俺と連れの恋愛事情
以下の文章は愚痴と惚気だけで構成されています。
若干性的な方向で下品な表現が混ざっております。
女性の方から見て不愉快な思いをされるかもしれない表現や評価も混ざっています。
それでも宜しければお進みください。
世の中の女性の反感を買うことを承知ではっきり言えば、俺の連れは可愛くない。
何が可愛くないってまず見た目が可愛くない。
あくまで俺の基準から見ればって話だけどな。
まぁ、俺の知り合いの大半は俺が「俺の連れってさ、見た感じ可愛いってタイプじゃないよな?」と尋ねれば多分「YES」と答えるだろう。
何せ、目つきがまず悪すぎる。あいつ眼がちょっと悪い上に元が三白眼――いわゆる黒目の割合が白目に対して小さい目をしている。おまけに背が小さいから下から見上げられるとますます白目部分が目立って、見上げられているというより睨み上げられているような印象になる。
俺もあいつと付き合いだして大分長いが、慣れたはずの今でも偶にドキッとするぐらい悪い。
子供が見たらトラウマになりそうな目付の悪さだ。実際目があっただけで泣きだした子供を見たことが何度もある。まぁ、それもしょうがないだろう。俺の連れときたら玄関のドアを開けて出て来るより、古井戸の中から登場するほうが自然だろうってな恨めしげな、悪意のこもった目をしている――ように見えるぐらい目つきが悪い。
ついでに言うと口も悪い。一言、うっかりしたことを言っただけでその三倍ぐらい報復される。おまけに普段の生活でも挨拶の後に唐突に呪ってきたりする。「縮め」だの、「はげろ」だの、「小指の角を机にぶつけて悶絶しやがれ」だの。何回言われたっけな……多分今朝から数えても十回以上は俺は呪われている。
そういう呪いの言葉を、例の視線だけで人を殺せそうな凶悪な目つきプラス不機嫌そうに顰められた眉、への字に引き結んだ口のバリューセットでぶつけて来る。
これが俺の連れだ。
ああ、それと俺の連れは小さい。これを言うと連れは怒って噛みついて来るんで、まぁ普段聞こえる所じゃ言わないようにしているが、事実、小さい。
頭の高さが俺の肘掛として丁度良い。この前乗せてみたら、叩き落とそうと全力で暴れて、最終的に俺の脛を「折れろ! 折れやがれ! そして縮め!」とか叫びながら蹴り出したけどな。面白いからずっと乗せていたら拗ねて口を利かなくなったのはちょっと参ったな。まぁ、次はうまくやるさ。
っと、脱線したな……そうそう、連れは背も小さいんだが、胸も尻も小さい。というか、ほぼ無い。全体的に肉が薄くて骨ばっていて、ついでに冷たくて硬い。
例えるなら鶏ガラだ。
鶏ガラのスープは嫌いじゃないが、女としちゃあ……まぁ、ぶっちゃけ趣味じゃねぇな。大体が冷たくて骨ばってて固くて冷たい女なんか抱く気が萎えるだろ。
しっかり食わせてるのに何でアイツはいつまでも小さいんだ。頼むからもう少し太ってくれ。
どうせ抱くなら温かくて柔らかい方が気が乗るし、あんなちょっと握ったらポキッと言いそうな手足されてちゃあヤりたいことだって満足に出来ねぇだろ。小さいし体力無いし、しょうがないから手加減して半端で終わるしかなくなる。足りない分は、まぁ、あれだ。察してくれ。何で妻帯者なのにこんなことしてるんだ俺、とか思ってるけどな。俺だってなぁ、好きでやってんじゃねぇんだよ。いい加減そろそろ、気持ち良く最後までやりたいんだよ。お前らも男なら分かるよな? このストレスと、中途半端な溜まり加減。あー、くそ、どうにかなんないのかあいつは。
……すまん、ちょっとばかり本音が漏れた。
まぁ、その辺はおいおい何とかする予定だ。好き嫌いは無いみたいだしな。お菓子の家の魔女じゃないが、食わせて太らせて、何時か美味しく頂く予定だ。……何時になるんだ、本当に。
とにかく、小さくて鶏ガラみてぇな連れは、見た目は正直アウトだ。
化粧っけもねぇし、服装だって女の子らしさの欠片もねぇし……スカート偶には履いてくれよ。爪の手入れとか髪の手入れも気を使えよ。俺がやってやっても良いから、風呂からあがったら髪ブローするぐらい面倒がらずにしてくれ。風呂上りに素肌にランニングシャツ一枚のハーフパンツで出てきて、髪の毛から滴垂らしながら俺の前で胡坐かくとか……押し倒した俺が悪いのか? なぁ、あれは俺のせいなのか?
