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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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番外編‐ユメジュウヤ‐ダイキュウヤ

「じゃあ僕のお願い、聞いてもらおうかな」



彼は私の耳元で囁くようにそう言った。



「…言ってみて」



そんな約束、今すぐ反故にして逃げ出してしまえ。



頭の中ではそんな警鐘が鳴っているが、なぜか身体が動かない。



「簡単だよ、僕と付き合って欲しいんだ」



「…は?」



一瞬、言葉の意味が理解できなかった。



付き合う?交際ってこと?



紅葉は私に好意を寄せていたということだろうか、いままでそんな素振りは微塵も感じられなかったが…



「あの…付き合うってどういうこと?」



「言葉通りの意味だよ、僕の彼女になって欲しいんだ」



「告白ってことよね…、それゲームのご褒美で言うようなこと?」



「だって、僕が君にしてほしいことって言ったら、付き合うことだけだからさ」



「…別に紅葉は私のことなんて好きじゃないでしょう?」



「好きだよ、ずーっと前からね」



紅葉は私をまっすぐに見据えてそう言った。


彼と目があった瞬間、今まで感じてきた違和感が一気にフラッシュバックした。



【よろしくね、一ノ瀬さん】



なぜ初めてあった時、彼は私が名乗っていないのに私のことを知っていたのか。



【君はずっと退屈していたんだろ?それを僕が満たしてあげる】



退屈を満たすとゲームを持ちかけてきた時、なぜ私に執着していたのか。



【近くの心霊スポットだから、ここじゃないかと思ってね】



なぜ三月くんと向かうはずだった心霊スポットに、時間も場所も予期して現れることができたのか。



疑い出すと次々に不審な点が湧いて出るというのに、今まで何も疑問に思わなかったことを、ここに来てやっと気がついた。



まるで夢を見ている時に、どんなに不自然なことがあっても当たり前に受け入れてしまう時のように。



「…私のこと、ずっと見ていたの?」



「そうだよ。入学したばかりの時からね」



背筋に悪寒が走る。


彼は私が知らないうちから、私の情報を調べ、会話に聞き耳を立てていたということになるのだから。



「どうして…」



「理由を聞かれると難しいけど、強いて言うなら君の目がすごくキレイだったからかなぁ」



「え、目…?」



「そう、入学したての頃からいつも思ってたんだ。キレイな目をしてるのに、いつもつまらなそうだなって」



「…」



「もし楽しい事を見つけて、その目に光が宿ったらどんなに美しいだろう。気がついたらそんなことばかり考えていたんだ」



「それで…私にゲームを持ちかけてきたと?」



「そういうこと。実際初めて君が幽霊を見た時の目、今までで一番キレイだったよ」



「理解は…出来た。でもアンタのやった事ってただのストーカーだよ…その辺分かってて言ってるの?」



「あはは、ひどい言われようだなぁ。でも仕方ないだろう?君のことを知るためだったんだから」



まるで悪びれていない様子で彼は言う。


この時点で私は紅葉に恐怖を抱いていた。



「だったら普通に話してくれたら良かったでしょ?暇つぶしに付き合うとか理由つけなくても、三月くんや陽菜ちゃんみたいに普通に接してくれたら私だって…」



そこまで言って紅葉の雰囲気が明らかに変わったたことに気が付き、私は思わず押し黙った。



「…三月くんも二葉さんも、酷いよね。僕がこんなに苦労してるのに、軽々しく一ノ瀬さんに近づいていくんだからさ。まぁもういなくなってくれたし、良かったけどね」



「…っ!アンタもしかして2人に何かしたの…?!」



「三月くんは行方不明だし、陽菜ちゃんはマンションのベランダから転落死したんだろ?僕がなにかできるわけ無いじゃん」



「…でも」



確かに彼の言うとおりだ。


だが幽霊を見れるという特殊な力を持っている彼に常識を当てはめる事ができるんだろうか…。



「さて、そろそろ返事を聞かせてよ。僕と付き合うってお願い、叶えてくれるかな?」



「…そんなの無理に決まってるでしょ」



「えぇー、約束破るつもりかい?」



「…そんなの関係ない。自分のストーカーなんかと付き合えるわけないでしょ」



「そっかぁ…やっぱり断られちゃうか、じゃあ…」



彼はがっくりと肩を落とした素振りを見せると、そのまま私に背を向け、出口の方に向かう。


そして…



ゆっくりと扉を閉じ、鍵をかけた。



彼が何をするつもりなのか瞬間的に理解し、私は慌てて逃げ出そうとするが、やはり身体がうまく動かない。


それでも強引に身体をひねり、彼に背をむけ出口を探す。



窓でもあれば良いのだが、あいにくここは地下のため、外に出れるのは彼が閉めた扉のみ。つまりもう、逃げ場はない。



「誰か助けてっ!!!」



私は大声を出して助けを呼ぶ。


だが、ここは人がほとんど寄り付かない旧校舎。


誰も来ないことは明白だった。



やがて抵抗も虚しく彼が近づき、そのまま私を押し倒すとゆっくりと手を伸ばす。



「こうするしかないんだ」



彼はそう言いながら私の首に手をかける。


何とか振りほどこうと彼の腕に爪を立て、血が出るほど力を込める。


だがどんなに抵抗しても、彼は少しも力を緩める事はなかった。



「これでやっと…本当に君を僕のものにできる」



そう言って彼はいつもと変わらない笑みを浮かべて、私の首を締め上げる。



どうして、こんな事になっちゃったんだろう。


私はただ皆と幸せ日常を過ごしたかっただけなのに。



もう少しだけ、生きていたかったな…



薄れゆく意識の中で、ふとそんな事を思った。



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