層あるかは判明していません。

1階層は洞窟仕様で、出現するモンスターはバブル、トード、ビー、ゴブリンです」


「バブルってのは?」


「水色のゼリーみたいなモンスターで、体当りと水を飛ばしてきます」


あ〜、スライムのことか。


「トードってのは?」


「大き目のカエルですね。

舌での攻撃と突進してきます」


「じゃあビーは蜂のモンスターで、ゴブリンは小人型のモンスター?」


「はい、その通りです。

ビーは、毒針と嚙み砕き、ゴブリンは殴っり蹴ったりしてきます。

1階層に出てくるモンスターはどれも初心者でも十分討伐可能です。

よって初心者はまず1階層で腕を上げ、自信が付いてきたら2階層に進む事をお勧めします」


「分かりました。

ありがとうございます。

後、ダンジョンに必要な物とかありますか?」


「持っていれば便利な物としてはポーション、マジックポーション、テント、トーチ、毒消し、携帯食ですね。

後マジックポーチなどがあれば、素材やドロップ品を持ち歩く手間がかかりませんよ」


「成る程、大体分かりました。

ありがとうございました」


「レンさん、頑張って下さい」


俺は受付のお姉さんに一礼してカウンターを離れる。


「早く潜る」


「あのね〜、今お姉さんが言ってたでしょ!

必要な物があるって」


「いや、言ってない。

持っていれば便利な物。

必要無い」


「毒にかかったらどうすんの?」


「避ければ問題無い」


「いやいや、避ければってそんな簡単に言うよね〜、君」


「私はナコル、君じゃない」


「ナコルね、はいはい」


どうしたもんかなぁ、このまま着の身着のままでダンジョンに入っていいものだろうか?

武器は己の拳のみ、兜も盾も鎧も無し。

ふっ、絶望的だな。

ナコルは俺に死ねというのか?

そもそもこの娘は一体何者なんだ??

服装からは推察できないぞ。


俺が腕を組んで考え事をしていると、


「いいから入る」


そう言って俺の手を引っ張り歩き出す。





ナコルに連れてこられたのは、いかにもといったダンジョン入り口であった。

係員みたいな人が、入り口前で受付を行っている。

今も三組ぐらいが並んで待ってる。

皆剣や盾、兜に鎧と装備はしっかりしている。


「やっぱ俺止めとくわ」


「レンに拒否権はない」


「何で!?」


「私が保護した。

だからレンは私の所有物である」


「何ですとぉ〜!!

この国にはそんな法律があるのか?」


「ある」


「嘘こけ!」


「嘘じゃない。

兎に角入る」


ナコルはそのまま茶々っと受付を済まして、俺を引っ張りながらダンジョンに入って行く。

見た目に関わらず、なかなかの腕力ですな。

か弱く見えて、馬鹿力め。


「今何か失礼な事を考えた?」


「いや、何の事だ?

ダンジョンは緊張するなぁ〜、ドキドキ、ワクワク」


鋭い奴め、だがしか〜し証拠はあるまい、クックックッ。


すると何故か拳が飛んできた。


「痛い!

おい、ナコル、今何で殴った?」


「何となく」


こいつめ、女の子とは思えない鋭いパンチしやがって。


薄暗い洞窟を進みながら、ナコルの歩みに戸惑いは無い。


ん、もしかして慣れてるのか?

やけにスイスイ歩いていくな。


「バブルだ、戦え」


急に止まったナコルは、俺を前に押し出す。


「わっ、ちょっ、急に押すな!」


俺が体勢を整える前にバブルが体当りをかましてきた。

俺は素早く両腕をクロスして、防御の構えをとる。

腕に当たったが、それほどの力は無いようだ。

これなら何とかなりそうだな。


「やってやる!

喰らえ、必殺のミドルパ〜ンチ!!」


ペチッという何とも軽い音が聞こえた。

全然効いてなさそう。


「えい、この、この、クソッ、オラァ!」


連打で拳を振るい、蹴りを入れてみるものの悠々と近づいて来るバブル。

俺はおもむろに振り返って、


「あの〜、こいつ倒せないんだけど…」


「弱っわ、格好悪ぅ」


ナコルは、何とも言えない顔して悪態を吐く。


「仕方ないだろ、武器持ってないんだから!」


「武器が無くても倒せる」


そう言って足元の石を拾うとバブルに投げつけた。

その一撃で、液状化して消えていくバブル。


「嘘だ〜!」


マジかよ、石ころ一個で撃沈って弱っ。

俺はそんなバブルにすら勝てないのか。

ガックシ。


「頭を使った方がいい」


「くっ、何も言い返せない」


ナコルはまた歩き出した。

俺も石ころを拾い上げて、ナコルの後を追う。

今度こそやってやる!という胸に熱い想いを秘めて。


果たして霧島 恋は情報料を稼ぐ事が出来るのか!?

続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