……あー、また脱線したな。
とにかく、風呂上がりにアレはやめろ。ついでに余所の男の前であれやったら殺す。相手を。
ま、行動も見た目も「女の子」から程遠い。それが俺の連れだ。
むしろ性格は俺より男前かもしれない。
可愛い女の子の為なら、困ってるガキの為なら、家族の為に、友人の為に、弱いくせに一肌脱いであのほそっこい腕まくって出てく奴だからな。
俺の寿命の半分以上はあいつのせいで縮んでいるに違いない。
もう少しお前も考えて行動しろよ。なぁ、傍に俺がいるだろう?
こう言う時は俺の後ろに隠れるぐらいの可愛げ見せてくれよ。
何でお前が俺の前に仁王立ちして、俺が守られてるんだよ。
頭を抱える俺の気持ちを少しは察してくれ。
そして、頼むから困ってる俺を見て得意げに凶悪なニヤリ顔するとか止めてくれ。
本当に俺の連れは難儀な相手だ。
結婚式を上げるのにも一苦労で、精一杯の気持ちを込めて選んだ指輪は着ける前から完全拒否された。今でも当時の宣言をしっかり守って一度も身に着けてくれない。
南瓜が苦手で一切口に出来なかったオレに、ハロウィンの日にここぞとばかりカボチャ料理の大盤振る舞いをしてくる。
昔バレンタインにほんの少しだけ期待して立ちよった俺へコンビニで売ってる粒チョコを一つだけ通りすがりに渡して、自分は本命チョコを握りしめてスキップで立ち去って行ったよな。
というか、結婚してからもその扱いだよな、俺。
付き合いだした日とか、結婚記念日すら覚えてくれてないよな?
仕事で長いこと家を出ているのはまあ俺が悪いと言えばそうなんだが、その間に一度も連絡くれないどころか着信拒否してるよな。
この前それを言ったら「帰って来る日も言わんで良いよ。覚えてられんし」って普通に返された時はちょっと泣きそうだったんだぞ。その発言が冗談でも無くて本気だって良く分かったからさ。
本当に難儀な奴だ。
こんな面倒で可愛げのない女、いったい誰が欲しがるのかと思う。
何で惚れたんだ。どうしてこの女なんだ。他のだって良いんじゃないか? 思い直して冷静になった方が良いんじゃないか? 正直な話、こうなるまでに何度かそう考えたこともあったんだぜ? お前は知らないかもしれないけどな。
けど、俺は知っている。
お前がアレルギーがあるから着けられない指輪を本当は大事にパスに繋いで、こっそり何時も持ってくれていることを。
毎年ハロウィンになるたびに南瓜が苦手だった俺でも食べやすいよう、いくつものレシピを探してくれてることを。
あの粒チョコ、俺に一粒渡す為だけに毎年わざわざ限定品を探して買って来てくれていることを。
「濃い苺」味の奴、美味かったよ。
付き合いだした日も、結婚記念日も覚えて無いお前だけど、誕生日が無かった俺に新年の時に「目出たいついでってことで良いんじゃね?」ってバースデーケーキを出して祝ってくれたよな。
あれから毎年、今でもずっと。
「お前、命がけで真剣に仕事してんだから余計なこと考えんな」って落ち込んだ俺の背中叩いてくれた。
滅多に帰らない俺がチビ達にまだ父親扱いされてるのは、留守の間にお前が俺の悪口一つ言わずに、きっちりチビ達に俺の仕事のこと説明して「お前ら父親に感謝しとけよ」って言ってくれてるお陰だ。
それと、俺がいつ帰ってきてもいいように冷凍庫にスープストック作ってあること、俺は知っている。
ありがとうって言ったらお前はまた照れて、「自意識過剰男、死ね」って蹴って来るんだろうけどな。
褒められたりするのが苦手な俺の奥さん。
感謝されることが苦手な俺の奥さん。
だから口には出さないで、知らない顔をしておくけれど俺は知ってるよ。
ぶっきらぼうで、乱暴なふりをしているお前が恥ずかしがり屋の優しい、世界一のイイ女だってこと。
素直になることに不器用な俺の奥さん。
そんなところも愛してるよ、なんて……こんなこと言ったらまた蹴られるんだろうなぁ。
まったく本当に可愛いすぎだよ、お前はさ。
誰とは言わないけど、こんな夫婦。