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00001001 二人は、夜を過ごしたい。
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麻薬を服用した罪が、どのようなものなのかはわからない。服役刑なのか、罰金刑なのか、肉体や精神の一部を損傷させるようなものなのか、何らかの権利を剝脱するものなのか。
ただ、とにかく、彼が、イソラの部屋の前に座っていたことだけは事実だった。
「ユナタ」
ああ、とぼんやりと彼は顔をあげる。サイボーグ。扉に背中をあずけ、足を投げ出して座っている様は、妙に人間くさかったが、それでもどうしようもなく機械仕掛けだった。そうだ、フィルターはいまだに切ったままなのだ。拙い表情筋に浮かぶ笑顔。そして、歌うように呟く。
「二人で過ごしたい夜だよな。妹君」
僕は妹じゃありませんよ、と言おうかどうか少し迷った。でも、よく考えると、自分の性に関する記憶は、昔、入念に消したのだった。だとすれば、正しいのは彼かもしれない。
「僕達は――私達は、なんて弱いんでしょうね」
「昔から変わらないさ。別に世界のせいじゃない」
「消えないで下さいよ」
イソラは苦笑して、チップのスイッチをオンにした。