第2幕‐2話〜4人目の少女〜
怪しげな電話番号に電話をかけようとした直前に慌てて部室に入ってきた少女。
その少女を見て、秋穂さんは少し意外そうな顔をしていた。
「びっくりしたー…冬優乃ちゃん、急にどうしたの?」
「秋穂さんの知り合いですか?」
急に知らない生徒が部室を訪れたことに困惑していたが、秋穂さんの知り合いということならまぁ、納得である。
「いやいや、春斗くんと会ったことあるでしょー?この子は八重冬優乃ちゃん。このサークルの幽霊部員だよー」
そう言って苦笑いする秋穂さん。
本人の前で幽霊部員扱いするのはどうなんだとは思ったが、確かに以前一瞬だけ会ったことがあるのを思い出した。
正直、あの時は雪那さんの一件で頭がいっぱいで、気にしている余裕がなかった。
だから顔を見てもすぐには思い出せなかったんだろう。
「そうでしたね…それで冬優乃、さんはどうして部活に顔出してくれたんですか?」
さっきのあの慌てようで少し嫌な予感を感じつつも、努めて冷静にそう尋ねる。
「ちょ、ちょっと用事があって…そ、それよりも、その電話…かけないほうが良いと…思います…」
「電話って、死後の世界に繋がる番号のこと?」
「はい…その番号…すごく嫌な感じがするんです」
また突拍子もない事を…そう思ったが雪那さんの件があった以上、絶対にないとも言い切れなくなってしまった。
しかし、本当に危険な雰囲気なんだとしたら、秋穂さんが気づきそうなものだが…
「あらら、そんなに危険な番号だったんだ。全然気が付かなかったよー」
「霊感があっても、気がつかないことってあるんですね」
どうやら同じことを考えていたらしい九条が、俺の代わりに秋穂さんに尋ねる。
「ん?あー、話してなかったね。私、お兄ちゃんがいなくなってから霊感なくなっちゃったみたいなんだー」
あっけらかんと答える秋穂さん。
「え…霊感って無くなるものなんですか?」
「さぁ??でも今はなーんにも感じないよ」
九条の問いかけに対しては、秋穂さんがピースをして見せる。
いや、そんな事を誇られても反応に困るのだが…
まぁとは言え、彼女が普通の女の子に戻ったというのは、喜ばしいことなのだは思うが。
「あ、あの…!」
俺達がいつものテンションで話を脱線させていると、八重さんが少しだけ声を張って抗議する。
「あ、ごめんね冬優乃ちゃん、とりあえずこの番号が危ないってことだよね?」
「はい…信じてもらえないかもしれないですけど…」
「大丈夫、冬優乃ちゃんがそんなに言うなら疑うわけ無いじゃん!ね?春斗くん」
そう言って秋穂さんは電話を持っている俺の方に微笑みかける。
まぁ、俺としても面倒事が起きる予感しかしないこの状況で、あえて電話をかけるという選択肢があるはずもない。
「はい、もう番号消してるんでかけるつもり無いですよ」
そう俺が答えると、八重さんは安堵したように小さくため息をついた。
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ーー
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「じゃあ今日はこの辺でお開きにしよっか!」
「そうですね、もう結構良い時間なので」
そう言って身支度を始める秋穂さんと九条、それを見た俺も片付け始めようとした時、そっと八重さんに袖を掴まれる。
「あの…このあと少しだけ残れますか?」
彼女は耳元で、俺にだけ聞こえるようなか細い声でそっとささやく。
普通ならなんともロマンチックで心惹かれるシチュエーションなのだが、なぜだが非常に嫌な予感がしていた。
だが、話があるのならそれを無下にするわけにもいかないので、俺も小声で「分かった」とだけつぶやき、身支度を整えた。
「あ、今日は部室の鍵俺が返しときますね」
「ほんと!?ありがとう!!」
「じゃあお願いするわね」
そう言って秋穂さん達と別れる。
自然な流れで一人になる状況を作ると、しばらくして彼女達と別れたのであろう八重さんが、後ろから追いかけてきた。
「すみません…お時間作って頂いて…ありがとうございます…」
「いや、それは全然いいんだけどさ。急に残れってどうしたんだよ?」
「えっと…こんな事いきなり言うのも心苦しいのですが…」
「…?」
「羽倉くん…前までここの幽霊に取り憑かれてましたよね?」
「あぁ、知ってたんだな。でも、今はもう憑かれてなないぞ?あの人は無事に成仏したっぽいし」
「そう…ですね…ただ…」
本当に言い出しにくい事があるのだろうか、彼女は非常にバツが悪そうに言葉を選んでいる様子だった。
「なんかあるなら気軽に言ってくれ、霊現象関係は前回の事でだいぶ耐性も出来たからさ」
「ありがとうございます…そしたら春斗くん…」
意を決したように俺を見据える八重さん。
俺はどこか張り詰めた空気を感じつつも、彼女の言葉を待った。
「多分ですけど…春斗くん、すごく霊を寄せ付けやすい体質になってます…このままじゃ長生きは出来ないかもしれません…」
「…は?」
想像していた、斜め上の発言。
俺は思わず言葉を失っていた。




