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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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第27話〜クラヤミニヒソムモノ〜


「誰かって…いったい誰が?」


「分かんないですよ…けど多分あんまり良くないもの」


俺の問いかけに判然としない答えを述べながら、立ち止まってトンネルの先を凝視する月白。


「月白くん、なにかあったのか?」


彼女が立ち止まった事で、前方を歩いていた風見部長達も足を止めこちらを振り返る。


「あの、それが…えっと…」


この先に幽霊が見える、などという話はさすがに言いづらいのだろう。

月白は風見部長に問われて言葉に詰まっている様子だった。

まぁ肝試しのようなことをしておいて、幽霊が見えると騒ぐのは冷やかしに捉えられかねない。

言葉を選ばざるを得ないのも無理はなかった。


「なんか月白、体調悪いみたいです、もう戻って少し休みませんか?」


どうにかこの場をやり過ごすべく、俺も月白のフォローに入る。

さすがに体調不良だと訴えればすぐさま戻る方向に話が傾くはずだ。


「そうか…気が付かずにすまなかった。今すぐ戻ろう」


想定通り風見部長と九条が月白の元に駆け寄ってくる。

これでこの先に進もうという判断をする人間はいないはず。

何とかこの場を切り抜けた、そう思った矢先だった。


「春斗くん、もう戻っても無駄だよ」


そう言い放ったのは秋穂さんだった。

彼女の声は今まで聞いたこともないような冷たく静かなもので、まるで別人が発したのではないかと錯覚するほどだった。


「それっていったいどういう…」


意味が分からず、思わず聞き返そうとしたのだがすぐに彼女の言葉の真意に気付いた。いや気付いてしまった。


なぜなら彼女がトンネルのとある一点を凝視していたからである。

その様子を見て思い出したのだ、彼女もまた霊が見える人間だったと。


「秋穂さん…もしかして…」


「もうこっちに近づいてきてる」


秋穂さんは依然として一点を見つめながら、呟くようにそう告げる。


「俺達に気がついてるって事ですか…?」


「だろうね」


「だろうね…ってじゃあ一体どうすりゃいいんですか!?」


どこか他人事のような様子の秋穂さんの態度に腹が立ち、思わず声を荒げてしまう。

すると風見部長達が驚いたようにこちらを振り向く。


「羽倉君…急にどうしたんだい?」


「いや…それが…」


幽霊がいるらしい。

そしてそれから逃げられそうにない。

そんなことを言って一体何になるのだろう。


そもそも俺だって何も見えていないのだ、その状態で彼らに何を話すべきなのか俺には全く分からず、つい押し黙ってしまう。


「羽倉くん…?」


俺のただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、九条が心配そうな顔で俺を見る。

だが、彼女に返す言葉すら何も浮かんでは来なかった。


俺達に近付いて来ているのは一体なんなんだ?

今どこまで近付いて来ている?

何が目的だ?

どうしたらいい?


焦りからか、様々な疑問符が頭を支配し、俺は完全に立ちつくすしかできなくなってしまった。


そして…




ふと、俺達のすぐ近くで足音が聞こえた。

そいつがすぐ近くにいる。直感的にそう理解できた。


そして次の瞬間、俺は腕を捕まれ強い力で引っ張られる。


幽霊の仕業かと身構えたが、目を向けると腕を引いていたのは秋穂さんだった。


「秋穂さん…何を…?」


「いいから来て。こんなところで死にたくないでしょ?」


そう言って秋穂さんは俺を足音がした方向へと引っ張っていく。


後ろから風見部長達が必死で俺達を呼び止めているのだが、完全に無視して秋穂さんは俺の手を引き続ける。


やがて唐突に立ち止まると、俺に少し優しく微笑みかける。そして、


「気をしっかりもってね」


そう告げながら俺を自分の前方へと突き出した。


その行動に動揺を隠せなかったが、

目の前にアイツがいる…!

とにかくそう直感した俺は思わず固く目を瞑った。だが、


「ちゃんとよく見て」


目を瞑った矢先に秋穂さんからそんな事を言われてしまう。

従うしかないと思い、俺は恐る恐る目を開ける。

当然、目の前には何も見えなかった。


そして同時に秋穂さんの視線は明らかに俺でない何かに向けられており、先程の「よく見て」という言葉が俺に向けられたものでなかった事を理解する。


「本当にこれに入りたいの?」


秋穂さんは依然として、俺の前方の何かを見つめながらそう問いかける。

さっぱり意味はわからない、だが何か交渉をしていることだけは理解できた。


秋穂さんの問いかけから数秒、いや数十秒ほどだっただろうか。


再び先程の足音が聞こえる。

だが、今度のそれはゆっくりと俺達から離れていき、やがて聞こえなくなった。


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