閑話休題③〜妖怪のせいなのだ〜
妖怪談義を終えて帰りの身支度をしていた時、突然秋穂さんが慌てたように大声を上げた。
「やば、部室の鍵がない!」
「え?それやばくないですか?」
「やばいよ!絶対怒られる!」
帰る間際に起こったハプニングに焦る秋穂さん。
それにつられて俺も一瞬焦りそうになるが、よく考えればそこまで深刻な問題ではないのでは?という思考に行き着く。
「部室は活動前に鍵で開けたわけですから、普通にこの部屋のどっかにはあるんじゃ…」
「そっか!春斗くん天才!」
そうして部室を探し回ったが、一向に鍵が出てくる様子ない。
いよいよ「失くしたかも…」、と秋穂さんの表情が曇り始めた時、部室の外を探していた九條が声を上げた。
「見つけましたよ、鍵」
「え!ほんと!?」
九條の手には確かに鍵が握られていた。
「よく見つけたな。どこにあったんだよ?」
「扉に挿しっぱだったわよ…」
少し呆れたように九條が答える。
まじか、そんなベタな…
秋穂さんもさすがにバツが悪かったのか、口笛を吹くような仕草をしている。
俺と九條がそれをジト目で見ていると、慌てたように取り繕いはじめた。
「こ、これはその…あれだよ!多分妖怪のしわざ!!そう妖怪【鍵かくし】がやったんだよ!」
「秋穂さん…それ、小学生の言い訳ですからね?」
「うぅ…だって…」
「まぁ、羽倉くん。無事見つかったんだしいいじゃない。」
「いや、まぁ別に怒ってる訳でもないし、全然いいけど…」
俺が秋穂さんに苦言を呈したところで、九條が助け舟をいれた。
最近気がついたことだが、どうやら九條は秋保さんに少し甘いようだ。
「2人とも、お騒がせしました‥。」
無事に鍵を見つけ、施錠を済ませてから秋穂さんがしおらしく謝罪してくる。
さすがにさっきの態度は本人も思うところがあったらしい。
とはいえ俺も九條も謝られるようなことをされた訳でもないので、このような態度は逆に戸惑ってしまう。
「いや、全然気にしてないですし、、ってか妖怪のしわざって久々に聞きましたよ」
「確かに、あれ流行ったのもう10年近く前でしたよね。」
「うん!丁度私達が小学校の頃だったよね、その時もよく使ってた気がするから、ついね…」
確かに当時は何かある度に「妖怪のせいだ!」と言われていて、言い訳の常套句になっていたことを思い出す。
しかし何かある度に妖怪のせいにされてしまうとは…
「妖怪って…」
「不憫よね」
俺の口をついて出た言葉にアジャストしてくる九條。どうやら全く同じことを思っていたらしい。
「ま、まぁでも妖怪っていう存在が忘れられるよりはいいんじゃないかな?」
「それはそうかもですけど…」
秋穂さんの言葉も一理ある。話題にならなければいずれ忘れられる。それは妖怪であっても同じだろう。
しかし話題になるといっても、まさか恐怖の対象から、責任転嫁の便利ツールみたいな扱いになるとは思いもよらなかっただろう。
都合よく責任を押し付けてくる、妖怪からしたら現代の人間の方がよほど恐怖の対象になっているのではないか。
「一番恐いのは人間か…」
よく聞く言葉だがなるほど、確かにそう思った。




