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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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番外編‐ユメジュウヤ‐ダイハチヤ


陽菜ちゃんが亡くなった。



その知らせを聞いたのは、彼女とお寺に出かけてからほんの一週間後のことだった。



彼女が住むマンションの自室のベランダから転落し、そのまま即死だったらしい。



他殺と自殺両面で捜査されたものの、彼女は一人暮らしであり、部屋に誰かが押し入った形跡がないことから自殺と判断された。



遺書等は見つかっておらず事故死である可能性も残ってはいるそうだ。



ゼミでは何も変わった様子は見られなかったのに一体なぜ…?



いくら考えてもわからない、私の頭にいくつものが疑問や疑念が浮かび、その度に消えていく。



三月くんの失踪と陽菜ちゃんの突然死。


大きな不幸が続いた結果、私が所属するゼミの生徒は私と紅葉の2人きりとなった。



「2人だと討論なんかも出来ないね」



紅葉はいつも通りの様子で楽しそうにそう言った。



同学年の、しかも同じゼミ生が短期間に2人もいなくなったというのに、彼の様子は少しも変わらない。



「そうね…」



「どうしたの?全然元気ないじゃないか」



「友達が2人もいなくなったのよ?それで元気に振る舞えるわけないでしょ…!?」



恐らく紅葉の発言に悪気はないのだろう。


だが、それでもあまりに無神経に感じたため、私は彼に怒りをぶつけた。



「そういう表情もするんだね、新鮮だな」



怒った私に対して、彼はまるで愛おしいペットでも見るかのように優しい目をして彼は言う。



「なんで…この状況でそんな言葉が出てくるわけ…?」



「思ったままの事を言っただけだよ、君はいつも落ち着いた表情が多いからね」



まるっきり会話が噛み合っていない。


私は真剣に現状の異常性を話しているつもりなのに、彼にとってはまるで友達との楽しいおしゃべりなのだ。



【紅葉くんには、あんまり深く関わりすぎないほうが、いい、と思う】



その時はっとして、陽菜ちゃんの話を思い出す。



自分も自覚しているから大丈夫だと、軽く聞き流してしまった言葉。



紅葉の異常性を陽菜ちゃんは見抜いていたのだと、この時私はようやく理解した。



「そうだ、前にした約束の事覚えてる?」



なんの脈絡もなく彼がそう問いかける。



「約束って…?」



「ほら、君の霊感が芽生えるかどうかで賭けをしてただろう?」



「そうね…」



なんでこのタイミングでそんな話ができるのか。


そう攻めたてたかったが、彼の異常性に気づいた今だとそれが無意味なことだと分かる。



だから、私はただ力なく相槌を打つしかなかった。



「今試してみようよ、君の霊感を」



「試すってどうやって…?」



「簡単だよ、付いてきて」



そう言うと彼は手招きしてから、教室を出ていく。


仕方なく付いていくと、彼はまっすぐと廊下を歩き、突き当たりにある階段の姿見鏡に近づいていった。



「ここに立ってくれる?」



彼は私に鏡の前に立つよう促した。



「なんで…?」



「いいから、面白ものが見れるはずだよ」



彼は優しく笑いながらそう言った。


恐らく心霊の類だろうが、今私は彼の手に触れていない。


だからなにも見えるはずがないのだ。



それでも彼はただじっと待っている。


仕方無しに鏡の前に移動して、鏡を見据える。



こんな事をしたって無駄なのにと、私は心から彼に呆れていた。



だがそんな思いに反し、私の目には絶対に見えるはずのないものが映った。



「三月、くん…?」



そこに映っていたのは先日失踪した三月樹桜、その人だった。


当然だが、この場に彼はいない。



じゃあどうして彼が鏡に映っているのか…


そしてなぜ彼は…白い着物を着ているのか。



彼はただ無表情で私を見つめている。


全身に汗が吹き出るのを感じながら、私も彼を見つめる。


しばらく見ていると、彼の着ている服のある違和感に気が付いた。



鏡越しだからすぐにはわからなかったが、彼は着物を左前にして着ているのだ。



(これ、死装束だ)



そこまで理解してようやく気がつく。



三月くんはもうこの世にはいないのだと。



「勝負は僕の勝ちだね」



私が全てを理解したところで、紅葉が嬉しそうに笑いながらそう言った。


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