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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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閑話休題②〜鏡に写るのは?〜

「そろそろ良い時間だし今日は帰ろっか!」

 

 秋穂さんから本日の活動終了が告げられる。

気がつけば辺りもすっかり暗くなっているようだった。


「じゃあ私鍵返して来るから、先帰って大丈夫だよ!」


「あ、俺も一緒に行きますよ。いつも任せてばかりで悪いですし」


「そう?ありがと!じゃあ行こっか!」


 そういって2人で鍵を返すために移動する。部室の鍵は顧問の教授が管理しているため、教授のいる教員室に向かう必要がある。


といっても教員室は部室と同じく旧校舎にあるので、大した労力にはならないのだが、日中でも人気がなくお化け屋敷のような雰囲気がある旧校舎を夜に歩くというのは、それだけでも無意識に恐怖を覚えずにはいられない。


 夜の学校というのは、小学後だろうが大学だろうが独特の雰囲気を持っているものなのだ。


「秋穂さんは夜一人で鍵返しに行くの怖くないんですか?」


「んー?別に怖くはないかな。」


「まじですか、ここ一人で歩くのって大の男でもビビるやつ多そうですけど…」


「あはは。ま、私慣れてるからねー」


 なるほど。確かに秋穂さんは俺たちが来る前からこの部にいるのだから、さすがにもうビビったりはしないか。

とはいえ肝が据わっているということに変わりはないのだろう。


そんなことを考えていると、少し後ろで秋穂が立ち止まっていることに気がつく。


「秋穂さん、どうしたんですか??」


「んーとね、あれ」


秋穂さんが階段の踊り場を指差す、そこには大きな姿見鏡があった。


「鏡、ですか?」


「そ、春斗くんさっきの話覚えてる?ブラッディ・メアリーの」


「あぁ、覚えてますけど」


俺の返答に秋穂さんは不敵な笑みを浮かべた。

あぁ、なるほど。。その笑みで言葉の意図を察する。


「ちょっと試してみようよ!」 


「えぇ…まじすか…」


「あれ、あんまり乗り気じゃない??」


「いや、どうせ何もないの分かってますし…」


「まぁ、そうかもだけど、せっかくだしちょっとだけ!ね?」


「はぁ、わかりましたよ・・・」


 何がせっかくなんだと思いながら、促されるように鏡の前に立つ。そして


「ブラッディ・メアリー…ブラッディ・メアリー…ブラッディ・メアリー・・・」


 まじないのように3回唱えた後、鏡を見つめる。

当然何も起こらないことは分かっている。


ただ無駄に儀式めいたことをやらされたことで期待感が膨らんでしまい、「もしかして」という考えが一瞬頭をよぎったことも事実だった。

 そんな何ともいえない感情を抱えたまま、鏡と向かい合う。

しかし一向に何かが現れるような気配は無かった。


「ほらやっぱり何も…」


諦めてそう言いかけたときに気づく、秋穂さんは鏡のある一点を凝視していたのだ。 


当然鏡に怪しいものは映っていないので、何を見ているのかはさっぱり分からない。

だが普段決して見せないような鋭い眼差しはどこか引き付けるものがあり、俺は鏡越しの秋穂さんから目を離せなくなった。


 その状態で数秒、いや数十秒は経っていただろうか。秋穂さんが俺の視線に気がついたようで鏡越しに笑顔を向けてくる。屈託のないいつもの笑顔だった。


「私の方ばっか見てどうしたのー?もしかして私がブラッディ・メアリーに見えたとか?」


「いや、そういう訳じゃないですけど…」


秋穂さんは何を見ていたんですか?


そう一言聞けば済む話であったが、なぜか俺はそれを言葉にすることができなかった。

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