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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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第35話〜旅の終わりと思わぬ提案〜



気がつけば帰りの新幹線まで残り2時間、

ひとしきり観光を終えた俺達は京都駅の付近まで戻ってきていた。


「さて、残りの時間だが…みんなは何かやりたいことはあるかい?」


「私、少し家族へのお土産を選んでもいいですか?」


「あ、私もお土産買いたい!」


風見部長の問いかけに対して、立花先輩がそう答えると、秋穂さんが賛同した。


そのの話あった結果、残った時間はお土産を買いたい人や、最後まで観光を楽しみたい人、各々ニーズがあるだろうということで自由行動という流れになった。


そして今俺は月白に連れられて、和風情緒漂う喫茶店に来ている。

彼女は真剣な様子でメニューとにらめっこしていた。


「決めた、私、これがいい!」


「いや、お前抹茶アイス食べたいとか言ってなかった…?」


月白が指差したのは北海道ミルクソフトと大きく書かれた至って普通のソフトクリームである。

抹茶アイスを奢るという話はどこに行ってしまったことやら。


「なんか急にバニラの気分になったのよ」


「へいへい、そうですか」


相変わらず、月白が考えていることはよく分からん。

適当に相槌を打つと、今度はこちらにメニューを見せてきた。


「で、アンタは何にすんの?」


「ふむ…じゃあ抹茶ソフトで」


「…商業戦略には乗らないとか言ってなかった?」


「なんだ、郷に入ってはなんとやらって言葉を知らんのか?」


「はぁ…まぁいいけど」


頬杖をつきながら待っている月白の様子を横目で見ながら待っていると、程なくしてアイスが到着した。


「はぁ〜っ、やっぱり旅先で食べるアイスって最高よね〜!」


「京都来て北海道ソフト食ってるやつが言うと説得力ねぇな」


「いいの、問題なのは味じゃなくてロケーションなの」


「さいですか…」


また適当に相槌を打ち、俺も自分のアイスを一口頬張る。

宇治抹茶を使用しているらしく、これが中々味も濃厚で美味である。

この一口で、何となく今月白が言ったセリフが理解できた。


「ま、たまにはこういうのもいいかもな」


「でしょ?良さげな喫茶店リサーチしといてあげたんだから、感謝してよね」


ふふん、と胸を張る素振りをしてみせる月白。

なんだかんだで彼女もこの旅行をそれなりに楽しんだようだ。


「はぁ…もうすぐ旅行も終わりか、帰りたくねぇなぁ…」


「へぇ、アンタがそんな事言うなんてちょっと意外…そんなに楽しかったの?」


「いや、だって旅行終わったらそのまま秋穂さんと話さないとだろ?今から気が重いぜ…」


「あぁ、そういうこと…もう、私も付き合ってあげるんだから覚悟決めなさいよね」


覚悟、か。

確かに月白の言う通りではある。


雪那さんの過去を知り、自分の身に起きたことに決着をつける。

そのどちらを行うにせよ、秋穂さんから話を聞かなくては先に進めない。


ならば今更尻込みしている場合ではない。

だが…


「このまま場面転換とかは無しな。せめて帰りの電車の一幕くらいは語ってからで頼むぞー」


「いきなりなんの話してんのよ…」


俺の心からのつぶやきが、喫茶店に虚しく響いた。


ーー

ーーー


「さて、無事に戻って来る事ができたな。とはいえ家に帰るまでが旅行だ、各自気をつけて帰るように」

 

願いも虚しく、あっという間に品川駅まで戻ってきた一行。

最後の風見部長の締めの挨拶を終わってしまい、いよいよ散会となった。

ということは…


「じゃあ、約束どおりお話を聞こうかな」


こちらは優しく微笑む秋穂さん。

彼女は洞窟で見せた一面がまるで別人ではないかと思えるくらい、いつも通りの優しい雰囲気を纏っていた。


「そうっすね…この話月白も同席してもらいたいんですが、いいですか?」


「もちろんいいよー、でも2人ってそんなに仲良かったんだ!あ、もしかして付き合ってるとか!?」


「「違います」」


秋穂さんの妙な勘違いを俺と月白がハモりながら即座に否定する。


「なーんだ残念…」


「何がだよ…じゃあちょっと俺場所探しますね」


スマホを取り出して会話ができそうな場所を検索する。

ゆっくり話すとしたら喫茶店か?近くに空いているところあるだろうか。


「あ、良かったら私の家来るー?品川からならすぐ近くだし!」


突然秋穂さんからとんでもない事を言われる。


「はぁ!?」


「いいじゃない、その方がゆっくり話せるし」


女子の部屋に…行く…?

俺が…?

提案の内容を頭が理解できず、俺は固まってしまう。


「でも秋穂先輩、それはさすがに悪いんじゃ…」


「いいんだよー。春斗くんだけならアレだけど、未来ちゃん来るなら、そっちの方が楽しそうだし!」


「私達楽しい話をするわけではない気が…」


「あはは!それはそうだね!でもそしたらなおさら落ち着いて話を出来る場所のほうがいいでしょ?」


女子の部屋という時点で楽しく話せる環境ではないんだが…

という突っ込みが喉元まででかかったが、ふざけられる状況ではない事を思い出し押し黙る。


「ほら、いつまでも立ち話をしてるのもあれでしょ?気にせず付いてきてよー!」


そう言って月白の手を引いて歩き出す秋穂さん。

やむを得ず俺もその後を追っていく。


こうして秋穂さんとの対話は彼女の部屋という思わぬ場所で行われる事になったのだった。

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