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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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番外編‐ユメジュウヤ‐ダイヨンヤ




「どこに連れていくの?」



ゼミの後、約束どおり私は紅葉に連れられて、【面白いもの】とやらを見に来ていた。



やってきたのは学校から歩いて5分ほどの大きな神社。


どうやら彼はそこで何かを探しているらしい。



「ねぇ、一ノ瀬さん。君は幽霊ってどんなものだと思う?」



突然、彼から声をかけられた。



「そんな事突然聞かれてもよくわかんないけど…前世に後悔や未練を残した人間の思いで作られた何か、みたいな感じじゃないの?」



「うん。やっぱりそういうイメージだよね。じゃあ次の質問、なんで幽霊って普通の人は見ることが出来ないんだろう?」



「それは…幽霊が魂とかそういう曖昧なものだからじゃない?人の魂は21グラムだって説はあるけど、それを肉眼で捉えることは出来ないでしょ?」



むかし、とあるアメリカの医師が魂には重さがあると考え、死ぬ間際の人間をはかりに乗せたところ、その人の体重は死後21グラム減ったらしい。



そのためこの21グラムが魂の重さと捉えられているが、それを実際に目視した人間はまだいない。



だから幽霊がもし存在するとするならば、こういった類のものではないかと思うのだ。



「なるほど、一ノ瀬さんは結構現実主義者なんだね」



「そういうあなたは、どうしてだと思うの?」



「…幽霊が誰にも邪魔をされずに思いを遂げるため、かな」



「それって、どういう…?」



私がそう尋ねると、彼は一瞬私を真っ直ぐに見つめた。


彼の目には何か強い思いが籠もっているように感じられたが、残念ながらその真意を読み解く事はできなかった。


一呼吸おいて、彼は話し始めた。



「さっき一ノ瀬さんは幽霊になるのは、強い後悔や未練を持った人だと言ったよね?であれば幽霊である彼らは、それを成し遂げるために行動していると思うんだ」



「確かに、そんな気はするわね」



「でしょ?そんな彼らの姿が人から見られる状態だと色々不都合だよね」



「不都合…ね」



確かにそうかもしれない。


例えばその霊が誰かに強い恨みを持っているのだとしたら、それこそ相手を呪い殺したいほどに恨んでいるとしたら…


相手に姿が見えない方が当然都合がいいだろう。



「まぁ、幽霊みんながそんな事思っているかはわからないけどね。さ、着いたよ」



彼はそう言うと、神社の奥の方にある開けた庭のような場所で立ち止まった。



「ここに何があるの?」



「すぐに分かるよ、また手を貸してくれる?」



彼は前と同じように、私に向けて手を差し伸べてきた。


どうやら彼の体に触れると、彼と同じものを見ることが出来るらしい。


であれば、ここに怪異の類がいるのだろう。



私はゆっくりと彼の手に触れた。



「…え、これが幽霊?」



案の定彼の手に触れた途端、今まで見えていなかったものが見えるようになった。


だが目の前に現れたのは、手拭を持ったごく普通の老人。



前回の血だらけの女性の霊とはえらい違いだった。



「まぁぱっと見は生きている人と見分けがつかないよね。さてこの人はどんな思いでここにいるのかな?」



そう言って彼は笑顔のまま老人の横にしゃがみ込む。


そして私にもそちらに来るよう手招きをする。



「そっちいかなきゃだめ?」



「もちろん、面白いものを見たいんでしょ?」



仕方が無いので、私もそちらに近づく。


どうやら老人はなにかを話しているようだったので、耳を澄ませて老人の声を聞く。



「今にその手拭が蛇になるから、見ておろう。見ておろう」



老人は独り言のように、そう何度も呟いている。



「この人は何を言ってるの?」



私は困惑して紅葉に尋ねる。



「さぁ、幽霊の考えだから僕にはわからないよ」



「今にその手拭が蛇になるから、見ておろう。見ておろう」



老人は何度も何度もそう呟く。



私と紅葉は老人の手拭いを眺めていたが、いつまで待っても手拭が蛇に変わる様子はなかった。



「ねぇ、さっきの話に戻るんだけど幽霊にみんな強い思いがあるなら、この人のそれって…」



「この手拭を蛇に変えることができなかった事かもね」



思いという主観的な条件である以上、どんな意思を持って幽霊になるかは人それぞれだと思う。


だがまさか、こういうパターンもあるとは。



少し驚きながらもう一度老人の方を見やる。



彼は相変わらず同じ言葉を呟いていたが、徐々に体が透過していき、やがて綺麗さっぱり見えなくなってしまった。


とはいえまだ紅葉と手を繋いでいるから、私だけが見えなくなったわけではないのだろう。



それを確認するために紅葉の方に目を向けると。


彼は1人納得したように笑っていた。



「なんだ、手拭が蛇になるわけじゃないのか」



彼はそう呟いて立ち上がる。



「そろそろ行こうか」



「…もういいの?」



「あぁ、彼はもうここにはいないからね」



そう言って紅葉は歩き始めた。正直何が起きたのかさっぱりわからなかったが、私も慌てて後に続く。



その時、一匹の白い蛇が私達の前を通り過ぎていった。



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