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(11)別れ

村を離れる日、いいと言ったのに一年、正孝、源太の3人が付いてくると言い張った。見送られるのは得意じゃないから、と言ったのだけど、まだ足利がいるかもしれないから護衛が必要だ、と言って付いてきた。


比叡山中腹の前線跡地にはもう何も残っていなかった。足利が本当に陣地を敷いていたらどうしようと思ったのだが、千種さんが修学院村には手出しをするなと言ってくれたのであろう、村を狙わないのであればここに陣を敷く意味はないから、足利も撤収したようだった。


最後にオレたちは全員で写真を撮った。この時代に、撮った写真を一年たちに渡す方法はないけれど、それでもオレたちは確かに出会ったんだという証を残しておきたかったのだ。

源太など、初めて写真を撮った時には腰を抜かしそうになるくらい驚いていたのに、今では誰に聞いたのか、ピースサインに満面の笑みで写っていた。


そんな源太がもじもじしながらオレに言ってきた。

「八瀬殿、その、実は、お願いが・・・」

「ん? なんだい源太。そんなかしこまって、らしくない」

「もしまだお持ちであれば、なのですが、、、一年様や正孝様に差し上げられたボールペンとやらを、私にも・・・」

「あぁ、なんだ、もちろんだよ!そっかまだ源太には上げてなかったね」

そういってオレは源太にもボールペンをあげた。

「それでいつかオレに手紙を書いてくれよ!」

源太は嬉しそうに両手で受取り、満面の笑みで、もちろんです!と返してくれた。


「で、これからどうされます」 正孝が尋ねた。

「うん、それなんだけど、本当に戻る方法にアテはないんだよ。とにかくここに来なくちゃいけない、と思っただけで。とりあえずもう少し待ってみるけど・・・」


地震もそうそう都合よく起きないだろうし、今日は晴れて気温が高いから霧も出そうにない。そうなるとますます元の世界に戻るためのトリガーが思いつかない。


「ここにいつか親方様の碑がたつのですね」 一年が言った。

「あぁ。今からずいぶん後の時代になってからだけど、前に見た碑が建つよ。千種さんのことは、オレたちの時代になってもちゃんと覚えてる人がいる。そしてあの日千種さんが言ったように、その世の中では刀も必要ないし、戦もない時代になってるよ」

「親方様・・・。」


と一年がつぶやいたその瞬間、目の前が真っ白になり、轟音とともに大地が揺れた。あっ という間もなくその瞬間から記憶が途切れた。


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