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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
8/77

3話~最凶妖怪決定戦~

「2人とも妖怪って好き!?」


 その日の活動は、秋穂さんの唐突な一言から始まった。


「「え?」」


そして俺と九條の見事なハモり。

秋穂さんの性格はだいぶ分かってきたのだが、未だにこういう突発的な発言には驚かされる。


「嫌いじゃないですけど、、妖怪ってまたいきなりですね…」

「だって気になったんだもん!それに幽霊と妖怪って、オカルトっていう意味では切っても切れない関係でしょ?」

「まぁそれはそうですけど…」

「でしょ!だから今日の議題は妖怪についてです!」


妖怪か。もちろん興味はあるし何度か調べた事もある。

議題次第では次第ではそれなりに盛り上がるだろう。


「それで何について話すんです?」


俺の問いかけに秋穂さんは少し頭を捻る、そして5秒ほど経つと閃いたという顔で俺たちを見た。


「1番怖い妖怪を決めよう!」

「そんなの…どうやって決めるんですか?」


九條が冷静に突っ込む。しかし待ってましたと言わんばかりに秋穂さんが笑みを浮かべた。


「まぁ厳密に決めるのは難しいから、あくまで私達の間でって言う話だけどね、皆で自分が一番怖いと思う妖怪について一体ずつプレゼンをするの!」

「なるほど、それで誰のプレゼンの妖怪が一番怖かったのかを決める、みたいな感じすか」

「そう、さすが春斗くん!分かってるね!夏凜ちゃんもそれでいいかな?」

「私は2人がそれでいいなら異論はないですけど」

「じゃあまずはシンキングタイム3分ね!よーいスタート!」


 ということで唐突に最凶妖怪議論が始まった。

しかし1番怖い妖怪か、考えたこともなかったな。

 妖怪というのは基本的にいたずらレベルのことしかしない奴が多い。【すねこすり】や【まくら返し】等がいい例だ。

 中には恐ろしい者もいるが、大学生が聞いて怖いと思えるものは少数だろう。

そんな中で1番怖いとなると…しばらく思考を巡らせると過去に見たとある動画が頭をよぎった。

 あぁ、そういえばあれも妖怪の一種だったか。なら俺の手札は決まったな。

そう思った刹那、秋穂さんが仕掛けていたスマホのタイマーが鳴った。


「3分経ったね!じゃあ2人とも用意はいいかな?」


秋穂さんの問いかけに俺たちは頷く。

こうして最凶妖怪決定戦が始まったのだった。


「それじゃあ誰からいこっか?」

「あ、じゃあ私からいいですか?」


最初に名乗りを上げたのは九條だった。


「もちろん!夏凜ちゃんどうぞ!」

「こほん。じゃあ私が紹介する最凶幽霊ですが、、こちらです」


九條はそういうと、スマホ画面を俺たちに見せてきた。


「笑い女?」


笑い女、と書かれた検索画面には着物を着た女性の妖怪が映っていた。


「そう、笑い女。羽倉くん初耳かしら?」

「あぁ、聞いたことないな。」

「私も知らないー!」


そう?じゃあ説明するわ。と九條はどこか得意気に笑い女の解説を始めた。


「笑い女はね、その名前の通りいつも不気味に笑っている女性の妖怪なの。それだけでも結構怖いんだけど、これに出くわすと大変なことになるのよね」

「どうなるんだ?」

「まず仮に何もしなかったとしても、死ぬまで彼女の笑い声が頭から離れなくなるそうよ」

「それは頭おかしくなりそうだな…」

「ええ、実際ほとんどの場合女の笑い声を聞き続けた人は気が狂って死んでしまうみたいなの。そして…」


九條は一瞬間をおいてから続ける。


「もし、笑い女を見つけたとき一緒に笑ってしまった場合。その場で彼女に食い殺されてしまうそうよ」

「うわぁ…いきなり妖怪になったね…」

「まぁ、妖怪の話ですからね」

「何にせよ、一度会ったら死ぬまで取り憑かれるわけかそれは確かに怖いな…」

