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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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第39話〜ナナセコウヨウ〜


「思い出した…今まで何度も見てきた夢…」


これは夢なんかじゃなかった…これは雪那さんや目の前の男が実際に経験してきた、過去の記憶だったんだ。


雪那さんは殺されたんだ、目の前のこの男。


いや、七瀬紅葉に。


夢を思い出したことで、雪那さんの死因も、七瀬紅葉が雪那さんが殺した動機も、俺に取り憑いた霊が紅葉であることも理解することが出来た。


そして同時に、なぜこの男が俺に取り憑いたのかという理由にも見当がついた。


この男は雪那さんを自分だけのものにしたかったんだ。

その独占欲は、それこそ彼女と仲良くしていたクラスメイトすらも手にかけてしまうほどに強いものだった。


となれば彼女と交流を持った人間に恨みを持つのは当然とも言える。


秋穂さんが無事だったのは、秋穂さんが紅葉の実の妹だったからだろう。


故に部外者の俺が相手となれば、彼は容赦なく牙を向けてくるというわけだ。


紅葉は俺の肩を強く掴んで離さない。

つまりこの状況は俺にとって…


「めちゃくちゃヤバいってことだよな…」


紅葉は俺にニタァと邪悪な笑みを浮かべて、今度は俺の首を掴もうと手を伸ばしてきた。

逃れようとするのだが、俺はまるで金縛りにでもあったように身動き1つ取ることが出来ない。


紅葉の手はどんどん近づいてきて、いよいよ俺の首に触れた。

そのまま首が掴まれそうになった寸前、誰かが俺の手を取って思い切り引っ張った。


その拍子に俺は身体の自由を取り戻し、俺は慌てて紅葉を振り払って走り出す。


ようやく冷静になって俺の手を引いて走る人物に目をやると、そこには予想だにしない人物がいた。


「九条…?」


「やっと気がついたのっ!?まぁいいわ、今は気にせず走りなさい!」


九条にも紅葉の姿は認識できたのだろう。

彼女は珍しく焦った様子で俺の手を引いて走り続けた。


ーー

ーーー


「なんで九条がここにいるんだよ?」


紅葉から離れた場所で手頃な教室を見つけると、俺達はそこに駆け込んだ。

そして一息ついたところで俺は九条に尋ねる。


「秋穂さんから連絡があったのよ、羽倉くんが今頃学校に向かってるかもって。…あなた1人で行動させるのも危険だと思って念のため来てみたら、あの様子だったってわけ」


「そういうことだったのか…」


どんな時でも冷静に話す九条の様子は、今の俺には特に心強かった。


「それで、さっきは一体なに?あれが雪那さんってわけじゃないんでしょう?」


「あれはたぶん…七瀬紅葉って人だ、秋穂さんの兄さんだよ」


「え…それってどういう…?」


目を丸くする九条に、俺は改めて自身が知っている情報を全て話した。


「…つまり秋穂さんのお兄さんが、雪那さんを殺してしまったってこと…?」


「たぶんな…それで今度は多分俺を殺そうとしてる」


「それで、あのお兄さんが今では幽霊になっていると…正直情報が多すぎてにわかには信じられないわね…」


「まぁな、いっそ全部俺の妄想だったら有り難いんだけどな」


「でも確かに、さっきいた人はあなたの首を締めようとしていたわ…それにあの雰囲気は、とてもこの世の人間とは思えなかった」


「やっぱそうだよなぁ…」


「これからどうするの?とりあえず学校からは逃げる?」


「多分、逃げても何も解決しないさ」


俺が短くそう答えると、九条もそうよね、と同調する。


「でも、いつまでもここに隠れているわけにもいかないわよね?」


「あぁ、何とか七瀬紅葉と意思疎通が図れればいいんだけどな」


「でもそんな方法なんて…」


九条がそう言いかけたとき、教室の扉がすっと開く。

そして紅葉が俺達が隠れていた教室へと入ってきてしまった。


「あれ…絶対俺達がどこにいるか分かってるよな…」


「まぁ幽霊とかくれんぼしようなんて事自体、本来は無謀なんでしょ…」


よくホラー映画で空き教室やトイレに隠れて、幽霊をやり過ごすシーンがあるが、実際の幽霊には通用しない手なのだと知った。


こうして再び俺達は紅葉と対峙する形となってしまった。

彼はゆっくりと俺と九条に近づいてくる。


今ならまだ逃げ出すことも可能だが、仮に逃げ出したとしても彼が俺達の居場所を認知できる以上、それはほんの一瞬の時間稼ぎにしかならない。


だとしたら…


「この場でなんとかするしかないよな…」


俺は恐怖に支配されつつある脳を無理矢理に動かし、何とかこの場を切り抜ける術を模索する。

だがどんなに考えても、目の前の異形の存在に対して有効な手段を考え出すことはできなかった。


そのままゆっくりと紅葉は俺達がいる場所へと歩みを進め、やがて手を伸ばせば届く距離まで近づいてくる。


あぁ、これはちょっとやばいな。

頭の中で再び警鐘が鳴り響いた刹那−


「久しぶりだね、紅葉」


どこか懐かしく優しい声が教室に響いた。


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