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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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第36話〜近づく真相と運命の分かれ道〜


「あんまり広くなくてごめんねー」


秋穂さんの部屋に招かれた俺と月白は、何とも言えない気まずい顔をしながら、おずおずと部屋に入っていく。


「ここが、秋穂さんの部屋…」


結果的に秋穂さんと敵対しているような状態になってしまったとは言え、初めて入る女子の部屋。

それも仲の良い先輩の部屋だ。

それを動揺するなという方が無理な話である。

俺はどこに焦点を当てればよいのかわからず、結果的にあちこちと部屋を見渡す形になった。


「こら、あんまりじろじろ見ないの!」


その様子に気がついた月白が俺をたしなめる。


「あはは!別にどこを見てもいいけど、あんまり面白いものはないと思うよー」


そう言って笑う秋穂さん。

実際彼女の部屋は普段のイメージとは異なり、ほとんど物がない非常に質素な部屋だった。


ふと部屋に飾ってある写真が目に入る。


「これって…秋穂さんと…兄貴?」


写真には小学生くらいの秋穂さんと、ちょうど今の俺達くらいの年齢の男が写っていた。


「そうだよ、私のお兄ちゃん」


「秋穂さんって兄妹いるんですね」


「そう…いたんだよ」


その時、一瞬だけ秋穂さんが悲しい顔をしたように見えたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。


「でも意外だなぁ。てっきりこの話をしに来るなら、春斗くんと夏凜ちゃんの二人で来ると思ってたけど」


秋穂さんはにやにやと俺の方を見ながらそう言ってくる。


「何がいいたいんすか…」


「別にー。ちょっと前に夏凜ちゃんとデートしてたと思ったらもう次の子だなんて、春斗くんも隅に置けないなーって思っただけだよー!」


「だから、池袋のあれはデートじゃないですって!」


「ふーん、まぁそういう事にしておくよ」


「ねぇ…ちょっとその話後で詳しく聞かせなさいよ」


相変わらずにやにやとしている秋穂さんと、少し苛ついたように耳打ちで俺に詳細説明を求めてくる月白。

…大事な話をしにきたつもりがいきなりめんどくさい事になってしまった。


「それに月白だって今回は必要だから来てもらっただけです」


「…未来ちゃんの読心術で私の考えを読みたいから?」


「…え!?」


急に革新をつかれ焦りを隠せない俺と月白。


「あの…秋穂先輩、どうしてその事を…?」


「未来ちゃん、いつも他の人が求める答えを率先して言ったりするでしょ?それ、相当周りが見えてるか、人の思考を読まないとできないことだよ」


「それは…」


「やっぱり図星だった?私も意外と色々見てるでしょー、見直したかな?」


「見直したって言うか…怖いんですが」


「あはは!なにそれひどーい!」


本当にいつも通りの様子でおどけて見せる秋穂さん。

この人が何か悪意を持って俺達に接しているとは、どうにも思えない。


「さて、おふざけはそれくらいにして…私に何を聞きたいんだっけ?」


秋穂さんはひとしきり俺達をいじった後、不意に本題に切り込んでくる。


相変わらず、この人のペースには振り回されっぱなしだな。


秋穂さんの雰囲気が変わったことを察知して、月白も少し緊張した面持ちでこちらを見てくる。

こうなったら、腹括って切り出すしかないか…


「…単刀直入にいきます。秋穂さんは雪那さんの死の真相について、なにか知ってるんじゃないですか?」


「…」


その言葉を聞いてきょとんとした顔をする秋穂さん。


「どうしたんですか?」


「あ、いや、てっきりもう少し回りくどい方法で、私から情報を聞こうとしてくるって思ってたから、拍子抜けしちゃって」


「別に…あらかた秋穂さんだって予想ついてたでしょうし、まどろっこしいのは面倒でしょ?」


「あはは、それはまぁその通りだね!ほんと、春斗くんって面白いよね!」 


そう言って楽しそうに微笑む秋穂さん。

その顔は幽霊部の時に何度も見たそれと同じ、優しいものだった。


