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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第2章‐4人目の少女‐
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‐第2幕‐6話〜本当にコワイ場所〜

「一通り見て回りましたかね」


「そうだね…あと残ってるのは手術室と霊安室だけかな」


「なんか…見事にメインディッシュみたいな場所が残りましたね」


「メインディッシュって言い方はどうなのよ…」


俺の言葉にジト目で突っ込んでくる九条。

スタジオとはいえ本物の廃病院ということもあり、

最初こそ緊張が走っていた俺たちだったが、だんだんと冗談を飛ばす余裕も生まれてきた。


「あ、手術室はここだね…扉、開けるね」


そう言って躊躇うことなくドアノブに手をかける八重さん。

さっきまでドアを開けることも怖がっていたというのに、ずいぶんな変わりようである。


「おぉー、ホントにドラマで見るような感じなんですね」


真っ白な部屋の中央にある、手術台。

その上にはホコリを被った大きな照明。

そして周辺には見慣れない機械がいくつも置かれている。


廃墟ということもあり、薄汚れていたり壊れかけているが、まさに想像した通りの手術室といった光景が広がっていた。


「ここでいろんな手術が行われてたって思うと…少し怖いね」


「まぁ…失敗した手術もたくさんあったでしょうしね」


感慨深げに周囲を見渡す九条と八重さん。

2人も大方俺と同じ感想を持ったようだ。


さて医者にでもならない限り、手術室をじっくり見る機会なんてないだろうし、せっかくだから色々見ておくか。


そんな軽い気持ちで俺は周囲の機械や、置かれている書類などを眺めていたのだが、その時あるものが目に飛び込んできた。


「これって…カルテか?」


「は?そんなわけ…」


俺の呟きに驚いたような声を上げて近付いてくる九条。


「ほら、どう見てもカルテだろ?これ」


「そう見えるけど…こんな所にあるなんて普通あり得ないわよ…」


「あり得ないってなんでだよ、病院だぞ?」


「カルテとかの個人情報は、廃業したとしても5年間は保管義務があるのよ。そんなものがこんな無造作に置かれているわけないわ」


「な、なるほど…?」


「そもそも、レンタルスタジオとして貸出してるなら、管理者が放置するわけがない」


「それはそうだな、じゃあ管理者がわざと置いたってことか」


「それしか考えられないわね」


「いえ…多分違うかもです…」


俺と九条が納得しかけたところで、八重さんが待ったをかける。


「え、どうしてですか?」


「このカルテ、ここの病院の名前が入っていますよね?いくら演出とはいえ、かつての病院の名前をそのまま入れる事はしない気がします…」


「確かに…」


何となくわかってきた、八重さんは引っ込み思案なところがあるが観察眼がかなり優れているらしい。


「それにほら、ここ見てください」


「これって…え…もしかして血文字…?」


八重さんが指を差した所には赤黒い文字で


『XX年◯月✕日 死亡』


そう書かれていた。


「これってもしかして…このカルテの患者がなくなった日付かしら?」


「そうかもですけど…なら一体だれがこの文字を書いたんでしょうか?」


「普通に考えたらカルテだし担当医だけど…でも、そんなわけないわよね…」


「はい、さすがにお医者様がこんな悪質な真似はしないかと…」


一通り話してから黙り込んでしまう八重さんと九条。

だが、確かにこれは少しやばいかもしれない。


本来存在しないはずのカルテ


そしてそこに書かれた血文字の死亡日付


これが意味するものは…


「あはっ♪心霊現象の予感がするね!」


状況、そして俺の心境を察したらしい秋穂さんが嬉しそうに話しかけてくる。


この人…霊感がなくなって大人しくなったかと思ったが、根の性格は何も変わっていないようだ。


「秋穂さん…だったら今すぐ撮影中止して、ここを離れたほうがいいんじゃ…」


「何言ってるの春斗くん!今から撮ろうとしてるのはホラー映画だよ!だったら…」


一呼吸おいて、秋穂さんは怪しげにニヤリと微笑む。


「本物の幽霊が撮れちゃった方が面白いでしょ」


言うと思った。

絶対に言うと思った。


だが確かにこうしてカルテを見てしまった以上、ここで逃げ出しても手遅れな可能性もある。


もし本当に何かまずいことが起きているのだとしたら、この場で解決してしまったほうが逆に良いのかもしれない。


「…じゃあ、このまま進みますか?九条と八重さんはどう思います?」


「私も進むべきだと思うわ。そもそも何かあるなら、それを明らかにしないのは納得いかないし」


九条からはいかにも彼女らしい回答が返ってくる。


「私も…このまま進んだほうがいいと思う。もし本当に幽霊がいるとしても…悪い霊だと決まったわけじゃないし…」


八重さんも同意。

つまり全会一致で進むべきという結論になったわけだ。


「じゃあ、行くしかないですね…次の目的地に」


こうして俺達は次に向かう。

次の目的地、それはすなわち俺達がまだ探索していない場所‐


霊安室だった。






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