「でしょ?結構自信あるわ」


確かに九條の紹介した妖怪は実際かなり怖いと感じた。しかし俺の話も自信があるのは同じだ。この勝負まだまだ分からない。


「じゃあ次私いくね!」


2番手は秋穂さんらしい。なるほど俺はトリか。


「私が紹介するのは…トンカラトンだよ!」

「トンカラトン…どこかで聞いたことあるような…」


九條は何か知っているようだ、俺もどこかでそのフレーズを聞いた記憶がある。


「あ、それは多分これじゃないかな?」


 そう言うと秋穂さんは俺たちに1本の動画を見せてきた。

 それは教育番組のようだが怖い話を扱っているもので、トンカラトンの回だった。


「あー。。これ見たことあるな」

「思い出した…私も見たわ」

「だよね。私達が子供の頃にやってた番組だし、2人も見たことあると思ったんだー」


俺たちは懐かしさもあり、気づけば動画を最後まで見ていた。

おかげでトンカラトンについて理解もできた。


「なるほど、全身包帯姿で日本刀を下げて自転車に乗った妖怪ですか」

「そして道を歩いていたら、突然現れて「トンカラトン」と言えと要求してくると」

「そーなの!それを断ったり、言えと言われてないのにトンカラトンと言うと斬り殺されて新しいトンカラトンにされちゃうんだよ」


ふむ。確かに怖いは怖い。それにビジュアルのインパクトもあるし、トラウマになるのも納得だ。


「ふふーん、今回は私が優勝かな」

「いやいや、真打ちがまだ残ってますから」


さて、ここからが俺のターンだ。


「俺が紹介するのは…これです」


九條の手法を真似させてもらうことにした俺は、スマボ画面を2人に見せた。


「アクサラ?」

「そう、正式にはアクロバティック・サラサラ、比較的最近生まれた妖怪です」

「赤い帽子にドレスを着た黒髪の女…中々インパクトの強い見た目ね」


どうやら秋穂さんも九條も知らないらしい。

これは説明のしがいがあるというものだ。


「見た目のインパクトもそうだが、話自体も結構やばいんだぜ。何せ絶対に見てはいけない妖怪として知られてるんだからな」

「もし見ちゃったらどうなるの?」

「それはな…」


一瞬間をおいてから答える


「目の前で自殺される」

「「は…?」」


俺の回答に2人共面食らったようだった。


「え、それだけ?」

「まぁ基本はそれだけだ、ただ何も一回自殺して終わりってわけじゃないんだぜ」

「それ、どういうこと?」

「アクサラはな、一度目をつけた相手の前で何度も自殺するんだ。飛び降りだったり、車や電車に轢かれたり、それを1日に何度も何度も繰り返す。」

「うわ、、それはきついかも」


九條はちょっと引いているようだ。


「だろ?しかもそれはそいつが死ぬまで延々に続く。だから途中で皆心が折れて自殺してしまうらしい」

「それって…」

「そう、アクサラは人を自殺に陥れる妖怪なんだよ」

「悪趣味だー…」

「ま、妖怪だからな」


−−

−−−


「さてこれでみんなの意見が出揃ったね!」


 全員の話が終わって、いよいよ最凶の妖怪を決めることとなる。

俺たちは簡単な投票箱を用意し、それぞれ自分が紹介したもの以外で1番怖いと思った妖怪を投票する。その結果…


「結果は笑い女1票、トンカラトン0票…そしてアクサラが2票」

「ということは…」

「アクサラが最凶ってことだな」


俺の勝ちのようだ。優勝したからといって何があるわけでは無いが、それでも勝ったことは素直に嬉しい。そして何だか2人も悔しそうだった。


「うーん、これはちょっとリベンジしたいなぁ」

「ですね…」

「お、いつでも受けますよ?多分次も俺が勝つと思いますけど」

「言うねぇ…じゃあまた別の機会に勝負ね!!」


こうして次の機会を残して、最凶妖怪決定戦は幕を閉じたのだった。

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