「…それで、どうなんですか?」


「ごめんごめん、そうだね。雪那がどうして亡くなったかだよね。それは前にも言ったけど、真実は私も知らないよ…ただ」


「ただ…?」


「何となく予想はついてるんだ」


その目は何か確信がある様子で、やはり彼女は限りなく真実に近いところにいるのだと理解した。


「それ、教えてもらうことって出来ますか?」


「…ごめん、私の口から話すことはできない、かな。後輩の頼みを無下に断るのは心苦しいんだけどね」


そう言って彼女は困ったように笑った。


「ですよね、話してくれるつもりがあるなら、もっと早い段階で教えてくれてるはずですしね…」


「うん、ごめんね…」


予想はついていたが、やはり彼女から情報は得られないか…

改めて突きつけられる事実に俺はがっくりと肩を落とす。


「あのさ、春斗くん。この件、このままにしておく事はできないかな?これ以上追求したり深入りしたりせず、このままで…」


「それはダメ!今だって春斗くんの身体に良くないものが取り憑いてる状況なんですよ?」


秋穂さんの提案を語気を強めて否定したのは月白だった。


「うん、それは分かってる。でも憑いているものだって春斗くんの命を奪うようなものじゃない。それに共存していけば、昨日のトンネルの時みたいに悪いものから守ってくれることだってあるんだよ?」


多分これは秋穂さんの本音だ。

俺にはマインド・リーディングの能力はないが、彼女の真剣な目を見れば嫌でもわかる。


「それにその状態でいてくれるのなら、私だって協力する。危険な目に合いそうな時は絶対に守ってあげる、だから…!」


彼女の心からの言葉、

それに対して答えを間違えることがないように、俺は慎重に言葉を選びながら話し始める。


「秋穂さんの気持ちは分かりました。でも雪那さんと約束しちゃったんです。彼女の記憶が戻るように手伝うって…だから、それはできません…」


「そうだよね…うん、それも分かってた」


彼女は少し悲しそうに笑う。


「秋穂さん…」


「じゃあ仕方ない!全部を教えてあげる事はできないけど、君は当事者なわけだし、少しだけヒントをあげる」


「ヒントですか?」


「うん、前に言った雪那が亡くなった場所ね…それは幽霊部の部室で間違いない。けどそれは世間に知られていない情報なんだ。だから新聞とかにも載ってない」

 

「…だから、当時の新聞を調べても載ってなかったのか」


「そう、発表されている情報では焼身自殺ってことになってるんだ」


「焼身自殺…??」


自殺とはどういうことだ…?

雪那さんは自分の意志で死を選んだということか?


「はい、ヒントはここまで。あとは自分たちの力で頑張るように!」


俺が思考を巡らせているとそれを断ち切るように、秋穂さんがパチンと手を合わせた。


ーー

ーーー


その後は軽い雑談を交えて解散の運びとなる。


「秋穂さん、今日はありがとうございました。もらった情報で自分なりに答えを探してみます」


「うん…」


秋穂さんは少し複雑そうな表情で頷いた。


「じゃあ俺達はこれで」


「あ、待ってふたりとも!」


俺と月白はぺこりと頭を下げ、秋穂さんの家を出ようとすると秋穂さんが呼び止める。


「どうしたんですか?」


「真相を探るのは止めないよ。でもこの件に深入りしたら、2人にもそれなりに危険な事が起きると思う、だから…気をつけてね」


そう言うと秋穂さんは手を振りながら扉を閉める。


「脅し…じゃないよな?」


「うん、あれは本心から私達を心配してくれてるんだと思う」


つまりこれからまた昨日のような、あるいは昨日よりもっとヤバいことが起きるってことか…。


改めて俺は今自分が置かれている状況の異常性と危険を再認識する。


「これからどうするの?」


「とりあえずは秋穂さんからもらった情報で、当時の事件を洗ってみる。それと並行してもう一回雪那さんと話してみるよ」


「そうね、私もそれが良いと思う」


雪那さんと話す、これは最優先事項だ。

なぜなら彼女がもし自殺した可能性があるならば、過去を振り返ることが彼女にとってとても辛いことになるかもしれないから。




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