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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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番外編‐ユメジュウヤ‐ダイニヤ

こんな夢を見た。



始めて幽霊を見た日の翌日、眠い目を擦りながらなんとか私は学校に着いた。


昨日はあれを見た衝撃で、一睡も出来なかったのである。



(夢じゃないんだよね…)



信じられない事だが、何度考え直してもあれは実際に私の身に起きた話なのだ。



「幽霊ってほんとにいるんだなぁ…」



ふと口からそんな言葉が漏れ出る。



正直幽霊なんてものはフィクションだけの話だと思っていたが、実際に目にすることになろうとは…。



そんなことを考えながら学部の案内板を見ていると、ゼミ募集開始の知らせが出ていることに気がついた。



(そっか、そろそろゼミ決めなきゃか)



うちの学部は2年生からゼミの加入が義務付けられている。


そのため、どこかのゼミには入らないといけないのだが、正直どのゼミも良し悪しは自分では分からない。



評判を聞けるような友人や先輩がいれば話は違ったのかもしれないが…


当然ぼっちの私にはそんな知り合いはいないのである。



(ま、適当に決めればいいよね)



分からないなら無理に悩んでも仕方ない。


幸い今日からゼミの説明会を実施するようなので、私は適当に目についたゼミに行ってみることにした。




ーー


ーーー



「以上で、本ゼミの説明を終わります。興味が湧いた人はぜひうちに来てください」



淡々とした教授の話が終わり、説明会が終了する。



(よくわかんなかったけど、他のゼミの説明聞くのも面倒だしなぁ)



とりあえず説明は聞けたし、面倒な面接や書類選考もないとのことだったので、このゼミに決めよう。



そう思い教室を出ようとした矢先、後ろから急に肩を叩かれた。



「…なんですか?」



私にこんな接触を図るような知人はいないはずなのだが…そう思いつつ怪訝な顔で振り返る。



「やぁ、また会ったね」 



そこに立っていたのは、昨日私に幽霊を見せた男だった。



「あなたは…」



「でも同じ学部とは思わなかったなぁ、君もこのゼミ志望なの?」



男は警戒している私をよそに気さくに話しかけてくる。



「別に…特に志望とかはないんで」



「あはは、冷めてるねー」



「…」



正直、この人とはあまり会話をする気が起きなかった。


理由は分からない。だが、絶対に近寄るべきでないことを本能が告げている気がした。



「昨日のこと、まだ気にしてるのかな?」



「っ…」



「やっぱりそっか。まぁ、気になるよね」



「昨日のアレ…どうしてあなたに触れた時だけ見えたんですか?」



関わってはいけない。頭では分かっているつもりだが、気がつくとそんな疑問を口にしてしまっていた。



「簡単だよ。僕に霊感があって、触れた人に同じ物を見せることが出来る。それだけ」



「そんな馬鹿な話が…」



「本当だよ、実際君だって見えたじゃないか」



「それは…そうですけど…」



霊感があるなどと言われても簡単に信じられるわけがない。


だが実際にこの目で見てしまった以上、否定することもできなかった。



「霊感なんてそんな特別なものじゃないんだよ。ただ単にみんなが見えていないものが見える、そういう悟りが開けただけ」



「悟り…?」



思わず聞き返すと彼が少し怪しげに微笑む。



「そうだ、良いことを思いついた。僕とひとつゲームをしない?」



「なんですか急に…?」



「あはは、そんな身構えないでよ。ルールは簡単、半年間僕と一緒に行動して君にも霊感が芽生えたら僕の勝ち、芽生えなかったら君の勝ちだ」



「やるわけないでしょ」



霊が見えるとのたまうだけでも怪しいのに、そんな男から持ちかけられたゲームなど絶対に乗るわけにはいかない。



まして自分が霊感に目覚めるなど、なんのメリットもないではないか。



「えー、結構楽しめると思うけどなぁ」



「私は全く楽しくないですよ、第一メリットもないですし」



「メリットねぇ…じゃあ勝ったほうが負けた方に何でも1つ言うことを聞かせられる、これでどう?」



「嫌です、聞いてもらいたいことなんてないですから」



なぜこの男は私にこだわるのだろう。


こちらがきっぱり否定しているのだから、すぐに諦めても良さそうなものなのに。


だが、彼は私の拒否の言葉を聞いても、引き下がろうとはしなかった。



「良いじゃないか、霊感なんてすぐに目覚めるものじゃない。その意味で君のほうが圧倒的に有利なゲームだと思うよ。それに…」



彼は一瞬黙り込むと、歪んだ笑みを浮かべながらこちらを真っ直ぐ見据えた。



「君の退屈を終わらせてあげられるよ?」



それはまるで私の心を見透かしたような一言だった。



「退屈…」



「そう、君はずっと退屈していたんだろ?それを僕が満たしてあげる」



なぜ彼は私が退屈していると知っているんだろう?


なぜゲームの相手が私なんだろう?


彼は私に何を期待しているんだろう?



今考えれば、彼の言葉は怪しいものばかりだった。


だが、その時の私はなぜか目先の甘美な言葉に踊らされ、それに気がつくことが出来なかった。



「半年だけですよ…」



気づけば私はそう答えていた。



「あぁ。それじゃゲーム開始だ。僕の名前は紅葉だ。よろしくね、一ノ瀬さん」



紅葉と名乗る男は、私の名前を呼びながら手を差し伸べてくる。


数々の違和感に気づくことがないまま、私は黙ってその手を握った。

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