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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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第38話〜明かされる正体〜



‐月白視点‐


「もしもし!!?春斗くん!!?ねぇ聞こえてる!?」


何度も名前を呼ぶが、彼からの返事はない。

先ほど大きな物音がしたところを察するに、何かの拍子にスマホを落としてしまったのだろう。


それを拾う余裕もないということは、彼は今まさに私が恐れていた事態に直面している可能性が高い。


そこまで察したところで、私は慌てて図書館を飛び出し彼のもとに向かった。


-30分前-


「10年前の大学生の焼身自殺ってこの記事よね…」


春斗くんと別れたあと、私は都内の図書館で雪那さんが亡くなった時の事件を調べていた。


そして秋穂先輩の話の通り焼身自殺の記事を洗った結果、やっとその事件に関する記事を見つけることが出来た。


記事にはおおよそ以下のことが書いてあった。


○○県○○市内にあるキャンプ場のコテージで火災が発生し、中から男女2名の遺体が発見された。 


鑑定の結果、遺体は宿泊していた大学生である、一ノ瀬雪那さんと七瀬紅葉さんのものであることが判明した。


警察の調べでは一ノ瀬さんの遺体の首に締められたような痕跡が見られたが、他殺と判断するには証拠が不十分であった。


そして部屋に灯油を巻いたような痕跡があったことから大学生カップルが心中を図ったものだと結論付けられた。


「待ってよ…七瀬ってたしか…」


秋穂先輩の名字も七瀬のはず…偶然の一致という可能性もあるが私の直感がそれを否定していた。


「秋穂さんの部屋に飾っていたお兄さんの写真…もしかしてあの人が紅葉さん…?」


そうだ、秋穂さんには兄がいると話していたではないか。

少しずつ、もつれていた糸が解けていくように、謎が氷解していくのを感じる。


秋穂さんの兄である紅葉さんと、雪那さんはキャンプ場で無理心中を図ったということだろうか?


いや、無理心中であるならばこの世に残りたいとは思わないはず。

幽霊になってまで現世を彷徨っている以上、雪那さんに自殺をする意志はなかったはず。


記事にも雪那さんの首に何か締められたような跡がある、と書いてあった。

となれば彼女は何者かによって殺害されたあと、キャンプ場で紅葉さんと共に燃やされた。

そう考えた方が自然だろう。


そして状況証拠的に殺害したのは…


「紅葉さん…だよね」


秋穂さんが全てを話すことができないと言っていた理由がここでつながる。


実の兄が殺人を犯している可能性があるなど、例え冗談でも人に言えるような話ではないのだから…。


「でもなんで紅葉さんは雪那さんに手をかけたの…?」


それほどまでに雪那さんを憎んでいたのだろうか?


いや、だとしたら一緒に命を断つようなような真似はしないはず。

じゃあなんで…


ふと、新幹線で行った心理テストのことが頭をよぎる。


〜クエスチョン〜

ーあなたはとある人物に一目惚れしました。


ですが、残念なことに相手はあなたに興味がないようです。


それが分かった時、あなたは何をしますか?ー


〜アンサー〜

ー永遠に自分のものにするために、惚れた女性を殺害したー


「好きだから、大切だから殺したの…?」


そうだ恨んでいたから殺したわけじゃない、むしろその逆…


大切だから…永遠に自分のものにしたいから殺したのだ。


そして、彼女は幽霊になった。

ということは必然的に…


「殺した側も幽霊になった…?」


ずっと春斗くんに取り憑いてる幽霊について疑問に思っていた事があった。

最初は彼が話したことがあるという、雪那さんが取り憑いてしまったのだと思っていた。

だが、あれは明らかに春斗くん自身に恨みを持っていた。

それ故に彼の体調には明らかに異変が出ていたのだ。


「だとしたら春斗くんに取り憑いているのは…」


そうだ、それなら全ての事に辻褄が合う。


春斗くんが取り憑かれたことで体調を崩したことも


秋穂さんが不自然に現状維持を望んだことも





「春斗くんに取り憑いてるのは、紅葉さんだ…」




私はついに全てを理解した。


そして同時に、今置かれている状況の危うさも理解した。


取り憑かれた状態の春斗くんが雪那さんに会いに行ってしまったら、紅葉さんが何をするか分からない。

もしかしたら…雪那さんに近づく春斗くんを殺してしまうかもしれない。


最悪の想像が頭をよぎり、私は慌ててスマホを取り出し春斗くんに電話をかけた。


ーー

ーーー


ー現在ー


‐春斗視点‐


恐怖心を隠しながらなんとか掴まれた方に目をやると、青白い手が俺の肩を掴んでいるのがはっきりと分かった。

その腕は病的なまでに白く細いのだが、肉が裂けそうなほど俺の肩を強く掴んでおり、思わず激痛に顔が歪む。


この腕は明らかにこの世のものではない。

そして同時に、雪那さんのものでもない。


スマホを落としてしまったため、最後まで聞くことが出来なかったが、状況から月白が何を言おうとしていたのか理解してしまう。


それを確定させるため、意を決して後ろを振り向き、俺を掴んでいる存在を確認する。


そこにいたのは…

どこか秋穂さんの面影を感じる、俺と同い年くらいの男。

彼を見た瞬間、これまで何度も見ては忘れてきた夢が、脳内に一気にフラッシュバックした。

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