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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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番外編‐ユメジュウヤ‐ダイナナヤ

気がつくと私は、大きな船に乗っていた。


なんで私はここにいるんだろう?


ここに来た経緯を思い出そうと記憶を巡るが、どうにも曖昧で何も思い出せない。



ひとまず手元のスマホで時間を確認してみる。


時刻は13時、いったいどのくらいの間私は寝ていたんだろうか?



やたらと重い体を何とか起こして立ち上がる。


船の甲板に出れば、なにか情報が得られるだろうか。



私は外に出て甲板に続く通路を探す。



「どうして…誰も、いないんだろう?」


 


道中、3分ほど通路を歩いたが誰にも会わないどころか、人の気配すら感じることがなかった。



こんな大きな船で時刻だってまだ日中なのに、なぜ…?



多くの疑問を募らせつつ何とか船の甲板まで辿り着いた。



だがやはりそこにも誰もいない。


それどころか、船上は異様な雰囲気に包まれていた。



まだ昼過ぎだと言うのに空は黒く淀み、全体的に薄暗い。


そして船は大量の黒い煙を吐き続けており、それが景色の薄暗さに拍車をかけているのである。



「なに、これ…?」



あまりの異様な景色に思わず私は言葉を失った。



悪い夢でも見ている気分だ。


出来ることなら逃げ出して楽になりたい。



いっそのことここから飛び降りて、暗い海に身を投げてしまおうか。



ふとそんな衝動に駆られるが、すぐに思いとどまる。



まずは人を探そう、そして状況を聞かなくては。


そう決意して甲板を降り、手当たり次第に客室を探すことにした。



とある客室を覗いたところ、初めて人にあった。



それは恐らく私より少し歳上と思われる女性、彼女は1人で泣いていた。



「あの、少し、いいですか?」



「…」



返事はない。彼女はただ1人でずっと泣いていた。


しばらく彼女を眺めていると、ふと1つの考えが頭をよぎる。



彼女はこの世のものではないのではないか?



「もしかして…幽霊?」



「当たりだよ」



私がふと呟くと、それに答える声が聞こえた。


だがそれは目の前の女性から発せられたものではない。


なぜなら声は後ろから聞こえたのだから。



私が驚いて振り向くと、そこには見慣れた顔の少年が立っていた。



「紅葉、くん…?」



「やぁ、元気かな?」



彼はいつも通りの優しそうな声で微笑みながら、私に手を振る。


だが彼の目は私を真っ直ぐに見据え、まるで私を敵視しているかのように思えて仕方がなかった。



「ここは、どこなの…?他の皆は…?」



「ここは見ての通り船の上だよ、そして君が知ってる人って意味ではここには僕しかいない」



「…そう、なんだ。紅葉くんも、気が付いたらここにいたの?」



「…」



私の質問に彼は何も答えない。


私はいっそう心細くなった。



「他の人にはもう会った?」



彼は笑いながら聞いてきた。



「えっと、まだだけど…」



「見てきたらいいよ、そしたらここが何か分かるから」



一体彼は何を言ってるんだろう?


よく意味がわからなかったが、彼の言葉に従って他の乗客を探した。



意外なことに、さきほど誰にも会えなかった事がまるで嘘のように、船には多くの人が乗っていた。



だがそのどれもが私には奇妙に思えて仕方がなかった。



神を信じるかと問うてくる外国人


派手な衣装を着てピアノを引く女性


それに合わせて楽しそうに歌う背の高い男性



いずれも私とは縁遠い存在で、私はますます心細くなる。


そして同時に理解してしまった。


そのどれもが、既にこの世にはいない存在なのだと。



もう頭がおかしくなりそうだった。



そうしていよいよ不安が限界に達し、私は船から飛び降りる事を決意した。



すぐにでも実行すべく甲板に上がる。するとそこには紅葉くんが立っていた。



「やぁ、そろそろ来ると思ってたよ」



「私を、止めに来たの?」



「まさか。降りたいならご自由に」



紅葉くんはまるで、見世物でも見るような目を私に向ける。


あぁ、思ったとおりだ。



彼はやっぱりまともじゃない。



でも、もうどうでもいい。


私はここから飛んで楽になるんだ。



私はまるで何かに取り憑かれたように甲板から身を投げ、海へと飛び込む。



だが私の身体が船から離れた刹那、はっと正気に戻る。



いやだ!死にたくない!!



だが、そう思った時にはもう遅い。


私の身体は真っ直ぐに暗い海に落ちていく。



なんでこんな事をしてしまったんだろう。


いくら不安でも、あの船に乗り続けていればよかったのに。



そんな思いの中、不意に私を見つめる紅葉くんと目が合う。


彼は薄ら寒い笑みを浮かべてこう言っていた。



「さようなら、二葉陽菜さん」



その言葉を聞いたのを最後に、船はゆっくりと去っていった。



そして私は深い後悔と恐怖だけを残して、ただただ深く暗い海に向かって落ちていった。




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