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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第2章‐4人目の少女‐
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‐第2幕‐7話〜霊安室に潜む霊〜


霊安室


病院等の施設で、遺体を一時的に安置する際に用いられる部屋のとこである。

つまりこの部屋を利用するのは死者に限られるということであり、、



病院において最も心霊体験が起きやすい場所であるとも言われている。



「私、霊安室って入るの初めてです…」


「普通に生きてたら入る機会はないですもんね」


「あ、ここじゃねぇの?」


俺達はついにその霊安室の入口まで辿り着いた。

既に廃墟ということもあるのだろうが、それでも霊安室はどこか、他の部屋とは明らかに異質な雰囲気が感じ取れた。


「じゃあ、開けるけどいいっすか?」


「はい、お願いします…」


全員の緊張が感じ取れる中、俺は意を決して扉を開く。

ギィィという古い金属特有の異音を鳴らしながら扉が開く。


「これが…霊安室…なんだ」


「なんか、案外普通っすね」


「あはは…まあもともと怖い施設として作った場所でもないから…」


「まぁ、それもそうですね」


少し拍子抜け、といった具合に俺は八重さんと言葉を交わす。


正直もっと仰々しいものを想像していたのだが、半は診察室とそれほど変わらない、至って普通の病院の一室といった雰囲気である。

閉め切られた部屋だったということもあるのだろうが、中は思ったよりもずっと綺麗で、廃墟特有の埃っぽさも無い。


唯一この部屋が霊安室であることを証明しているのは、中央に置かれた2つのお棺だけだった。

棺桶といえば黒、というイメージがあるがそこにあったのは真っ白なものであり、長く放置されていたとは思えないほどキレイな状態である。


「このお棺に遺体を安置してたんですよね、イメージ的に霊安室って、引出し型の冷蔵装置みたいな場所で保管をしてるのかと思ってました」


「…ええ、そうよ。普通ならそこの設備を使うわ」


俺が八重さんに投げかけたつもりの言葉に、九条が指を差しながら答える。

その声が心なしか緊張しているように感じたが、あまり意識をせずに九条が指を差した方向に目を向ける。


そこにはまるで大きな冷蔵庫のような銀色の機械がある。まさにドラマなどで見た事がある霊安室の設備だった。


「やっぱりこういう設備もあるのか、じゃあこのお棺は?」


「分からないわ。でも…」


「でも…?」


「普通、霊安室で遺体を棺桶に納めることはないわ。むしろ、そう言った行為は禁止されている場合がほとんどなの」


「は…?つまりどういう…」


「普通の病院に棺桶はないってことよ」


九条の言葉を耳にした瞬間、大きな違和感が脳裏をよぎる。


九条は何を言っているんだ?

目の前にあるではないか。

ホコリ一つついていないこんなにも綺麗な棺桶が…


そこまで考えたところで、不意に思考のモヤが取り払われた感覚があり、頭によぎった違和感の招待に気がつく。 


いくら締め切られた空間だとしても、長年放置されていた物に埃が少しも被らないなんてことはあり得るのだろうか?

当然、そんなことはどう考えてもありえない。


埃が存在しない場所なんて、人間が暮らしていない北極や南極ぐらいのものだ。


それが廃墟とはいえ人間が作った施設で、まして今でも人が立ち入るような場所に埃が全く無いなど、ありえない話なのである。


少し考えれば、あまりにも当たり前の話。

なぜ先程の時点で気が付かなかったのか不思議なくらいである。


だとすれば、このお棺はなぜこんなにも綺麗なままなのか。

考えられる可能性は…


霊安室だけは定期的に清掃されている。


最近になってこのお棺を置いた。


もしくは…




本来は置いていない





そのどれかになるだろう。



そして直感的に分かる、これは本来ここにあるべきものではないのだと。



「春斗くん、これやばいかも…」


おそらく俺と同じ発想に至ったのであろう九条が、額に汗を浮かべながらそう言った。


「だな…今すぐ離れよう」


霊感がなくても分かる。ここにいてはまずい。


俺はすぐに踵を返し、扉に手をかける。

そのままドアノブを回し、部屋を開けようとした瞬間。



ドンッドンッドンッドンッ!!


ドンッドンッドンッドンッ!!


と2つの棺桶から大きな音が鳴り始める。


「えっ…えっ、な、なに…!???」


突然の自体に顔を恐怖に歪ませる九条。


音から察するにそれは棺桶を中から全力で叩いているようだった。


まるで、そこから出せと強く主張しているように。


俺はなぜだがその様子に釘付けになり、ドアノブに手をかけたまま、見つめ続ける。


それはどんどん勢いを増していき…部屋中に耳をつんざくような大きな音が鳴り響く。


そして…やがて1つのお棺の蓋が横にずれる。


あ、これ中から出てくるな


身の危険が迫っているというのに、俺はまるで他人事のようにそんな感想を抱く。

だがその時、


「春斗くんっ!早く外へ!!」


八重さんが、普段から考えられないような大声で叫び、その声で俺はハッと我に返った。


すぐにドアノブを力任せに回すと、恐怖で冷静さを欠いている九条の手を引き外へと飛び出した。





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